初雪

ひでまる

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前編

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今年の東京は例年よりも寒く感じる。

いつも同じ事をニュースでふんふんと聞き、納得する自分が嫌いだった。本当にニュースキャスターが言っている事は正しいのだろうか? 渡辺智彦はぼんやりと窓の外に見える丸い月を眺めた。

「えっ!? 雪だるまって何?」

美咲は髪を右手で触りながら言った。美咲は俺の彼女で同じ美術大学一年生で共に勉学に励んでいる。困った時に髪をいじくるのが美咲の癖だ。

「雪だるまってだいたい二段重ねに雪を積んだダルマみたいなアレだよ。知らないの?」
「アレか、実際私見た事ないんだよね」

美咲は東京生まれの都会育ちで雪に接することは確かにないかもしれない。だが見た事はあると思うが、ないと答える美咲の存在が少し奇跡のように思えてくる。

「じゃあ今度見に行こうぜ」
「ヤダ怖い」
「何で?」
「夜中に人形が突然動きだしそうなあのやな感じがする。襲ってきそうで怖いし、別になくたって私の人生に影響ないし。それよりも…」

美咲は別の話題をしてきた。
 智彦は思った。自分が子どもの時は雪が大好きだった。何故空から白いきれいな物体が降りてくるんだろうと不思議に思った。実家の大阪でも昔の頃は雪が積もり、兄弟や友達と雪合戦をしたり、雪だるまを作って楽しんだ。雪が友達の輪を繋いでいくようなきっかけとなったものだ。美咲にも雪を知ってもらいたいし、何よりも雪だるまを好きになって欲しい。
 智彦は密かにサプライズをしようと心に思った。JR渋谷駅は混んでいていつも人でいっぱいだ。雪とは遠く離れた街でどう雪だるまをプレゼントすればいいのだろうか。

ある日の休日美咲とデートをしていた時、
「今度雪だるまを見せるからうちへこいよ」と美咲を誘った。

「いや寒いし、怖いし」

美咲は嫌な顔をする。美咲はとても寒がりで、家ではこたつとエアコンを同時に使用していた。

「大丈夫だよ。寒くない所で雪だるまを見せるから」

智彦は意味深なことを言う。

「寒くないと雪だるまがとても連動するとは思えないよ」

美咲は文句を並べた。

「だまされたと思って一回こいよ。日中だから雪だるまも怖くないし、絶対に寒くないから」

智彦は是が非でもとうるさく言うので、美咲は来週日曜日に智彦の家へ行くことにした。
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