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ラブスターミッション11

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*** *** ***

 現在、このトルコ辺境の村は静まり返っている。午後十時だ。我々は村長の執務室に居る。私、ジョーは、この任務を任されて当惑している。だが、ベストを尽くすしかない。となりにいるギャルソンは、国連軍では百戦錬磨の英雄だ。彼はサイバーグラスというデバイスで最先端の国連軍の情報網と超電脳にアクセス出来る、・・・はずだったのだが、この土地の環境が影響して、やや電波障害が起きている。我々の行動をアドバイスしてくれる超電脳システムが頼りにならなくなっているとすれば、我々はかなりヤヴァイ状況にある。ギャルソンのとなりには、この事件に突然同行することになったモモというギャルソンのガールフレンドが居る。彼女は情報のプロ並のテクニックを持ってはいるが、この状況ではそれもあまり役に立たなくなっている・・・。モモはここに来る前に手に入れたらしいアオザイを着ている。ギャルソンはライダースーツ・・・。私はロックシンガーのような服のまま来てしまった。我々三人を見たら、ほぼ我々が国連軍のシークレットチームとは思わないだろう。それがいいのかもしれないのだ。
 村長は汗を流しながら、手を震わせて言う、「多くの、ここの村民が拉致され、居なくなっている! 彼らを助け出してくれ。主犯格は、魔仮面の男だ・・・。頼む・・・。」



 私は答える。
「ベストを尽くすつもりだ。」

 その夜は、我々は村長の客間に通され食事に招かれ、宿泊し休んだ。明日は、午前には出発だ。しかし、グローバルネットワークに接続できない今、そう、超電脳の助けがない今の我々は、・・・魔仮面の男が陣取るエリアに到達するには、地図を見ながら、そこへ向かうしかないのだ!

 このミッションのコードネームは、『ザ・ラブスター・ミッション』、・・・つまり、愛の惑星・作戦だ。この愛の星、地球、・・・そう、この愛の惑星、地球の平和をつくっていくためのミッションなのだ、だが、らくじゃない。ふふふ、THE LOVE STAR MISSION ・・・、いい名前だ。好きだよ。

---魔仮面の基地へ---

 夜が明けた。午前。我々は村を出た。全面戦争は避けたい。拉致された村民を解放できるならそれでよい。まず、秘かに魔仮面の基地エリアに侵入して、なんとかうまく拉致された村民の現在の状況を把握し、解放したい。
 まず、村の外に停めてある我々の特殊ジープの処へ向かう。
 ジープの場所へ行く間には、この地域の遺跡などが点在していた。東洋と西洋が出会う、この地、このバルカンにも近い地域には多くの遺跡があるのだ。山などを見ていると、どこか広東の丘のようにも見える。東洋の古墳地域にも似ている。ここは、独特なのかもしれない。朝鮮半島の景色のようにも見えたりするのだ。この村のエリアはその意味で幻想的だ。村の周囲に砂嵐が起きているためかもしれない。断続的に砂嵐が発生しているようだ。私は砂漠は嫌いではない。アラビアのローレンスが砂漠を愛した、という感情が少しは分かる。我々三人は、すこし丘になっているところの草むらをかき分けて進んだ。丘の上から、ジープが見えた。丘には予期せず、あの男が居た。
 オレンジボーイだ。
「やあ、あんたらは、国連軍からきたんだろ。特殊な任務をもってね・・・。僕はさ、村長は少年、・・・なんていうけど、ほんとうは大人さ。十九歳になる。これまで隠していたけどね、僕は村長の息子さ。まあ、それはそれで面倒な立場さ。わかってくれよ。なんで、ここまでアンタらを追って来たかっていうとね、・・・そう、土地勘さ。アンタらはプロかもしれねぇ。でもさ、僕はここの住民なんだ。何年もくらしてる。土地勘がある。それで、アンタらの手助けをしたいんだ。そうさ、この、愛の惑星のために! そうだろ。あんたらのミッション、たしか、愛の星・作戦っていったな、それだよ。僕もさ、この愛の星のために君らをアシストしたいんだ・・・!」
 そういう、オレンジボーイだった。それで、私は「サンキュー・ベリマッチ!」と答えた。それは、私の本心だった。これはきっとユースフルだ。オレンジボーイは我々の土地勘の無さを見抜いていた。なかなかやるね、この少年、・・・いや青年は。私もまた、じつにつっけんどんな性格もあるため、そんな簡素な礼しか言えなかった。
 とりあえず、我々は、まずジープに戻る必要がある。いろんな道具が置いてあることや、ランチもまたそこにあるから。

オレンジボーイ「おい、どこに行くんだ?」

 私は言った、「私たちは、あのジープに食料を置いてあるんだ。ランチさ。まず、ランチを食べる。」
 オレンジボーイは頷いた。オレンジボーイもまた、あまりトークに華が咲くタイプじゃないらしい。オレンジボーイは、我々を見つめ、・・・そして見送り、そして、またどこかへ消えた。

 我々は、ジープのトランクからフードコンテナを出し、ランチとした。青いランチョンマットも入っていた。国連で用意してくれたものだ。天候はかなり平常に戻っていた。・・・だが、あいかわらず、我々のポータブル電脳は、本部の超電脳に繋がらなかった。電波がかなりダウンしている。仕方ないな、・・・そう思い、ランチを食べながらこの辺りの地図を見た。
 しばらくして、ふと、バイクの音が近づいてきた。何だ?
 目の前のちょっとした丘に、あのオレンジボーイが、ラジカセを肩に抱えて、ホンダのバイクでやって来たのだ。ラジカセからは、黒人霊歌・ゴスペルが流れている。なにか、こころに響いてくる。バイクのエンジンを止めると、オレンジボーイは喋る。
「やあ、また会ったな。さっきさ、ちょっとアンタらが塞いでたって、思ったんだ。でさ、これを持って来たぜ。あついミュージックさ。今のアンタらに必要なのは、こんな音楽なんだ。すこし、音楽を聴いてリラックスさ。すこし楽しむのサ! ファン、ファン、ファンさ! すこしはいいだろう? 今からそっちへ行く」オレンジボーイは、そういいながら、我々を指さした。
「サンキュー!」とギャルソン。ギャルソンも、オレンジボーイに向って指さした。ギャルソンはなかなかノリのいい男だ。
 オレンジボーイは、その場にラジカセを置いて、バイクのエンジンブレーキで降りてくると、我々の側にやって来た。ラジカセはサウンドを鳴らし続けていた。アメリカ南部のブルースが聴こえ始めた。ラジカセにはどうやら、オレンジボーイがエディティングしたカセットテープが入っているようだ。そういえば、この村の産業のひとつが、エレクトリック産業だった。最新のエレクトロニクスで製造されたカセットテープ・ラジカセか。おもしろい。私は初めて見るものだった・・・・・・・。村の様子と、村の産業がかなり差異を持ったイメージだった。それもおもしろい。こうしたアジアがこれから増えていくだろう。私は近づいたオレンジボーイのバイクに、駆け寄った。オレンジボーイはバイクのライト点灯をオフにした。
 ラジカセは、次のサウンドを鳴らし始めた。それは、どうやら、ナトゥと呼ばれるインド亜大陸のサウンドのようだ。かなりノリのよいミュージック。
 私は「いいものを持ってきてくれて、ありがとう」と礼を言った。
 オレンジは一瞬照れ笑いを浮かべた。それから、言った。
「ジョー、聞いてくれ。あんたは、あの、魔仮面の基地をめざしてるんだろ? 分かってる。 僕は、あの魔仮面の基地の場所までいく、秘密のルートを知っているよ。夏も雪の降る山を越えるんだ。だが、そこだって、危険な道かもしれない・・・。なにかウェポンが必要かもしれない。しかし、そこを越える他は不可能だ・・・・・・。」
 私はそれを聞いて、ひとつ銃をポケットに入れた。これは、小さいがかなりの破壊力があり、トラック一台くらいなら命中すれば吹き飛ぶ。通常の販路では買えない代物だ。
 インド亜大陸のサウンド、ナトゥは、ハイパーなウェイブをブーストし始めた。ギャルソンとモモは、たまらなくなり、踊り始めた。丘の上で・・・。 サウンドは木霊する。丘の上に置かれたラジカセ、サウンドブースターは天空に向って木霊する。幻想のダンス。かれらの全てはダンスに集中する。全身の力を込めて、ギャルソンとモモはダンスを爆発させたのだ!


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