上 下
101 / 207
ヒトのキョウカイ4巻(オレいつの間にか子持ちになっていました。)

11 (突然変異機)

しおりを挟む
 砦祭の準備があるからと言って授業が無くなる訳では無い。
 しかも、講師によっては たまに 無茶苦茶な課題が出されるのだから、本当につらい。
「なぁ…あの課題、どうするよ?」
 時間は放課後…教室からナオとトヨカズを残し 生徒がいなくなった所でトヨカズが言う。
「どうって…無理だろ『DLを強化する為のアイデアを出せ』なんて…。」
 DLは人のように 装備を身に着けて強くなる機体だ。
 それ故《ゆえ》に 外付けで強化をする事は出来ても、DLの中身の構造は2020年の最終型から全然変わっていない…。
 例えば 普通の兵器なら時間と共に技術レベルが上がり、パーツの性能が上がって 兵器自体が時代遅れになり、使われなくなるか、近代化改修の為の開発が行われるだろう。
 が、DLの場合 パーツの規格さえ合っていれば、組み込むだけで機体側がパーツにリミッターをかけて調整してくれる機構がある為、単にパーツを更新するだけで良く、改修に必要な手間が殆《ほとん》ど無い…。
 その為、素材の見直しや プログラムのバージョンアップで 性能が上がっているものの 人自体を規格にしている為、殆《ほとん》ど変わっていない。
 じゃなかったら、580年ぶりにDLに乗ったオレが あんなに簡単に動かせる訳がないんだ。
「え?無理?…結構改造の余地はあると思うんだが…。」
 トヨカズは言う。
「例えば?」
 オレはトヨカズの予想外のセリフに驚きつつ聞く。
「機体にAQBを積んでみるとか…。
 稼働時間と回せる出力が上がるぞ」
 トヨカズは 特に考えも無しに言ってくる。
「確かにそうだが…で、何処どこに積み込む?
 50cmのAQBをDL内に組み込むってスペース上、無理なんだ…。」
 DLの内部の余剰スペースは全くない…。
 本来6m程度サイズになるはずのDLをあちこち切り詰め、4.5mのサイズまで小型化したからだ。
「なら、バックパックシステムBPSに入れて背中に取り付けるしか無いんじゃないか?」
 トヨカズが オレの言っている問題を即座に理解し、代替案を即座に出す。
「現実的な解決策としてそれしか無いんだが 調べた所、AQBは衝撃に弱いらしい。
 背中のAQBが被弾したら、中のパーツが散弾銃の弾の様に音速で飛び散るから、DLの内部パーツを根こそぎ破壊して機能停止になりかねない…。
 出力を上げるだけなら 銃その物に取り付けた方が何かと安全だ。」
「あーだから スナイパーライフルに取り付けられていたのか…。」
「異常が出たら、すぐに捨てて退避たいひ出来るからな…。
 でも重量バランスが悪くて、重りを付けてバランスを取っていただろ。
 そうなると携帯火器自体の重さと機体のバランスが崩れるから前のめりになる…。
 だから、あのライフルは機体の重量がある炎龍しか装備出来ないんだ。
 まぁパイロットの技量次第で無理やり使う事は出来るんだろうけど…。」
「システム側で出来ないのか?」
「ある程度はな…。
 だけど実際に質量が動いている訳だから どうやっても振り回さる。」
「まぁそうか…そうだよな…。」
「他には案はあるか?」
 オレは少し気になり 聞いて見る…。
 DLマスターズをやってるだけあって トヨカズの言っている事はそこまで的外れでは無い。
「う~ん
 後は…ロボットアニメだとサブアームか?
 背中にもう2本の腕を取り付けて銃を撃ったりマガジンを装填したりする機構だな。」
「それは もう やっている…。
 オレがトニー王国でテストパイロットをやっていた時にサブアーム構想の突然変異機に散々乗らされたからな…。」
「なんだ…テストパイロットをやってたのか…。」
「1年だけだがな…多分 オレの脳が保存されていたのも それが関連していると思う。
 オレは黒鋼の最終型を完成させたテストパイロットだからな…。」
「で、結果はどうだったんだ?」
「今のDLを見れば分かるが サブアーム構想自体は廃止…いや遺伝子は受け継がれたのか?」
「遺伝子?」
「あー機体コンセプトの事だ。
 当時のDLは 細かな改修の余地があっても、発想の行き詰まりから 大きな改造が出来なかったんだ…。
 つまり遺伝子が洗練され過ぎていて 次世代機の可能性が狭まっている感じだな。
 だから ぶっ飛んだ発想の機体を開発する事で、DLの可能性を広げる…これが突然変異機だな。
 確かにサブアームは優秀だったし使いこなせればそれなりに強い…。
 でも『安い』『使いやすい』がコンセプトのDLとは相性が悪かったんだ…。
 実際、採用されてもエース用のバックパックになる位だとオレは思ってたから…。」
「でも遺伝子は次世代DLに残せたんだろ…。」
「ああ…複雑な腕は無くなって 武器ラックハードポイントになった。
 各ハードポイントに弾薬や銃を装着出来て同時に撃つことも出来る。
 そもそも、腕や足の接続コネクタ自体もハードポイントで、片腕が無くなっても、コクピットに付いている腕のハードポイントに銃を取り付けられるし、何なら足の変わりに股関節に取り付ける事も出来る。
 何処どこを被弾しても、銃が撃てるようにする設計は 黒鋼の生存性を飛躍的に伸ばしたんだな…。」
 この機構のお陰で弾薬のデータ管理や機体に積める兵器や拡張性が更に増え、当時ゲテモノ扱いにされていたコンセプトが、今では普通に運用されている。
「突然変異個体が 他のDLに影響を及ぼしたのか…。」
「そう…とは言っても、大半が淘汰《とうた》される欠陥機なんだがな…。」
 生物の突然変異と同じで大半は環境適用出来ない欠陥機なのだが、ごく稀にこう言ったようにDL全体に影響を出す個体が発生する。
 その一見無駄に見える事に 価値があると考え、予算と人員を割り当て続ける事が出来るトニー王国だからこそ、この機体が完成したんだ。
「じゃあ、ナオは何か無いのか?」
 今度はトヨカズが聞いてくる。
「う~ん…。
 実際コイルガンでも 威力としては十分だしな…。
 レーザーや荷電粒子砲も実装可能なんだろうが、それをワームが学習したら、亜光速の弾をDLで避けないと いけなくなるから使えないだろ…。
 しかもDLの装甲は衝撃なんかの物理攻撃には強いが、熱には比較的弱いからな…。」
 装甲に受けた運動エネルギーをダイラタンシー流体の特性を持つ耐弾ジェルが 受け止め、熱変換する事で銃弾の威力を大幅に減衰させる。
 ただ 半固体ジェルなので、一度に大量に熱を得て気化した場合、膨張して装甲が弾け飛んでしまう…。
 熱攻撃の1撃は如何《どう》にか防げるだろうが、装甲は役に立たない程ボロボロになってしまう。
「そうか…ワームが対応して来た場合も考えないと行けないのか…。」
 相手の事も考え 実弾弾を使用し、こちらの装甲で受け止められるレベルまで火力を抑《おさ》えるしかない。
「それでも、結局、破局を伸ばして1~2年…。
 多分最後はワームじゃなくて共食いを起こして地球上の人類が絶滅するんだろうな…。」
「共食いか…。」
「まぁ そんな訳で今のままで十分って書くしか無いのな…。」
「しょうがないか…。」
 その後 オレとトヨカズの連名れんめいで強化プランの問題点を出し レポートを出した。
 結局、素材その物を性能の良い物に変えるしかないのと ワームが対応して来た事を想定して、実弾系の武器しか使えない事…それ位しか書けなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本国転生

北乃大空
SF
 女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。  或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。  ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。  その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。  ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。  その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

『星屑の狭間で』(チャレンジ・ミッション編)

トーマス・ライカー
SF
 政・官・財・民・公・軍に拠って構成された複合巨大組織『運営推進委員会』が、超大規模なバーチャル体感サバイバル仮想空間・艦対戦ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』を企画・企図し、準備して開催に及んだ。  そのゲーム大会の1部を『運営推進委員会』にて一席を占める、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』として、順次に公開している。  アドル・エルクを含む20人は艦長として選ばれ、それぞれがスタッフ・クルーを男女の芸能人の中から選抜して、軽巡宙艦に搭乗して操り、ゲーム大会で奮闘する模様を撮影されて、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』の中で出演者のコメント付きで紹介されている。  『運営推進本部』は、1ヶ月に1〜2回の頻度でチャレンジ・ミッションを発表し、それへの参加を強く推奨している。  【『ディファイアント』共闘同盟】は基本方針として、総てのチャレンジ・ミッションには参加すると定めている。  本作はチャレンジ・ミッションに参加し、ミッションクリアを目指して奮闘する彼らを描く…スピンオフ・オムニバス・シリーズです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

鉄籠の中の愛

百合桜餅
SF
巨大な鉄の壁で覆われた『都市』にて暮らすリアラとアスカは、様々な場所を漁って物を得て暮らす『漁り屋』だった。 彼女たちは都市の中央に位置する『タワー』に移送される謎の存在に目を付け、ソレの奪取に奇跡的に成功する。 仰々しい箱を開き、中を確かめるとそこには……人。 いや、人に似た何か。AI搭載型最新ヒューマノイドがそこには居た。 ヒューマノイド……彼女には、名前が付けられた。 『アイ』 リアラとアスカ、そしてアイの傍には、そろりそろりと、 破滅の足音が近づいていた。 ※過激な表現や設定があるかも。

引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい

鈴木竜一
ファンタジー
旧題:引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~ 【書籍化決定!】 本作の書籍化がアルファポリスにて正式決定いたしました! 第1巻は10月下旬発売! よろしくお願いします!  賢者オーリンは大陸でもっと栄えているギアディス王国の魔剣学園で教鞭をとり、これまで多くの優秀な学生を育てあげて王国の繁栄を陰から支えてきた。しかし、先代に代わって新たに就任したローズ学園長は、「次期騎士団長に相応しい優秀な私の息子を贔屓しろ」と不正を強要してきた挙句、オーリン以外の教師は息子を高く評価しており、同じようにできないなら学園を去れと告げられる。どうやら、他の教員は王家とのつながりが深いローズ学園長に逆らえず、我がままで自分勝手なうえ、あらゆる能力が最低クラスである彼女の息子に最高評価を与えていたらしい。抗議するオーリンだが、一切聞き入れてもらえず、ついに「そこまでおっしゃられるのなら、私は一線から身を引きましょう」と引退宣言をし、大国ギアディスをあとにした。  その後、オーリンは以前世話になったエストラーダという小国へ向かうが、そこへ彼を慕う教え子の少女パトリシアが追いかけてくる。かつてオーリンに命を助けられ、彼を生涯の師と仰ぐ彼女を人生最後の教え子にしようと決め、かねてより依頼をされていた離島開拓の仕事を引き受けると、パトリシアとともにそこへ移り住み、現地の人々と交流をしたり、畑を耕したり、家畜の世話をしたり、修行をしたり、時に離島の調査をしたりとのんびりした生活を始めた。  一方、立派に成長し、あらゆるジャンルで国内の重要な役職に就いていた《黄金世代》と呼ばれるオーリンの元教え子たちは、恩師であるオーリンが学園から不当解雇された可能性があると知り、激怒。さらに、他にも複数の不正が発覚し、さらに国王は近隣諸国へ侵略戦争を仕掛けると宣言。そんな危ういギアディス王国に見切りをつけた元教え子たちは、オーリンの後を追って続々と国外へ脱出していく。  こうして、小国の離島でのんびりとした開拓生活を希望するオーリンのもとに、王国きっての優秀な人材が集まりつつあった……

「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち
SF
 港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。  遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。  その第1次上陸先が苫小牧市だった。  これは、現実なのだ!  その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。  それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。  同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。  台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。  新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。  目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。  昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。  そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。  SF大河小説の前章譚、第4部作。  是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~

於田縫紀
SF
 大学を卒業した3月末に両親が事故で死亡。保険金目当ての伯母一家のせいで生活が無茶苦茶に。弁護士を入れてシャットアウトした後、私は生命維持装置付の最高級VR機器を購入し、腐った現実から逃げ出した。

処理中です...