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国王様からの呼び出し

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 ある日、保護猫カフェに手紙が届けられた。差出人はこの国の王様からだ。

 多種多様な種族の国を一代で築き上げた凄腕の国王。

 そして私と同じ日本人。

 そう。

 同じ日本からの転移者がいるのだ。

 その人からの手紙の内容は……。

【オーナーの元井紬(もといつむぎ)殿にお城へと来てほしい】

 というものだった。

 この国に来たときにとても親身になって良くしてくれたのでその恩義はある。

「はぁ……仕方ない行ってくるよナナさん」

「国王様からのお声掛けなのに浮かない感じですね」

「うん。実は苦手なのよねあの方……」

「苦手……ですか……?」

 ナナさんは不思議そうな顔をしていた。

 特にこの国の住民にとってあの国王は神様に近い存在なのだから。

 しかも私と国王は日本の同郷人でもある。

 そんな人を苦手と言うのだから不思議なのは仕方ない。




 次のお休みの日にお城へ出向いた。

 お城はいたって普通の外観。洋風のお城。

 そういえば街全体も古いヨーロッパという感じの建物ばかり。もともとあった小国の国王が国をまるごと譲りその後、今の形の国へと急成長したらしい。

「保護猫カフェ紬様がお見えになりました」

 謁見室へ案内をされる。

「こんにちは。国王様。本日はお呼びいただき誠にありがとうございます」

「なにそんな固い挨拶してんの! つむぎちゃん! いらっしゃーい」

 これがこの国の王様。見た目はイケオジだが軽い感じでどうにも受け入れがたい。

「周りに人がいる以上ちゃんとTPOくらいはわきまえます」

「まぁたしかにね。さすがだね。で、要件なんだけどさ。んっとね、まずこれ見てくんない?」

 そう言うとスマホを見せてきた。そこには一匹の子猫の姿があった。首輪がついている。

 ちなみになぜか彼はスマホを持っている。ネットには繋がらないがカメラ機能などのアプリは生きているらしい。しかも充電フリー。なんともご都合アイテムだ。転移する際に身の回りのものが添付でもされるのだろうか?

「この子が庭に住み着いちゃってさ。お城の人たちに聞いてもわからないって言うし。だ、か、ら。つむぎちゃんの力を借りたいなって」

「うちのお店に迷い猫として貼り紙を掲示したいですがイラストの方がわかりやすいですね」

「たしかにイラストだとわかりやすいよね。とりあえず、うちの画家ちゃんに相談するね。あ、猫ちゃんはこのままお城の庭でお世話を続けるから安心してね。じゃあ、これから公務があるからよろしくね!」

 そう言い残すと彼は部屋を出ていってしまった。補佐の方と二人きりになってしまったので少し雑談をしてお城をあとにした。




 数日後、お城から使いの方がみえて、絵が完成したので取りに来てほしいと言われた。使いの方に付き添われて指定された場所に着くと一人の女性と魂が抜けた感じの国王が待っていた。

「お待ちしておりました」

 そう言うと彼女は丁寧に頭を下げた。

「お初にお目にかかります。私は画家のステラと申します。以後お見知り置きを」

 そう自己紹介をする彼女はとても美しい。美人で画家をしているなんて羨ましい限り。絵が上手く書ければなぁ。

 しかし隣にいる国王はどうして疲れているのか気になった。訳を尋ねると画家ステラさんの指導の下で何度も何度も書きなおし、国王が自ら迷い猫の貼り紙を書いたらしい。

「では、こちらが猫ちゃんの貼り紙になります」

 ステラさんから渡された絵を見てみる。そこに描かれていたのはとても可愛らしく、特徴を捉えていて、写真と代わり映えしない絵だった。

「すごい上手じゃないですか! これならすぐ見つかりますよ」

「よかった。頑張って書いたかいがあったよ。ならこれよろしくね。猫ちゃんはうちでお世話続けるよ」

 貼り紙を受け取ると早速お店に掲示した。すぐ飼い主さんは見つかり、その猫ちゃんは飼い主さんの元へ帰っていった。国王の書いた貼り紙とともに。

 何事にも真っ直ぐで素直な彼だからこそ様々な種族を受け入れる国を作れたんだと思う。

 この国には様々な種族が住んでいるのだけどもちろん猫の獣人族もいる。

 普通の猫も暮らしている。

 猫をはじめ動物はとても大事にされている ( 人もだけど ) 

 そしてこの国は猫の妖精ケット・シーによって守られている。

 国王は大の猫好き。猫好きとコミュニケーションの高さ、それにスマホという謎のマジックアイテムを持っていたことであれよあれよと言う間に国王になってしまったという話も聞いたことがある。

 そのおかげでうちのお店を普通に営業させてもらえることになったんです。

 ★登場人物

 国王:紬と同じ日本人。ネットに繋がらないスマホを持っている。ケット・シーの加護持ち。

 ステラ:王国お抱えの画家。
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