206 / 207
ヒトのキョウカイ7巻(シャロンの扉)
28 (なろう転生)
しおりを挟む
11月21日金曜日…。
ナオ、クオリア、レナ、ジガ、カナリアさんの5人が エレベーターで地上に上がり、レトロな見た目のエレカに乗って目的地に向かう…。
オレとジガ、カナリアさんは黒色のローブをまとい…他のクオリア、レナはそのままだ…。
目的地は、黄泉比良坂…。
地上のドームの外円部にある葬儀場だ。
見慣れない言葉に検索を掛けようかと思った瞬間、サポートAIがデータをオレに渡してくれる…。
黄泉比良坂は日本神話に出てくる『あの世とこの世』の境目にある坂らしい…。
あの世にも国境線があるのか…。
エレカが 目的地に到着して ナオ達は 車から降りる…。
黄泉比良坂は草が生えている丘の上に立っていて 外観は教会風の建物になっている…。
オレ達は丘の坂を上る…もしかして ここから先はあの世か?
ナオ達はガラス製のスライドドアの出入り口から中に入った…。
中は 砦学園都市の教会と比べ横にサイズが大きく、また見送りのヒトが来ていない。
まぁ当たり前か…身寄りとか頼る者がいないから 人生が詰んで ここに来ている訳だし…。
「よく来てくれました。」
ロビーでソファーに座っていた スーがオレ達を見て立ち上がる…。
「どれくらいの数がいるんだ?」
自殺者が全くいないロビーを見てオレが聞く…。
「今日は100人ですね。
今、控室で最後の昼食を取っている頃ですよ…。」
「今日は…か…こんな事を毎日やっているのか?」
「毎日ではありませんが…最近はそうですね…。
今日で エクスプロイトウイルスでの経済的自殺者はこれで最後です。
ここで送ったのは2万人程でしょうか?」
「そうか…。」
程ね…人命だってのにトップが正確な数を知らないのかよ。
オレは右横を見ると分厚いガラス張りの大きな窓を見る…中にはリクライニングチェアが設置され、後ろに大きなサーバーが見える…。
多分あれが自殺用の装置だ。
「自殺プランは 本人の希望にそう形になりますが、最近は『なろう転生』と呼ばれる物が流行ってますね…。」
『なろう転生』か…この時代までこのワードが生きているとはな…。
あ~そう言えば ここは日本か…まぁ全く実感は無いが…。
「自殺者を電子化して 量子通信でエクスマキナ都市のエクスマキナに送信して、容姿などのキャラ設定にスキル、ギフトなどの特殊能力を受け取り、自殺者個人の為だけに作られた世界に送られ、そこで余生を過ごすのです…。」
「桃源郷システムの亜種か…。」
「ええ…結局の所…生命維持コストが高い労働者と、電気と軽いメンテナンスで動くドラムとでは 明らかにドラムの方が労働賃金が安くなる事は明白ですから…。
なので、人とドラムが競争をした場合、100%の敗北が待っています。
ですが、この『なろう世界』なら、本気で競争をしている訳では無くプレイヤーを中心に世界が運営っているので、プレイヤーだけの能力で十分に生きて行く事が出来ます…。
特に最近は『人工知能など不要』とアンチテクノロジー主義の世界を作る人が多いですね…。」
スーが少し笑いなが言う…。
「は?人工知能が制御する仮想世界で『アンチ人工知能』を主張するのかよ…。」
「ええ…現実世界では まず不可能ですから…。
先日のように シンギュラリティガードのテロリストとして、周りに被害を出すよりかは、随分とマシだと思いますよ…。」
「確かにそうか…。」
少なくとも本人が自分の幸福を考えての選択だ。
絶望による自殺よりかは 遥かにマシかな…。
ナオ達ガラス張りの窓の前のソファーに座る…。
向こうには、3つの黄泉比良坂があり、ドラムが自殺者をリクライニングチェアに座らせ、頭にヘッドセットを被らせて、ヘッドセットに繋がっているボタンを自殺者に握らせる。
ドラムは道具の為『殺人』も『殺人ほう助』も出来ない…。
なので、最後のトリガーはヒトが押す必要がある。
自殺者は握っているボタンを迷いなく押し、仮想空間に向けて旅立った。
抜け殻は 力なくリクライニングチェアに倒れ、顔は満足げな笑みを浮かべており、ドラムがその抜け殻を抱え隣のローラーに乗せる…。
ローラーの奥の扉が上に開き、ローラーが回って抜け殻が運ばれて行く…。
抜け殻がリサイクル炉に落とされ、いずれこの都市の何らかの資源として循環するだろう…。
そして次のヒト…。
「結局、全員は救えませんでした…。」
カナリアさんが言う…。
「でも、自殺に迷いのある人は救われました…。
ここに残るのは意志の固いヒトだけですよ。」
カナリアさんはガラスに手を当てて、効率よく処理されている自殺者を聞る。
自殺者は躊躇する事 無くボタンを押して行く…。
そこには自殺する事への固い意志が感じられ…強要されたのではなく、自分の意志でボタンを押している…。
オレは その意志を尊重しようと思った…少なくともこのヒト達には…。
自殺者が効率よくエクスマキナに送られて行く…そろそろ全員だ。
死んだ抜け殻がどれも満足げな顔なのが、それがせめてもの救いだろう…。
葬儀が終わり、最後に皆で エクスマキナに送られた魂が快適な日々を送れるように、それぞれの出身都市の文化で祈った…。
とは言え、加速している内部時間では もう数千年が経過していて 祈る魂が残っているか どうか怪しいのだが…。
ナオ、クオリア、レナ、ジガ、カナリアさんの5人が エレベーターで地上に上がり、レトロな見た目のエレカに乗って目的地に向かう…。
オレとジガ、カナリアさんは黒色のローブをまとい…他のクオリア、レナはそのままだ…。
目的地は、黄泉比良坂…。
地上のドームの外円部にある葬儀場だ。
見慣れない言葉に検索を掛けようかと思った瞬間、サポートAIがデータをオレに渡してくれる…。
黄泉比良坂は日本神話に出てくる『あの世とこの世』の境目にある坂らしい…。
あの世にも国境線があるのか…。
エレカが 目的地に到着して ナオ達は 車から降りる…。
黄泉比良坂は草が生えている丘の上に立っていて 外観は教会風の建物になっている…。
オレ達は丘の坂を上る…もしかして ここから先はあの世か?
ナオ達はガラス製のスライドドアの出入り口から中に入った…。
中は 砦学園都市の教会と比べ横にサイズが大きく、また見送りのヒトが来ていない。
まぁ当たり前か…身寄りとか頼る者がいないから 人生が詰んで ここに来ている訳だし…。
「よく来てくれました。」
ロビーでソファーに座っていた スーがオレ達を見て立ち上がる…。
「どれくらいの数がいるんだ?」
自殺者が全くいないロビーを見てオレが聞く…。
「今日は100人ですね。
今、控室で最後の昼食を取っている頃ですよ…。」
「今日は…か…こんな事を毎日やっているのか?」
「毎日ではありませんが…最近はそうですね…。
今日で エクスプロイトウイルスでの経済的自殺者はこれで最後です。
ここで送ったのは2万人程でしょうか?」
「そうか…。」
程ね…人命だってのにトップが正確な数を知らないのかよ。
オレは右横を見ると分厚いガラス張りの大きな窓を見る…中にはリクライニングチェアが設置され、後ろに大きなサーバーが見える…。
多分あれが自殺用の装置だ。
「自殺プランは 本人の希望にそう形になりますが、最近は『なろう転生』と呼ばれる物が流行ってますね…。」
『なろう転生』か…この時代までこのワードが生きているとはな…。
あ~そう言えば ここは日本か…まぁ全く実感は無いが…。
「自殺者を電子化して 量子通信でエクスマキナ都市のエクスマキナに送信して、容姿などのキャラ設定にスキル、ギフトなどの特殊能力を受け取り、自殺者個人の為だけに作られた世界に送られ、そこで余生を過ごすのです…。」
「桃源郷システムの亜種か…。」
「ええ…結局の所…生命維持コストが高い労働者と、電気と軽いメンテナンスで動くドラムとでは 明らかにドラムの方が労働賃金が安くなる事は明白ですから…。
なので、人とドラムが競争をした場合、100%の敗北が待っています。
ですが、この『なろう世界』なら、本気で競争をしている訳では無くプレイヤーを中心に世界が運営っているので、プレイヤーだけの能力で十分に生きて行く事が出来ます…。
特に最近は『人工知能など不要』とアンチテクノロジー主義の世界を作る人が多いですね…。」
スーが少し笑いなが言う…。
「は?人工知能が制御する仮想世界で『アンチ人工知能』を主張するのかよ…。」
「ええ…現実世界では まず不可能ですから…。
先日のように シンギュラリティガードのテロリストとして、周りに被害を出すよりかは、随分とマシだと思いますよ…。」
「確かにそうか…。」
少なくとも本人が自分の幸福を考えての選択だ。
絶望による自殺よりかは 遥かにマシかな…。
ナオ達ガラス張りの窓の前のソファーに座る…。
向こうには、3つの黄泉比良坂があり、ドラムが自殺者をリクライニングチェアに座らせ、頭にヘッドセットを被らせて、ヘッドセットに繋がっているボタンを自殺者に握らせる。
ドラムは道具の為『殺人』も『殺人ほう助』も出来ない…。
なので、最後のトリガーはヒトが押す必要がある。
自殺者は握っているボタンを迷いなく押し、仮想空間に向けて旅立った。
抜け殻は 力なくリクライニングチェアに倒れ、顔は満足げな笑みを浮かべており、ドラムがその抜け殻を抱え隣のローラーに乗せる…。
ローラーの奥の扉が上に開き、ローラーが回って抜け殻が運ばれて行く…。
抜け殻がリサイクル炉に落とされ、いずれこの都市の何らかの資源として循環するだろう…。
そして次のヒト…。
「結局、全員は救えませんでした…。」
カナリアさんが言う…。
「でも、自殺に迷いのある人は救われました…。
ここに残るのは意志の固いヒトだけですよ。」
カナリアさんはガラスに手を当てて、効率よく処理されている自殺者を聞る。
自殺者は躊躇する事 無くボタンを押して行く…。
そこには自殺する事への固い意志が感じられ…強要されたのではなく、自分の意志でボタンを押している…。
オレは その意志を尊重しようと思った…少なくともこのヒト達には…。
自殺者が効率よくエクスマキナに送られて行く…そろそろ全員だ。
死んだ抜け殻がどれも満足げな顔なのが、それがせめてもの救いだろう…。
葬儀が終わり、最後に皆で エクスマキナに送られた魂が快適な日々を送れるように、それぞれの出身都市の文化で祈った…。
とは言え、加速している内部時間では もう数千年が経過していて 祈る魂が残っているか どうか怪しいのだが…。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
Unlimited Possibilities Online
勾陣
SF
超人気VRMMO【Unlimited Possibilities Online】専用のヘッドギアを、気まぐれに応募した懸賞でうっかり手に入れてしまった主人公がのんびりと?‥マイペースで楽しむお話し?
※R15、残酷な描写ありは保険です
初投稿です
作者は超絶遅筆です
督促されても更新頻度が上がることはありません
カクヨム様、小説家になろう様にも重複投稿してます
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる