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第百四十七話 プリンは飲み物です
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大量の卵、獣乳、砂糖を市場で買い込み帰宅する。辺りはもう薄暗くなっており、扉の前に置いてある桶から、黄色い光が漏れていた。まだ花祭りに桶に浮かべた梵天の花が枯れずに咲いている。
いつものように風呂に火を入れ、台所で調理を始めた。卵から卵黄を二十個ばかし取り出し、鍋の中に入れてよくかき混ぜる。流石にこの数の卵を一度に溶いたことは初めてだったので手がかなり痺れる。陶器のカップで二十杯分の獣乳と砂糖を加えて、弱火でゆっくりと掻き混ぜた。
十分ほど暖めた後、このプリンの溶液を、プリン専用の粗布でこしながら(カラメルソースの入った)容器に移し替える。それを水を敷いた鍋に容器を並べて、フタをして蒸す。
「プリンが出来たの! ねえ、プリン早く食べよう」
今まで黙って俺の作業を見ていたチックが、堰を切ったように喋り出す。
「慌てるな、ここからもう少し時間が掛かるからもう少し待て」
「何年も待てないの!」
俺はそれを聞いて、訂正するのも面倒臭いのでプリンが固まるまで口を閉じた。鍋から盛れる湯気を見ると不思議とワクワクする。蓋をずらし中の様子を覗くと。プリンが良い感じで固まってきた。
鍋から熱々の容器を取り出し、台に並べる。プリンは湯気を上げながら、美味しそうに出来上がる。
「ふひゃーーーあっ!!」
チックが悲鳴を上げた。
「熱い! おっちゃんが意地悪した」
涙目でチックは俺を睨みつけた。
「馬鹿な奴だな……これを冷やさないと完成しない」
俺はチックがプリンに顔を突っ込んで大惨事になることを想像して、後からゾッとした……。
冷蔵庫にプリンをギッチリと詰めた後、頭に妖精を乗せて風呂に入る。湯船に浸かりながら、背泳ぎしている妖精をぼんやり長めて一日の疲れを癒す。もちろん全部間違っていることは、理解している。突っ込んだら負けなので、自分が茹で上がるまで風呂に浸かっていた。
二人してフラフラしながら風呂から上がると、三人の雛鳥が家に帰っていた。
「お疲れ。飯を用意するので、早く風呂に入れよ」
「「「ふあーい」」」
気の抜けた返事が返ってくる。プリン作りでかなり疲れたので、味噌をベースに野菜と肉をぶち込んだ鍋を作る。以前はこれでも喜んで食べていたが、悲しいかな、近頃はおっちゃんが手を抜いた料理だと文句を言われたりする。
テーブルの中央に大きな鍋を一つ置き、四人分の取り皿を並べる。日本に住んでいたときには、友人や会社の飲み会以外で、鍋をつつくことはしなくなった。当たり前のように彼女たちと食卓を囲んで飯を取っている事が、夢ではないかと温めのプリンを頬張っているチックを見ながら思った……。
「美味しいです!! プリンは至高の食べ物です」
青いゴミバケツの中に、首を突っ込んで残飯をあさる野良犬を彷彿させる。
「そんなに慌てて食べなくても、逃げやしないさ」
小説やドラマでしか使わない台詞が俺の口からこぼれ落ちた。
「ふはーーっ、幸せです! ここは桃源郷ですか」
異世界の妖精が桃源郷って!? と、野良妖精を見ながら吹き出した。
いつの間にか二つ目のプリンに挑戦しているフードファイター。身体の大きさから鑑みれば、一つのプリンでも大きすぎるのに、四つはいけると五月蠅く騒いだ。完食は無理だと思ったが、このままのペースで食べ続ければ、雛鳥たちが食卓に着く前にチックの食事が終わりそうだった。
「「「「お疲れーーーー」」」」
俺たちが鍋をつつき始めると、チックは俺の膝元で幸せそうに眠りこけていた。彼女の腹は幼女のようにお腹がぽっこりと膨らんだイカ腹になっている。俺はべとべとになったチックの身体を、テーブルふきで綺麗に拭き取ってやった。
「酒が切れたから、おっちゃん頼む!」
レイラがおっさんの様に、空になったカップをゆらゆらと左右に振った。
「わりーが、見ての通り動けないので、自分で取りに行ってくれ」
レイラは此奴、なに言ってるの……という冷たい表情を作り席を立つ――
――「どれだけプリン作ってんだよ!」
と、台所の奥から彼女の突っ込みが聞こえた。
いつものように風呂に火を入れ、台所で調理を始めた。卵から卵黄を二十個ばかし取り出し、鍋の中に入れてよくかき混ぜる。流石にこの数の卵を一度に溶いたことは初めてだったので手がかなり痺れる。陶器のカップで二十杯分の獣乳と砂糖を加えて、弱火でゆっくりと掻き混ぜた。
十分ほど暖めた後、このプリンの溶液を、プリン専用の粗布でこしながら(カラメルソースの入った)容器に移し替える。それを水を敷いた鍋に容器を並べて、フタをして蒸す。
「プリンが出来たの! ねえ、プリン早く食べよう」
今まで黙って俺の作業を見ていたチックが、堰を切ったように喋り出す。
「慌てるな、ここからもう少し時間が掛かるからもう少し待て」
「何年も待てないの!」
俺はそれを聞いて、訂正するのも面倒臭いのでプリンが固まるまで口を閉じた。鍋から盛れる湯気を見ると不思議とワクワクする。蓋をずらし中の様子を覗くと。プリンが良い感じで固まってきた。
鍋から熱々の容器を取り出し、台に並べる。プリンは湯気を上げながら、美味しそうに出来上がる。
「ふひゃーーーあっ!!」
チックが悲鳴を上げた。
「熱い! おっちゃんが意地悪した」
涙目でチックは俺を睨みつけた。
「馬鹿な奴だな……これを冷やさないと完成しない」
俺はチックがプリンに顔を突っ込んで大惨事になることを想像して、後からゾッとした……。
冷蔵庫にプリンをギッチリと詰めた後、頭に妖精を乗せて風呂に入る。湯船に浸かりながら、背泳ぎしている妖精をぼんやり長めて一日の疲れを癒す。もちろん全部間違っていることは、理解している。突っ込んだら負けなので、自分が茹で上がるまで風呂に浸かっていた。
二人してフラフラしながら風呂から上がると、三人の雛鳥が家に帰っていた。
「お疲れ。飯を用意するので、早く風呂に入れよ」
「「「ふあーい」」」
気の抜けた返事が返ってくる。プリン作りでかなり疲れたので、味噌をベースに野菜と肉をぶち込んだ鍋を作る。以前はこれでも喜んで食べていたが、悲しいかな、近頃はおっちゃんが手を抜いた料理だと文句を言われたりする。
テーブルの中央に大きな鍋を一つ置き、四人分の取り皿を並べる。日本に住んでいたときには、友人や会社の飲み会以外で、鍋をつつくことはしなくなった。当たり前のように彼女たちと食卓を囲んで飯を取っている事が、夢ではないかと温めのプリンを頬張っているチックを見ながら思った……。
「美味しいです!! プリンは至高の食べ物です」
青いゴミバケツの中に、首を突っ込んで残飯をあさる野良犬を彷彿させる。
「そんなに慌てて食べなくても、逃げやしないさ」
小説やドラマでしか使わない台詞が俺の口からこぼれ落ちた。
「ふはーーっ、幸せです! ここは桃源郷ですか」
異世界の妖精が桃源郷って!? と、野良妖精を見ながら吹き出した。
いつの間にか二つ目のプリンに挑戦しているフードファイター。身体の大きさから鑑みれば、一つのプリンでも大きすぎるのに、四つはいけると五月蠅く騒いだ。完食は無理だと思ったが、このままのペースで食べ続ければ、雛鳥たちが食卓に着く前にチックの食事が終わりそうだった。
「「「「お疲れーーーー」」」」
俺たちが鍋をつつき始めると、チックは俺の膝元で幸せそうに眠りこけていた。彼女の腹は幼女のようにお腹がぽっこりと膨らんだイカ腹になっている。俺はべとべとになったチックの身体を、テーブルふきで綺麗に拭き取ってやった。
「酒が切れたから、おっちゃん頼む!」
レイラがおっさんの様に、空になったカップをゆらゆらと左右に振った。
「わりーが、見ての通り動けないので、自分で取りに行ってくれ」
レイラは此奴、なに言ってるの……という冷たい表情を作り席を立つ――
――「どれだけプリン作ってんだよ!」
と、台所の奥から彼女の突っ込みが聞こえた。
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