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第三章
3-6 世界の解像度
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それからしばらくはダウターと共にたくさんの世界を巡った。転生者が救いようのないクズだった場合は僕も彼を手伝う事はあったが、基本的には転生者をどうこうするよりも、環境や生態系などを調べる事に注力していた。
ダウターは転生世界は地球のコピーだと言っていた。たくさんの世界で同じような物理法則になったりするのはおかしいと。しかし、もし存在する全ての転生世界が、地球と同じ宇宙上に存在しているのならばどうだろうか?
同一宇宙に存在しているのなら、物理法則は統一されていてもおかしくないはずだ。宇宙の広さが無限であるならば、そこにいくつ転生世界が存在してようと全く問題ない。
もちろん地球と同様の環境で、同種の生命体が同じように繁殖する可能性というのは限りなく低いと考えられるが、宇宙の広さと転生世界がそれぞれ無限であるならば、確率の低さは無視できる。
(でも……)
多くの世界を回っていくら調べても、地球に存在しない種の生態系が一切解明できなかった。
ある世界でハーピーという、身体が鳥で頭が人間のモンスターを三日ほどずっと観察していたが、それらは狩りや食事を行わず、ただ生きてその辺りをうろうろとしているだけであった。一体倒して腹を裂いてみたら、中には内臓のようなものはなく、お飾り程度に骨が配置されているだけだった。
地球に存在しない鉱石の一つである『アダマンタイト』は、いくらスキルを使って解析しても『アダマンタイトである。とても硬い』としか表記されず、加工方法や具体的な硬さがわからない。街に行けば加工品や装備として取引をされているのだが、入手経路は完全に不明でほとんどが古代の遺物やマジックアイテムと称されているだけだ。
ダンジョンに潜ればモンスターが出てくる。自分の全能を駆使し、相手を倒さず攻撃をかわし続けていると彼らは攻撃を一生続けるか逃げるかしかしてこない。逃げたモンスターを追おうとしても、いつの間にか何の痕跡もなく忽然と彼らは消えるのだ。
これが兎や鉄のような地球にも存在するものであれば、彼らの解像度ははるかに鮮明になる。
兎は草を食み、こちらが音を立てれば耳を立てて立ち上がり周りを警戒する、腹を裂けば口から肛門まで内臓がきちんと配置され、骨格も普段の姿勢に忠実だ。
鉄は砂鉄や鉄鉱石からきちんと製錬され、加工方法や鋼のような合金も製法が確立している。
(転生世界がコピーをいじったおもちゃであることは間違いないようだ……)
正直に言って薄々は感じていた。転生世界で起こる出来事は何もかも雑だ。こうして転生世界を渡り歩くとその全てが適当であることがよくわかる。
転生者がそれに気づけないのは仕方がない。転生世界は転生者の望む世界なのだから、自分の思い通りになっている世界をわざわざ疑ったり調べたりする必要はない。しかしどうして天聖者がそれを疑問に思わない?
「な、だいたいわかったやろ」
いつの間にかダウターが隣に来て笑っていた。
「一回エルフの村でなんか楽器を演奏してるところに出くわしたことあるけどな、なんでか楽譜にちゃんとあのオタマジャクシがいっぱい書き込まれてたで。人間と全く違う文化持ってるはずやのにドレミファソラシドは一緒って笑ってもうたわ」
「……確かに転生世界についてはダウターさんの予想が正しそうですけどね、そのほかに関してはまだ何もわかりませんから」
「ハハハ、そうそう。いっぱい考えていっぱい調べてくれや。全能なんて便利道具あるんやから、俺なんかよりなんぼでも調査とか上手やろしな」
彼は僕の肩をポンポンと叩く。
「とはいえ今日の調査はこれでしまいや。そろそろ転生者のとこに向かおやないか」
「コネクターさんがいないと転生者の場所とか人柄調べるのにも一苦労ですね」
そう、あの西洋人形のような少女がいない時は、僕たちは手探りで目的の人を探す必要がある。とはいえ転生者はその世界ではかなり異質な存在で目立ちやすいし、導きの門は目的の相手と距離的に近かったり縁のある場所につなげてくれるので、足跡を追うのはそこまで難しくない。
「今回の相手はどんな人なんですか?」
僕の質問にダウターは顔をしかめる。
「いやあ、めちゃめちゃよく出来た人やで。女手一つで孤児院を切り盛りしてる女傑でな、何十人ものみなしごを抱えながら昼も夜もなく働いて、空いた時間で勉強やら教えてるらしいわ」
「え……、どんな能力なんですかね?」
「それが誰に聞いても特別な何か能力使ってるようには思えんのよな。急に空から降りてきたらしいから、それがなけりゃただの働き者の善人や」
「……転生者だったらこの人も殺すんですか?」
「殺す」
言い切るダウターを強くにらむ。
「何故?」
「こういう転生者はまじでさっさと死んだ方がいい。それが本人の為や」
「説明を」
大剣を召喚する。探知スキルで周囲をくまなく観察し、彼がお得意のフィールドを飛ばしていない事を確認した。
「……歩きながら話すか」
「転生世界は転生者の望み通りに弄られていくのは納得したな?」
「……はい。ほぼほぼ間違いないでしょう」
「じゃあこういう『人を助けたい』って善人が転生したら一体世界はどう変えられるんやろうか?」
「それは…………」
「人を助けるために必要なもんは何や?」
「人を助けたいという意志では?」
「ちゃう」
「……お金?」
「まあ金も絶対いるけどな。そういう話じゃないねん」
「うーん……抽象的で難しいですね」
「ちっとも抽象的やあらへん。めちゃくちゃ具体的や。じゃあ逆に世界がどうなったら人を助ける事が不可能になる?」
「滅亡とか……?」
「そらもう世界の終わりやんけ」
「降参です」
「いつもはもっと悩んでるところ見て笑うんやけどな。これはちょっと毛色が違うから教えたる。斬り殺されたくもないしな」
僕は出したままにしていた大剣を消す。
「転生者が人を助けるためにはな、助けられる為の可哀そうな人が必要なんや」
「え……、つまり……」
「そう。転生者が人を助けたいと強く願えば願うほど、助けが必要な人間がどんどん増えていくんや。地獄やろ? 自分は一生懸命人を助けてるんやけどな、やればやるほど不幸な人間が生まれていく」
「そんな……」
「調べてみんとわからんけど、この孤児院の近くでは出生不明の孤児が他の都市より何倍も多く出てるはずや」
……まるで賽の河原の石積みだ。助けても助けても、転生世界はそれをあざ笑うかのように孤児を生み出していく。しかもその原因は人を助けたいと願っている転生者だなんて。
「人を助けたいとか願ってる転生者はな、なるべく早く俺らが殺したったほうがええんや。転生者が何も知らん幸せな内にな……」
ダウターが本当につらそうな顔をして笑った。彼が人より何倍も優しいのはよく理解している。こういった場面に出会うたびに、彼はこうして泣きながら笑って生きてきたのだろうか。
「ほら、話してる間についたぞ」
いつの間にか僕たちは小さな町に到着していた。町の周りはほとんどが農地で、随分とのどかな風景が広がっている。
「とりあえずその孤児院に行ってみよか」
僕たちは服装を地味な物に変える。小さな町であるからか関所や門番のような者もおらず、何の問題もなく中に入ることができた。舗装されているような道もなく、町というよりは大きめの農村といったところだろうか。
すれ違う人たちは初めて見る来訪者にも怯えることなく、町の事を親切に教えてくれた。孤児院の事を聞いた時だけ、村人は嫌な笑い方をしてジロジロとこちらを見てきたが、その理由はわからなかった。
彼の案内通りに進むと、村の中心から随分外れた場所に、どうやら目的の孤児院らしき建物が見つかる。
古い教会のようなその建物の外では、擦り切れてはいるものの清潔そうな服を着た子供たちが何人も、それぞれめいめいの方法で遊んでいた。
しばらくその景色を眺めていると、教会から二十代ほどの若い女性が大きな鍋をガンガンと鳴らしながら出てきた。子供たちはその女性にワッと集まり、みんなで仲良く教会の中へ入って行く。
「先生…………?」
ダウターが立ち尽くすようにその光景をじっと眺めていた。
ダウターは転生世界は地球のコピーだと言っていた。たくさんの世界で同じような物理法則になったりするのはおかしいと。しかし、もし存在する全ての転生世界が、地球と同じ宇宙上に存在しているのならばどうだろうか?
同一宇宙に存在しているのなら、物理法則は統一されていてもおかしくないはずだ。宇宙の広さが無限であるならば、そこにいくつ転生世界が存在してようと全く問題ない。
もちろん地球と同様の環境で、同種の生命体が同じように繁殖する可能性というのは限りなく低いと考えられるが、宇宙の広さと転生世界がそれぞれ無限であるならば、確率の低さは無視できる。
(でも……)
多くの世界を回っていくら調べても、地球に存在しない種の生態系が一切解明できなかった。
ある世界でハーピーという、身体が鳥で頭が人間のモンスターを三日ほどずっと観察していたが、それらは狩りや食事を行わず、ただ生きてその辺りをうろうろとしているだけであった。一体倒して腹を裂いてみたら、中には内臓のようなものはなく、お飾り程度に骨が配置されているだけだった。
地球に存在しない鉱石の一つである『アダマンタイト』は、いくらスキルを使って解析しても『アダマンタイトである。とても硬い』としか表記されず、加工方法や具体的な硬さがわからない。街に行けば加工品や装備として取引をされているのだが、入手経路は完全に不明でほとんどが古代の遺物やマジックアイテムと称されているだけだ。
ダンジョンに潜ればモンスターが出てくる。自分の全能を駆使し、相手を倒さず攻撃をかわし続けていると彼らは攻撃を一生続けるか逃げるかしかしてこない。逃げたモンスターを追おうとしても、いつの間にか何の痕跡もなく忽然と彼らは消えるのだ。
これが兎や鉄のような地球にも存在するものであれば、彼らの解像度ははるかに鮮明になる。
兎は草を食み、こちらが音を立てれば耳を立てて立ち上がり周りを警戒する、腹を裂けば口から肛門まで内臓がきちんと配置され、骨格も普段の姿勢に忠実だ。
鉄は砂鉄や鉄鉱石からきちんと製錬され、加工方法や鋼のような合金も製法が確立している。
(転生世界がコピーをいじったおもちゃであることは間違いないようだ……)
正直に言って薄々は感じていた。転生世界で起こる出来事は何もかも雑だ。こうして転生世界を渡り歩くとその全てが適当であることがよくわかる。
転生者がそれに気づけないのは仕方がない。転生世界は転生者の望む世界なのだから、自分の思い通りになっている世界をわざわざ疑ったり調べたりする必要はない。しかしどうして天聖者がそれを疑問に思わない?
「な、だいたいわかったやろ」
いつの間にかダウターが隣に来て笑っていた。
「一回エルフの村でなんか楽器を演奏してるところに出くわしたことあるけどな、なんでか楽譜にちゃんとあのオタマジャクシがいっぱい書き込まれてたで。人間と全く違う文化持ってるはずやのにドレミファソラシドは一緒って笑ってもうたわ」
「……確かに転生世界についてはダウターさんの予想が正しそうですけどね、そのほかに関してはまだ何もわかりませんから」
「ハハハ、そうそう。いっぱい考えていっぱい調べてくれや。全能なんて便利道具あるんやから、俺なんかよりなんぼでも調査とか上手やろしな」
彼は僕の肩をポンポンと叩く。
「とはいえ今日の調査はこれでしまいや。そろそろ転生者のとこに向かおやないか」
「コネクターさんがいないと転生者の場所とか人柄調べるのにも一苦労ですね」
そう、あの西洋人形のような少女がいない時は、僕たちは手探りで目的の人を探す必要がある。とはいえ転生者はその世界ではかなり異質な存在で目立ちやすいし、導きの門は目的の相手と距離的に近かったり縁のある場所につなげてくれるので、足跡を追うのはそこまで難しくない。
「今回の相手はどんな人なんですか?」
僕の質問にダウターは顔をしかめる。
「いやあ、めちゃめちゃよく出来た人やで。女手一つで孤児院を切り盛りしてる女傑でな、何十人ものみなしごを抱えながら昼も夜もなく働いて、空いた時間で勉強やら教えてるらしいわ」
「え……、どんな能力なんですかね?」
「それが誰に聞いても特別な何か能力使ってるようには思えんのよな。急に空から降りてきたらしいから、それがなけりゃただの働き者の善人や」
「……転生者だったらこの人も殺すんですか?」
「殺す」
言い切るダウターを強くにらむ。
「何故?」
「こういう転生者はまじでさっさと死んだ方がいい。それが本人の為や」
「説明を」
大剣を召喚する。探知スキルで周囲をくまなく観察し、彼がお得意のフィールドを飛ばしていない事を確認した。
「……歩きながら話すか」
「転生世界は転生者の望み通りに弄られていくのは納得したな?」
「……はい。ほぼほぼ間違いないでしょう」
「じゃあこういう『人を助けたい』って善人が転生したら一体世界はどう変えられるんやろうか?」
「それは…………」
「人を助けるために必要なもんは何や?」
「人を助けたいという意志では?」
「ちゃう」
「……お金?」
「まあ金も絶対いるけどな。そういう話じゃないねん」
「うーん……抽象的で難しいですね」
「ちっとも抽象的やあらへん。めちゃくちゃ具体的や。じゃあ逆に世界がどうなったら人を助ける事が不可能になる?」
「滅亡とか……?」
「そらもう世界の終わりやんけ」
「降参です」
「いつもはもっと悩んでるところ見て笑うんやけどな。これはちょっと毛色が違うから教えたる。斬り殺されたくもないしな」
僕は出したままにしていた大剣を消す。
「転生者が人を助けるためにはな、助けられる為の可哀そうな人が必要なんや」
「え……、つまり……」
「そう。転生者が人を助けたいと強く願えば願うほど、助けが必要な人間がどんどん増えていくんや。地獄やろ? 自分は一生懸命人を助けてるんやけどな、やればやるほど不幸な人間が生まれていく」
「そんな……」
「調べてみんとわからんけど、この孤児院の近くでは出生不明の孤児が他の都市より何倍も多く出てるはずや」
……まるで賽の河原の石積みだ。助けても助けても、転生世界はそれをあざ笑うかのように孤児を生み出していく。しかもその原因は人を助けたいと願っている転生者だなんて。
「人を助けたいとか願ってる転生者はな、なるべく早く俺らが殺したったほうがええんや。転生者が何も知らん幸せな内にな……」
ダウターが本当につらそうな顔をして笑った。彼が人より何倍も優しいのはよく理解している。こういった場面に出会うたびに、彼はこうして泣きながら笑って生きてきたのだろうか。
「ほら、話してる間についたぞ」
いつの間にか僕たちは小さな町に到着していた。町の周りはほとんどが農地で、随分とのどかな風景が広がっている。
「とりあえずその孤児院に行ってみよか」
僕たちは服装を地味な物に変える。小さな町であるからか関所や門番のような者もおらず、何の問題もなく中に入ることができた。舗装されているような道もなく、町というよりは大きめの農村といったところだろうか。
すれ違う人たちは初めて見る来訪者にも怯えることなく、町の事を親切に教えてくれた。孤児院の事を聞いた時だけ、村人は嫌な笑い方をしてジロジロとこちらを見てきたが、その理由はわからなかった。
彼の案内通りに進むと、村の中心から随分外れた場所に、どうやら目的の孤児院らしき建物が見つかる。
古い教会のようなその建物の外では、擦り切れてはいるものの清潔そうな服を着た子供たちが何人も、それぞれめいめいの方法で遊んでいた。
しばらくその景色を眺めていると、教会から二十代ほどの若い女性が大きな鍋をガンガンと鳴らしながら出てきた。子供たちはその女性にワッと集まり、みんなで仲良く教会の中へ入って行く。
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