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第三十五話 ババンババンバンバン【アビバノンノン】

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 食材を買いに商店を巡る。自分が食べるだけの食材を買うつもりだったのが、赤い髪の雛鳥を思い出して、倍以上の量を抱えていた自分に苦笑する。誰も居ない家に一人で「ただいま」と言って入ったのは久しぶりの事だった。

 浴槽に水を汲む作業で疲れたので、直ぐに料理をつくる気にもなれず床に寝転ぶ。天井を見上げながら、日本にいた事を思い出す。頭の中に浮かんだのは、積んでいるゲームやマンガのことしかない事に恥ずかしさを覚えた。旅の疲労が抜けきっていなかったのか、いつのまにかうたた寝をしていた。
 
 ふと、視線を感じて目を開けるとレイラが顔を近づけて俺を見ていた。

「おっちゃん起きたんだ……」

「どうやってはいったんだ?」

「合い鍵で入ったけど」

 それが何かという感じで答えられてしまうと、何も言い返す事は出来なかった。久しぶりにあった彼女に、何か気の利いた言葉を掛けようとしたが何も思いつかない。

「飯でも作るか……」

 そんなつまらないセリフしか出てこなかった。

ルリ・・がなかなか帰ってこないから心配してたんだぞ」

「おまえはどうなんだ?」

「知るか馬鹿ッッ!」

 プイと横を向き、彼女の顔が茹で蛸のように真っ赤になる。

「心配してくれてありがとな」

「心配なんかしてね―し」

 そういって俺の胸を軽く小突いた。俺は痛くもないはずの胸がズキンと感じた。

                      *     *     *

 二人で湯槽に浸かる。日本に住んでいるときには物語の中での出来事のはずだった混浴が、彼女が風呂に入ってきても前ほどは驚かなくなった。褐色の肌が密着して、温かい風呂なのに彼女の温もりが伝わる。二人で湯槽がすし詰めになるほど小さな風呂ではない。彼女が挑発するようにわざと当てているのが分かる。俺のドギマギした姿を楽しんでいるのだ。俺は挑発に乗せられそうになったが、浴槽についている小さな突起をスライドさせ、中にあるボタンを押す。お湯の中から小さな気泡が溢れ出る。

「エェエーーーッ、何に……なんなのよ!」

 レイラが目を丸くしながら、湯槽の水をすくう。指から流れ落ちるそれはただの水に変わる。しばらくして泡の感触を楽しみ始める。

「ん……ああああぁ」

 彼女の湿った柔い唇から吐息が漏れる。俺は嫌らしい顔をしながらもう一つのボタンを押す。

「ふひゃぁあ」

 今まで聞いた事のない奇声が風呂場に響く。浴槽はボコボコと泡を立てながら、身体全体に水流が当たる。

「ちょ、ちょっとやめて……」

 背中や腰以外の変なところにまで、こしょばったいバブルの力がかかる。俺にもその力は掛かっているのだが、彼女の痴態を見たいが為に我慢する。容赦ない水圧が下半身に襲いかかる。

「ふあぁ……だめ……。き、気持ちいいの」

 風呂の力に屈するレイラ……。ジェット噴流が疲れの溜まった筋肉を揉みほぐす。どさくさ紛れに尻をなで回すと、とろりとした目でこちらを睨む姿に背徳感を楽しむ。俺は止めとばかし最後の仕掛けを動かす。

「ふひやぁーん」

 レイラは今まで感じた事のない刺激に悶える。風呂から逃げようと身体動かそうとしたが、おっちゃんの腕にガッチリホールドされていた。いつもならこんな腕ぐらい簡単に振り解けるのだが、風呂から流れる刺激に全く力が入らない。

「や、やめろ……馬鹿!」

 精一杯の抵抗を見せるが、どうする事も出来ない。びりびりとした刺激が身体全体を包み込む。泡の刺激と不思議な痺れに脳が追いつかない。ただ、身体だけがビクビクと反応してしまう。

「はぁあああああ」

 最初は痛かったはずの刺激が快感に変わっていくの分かる。知らない間におっちゃんにしがみつき、甘い吐息をついていた。はち切れんばかりの褐色のボディを優しく撫で回しながら、彼女にマッサージを続ける。

「んあ……あ…ああっ」
 
 彼女の半開きに開いた口からヨダレが垂れる。目は完全にうつろになり、さすがの俺もやり過ぎたと慌てる。自分より大きな身体の彼女を慌てて抱え風呂から上がった。脱衣所で湯だった彼女を仰ぎながら少しだけ反省した。

 その後、元気を取り戻したレイラに、正座をさせられしこたま怒られた。
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