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本編

24:子山羊は悪魔に弄ばれ、狼は諦めず立ち向かう。*

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シゲは慌てて朧を拘束している手錠のピッキングに取り掛かる。

しかしシゲは何かを蹴った感覚が足に走った為、下を見てみると……、

「若、これ……」
「――!?」

手錠の鍵らしきものが地面に落ちていたのだ、シゲは慌てて、その小さい鍵で手錠を外すのを試みる。

――カチャン

「――外れた!」

シゲの予想は当たっており、朧の腕は自由になる。

「若……! その怪我……服はどうしたんですか!?」
「? あぁ……いろいろあったな」

黒田は服も変わっていたこともそうだったが、朧が傷だらけだったことに気付いて聞いて来た。

思い出せば斑鳩に撃たれたこともそうだったが、思い出してみれば久保井にメスを投げられたし、柳葉にボウガンの矢で撃たれたこともあった。逃げようする前には森田に鞭で打たれていたので朧の怪我はかなりのものだった。

「――チクショウ、何処の野郎だ!」

狼月会の大事な跡取りに傷を負わせた相手がいることを知ってシゲは怒りをあらわにする。

「そんな怪我でどこに行こうと……」
「おい待てって……」
「……って、ちゃんと綺麗に包帯巻かさっていやがる。」

黒田が心配して怪我を見ようと服をまくると綺麗に包帯やら止血やらが施されていた。

しかも、七歩が巻いた包帯もちゃんときっちり直されている。

「……こりゃあ一体」

撃たれた箇所も流れている血が止まっているようにも見える。

「斑鳩が治療してくれたんだ……、斑鳩は今の屋敷の住人の中では比較的マトモな方だからな。罪悪感から若様に従って逆らえないだけで……」

「――誰だ、てめえっ!」

するといきなり、違う方向から森田が現れた……黒田とシゲは森田を怪しんで凄んだ声で警戒する。

森田曰く止血剤を施したり、包帯を巻きなおしたのは斑鳩だと言う。

「そう睨まないでくれるか? もう追っかけたりしねえよ……斑鳩に色々頼まれてこっちに寄っただけだ」

よく見ると必要最低限の物を詰めたリュックを森田は掲げている、あの屋敷から離れる決意をしたようだ。

「その様子だと会ったんだろ? 若様に……。んで、してやられたわけ、か……」

森田は屋敷から追い出された朧の様子を見て流伽の不意打ちにあって七歩を奪われたことを悟った。

「お前、斑鳩あいつについて何か知ってんのか?」
「……まぁな。雑談とかしてても、あの中で気が楽だったの……斑鳩だったしな」

朧は森田に斑鳩について何か知っているか聞くと、森田は斑鳩が流伽に逆らえない理由についてはある程度知っているようだった。

「あぁ、斑鳩から……『若様の事を知りたいと思うならこれを見てください。若様の正体が見えてきますよ』とさ」

「…………」

そして渡したファイル渡した理由を伝言として森田は伝える。

「てめえはよく命あって辞職できたな……」
「斑鳩が『若様があの子山羊ちゃんに気が反れている間に逃げとけ』って言ってくれたからなんだよ。俺も正直、若様に今は会いたくねえしな」

あれだけ暴れておいて七歩まで巻き添えにしたのによく流伽の怒りを買って殺されずに済んだと言うと森田は斑鳩が手をまわしてくれたと正直に話した。

「斑鳩って奴にはルカ様って奴に逆らえねえ理由が何かあるのかい?」
「俺から言えることは……斑鳩は、本当はこんなことしたくねえんだよ。あいつは本来真面目で気が小いせえんだ」

何かしら色々ありそうだが森田はあまり公言しない方がいいと思っているのか、斑鳩の本来の性格の特徴だけ朧に伝える。

この様子から森田はある程度、友人同士とは呼びづらいだろうが斑鳩とはお互い気を許していたと見える。

「あとこれ……」

そして森田は思い出したように朧に何かを差し出す、その正体はΩ専用の首輪だった。

「首輪……電気の走る仕組みが施されてねえ普通のΩ用首輪だ、発情期来てるんだろ? 子山羊ちゃんにでもつけてやるんだな」

森田も七歩のあのフェロモンのにおいを嗅いだようだ、屋敷中から漂ったので気付いていても無理はないのだが……。

七歩につけられているあの首輪を外して代わりにこれを嵌めてやれということなのだろう、Ωに首輪をつけない行為はレイプされろと言っていると同じなため、口では言わないが探す手間が省けたと朧は感謝していた。

「お礼くらい言ったらどうだ……?」
「どうも……」
「やっぱむかつくわ、お前……」

御礼を言うのをせがんできたため鬱陶しくそう答えると森田は朧の態度に少しイラついていたようだ。

「それにしてもヒート良く起こさなかったな……」
「起こしたさ、抑制剤服用しただけだ……だが、七歩はあの野郎の手中にある」

「成程不味いね……そりゃ」

七歩が発情期を起こしたすぐに流伽に捕えられたと言うとそれは不味い状況にあると森田は言う。

「忠告しておくが、またルカ様にたてつくならあの人は必ず斑鳩を使って殺しに行くと思うぞ。ただ……斑鳩をどうにかできれば、あの子山羊ちゃんを助け出せるかもな。斑鳩もそれを本心では願っているはずだ。」

たてつくような真似をまたするなら流伽は今度こそ容赦しないし、斑鳩も朧の前に立ちふさがると予想していると同時に、斑鳩自身本来はこんなことしたくない性格だと森田は言いながら違う方向に行く。

「お前は……?」

今後森田はどうするのか聞くと森田は……、

「病院行って脚治したら復職でも狙うさ……あぁ、ちなみにあっちの方が屋敷に近いぜ?」

先に病院行って復職を狙うと話した、そして指を刺して屋敷の在り処をついでに教えてくれた。

「じゃあな、若様に殺されるなよ……生きて帰れ、くそヤクザ」
「ふん、しつこいお前の事だ……どっかで元気にやるんだな」
「言われなくとも……」

憎まれ口を叩きながらも森田はヘルメットをかぶり、道脇においていたバイクを動かして去って行った。

その頃、七歩は……。

「あっ、はぅ……うっ」

父である先代当主が使っていた書斎部屋から繋がる隠し部屋でもあった部屋で兄・流伽からお仕置を施されていた。

ヴー……ヴー……

「あぁ、いや……そこ、だっ、あぁ、う……」

流伽に裸でベッドに拘束されローターで秘部を掻きまわされていた。身体が疼く上にローターがむず痒くて仕方ない……。

「――ねぇ、七歩。きついかい? でもねぇ……これは躾だからねぇ」

聞いておいてローターは取らないと宣言する、明らかに挑発している。

――キッ

七歩は流伽にだけは心を許さないと言わんばかりに睨む。

「可愛いね……七歩は」

くすくすと笑って流伽は睨み付ける七歩の様子に怯む様子は見せない。

「でももう少し、乱らせちゃお。」

笑顔を見せてはいるが睨まれたのはちょっと気に入らなかったらしく、そう無邪気に言いながらローターの強度を強くするボタンを弄った。

ヴーヴーヴ……

「――あぁあああっ」

強度が増された瞬間七歩はローターの振動が強くなったこともあって更に身体をびくびくと跳ねあがらせる。

「やぁ、ぬいて……ぬいてぇ」

中学生の頃にレイプされた時の嫌悪感と痛みと快楽を思い出すためこんなことは止めてほしい、ローターを抜いてほしいと懇願する。

発情期を迎えているせいか、ローターの振動が強くなるたびに淫靡な液がしたたり落ちている。それが七歩にとって恥ずかしくてたまらない。

「今度は……これを塗ってあげるね。媚薬成分があるんだ、これ……」

流伽は笑いながらチェストからローションを取り出して、媚薬効果がある代物だということを教える。

「いや……、嫌、嫌……! それ以上は止めて……!」

媚薬効果があると聞くと、七歩は必死で首を振って拒絶する。
流伽はまたチェストから何かを取り出す、取り出した物は書道に使う筆だった。

「なっ、何……?」

そんなものを取り出して何に使うのかわからず、七歩は恐怖に怯える。
そして流伽はにっこりと笑うとその筆をローションで濡らす。

「さてどこから塗っちゃおうか……」
「――っ」

――ガシャガシャ

 七歩は流伽が何をしようとしているのか悟り、暴れて拒絶の意を示すが拘束されて逃げられない為無駄に終わる。


「暴れちゃだめだよ七歩……手首傷ついちゃうよ?」

妙に優しい声で流伽は暴れない様に促す、これからもっと自分にみだらな行為をしようとしているくせに……どの口が言うのかと七歩は思った。

――くすっ

つつつ……

「――ひぁっ!」

流伽は笑うと七歩の胸の突起を筆で弄り始めた、濡れた筆で突起を触られるくすぐったさに七歩の身体は跳ねる。

つつつつ……

「~~~っ」

その様子にほくそ笑み、さらに胸の突起を弄る。そして下へ下へと筆で七歩の身体を弄ぶ。
下へ下へと筆でなぞられる感覚に七歩の身体はびくびくと跳ね上がり、声にならない嬌声をあげる。


心では嫌なはずなのに、身体は裏切るように感じてしまう……。

これも全部発情期のせいなのか、それとも今流伽が塗った媚薬成分が入ったローションの作用なのかはわからない。

「ここも……塗ってあげないとね」
「――!?」

黒い笑みを浮かべて流伽は七歩のそそり勃って淫靡な汁があふれ出ている小さなモノを指差す。

そこを筆で弄られるなんてしたら、しかも媚薬入りのローションがついている筆でそんなことされたら正気を保てなくなる気がする。

「いやっ、お願い……やめて……!」

そう思うとぞっとして七歩は首を振って必死に懇願するが、そんなことを聞く流伽ではない。


つつつっ……くちゅくちゅっ

「~~~~~っ」

――ガシャン

流伽は七歩の言葉も聞かずに七歩の陰茎を弄る。
筆のくすぐられた瞬間、電気が走ったように七歩の身体は跳ね上がった。

「――はぁっ、はぁっ」

七歩は拷問が一旦休憩になると喘ぐように息継ぎをする。

――クスクスクスクスッ

「かわいい……」

ちゅっ……

「んっ……んぁ」

流伽は七歩の様子に笑うと七歩にキスを施してきた、流伽は遠慮なしに七歩の舌を絡め取って七歩の口内を犯す。

――ポロッ

(……朧さん)

無理矢理奪われるキスは誰も幸福な気持ちにならないことを七歩は痛感した……。

朧とは違うキス、朧のキスはちっとも嫌悪感は湧かなかった。腹違いの兄……しかも、仮に弟でもある自分を番にすると言う異常なことをしようとしている兄から与えられるキスは絶望と嫌悪しか湧いてこない。

七歩の口内を犯すことに満足して、漸く流伽は七歩を解放する。

恍惚な表情で自分の唾液を舐めとった後の舌舐めずりをする流伽の様子に七歩は悪魔が人間を喰おうとしている姿と錯覚してぞくりと体を震わせる。

「なんで……僕、だったの?」

七歩は何故仮にも弟である自分を番にしようと執着するのかわからなくて流伽本人に聞いてみた。

「あれれ? もしかして覚えてないの……僕たち小さい頃に一度会ってるんだよ?」

「……?」

流伽は実は七歩とは一度小さい頃に会っているのだと言うことを話した。





朧は森田の助言を貰って七歩が囚われている屋敷に無事戻ってきた。

自分を探しに来た黒田とシゲには申し訳ないが、自分の合図が来るまで屋敷の少し離れたところで待機していてほしいと願い出た。

「待ってろよ……七歩」

せめてまだ番成立にはなっていないことを祈りながら朧は七歩救出に向かう。

フェロモンがまだ屋敷の中でにおうということはまだ番成立はしていなさそうだった。
だが、フェロモンのにおいが危険信号を示すにおいになっているということは七歩が危ない状況だというのは朧でも分かる。

そしてにおいを頼りに七歩を探そうとすると自分の前に立ちはだかる人物が一人いた。

「やっぱり来やがったか……“斑鳩”。」
「…………」

二階に続く階段から斑鳩は無表情で降りてくる。
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