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第六十九話 希望の光
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タリアの町の裏通りをテトラと二人で歩く。通りを歩く人々はみな小汚い衣服を身にまとっている。彼女は薄汚れた商店が立ち並ぶ町並みを楽しそうに見物している。怪しげな飾り物や織物、継ぎ接ぎだらけの衣服の類いに、革細工や食料品など、エルフの国ではあまり見かけない商品を見ながら目を輝かせた。
「こんな小汚い店や建物を見て楽しいものか?」
「ええ、とっても楽しいわ! こういう事をしたくて家を出たんだから」
そう言って、テトラはにこりと微笑んだ。
今回の目的は別にあるが、道すがら彼女の機嫌が良くなれば悪いことではない。そうした中で、清楚な佇まいをしている一件の薬屋に入る。テトラは店内に入ると、顔を歪めてしかめっ面になった。俺は苦笑いしながら
「薬草の匂いだ」
「そういえばミントの匂いが混じっている」
徐々に店内の香りになれてきたらしい。店の奥からチェルシーが車椅子をギコギコ押しながら不機嫌そうな顔をして出てきた。
「今日は赤の日じゃないぞ……客でもないんじゃろ」
彼女のぼやきを聞き流し
「すまないがこいつについて頼みがあり来たのよ」
つつつとテトラの背を前に押し出す。
「どうせ厄介ごとだろうけど、話ぐらい聞いてやるわ」
俺は急いで用件を切り出した。
「エルフ国の行き方と、彼女に魔法を教えて欲しい」
「ククク、そんな事をわしに聞いても分かろう筈もないじゃろ、耳が尖っているからといってエルフでもあるまいし」
「婆、エルフだろ! 」
眉間にしわをよせ顔色が変わった。
「何故わしがエルフだと!?」
少しだけ語気を荒げ尋ねてきたので、俺はゆっくりとその問いに答えた。
「プリンを食べているときたまにあんたの耳が、大きく見えるときがあったのよ。最初は見間違いだと気にもとめなかったが、起伏が上がったときぼやっと耳が変化してるみたいだ……これって認識魔法か変化の一つじゃないのか? それともう一つ、初めてここを訪れたときから違和感があった。お店に積まれた商品の数々が、車いすから到底届かない高さにまで積まれて、綺麗に並べられていたからな」
「そんなことは簡単さね、人に手伝って貰えばこれぐらいの整理はすぐに出来る」
「まあ、普通は人に頼るよね。だけどここに来てから、お手伝いさんを一度も見ていないし、何度か食事をともにしたからこそ判ることだが、薬品や薬草をを他人に触られたくないだろ」
チェルシーは、ほうっと小さく感嘆の吐息を洩らす。
「若造に見破られているとは、わしもまだまだ甘いと言うことか」
俺はテレサとの出会いや関係を、簡単に説明しもう一度お願いした。
「私……テトラと申します、すいませんお婆さん……私に帰り道と魔法を教えて下さい」
そう言って、ぺこりとお辞儀をした。
「まいったねぇ~、同胞から頭を下げられちゃ断れないよ。ただ、ガッカリさせちゃあ悪いから先に言うけど、わしは魔物の森を通ってここまで来たんじゃないよ。人国を転々と旅をしながらここに辿り着いたのさ。足を壊してここが終着点なんで、エルフ国の帰り道は教えられないよ。それでも良いなら金貨二十枚で引き受けけてやるぞ」
「それでも助かる!」
俺はチェルシーに大きく頭を下げた。
店を後にした俺たちは、たわいもない話をしながら露店を見回る。安価な食べ物を扱う店が雑多に並んでいる。匂いにつられて一軒の屋台に目をやる。鉄板の上でジュージューと音を出しながら、怪しげな肉が香ばしい匂いを漂わせていた。彼女が物欲しそうな顔をして覗き込む。懐から銅貨を数枚店主に支払い、串に刺された熱々の肉を彼女に手渡した。
「そんなに食べたそうな顔をしてましたか?」
「いや、俺が食べたいから買ったんだ」
彼女は両手で串を持ち。美味しそうに頬張る。
「ん~おいひい!」
可愛いは正義だな! ありきたりな感想を口には出さず、もぐもぐ口を動かすエルフを見つめる。
幾つか露天の屋台で買い食いしながら過ぐる日、妹と一緒に夜店の屋台でリンゴ飴やたこ焼きを食べたことを思い出す。
「チェルシーさんって、最初は怖い人かと思ったけどやさしいお婆さんだったね」
「口は悪いが根は優しい婆だな、ツンデレよ!」
「ツンデレってどういう意味なの?」
「普段はツンと冷たい態度を取っているのに、ふとした時にデレっと甘えてくる婆のことを俺の故郷ではそう呼ぶのさ」
肩をすくめながら説明した。
「じゃあ、おっちゃんもツンデレだね」
彼女はにこやかに笑った。
「俺はデレデレだぜ」
なぜか身体をもじもじさせながら、彼女の顔は真っ赤になった。
いくぶん日が落ちてきた裏通りを抜けると、薄暗く汚れた町並みが不思議と明るく見えた――
※ 第12話の「繋がる世界」に色々伏線を含ませ書いていましたので、よければ見て下さい。
「こんな小汚い店や建物を見て楽しいものか?」
「ええ、とっても楽しいわ! こういう事をしたくて家を出たんだから」
そう言って、テトラはにこりと微笑んだ。
今回の目的は別にあるが、道すがら彼女の機嫌が良くなれば悪いことではない。そうした中で、清楚な佇まいをしている一件の薬屋に入る。テトラは店内に入ると、顔を歪めてしかめっ面になった。俺は苦笑いしながら
「薬草の匂いだ」
「そういえばミントの匂いが混じっている」
徐々に店内の香りになれてきたらしい。店の奥からチェルシーが車椅子をギコギコ押しながら不機嫌そうな顔をして出てきた。
「今日は赤の日じゃないぞ……客でもないんじゃろ」
彼女のぼやきを聞き流し
「すまないがこいつについて頼みがあり来たのよ」
つつつとテトラの背を前に押し出す。
「どうせ厄介ごとだろうけど、話ぐらい聞いてやるわ」
俺は急いで用件を切り出した。
「エルフ国の行き方と、彼女に魔法を教えて欲しい」
「ククク、そんな事をわしに聞いても分かろう筈もないじゃろ、耳が尖っているからといってエルフでもあるまいし」
「婆、エルフだろ! 」
眉間にしわをよせ顔色が変わった。
「何故わしがエルフだと!?」
少しだけ語気を荒げ尋ねてきたので、俺はゆっくりとその問いに答えた。
「プリンを食べているときたまにあんたの耳が、大きく見えるときがあったのよ。最初は見間違いだと気にもとめなかったが、起伏が上がったときぼやっと耳が変化してるみたいだ……これって認識魔法か変化の一つじゃないのか? それともう一つ、初めてここを訪れたときから違和感があった。お店に積まれた商品の数々が、車いすから到底届かない高さにまで積まれて、綺麗に並べられていたからな」
「そんなことは簡単さね、人に手伝って貰えばこれぐらいの整理はすぐに出来る」
「まあ、普通は人に頼るよね。だけどここに来てから、お手伝いさんを一度も見ていないし、何度か食事をともにしたからこそ判ることだが、薬品や薬草をを他人に触られたくないだろ」
チェルシーは、ほうっと小さく感嘆の吐息を洩らす。
「若造に見破られているとは、わしもまだまだ甘いと言うことか」
俺はテレサとの出会いや関係を、簡単に説明しもう一度お願いした。
「私……テトラと申します、すいませんお婆さん……私に帰り道と魔法を教えて下さい」
そう言って、ぺこりとお辞儀をした。
「まいったねぇ~、同胞から頭を下げられちゃ断れないよ。ただ、ガッカリさせちゃあ悪いから先に言うけど、わしは魔物の森を通ってここまで来たんじゃないよ。人国を転々と旅をしながらここに辿り着いたのさ。足を壊してここが終着点なんで、エルフ国の帰り道は教えられないよ。それでも良いなら金貨二十枚で引き受けけてやるぞ」
「それでも助かる!」
俺はチェルシーに大きく頭を下げた。
店を後にした俺たちは、たわいもない話をしながら露店を見回る。安価な食べ物を扱う店が雑多に並んでいる。匂いにつられて一軒の屋台に目をやる。鉄板の上でジュージューと音を出しながら、怪しげな肉が香ばしい匂いを漂わせていた。彼女が物欲しそうな顔をして覗き込む。懐から銅貨を数枚店主に支払い、串に刺された熱々の肉を彼女に手渡した。
「そんなに食べたそうな顔をしてましたか?」
「いや、俺が食べたいから買ったんだ」
彼女は両手で串を持ち。美味しそうに頬張る。
「ん~おいひい!」
可愛いは正義だな! ありきたりな感想を口には出さず、もぐもぐ口を動かすエルフを見つめる。
幾つか露天の屋台で買い食いしながら過ぐる日、妹と一緒に夜店の屋台でリンゴ飴やたこ焼きを食べたことを思い出す。
「チェルシーさんって、最初は怖い人かと思ったけどやさしいお婆さんだったね」
「口は悪いが根は優しい婆だな、ツンデレよ!」
「ツンデレってどういう意味なの?」
「普段はツンと冷たい態度を取っているのに、ふとした時にデレっと甘えてくる婆のことを俺の故郷ではそう呼ぶのさ」
肩をすくめながら説明した。
「じゃあ、おっちゃんもツンデレだね」
彼女はにこやかに笑った。
「俺はデレデレだぜ」
なぜか身体をもじもじさせながら、彼女の顔は真っ赤になった。
いくぶん日が落ちてきた裏通りを抜けると、薄暗く汚れた町並みが不思議と明るく見えた――
※ 第12話の「繋がる世界」に色々伏線を含ませ書いていましたので、よければ見て下さい。
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