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第百四十二話 貴方に惹かれて
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「キュピピピー」と鳴きながら、ソラが俺の胸にしがみついて甘えている。これが夢だということが不思議と分かる。その心地よい微睡の中で、突如、痛みに見舞われた。
パシン!!――
「ぐへーーっ」
口から、蛙が踏み潰されたような声を発する……。
俺は顔に平手打ちをくらう――それは悪戯にしてはあまりにも痛かったので、すごい剣幕で怒鳴り散らす。しかし部屋の中には誰もいなかった……。夢かと思い頬を触ると、まだ痛みがしっかりと残っている。
レイラの悪戯かと疑って、もう一度部屋を見回したが、人がいる気配が全くしなかった。昨日は彼女と朝まで飲み明かしたので、酒のせいにすることにして、もう一度布団を被った。
「早く起きなさいよ、このおっさん!」
俺の頭の上から甲高い声が聞こえてくる。目を開けると小さな人形が、羽音を立てながら空中で浮いていた。その人形を捕まえようと手を伸ばすと、人形は天井近くまで移動した。幻覚を見るほどの酒が残っている……俺は人形が見えていない体で、目を閉じた 。
ずしっ!!――
今度は腹に痛みが走る。俺の腹の上には、腕組みをしながら、緑色した短髪の人形が俺を睨みつけていた。目を凝らしてよく見ると、人形からトンボのような羽が生えているのが分かった。
「何してやがる!」
人形に怒りの言葉をぶつけた。
「やっと起きたわね人間、こんなおっさんに当たるなんて最悪だわ」
小さな人形は、俺に悪態をついていた。何からツッコんで良いかわからず、まずはベッドから起き上がることにした。その拍子に、俺の腹の上に乗っていた人形はバランスを崩して、布団に突っ伏した。ベッドで藻掻いている人形を無視して部屋を出る。
洗面所で顔を洗いサッパリしてから部屋に戻ると、人形が羽をばたつかせ空中を飛んでいた。どうやら酒の飲み過ぎの幻想ではないらしい――
どうせ関わると碌でもないことに巻き込まれるので、人形に手招きして玄関を開け帰って貰うことに決めた。
「なに追い出そうとしてるの!? 私は虫ではありません! 可愛い妖精のチックちゃんです」
俺は玄関先で頭を抱えてうずくまる。
「悪いが帰ってくれないか、可愛い顔したチックちゃん」
しっしっと、手で追い払うような仕草をした。
「馬鹿なことを言わないでよ! 私を呼んだのは貴方なんだから」
妖精は身体を小さく揺らしてぷりぷりと怒っている。そして、開いた玄関の前に置いてあった(梵天の花が浮いた)桶を指差した。
「すまんが、それはキャンセルでお願いします」
俺はわざとらしく頭を深々と下げてお詫びした。
「そんなこと出来るわけ無いじゃない……私は貴方に幸せをあげないと帰れないのよ!!」
「じゃあ、さっさと幸せを置いて仕事を済ませばいい」
勝手に何でもしてくれと言わんばかりに、投げやりな態度を妖精に取った。
「うーーん……直ぐにとはいかないわ。なんせ貴方は不幸の塊なんですもの。とりあえず名前を教えて頂戴、おっさんでいいならそう呼ぶけど」
「静岡音茶だ、おっちゃんで名前が通っている」
「暫くの間、おっちゃんよろしくね」
そう言って、チックと名乗った妖精は部屋の奥に飛んで行ってしまった……。
パシン!!――
「ぐへーーっ」
口から、蛙が踏み潰されたような声を発する……。
俺は顔に平手打ちをくらう――それは悪戯にしてはあまりにも痛かったので、すごい剣幕で怒鳴り散らす。しかし部屋の中には誰もいなかった……。夢かと思い頬を触ると、まだ痛みがしっかりと残っている。
レイラの悪戯かと疑って、もう一度部屋を見回したが、人がいる気配が全くしなかった。昨日は彼女と朝まで飲み明かしたので、酒のせいにすることにして、もう一度布団を被った。
「早く起きなさいよ、このおっさん!」
俺の頭の上から甲高い声が聞こえてくる。目を開けると小さな人形が、羽音を立てながら空中で浮いていた。その人形を捕まえようと手を伸ばすと、人形は天井近くまで移動した。幻覚を見るほどの酒が残っている……俺は人形が見えていない体で、目を閉じた 。
ずしっ!!――
今度は腹に痛みが走る。俺の腹の上には、腕組みをしながら、緑色した短髪の人形が俺を睨みつけていた。目を凝らしてよく見ると、人形からトンボのような羽が生えているのが分かった。
「何してやがる!」
人形に怒りの言葉をぶつけた。
「やっと起きたわね人間、こんなおっさんに当たるなんて最悪だわ」
小さな人形は、俺に悪態をついていた。何からツッコんで良いかわからず、まずはベッドから起き上がることにした。その拍子に、俺の腹の上に乗っていた人形はバランスを崩して、布団に突っ伏した。ベッドで藻掻いている人形を無視して部屋を出る。
洗面所で顔を洗いサッパリしてから部屋に戻ると、人形が羽をばたつかせ空中を飛んでいた。どうやら酒の飲み過ぎの幻想ではないらしい――
どうせ関わると碌でもないことに巻き込まれるので、人形に手招きして玄関を開け帰って貰うことに決めた。
「なに追い出そうとしてるの!? 私は虫ではありません! 可愛い妖精のチックちゃんです」
俺は玄関先で頭を抱えてうずくまる。
「悪いが帰ってくれないか、可愛い顔したチックちゃん」
しっしっと、手で追い払うような仕草をした。
「馬鹿なことを言わないでよ! 私を呼んだのは貴方なんだから」
妖精は身体を小さく揺らしてぷりぷりと怒っている。そして、開いた玄関の前に置いてあった(梵天の花が浮いた)桶を指差した。
「すまんが、それはキャンセルでお願いします」
俺はわざとらしく頭を深々と下げてお詫びした。
「そんなこと出来るわけ無いじゃない……私は貴方に幸せをあげないと帰れないのよ!!」
「じゃあ、さっさと幸せを置いて仕事を済ませばいい」
勝手に何でもしてくれと言わんばかりに、投げやりな態度を妖精に取った。
「うーーん……直ぐにとはいかないわ。なんせ貴方は不幸の塊なんですもの。とりあえず名前を教えて頂戴、おっさんでいいならそう呼ぶけど」
「静岡音茶だ、おっちゃんで名前が通っている」
「暫くの間、おっちゃんよろしくね」
そう言って、チックと名乗った妖精は部屋の奥に飛んで行ってしまった……。
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