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ヒトのキョウカイ5巻 (亡霊再び)

23 (豚に真珠 猫に小判 原始人にデバイス)

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 翌日…。
 アイオーン都市と学園都市、研究都市の許可が下り、技術交流が正式に開始された。
 ハンガーには キョウカイ小隊とフェニックス小隊が集まり、メカニックのラズロとマリアに ファントムのデータのコピーを渡し、変わりにフェニックスのデータを貰う。
 ラズロとマリアは パイプ椅子に座り、データを確認する。
「へえ…人が作ったにしては良い出来じゃない…。」
 マリアがコードを流し読みしながら言う。
「だけどよー…。
 何でわざわざ DL用のコンバーターを作って、無理やり変換しているんだ?
 コンバーターなんていらねーだろう」
 ラズロが ナオに修正前と修正後のデータを見せて言う。
「ああ…そこは ややこしくなるから、変数を分けてる…。
 直接の方が処理が良いんだろうけど、DLのメカニックがOPTIONオプションいじる時に必要なんだ…。
 表層側が DLのコードで動いていた方が、メカニックもいじりやすそうだし」
「スペックが ギリギリのキューブを使ってるってのに…そこは切り詰めないんだな…。」
「まぁな…見た限り、空間ハッキングで使っている言語は同じだよな…。
 なら そっちにも、コンバーターを入れてくれないか?
 アンタらは良くても実戦配備した時にメカニックが一から覚え直さないと行けなくて泣かれるぞ…。」
「ふむ…優秀なオレらには 馬鹿の発想は出来ねーか…。
 後で入れて見て、適当なメカニックに触らせてみるか?」
 いちいち気に障る言い方だが、お国柄と言う事で受け流す。
「頼む…それと…こっちが必要なのは…これはライフルに剣か?
 武器もキューブから召喚出来る見たいだな…。」
「ああ…それ 現場で壊れても直せるし、弾も自前で作れるから補給も要らない。
 オマケに射出しているのは ターミナルバレットだから、コードで次第で色々出来るんだな…。」
「あー確かに使えそうだ。」
 弾の補給がしなくて良くなれば、前線に供給する物資を大幅に節約できる。
 そうすれば補給部隊も減らせるし、部隊の機動性も上がるだろう。
「そっちは…ハードポイントが付いているな…。」
「そう…こっちはDL用の武器とミッションパックに対応させている。
 ミッションパックが 防御出来無い欠点はあるんだが、ボックスライフルを使えた方が良いからな…。」
「ならせめて、ターミナルバレットのマガジン製造は入れて置いた方が良いんじゃないか?
 コイルガンならターミナルバレットでも撃てるだろう。」
「容量的に入るのか?」
「マガジンだけなら意外と軽い…ただ製造中は処理が増えて防御が落ちる欠点が出るか…。」
 ラズロが入れた場合の計算をし、答える。
「だろうな…やっぱりスペックが物を言うか…。」
「逆に言えば、スペックさえ解決出来れば 良い機体になるんじゃないか?」
「へえ…褒めるんだ…。」
 ラズロの予想外の言葉にナオが言う。
「確かに出来は良いし、オレらに無い発想もある…特にこれだな…。
 味方機全体で、QEを分散コンピューティングするコード…これで処理の分散して自壊を防ぐ訳だ。
 だが、これフォースネットを利用しているな…電波じゃ遅すぎる。
 これをやるなら量子通信が必須だ…。」
「量子通信か…フェニックスは 部隊間通信が量子通信だよな…。
 繋がりはどうやってるんだ?」
 量子通信は A地点とB地点の空間を繋げる量子もつれの現象を利用した通信の為、実質ノータイムでの通信が可能だ。
 ただ…いくつかの制約があり、その1つが量子の繋がりだ。
 量子もつれを発生させるには 量子の繋がりが必須で、それを行うには一度は物理的に通信機をくっつけて、量子もつれの状態を発生させないと行けない。
 通信機を通して新しい量子の繋がりを現地に発生させる技術もあるので、いくらか制約が緩和されたが、少なくとも最低一度は通信機を現地に送らなければならない。
 この制約があるから、今も都市内は電波と有線通信が主流で都市間の長距離通信の場合にのみ量子通信が使われている。
「オレらの小隊のクリスタルは、オレのクリスタルを分裂させた物だからな…その時に量子の結び付きを持ってる。」
「分裂?」
「ああ…オレらのクリスタルは 量子の結びつきを維持したまま、細胞のように数を増やせる…。
 生成する時には 電気が大量にいるし、ゆっくりなんだけどな…。」
 コピー出来る…これでキューブの生産技術が無くても増やせる。
 量産化には必須の技術だ。
「どの位 掛かる?」
「クリスタルの処理能力に寄るんだが、オレのクリスタルの場合、1時間で2倍だな…。
 つまり、2…4…8で3時間で2つ消して6つ。
 8時間だと256機…今回の1個連隊だと11時間程度か…。」
「栗まんじゅう問題か…。」
「栗まんじゅう?」
「あ、いや…電気が媒体って事は 無限増殖はしないんだよな…。」
「ああ…ただ…そもそも、QEも大きいしデメリットも多いから、データは取れたし そろそろオミットしようって考えている。」
「分裂は量産に必須じゃないのか?」
「それは そっちならな…。
 こっちはデュプリケーターがあるし…そっちの方が早い。」
「デュプリケーター?」
 複製機?
「前に私がパンを作っただろう…学園祭でも花だったりドローンを出したな。
 あれを再現した機械だ。
 つまり、キューブの構成情報を解析して メディアにセーブ…。
 空間にロードして 存在確率を上げて観測すればいい。」
 オレの隣で黙々と作業をしているクオリアが補足する。
「そう…あれなら1分もあれば終わるから、1個連隊とか必要でない限りこっちが早いんだ。
 それに、クリスタル自体のQEを食わないから 他にまわせる…。」
「なら、クオリアが最初から空間ハッキングでキューブを作れば良かったんじゃないか?」
 オレがクオリアに聞く。
 人類側の戦力増強なら、わざわざ研究都市の研究員を使わずとも自分で作れただろう…。
「私が作るだけなら そこまで難しくはない…。
 だが、それだと砦都市民が その技術を受け入れないだろう…。
 人は 新しい物を受け入れる事が難しく、まず排除しようとする。
 安定していた自分の生活が傾く事を嫌う為だ…。
 だからまずは、その技術を受け入れるように下地を作る必要があるんだ。」
「うーん。
 社会に必要とされる需要が無いと…どんなに優れていても買ってくれない…か?
 原始人にデバイスを持たせても鈍器にしかならない…見たいな。」
「それでだいたい合ってる。
 その為に私は 空間ハッキングやファントムの開発に協力していたんだ。」
「へえ…。」

「それじゃあ…入れたヤツを最適化して終了だな…。
 この後どうする?」
 一通りの作業が終わり、ラズロが言う。
「レナ達が模擬戦をやってる見たい出し、参加しようかな…。
 でも機体がな…黒鋼でいくか…。」
 ナオが考え言う。
「何なら、フェニックスを使ってみるか?」
「良いのか?」
「ああ…そのかし、こっちもファントムを使わせて貰う。
 互いの機体を体験出来て良いんじゃねーか?」
「乗りこなせるか、怪しいけどな…。」
 ナオは少し苦笑いしつつ レナの元に向かった。
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