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ヒトのキョウカイ3巻(時給より安い命)

16 (チェリー・キラー)

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 ナオ、クオリア、ジガは 外周区のシステムをハックして周り、レンタカーがモーテルについた。
「結構かかったな…」
 ジガが荷物を降ろしながら言う。
 ナオはARウィンドウを出し時刻を確認する。
 時刻は午後6時…時計を見るが 出発してから6時間ちょっと経っている。
「ジガが観光をし出すからだ。」
「クオリアだってレトロゲーム店で引っかかったじゃないか…。」
 店員のレトロゲーマーと話が弾み、格ゲーで対戦をしていた。
 エレクトロンと接戦をする店長にぞろぞろとゲーマー達が集まり、凄い集客効果を生んだ。
 労働者としては嫌われているエレクトロンだが、観光客としてなら大丈夫のようだ。

「ジガは電気街にだったな…性能は圧倒的にこちらが上だろうに…」
 物流拠点だけあって 普段は見ない義体用のパーツやレトロ製品が取引されていた。
 中でも驚いたのは 2000年代最初期のノイマン型があった事だ。
 これを製造している所は技術レベルが2000年位で停滞している都市くらいだ。
 その都市は周辺の都市と旧式のネットワークで繋がっていて、2000年代のネット普及時のような光景が広がっているのだと言う。
 こいつを解析すれば旧式のネットワークに侵入できるかもしれない…。
 そう思ったジガの行動は早かった…このポンコツPCを15万UMで購入…更に持ち運びに不便ふべんなのでキャリーカートも購入し、レンタカーのトランクに積む。
 ちなみに通常10万UMもあれば毎秒1エクサのキューブが手に入る…いかに無駄か分かるだろう。

「ナオは止まらなかったな…。」
 ジガが言う。
「あ?結構見てたぞ…今のゲームとか…ただな。」
「ただ?」
「未来ぽく無いんだよ…。
 VRとかARとかNPCとか技術は進化したってのは分かるんだが『オレの時代のゲームをリメイクしました』見たいな感じがするんだよな…。」
「ああ、今のゲームジャンルの基礎は2030年までに完成していたからな…。
 それに ここ100年位は頭打ちになって来たし…。」
「何でまた…。」
「ゲームは突き詰めれば、現実世界で難易度の高い事を仮想世界で簡単に高品質で実現する事だ。
 例えば車でレースがしたい、人を殺したい、などだな…。
 これらは現実世界でやろうとした場合、莫大ばくだいなコストがかかる。」
 クオリアが話を引き継ぎ答える。
「あーなるほど」
 制限速度や自家用車の禁止、殺人が禁止されていたりか。
 やれなくは無いが、法の問題で出来ない。
「そして、それらはコンピューターのスペックがまだ低かった時に限られた容量と言う制約の中で洗練化と簡略化が図られ、ほとんどど最適解は出ていた。
 その後コンピューターのスペックが上がりVRやARが出てきた事で、現実世界をほぼ完ぺきに再現が出来るようになった。
 この時点でゲームの最終目的の現実を仮想世界で再現する事は達成された。」
「これ以上の別のジャンルを作るには 生活習慣が違う別の種族が必要になるのか…。」
 ナオが少し考える素振りを見せ言う。
「そう、だけど生身から外れて機械化すると欲求が下がるからな…。」
「機械の欲求は?」
「電気を食べてパーツメンテをして学習する…これをゲームに出来ると思うか?」
「いや…面白くないな…。」
「まぁそう言う事だ。」

 モーテルに入る…ジガはキャリーカートを引きずっている。
「メシはARで良いし…他には風呂か。」
「いやシャワーで良くないか…。」
 クオリアが言う。
「せっかく大きい風呂があるなら入るべきじゃないか?」
「これは、エクスマキナに大浴場が出来るのも時間の問題だな」
 エクスマキナにはパーツ洗浄の消毒槽とシャワー位で大浴場は無い…。
 皮膚が発汗しないエレクトロンは 長期間引きこもっていても体臭を放つ事は無い。
 しかも湯を張った所で 基本部屋で引きこもっているエレクトロンが浸かりに来るのか怪しい。

「はぁまた混浴か、いい加減慣れたけど…。」
 何度かレナに連れられて入った事があるが…まぁ流石になれた。
「混浴じゃない…ちゃんと男女別だ。」
「え?」
「性別で分けている都市のヒトも多いからな…ここでは別れている。」
「じゃあオレは男風呂に…。」
「その顔で?」
 オレの顔を指差ゆびさし、ジガが言う。
 確かにメイクで女ぽくなっている。
「ネイクは落とせばいいだろ…」
「怖いお兄さんにレ○プされないと良いけど…。」
 ジガが冗談ぽく言う。
「棒も穴も無いんだからやられようが無い…。」
 クオリアのボディを使っている事もあって性器の類はついていない。
 いくら、他種族が集まると治安が悪くなると言っても無いのだから関係ない。
「と言うより女で入国している以上、男湯に行ったら警告表示が出るのではないか?」
 クオリアが ふと言う。
 都市に入るヒトの位置は常に把握されているはずだから、進入禁止エリアに入るものなら警告表示が出て、それを無視して強行すれば通報され捕まる。
「あ~結局そうなるか…。」
「良いじゃないか…合法的に女湯に入れるんだぞ…。
 これって男の夢なんだろ。」
「男の夢ってだけで オレの夢じゃないのよ…。」

 荷物を部屋に降ろし、地下1階に向かう。
 地下1階にはドラムが銭湯を経営していた。
 男湯と女湯の間にある番台には浴衣を羽織ったドラムがいる。
「子供2人、大人1人で」
 レジに金額が表示されてクオリアが一括いっかつで購入する。
 外見が小さく見えるオレとクオリアを子供で通すあたり地味にズル賢い。
 ドラムの目にはオレが女に見えるらしく文句も言われず、女湯の暖簾のれんをくぐれた。
「ごゆっくり」

 女湯を『女性の花園』とかと言うが…実際の所ユメの欠片も無い。
 手近なロッカーを開《あ》け、3人は服を脱ぎ 風呂場に入る。
 まわりの女は羞恥心も無く、どこも隠していていない全裸の女性や『女の子はスベスベでは無いのです』と主張している いろんな所の毛がボオボオの方、旦那の悪口を躊躇ちゅうちょなくぶちまける方、成長を止める事や整形が一般化している世界と言う事もあって、おばあちゃん率が0なのが不幸中の幸いか…。
『うわぁ羞恥心が全くない…。
 寮のあれも一応、羞恥心はあったんだな…。』
 洗い場に行きながら思わず内緒話での回線で呟いた。
『学生寮は男の目があったからある程度、おしとやかだったが…。
 男に見られていない女は大体こうなるらしい…。』
 クオリアが答える。
『クオリアもか…。』
『私は女性の身体をしているが、少なくとも性格は男でも女でもない…。
 あえて定義するなら機械だ』
『機械って性別か…?』
『該当する単語が無いからそう言うしかない…。』
 洗い場にクオリアとナオが隣同士で髪や身体を洗っていると内緒話の電波ととらえたのかジガが寄ってくる…。
「なに~内緒話してんの…。」
 ジガが上半身を傾け、シャンプーをつけたまま振り向いたナオの目の前に胸がどアップ見える。
 流石、元セクサロイド…言動が男っぽいが、形の良い胸に綺麗にくびれたウエスト、スポーツ(意味深)をやっていたと思わせる引き締まったアスリートの身体…ジガの仕事が仕事だけに性器もちゃんとある。
「何々…ウチのテクニックを見たいのか?」
 オレの視線に気づいたジガは笑いながらオレを からかう。
「別に、ここで営業しなくていいから…。」
 髪を手早く洗い…逃げるようにして湯船に浸かる。
 しばらくして、髪を洗い廃熱用のリンスをつけたクオリアとジガは湯船に入ってきた。
「おお良いね…。
 で…真面目な話し何だが、ち〇こつける気は無いのか?」
「は?どこが真面目な話なんだ?」
「だって男には必要な物だろう…。
 義体ショップを見に行ったら良い物が売ってたし…。」
「別に良いよ…使う予定も無いし、子孫を残せる訳でも無いだろう…。」
「身持ちが固いな…風俗通いした所でクオリアは怒らないぞ。
 何ならウチが初回サービスを…。」
 ジガが手を丸め上下に振る。
「別にナオの性生活について文句を言うつもりは無いが…要らないと言っている以上本人の意見を尊重するべきでは無いのか?」
 ジガの隣に座るクオリアがARウィンドウで暇つぶしでリバーシを打ちながら言う。
 難易度はMAXでとても暇つぶしレベルで出来る難易度では無いのだが…。
「いや…だってな…たまには使わないとび付いちまうだろ…。」
「定期メンテナンスでは良好だったはずだが…。」
「あ~だから…。」
「ジガがナオの貞操を狙っているのは知っている。
昔、童貞殺しチェリー・キラーと言われていたのも」
「凄い二つ名だな…チェリー・キラーって…。」
「初めてのお客は大体はウチが担当していたからな…。
 VRのNPCの女ばっかり抱いて、現実では女と会話もした事の無い男が山のようにいたから、ウチ見たいな男友達のノリで話せるセクサロイドが人気だったんだ。
 実際話しやすいだろ」
 ジガのコミュ力がやけに高いと思ったがそう言う理由か…。
「服さえ来てれば男感覚で話せるからな…確かに楽だ。」
 クオリアやっているリバーシーは終盤に差し掛かり、周りが黒で埋め尽くされているが…リバーシーの重要ポイントはクオリアの白が掌握しょうあくしている。
 ペタペタペタと黒が白にひっくり返り1枚差で勝利する。
「流石に1枚差を狙ってやるのは難しいな…。」
 またクオリアは人外レベルの縛りプレイをしていた。
 しばらくして暖ったまった3人は湯船から上がり身体を拭き服を着て部屋に戻った。
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