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第3章

想い  sideヴィクトール

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婚約者という彼女に、俺は一瞬で目を奪われた。

陽によって煌めく銀髪。好奇心で輝く瑠璃色の瞳。見慣れたものに囲まれていた俺にとって、そのすべてが新鮮に映った。

「ねぇ、ヴィクター」
「ねぇ、向こうまでお散歩しよう」
「ねぇ、ヴィクター、この壁を超えてみようよ」

気づかないうちに、俺は宮城での生活に飽きていた。彼女は、ジルはそれに気づいていたのかは分からない。けれど、宮城の壁までだった俺の世界を、端から端まで壊していった。知識じゃない。自分を本当の意味で外に出してくれたんだ。

ジルと過ごす時間は、いつもキラキラしていて、その時間のために、俺は勉強も鍛練も頑張ることができた。

「また、一緒に行こうな」
「もちろん」

この会話を最後に彼女とは会えなくなった。周囲の人に聞いても、理由を教えてもらえもない。

しばらくして調べてみると、彼女は誘拐事件にあっていた。溺死するところだったらしい。

帝都よりも安全な領地で過ごしているとのことだった。

僕は、ひどく悔しかった。ジルを守れなかったことが。当日、ジルと一緒に過ごせた分けでもないし、下手をすれば自分の方が誘拐される危険性が高い。

ただなぜか、とても悔しかった。


それからの僕は、今まで以上に鍛錬にも勉強にも取り組むようになった。最初は、周りの人間にやりすぎだと叱られもした。体力がなくて、寝込むこともあった。
でも、僕は、次彼女に逢う時のために、やらなければならなかった。

俺は彼女を必ず守りたい。もう、次こそ。彼女を失いたくたい。

「殿下?!」

待った。俺は何か大切なことを忘れていないか?それはなんだ?

「殿下、危険です!」

俺の目の前が真っ白になった。


















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