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第五十七話 今夜は修学旅行のように【後編】
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俺は手札の中からダイヤとスペード3のカードを二枚を場に捨てる。テレサ、ルリが続いて5、6の二枚のカードを被せてきた。最後にレイラがQのカードを二枚切り親になった。
レイラはハートの3を場に出した。俺がダイヤの5を無難に選んだ。ゲームはここから動き出す――
「ハチキリ」
ルリはスペードの8を場に捨て自分の親を呼んだ。
「8を切るのが早すぎじゃねーのか?」
揺さぶりをかけた。ルリは返事をかえさず静かに4を出す。そこから5、7、9、J.Q、Kと場にカードが溜まった。
「Aを切ります!」
テレサは三人の顔を見ながらカードを重ねた。
「パス……」
「すまないね~」
言葉とは裏腹に笑いながらスペードの2をレイラが出した。その瞬間テレサの身体がビクンと震えた。
「すまん、俺も謝るな」
そう言って手札からジョーカーを俺は切った。
「おっちゃん! 」
部屋に悲痛な声が響く。
「自業自得」
ルリがクスクス笑う。手札から10を二枚切るとテレサとルリが11、13のカードが続いて切られた。ここで親がルリに移った空気になった。しかし、そのカードの上にA二枚が力強く被せられる。レイラは勝ち誇った顔をして次のカードを捨てようとした。
「まだこれより強いカードがあると思わねーか?」
レイラの顔が青ざめた。俺はウヒヒと笑いながら最強のカード2を二枚切りした。
「めちゃくちゃじゃねーか!」
レイラが俺を睨み付けた。
「8二枚とJで一抜けだな」
レイラがぽかんとした顔をして、俺の捨てたカードを見続ける。
「見事というか、意地が悪いというか……」
テレサはそういってダイヤの2を切り、しれっと6のカードを三枚手札から出した。ルリはその上に9のカードを三枚乗せる。レイラとテレサがパスを出した。
テレサの手札が三枚、ルリの手札が三枚、レイラの手札が5枚と最後の攻防が始まる。
ルリがハートの6を切った。レイラはその手札を見て長考する、そして意を決して
「ハチキリだ!」
ハートの8を場に出し親を呼び込んだ、そして7のカードを二枚切った。
「良いカードを切ってくれた」
テレサは微笑を浮かべて10のカードを7に被せた。ルリとレイラの手札からカードは切られなかった……。
「2抜けですね」
そういって最後のカード3を場に出した。ルリとレイラのカードはお互いに二枚となる。ルリはスペードのQを二枚のカードから選んだ。レイラも手札からKを出した。
俺たちは最後の一瞬に息を飲む――
ルリが開いたカードはクラブのAだった。
「あー負けた」
レイラの最後の手札はクラブの4だった。
「あれ? ルリはクローバーのAを先に出してから、スペードのQを出した方が良かったのに」
テレサの言う通り、もしレイラがAのカードを持っていればルリは勝ちを逃したことになる。
「レイラが手のひらで踊るところが見たかった」
俺とテレサは吹き出した。
「おま、おまえーーーー」
レイラは顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。大貧民というゲームはここからが本番なのである。四人に均等に配られたカードから、レイラはおっちゃんに手持ちのカードの中から一番良いカードを二枚手渡す。
「フヒヒヒヒ、良きかな良きかな」
俺は3と4のカードをレイラに渡す。彼女は手にしたカードを見ながら、一言も発せずただ渋い顔をするだけだった。テレサもルリとお互いにカードを一枚ずつ交換してゲームが始まった。結果はもちろん俺のワンサイドゲーム。階級は変わらず3回戦が始まった……。
「レイラさんや何か忘れていませんか?」
手のひらを上に向けピラピラさせてカードを催促する。
「クッ……」
俺の手札にジョーカーと2が加わった。俺は彼女に屑カードを手渡した。今回もレイラは何も出来ないままゲームが終わった。
「ちくしょー」
彼女はカードをばらまき、大皿のお菓子に手を伸ばした。ピシャリ! 俺は彼女の手を叩いた。
「何しやがんだ!」
「大貧民の分際で、このお皿に触るとは何事ですか!」
俺は女口調でレイラを叱咤した。そして彼女の尻に敷いていた座布団を引き抜き、自分の座布団に重ねる。その行動を汲み取ったテレサがルリから座布団を引き抜き自分が座る。
「下々の分際は床に座るのがお似合いですわ」
「お願い……お菓子だけでも欲しいの」
ルリがわざと悲しそうな声で哀願した。
「仕方がない貧乏人め、このお菓子をくれてやる」
俺は皿からお菓子を摘んでルリに手渡す。レイラはようやくこのゲームの本質を理解したようだ。しかし、手札の強い二枚のカードを失い、最弱なカードを増やした彼女が上に行くことが出来ない。ゲームがルリとテレサが入れ替わるくらいだ……。
「貴族の旦那。……後生ですから5を下さいまし……」
大貧民を続けるレイラが頭を下げて懇願してきた。
「仕方がないの~これでパンでも買いなさい」
そう言って俺はレイラにクラブの5を手渡した。ぎらりと肉食獣の目が光る……。レイラは最初からなけなしの大きなカードを切り始めた。自暴自棄な行動を俺は冷ややかな顔をしながら目を細める。
「ハチキリだ! で……おっちゃん死にさらせ!」
レイラは8のカードを場に出し、5のカードを4枚場に並べて
「革命!」
声高らかにレイラの咆哮が部屋に響いた。俺はガックシ頭を垂れたままカードを切った
「革命返し」
4のカードを4枚、革命カードの上に静かに被せてあげた。レイラを除いた三人は大爆笑する。彼女は駄札を持ったまま床に突っ伏した……。
雨の夜長「うすのろ」と「大貧民」のヘビーローテーションでトランプ三昧の日々を過ごし、長かった修学旅行も雨雲が消えたとき終わりを迎えた。
レイラはハートの3を場に出した。俺がダイヤの5を無難に選んだ。ゲームはここから動き出す――
「ハチキリ」
ルリはスペードの8を場に捨て自分の親を呼んだ。
「8を切るのが早すぎじゃねーのか?」
揺さぶりをかけた。ルリは返事をかえさず静かに4を出す。そこから5、7、9、J.Q、Kと場にカードが溜まった。
「Aを切ります!」
テレサは三人の顔を見ながらカードを重ねた。
「パス……」
「すまないね~」
言葉とは裏腹に笑いながらスペードの2をレイラが出した。その瞬間テレサの身体がビクンと震えた。
「すまん、俺も謝るな」
そう言って手札からジョーカーを俺は切った。
「おっちゃん! 」
部屋に悲痛な声が響く。
「自業自得」
ルリがクスクス笑う。手札から10を二枚切るとテレサとルリが11、13のカードが続いて切られた。ここで親がルリに移った空気になった。しかし、そのカードの上にA二枚が力強く被せられる。レイラは勝ち誇った顔をして次のカードを捨てようとした。
「まだこれより強いカードがあると思わねーか?」
レイラの顔が青ざめた。俺はウヒヒと笑いながら最強のカード2を二枚切りした。
「めちゃくちゃじゃねーか!」
レイラが俺を睨み付けた。
「8二枚とJで一抜けだな」
レイラがぽかんとした顔をして、俺の捨てたカードを見続ける。
「見事というか、意地が悪いというか……」
テレサはそういってダイヤの2を切り、しれっと6のカードを三枚手札から出した。ルリはその上に9のカードを三枚乗せる。レイラとテレサがパスを出した。
テレサの手札が三枚、ルリの手札が三枚、レイラの手札が5枚と最後の攻防が始まる。
ルリがハートの6を切った。レイラはその手札を見て長考する、そして意を決して
「ハチキリだ!」
ハートの8を場に出し親を呼び込んだ、そして7のカードを二枚切った。
「良いカードを切ってくれた」
テレサは微笑を浮かべて10のカードを7に被せた。ルリとレイラの手札からカードは切られなかった……。
「2抜けですね」
そういって最後のカード3を場に出した。ルリとレイラのカードはお互いに二枚となる。ルリはスペードのQを二枚のカードから選んだ。レイラも手札からKを出した。
俺たちは最後の一瞬に息を飲む――
ルリが開いたカードはクラブのAだった。
「あー負けた」
レイラの最後の手札はクラブの4だった。
「あれ? ルリはクローバーのAを先に出してから、スペードのQを出した方が良かったのに」
テレサの言う通り、もしレイラがAのカードを持っていればルリは勝ちを逃したことになる。
「レイラが手のひらで踊るところが見たかった」
俺とテレサは吹き出した。
「おま、おまえーーーー」
レイラは顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。大貧民というゲームはここからが本番なのである。四人に均等に配られたカードから、レイラはおっちゃんに手持ちのカードの中から一番良いカードを二枚手渡す。
「フヒヒヒヒ、良きかな良きかな」
俺は3と4のカードをレイラに渡す。彼女は手にしたカードを見ながら、一言も発せずただ渋い顔をするだけだった。テレサもルリとお互いにカードを一枚ずつ交換してゲームが始まった。結果はもちろん俺のワンサイドゲーム。階級は変わらず3回戦が始まった……。
「レイラさんや何か忘れていませんか?」
手のひらを上に向けピラピラさせてカードを催促する。
「クッ……」
俺の手札にジョーカーと2が加わった。俺は彼女に屑カードを手渡した。今回もレイラは何も出来ないままゲームが終わった。
「ちくしょー」
彼女はカードをばらまき、大皿のお菓子に手を伸ばした。ピシャリ! 俺は彼女の手を叩いた。
「何しやがんだ!」
「大貧民の分際で、このお皿に触るとは何事ですか!」
俺は女口調でレイラを叱咤した。そして彼女の尻に敷いていた座布団を引き抜き、自分の座布団に重ねる。その行動を汲み取ったテレサがルリから座布団を引き抜き自分が座る。
「下々の分際は床に座るのがお似合いですわ」
「お願い……お菓子だけでも欲しいの」
ルリがわざと悲しそうな声で哀願した。
「仕方がない貧乏人め、このお菓子をくれてやる」
俺は皿からお菓子を摘んでルリに手渡す。レイラはようやくこのゲームの本質を理解したようだ。しかし、手札の強い二枚のカードを失い、最弱なカードを増やした彼女が上に行くことが出来ない。ゲームがルリとテレサが入れ替わるくらいだ……。
「貴族の旦那。……後生ですから5を下さいまし……」
大貧民を続けるレイラが頭を下げて懇願してきた。
「仕方がないの~これでパンでも買いなさい」
そう言って俺はレイラにクラブの5を手渡した。ぎらりと肉食獣の目が光る……。レイラは最初からなけなしの大きなカードを切り始めた。自暴自棄な行動を俺は冷ややかな顔をしながら目を細める。
「ハチキリだ! で……おっちゃん死にさらせ!」
レイラは8のカードを場に出し、5のカードを4枚場に並べて
「革命!」
声高らかにレイラの咆哮が部屋に響いた。俺はガックシ頭を垂れたままカードを切った
「革命返し」
4のカードを4枚、革命カードの上に静かに被せてあげた。レイラを除いた三人は大爆笑する。彼女は駄札を持ったまま床に突っ伏した……。
雨の夜長「うすのろ」と「大貧民」のヘビーローテーションでトランプ三昧の日々を過ごし、長かった修学旅行も雨雲が消えたとき終わりを迎えた。
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