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ヒトのキョウカイ1巻(異世界転生したら未来でした)
20 (20世紀シネマ館)
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ニューアキバなどがある商業区画は、他では手に入らない珍しいものも多い。
そして学校帰りの暇つぶしとして、何気なく探検に来たナオが見た物は『20世紀シネマ館』。
6階建ての建物で 1階がレンタルムービーショップ…2階が映画館だった。
この時代に映画館と言うものかなり珍しい。
VRを使えば個人レベルで最高の音質の大画面映画を楽しめるし、更にVRだけに立体表示や感覚も操作出来る為、迫力と言う意味では到底かなわない。
だが、あえて効率を捨ててレトロに生きるヒトもいる。
ナオはそれが気になり、入ってみる事にした。
「うわぁ~」
映画館風の内装に複数の棚に映画のBDの箱が置いてあるレンタルムービーショップだ。
それはナオにとっての現代にあった20世紀、21世紀の化石映画だ。
受付には、映画館の制服?のような塗装をされたドラムが立っている。
棚の横にある端末で、条件を付けずに検索した所ヒットした映画は5万にも及ぶ。
「おや…新しいお客さん なんて 珍しいですね…。」
今時、視力補正にメガネなんて必要ないのに あえて度のついたメガネをかけるレトロで痩せた男だ。
「僕は『スプリング』、ここの店長をしています。
良かったら僕の話に付き合ってくれませんか?」
平日の午後4時頃…この時間帯にショップにいるのはオレとスプリングだけだ。
よっぽど人が来なくて暇で映画トークをしたいのか、はたまた化石映画に興味を持つヒトを引き込もうとしているのか。
ナオはとりあえず話をしてみる事にした。
1階のの端にあるソファーに腰を下ろし、スプリングが話す。
「君も驚いているだろう…今時 映画の店頭販売なんて」
今はネットやVRが普及している為、ネットに繋げさえすれば視聴期間付きのムービーデータを購入する事は出来るし、月額1000トニーでムービー見放題と言うサービスもある。
質や量、値段を見てももう現実世界で販売する理由がそもそもない…こんなレトロな作品でも無ければ。
「いえいえ、むしろオレの時代はこれが普通だったので…そもそもこっちに来てまだ1カ月程度ですからね。」
「ん?時代?君は外から来たのかな?」
「2020年から脳だけコールドスリープで、1カ月前に義体を貰って こっちに住む事になりました。」
「2020年!?」
「え?そんなに驚くほどですか?」
「君は君の価値を理解していない…君は生きる化石だよ。
大戦でネットに繋がっていた2050年より前のデータは殆ど失われてしまったんだ。
今現存しているのは、隔離《スタンドアロン》状態だったサーバーかHDDとかDVDの旧メディアだけだってのに…。」
スプリングが頭を抱える。
「と言ったって、どうしようもないでしょう…主観で1カ月しかたってないんですから…。」
ナオは立ち上がり、棚のパッケージを見に行く。
「『星間戦争』に『私はヒューマノイド』『電脳世界』メジャー所が揃《そろ》っているな。」
「てことは、見たことあるの?」
「星間戦争EP9の上映が去年だったけど死ぬほど忙し過ぎて見てない。
それ以外は有名どころ位かな…。」
「見てみるかい?
初回サービスで3万トニーの大型シアタールームを無料で使わしてあげるよ。」
あー絶対にシアタールームを自慢したいだけだろ…。
プシュー
スライドドアの圧縮空気の音がする…見た目はエレベーターのドアに近いが窓が大きい。
スペースコロニーと同じ設計基準であるこの都市の建物は、すべて簡易型宇宙船となっている…。
コロニー自体が崩壊するような事体になった時、住民はシェルターには逃げ込まず(と言うよりない)最寄りの建物に逃げ込む為だ。
よって建物の強度はとても高く、気密性、放射線、空調関係など宇宙空間に放り出されても大丈夫な設計になっている。
そして、中に入ってきたのは何とも意外なレナだった。
「ナオも来てたんだ…。
あーでも21世紀から来たんだから必然なのかな?」
「おおレナちゃんか?1週間ぶり位?」
「こんにちはマスター…個室のシアタールーム空いてる?」
「ああ、もちろん大丈夫だよ」
「なら1つ予約しておくから」
「まいど」
レナは、そのままレンタルムービーの棚の横に置いてある端末を使い…借りる映画を検索し始めた。
「レナはこちらの常連なんですか?」
「ああそうだよ…えーとレナちゃんが この都市に来たくらいだから大体3年位かな…。
4歳の幼年生達の紹介でね…。」
「4歳…かアイツ妙に子供達と交流があるんだよな…。」
ウチらの寮にも初等部の子供は結構いるが、8歳くらいの中学年に人気がある。
「あー多分その子達レナちゃんの元同級生…レナちゃんここに来てから1年幼年学校にいたから馬鹿で…。」
確かにレナは、テストの成績も良くなく赤点と補習の常連だったりする。
だが怠《なま》けていて勉強していない訳では無く、レナは勉強家だ…ただ時間が足りて無いように感じる。
そして思い出したかのようにナオが言う。
「あっスプリング…レナが好きな映画ってどんな奴?」
「レナちゃんの借りるのは、1800年の産業革命時代が多いかな」
「よし、ならレナの借りるムービーを大型シアタールームで見るってのはどうだ?」
「良いけど…レナちゃんからOKがでたらね」
「えっ別に良いけど…大勢で見るにはちょっとね~」
レナが軽く渋る。
「もしかして、プライベートで見たかった?」
「いや、じゃなくて問題は内容…とは言え変えるものな~いいよ。
内容は保証しないけどね」
「OK出たぞ…スプリング」
ナオが大声でスプリングに言う。
「よーし、じゃシアタールームに招待しましょう。
ドラムちゃ~ん…常連さんにメール、5時00開場、5時10分上映で」
「マスター、残り30分程しかありませんが、よろしいでしょうか?」
ドラムが気を使いスプリングに一応聞いてくる。
「一応通知しているだけ、気になったら見に来る人もいるでしょう。」
「了解しました…通知します。」
「じゃ30分で立ち上げるよ…え~と…ナオ君も手伝って…。」
「はいよ…といってもどこまで出来るかって感じだろうけどね。」
2階への階段を2人は上り、階段脇のディスレイには『映画 花売り少女のラッダイト』と表示され、下には『PM 5:00 開場 PM 5:10 上映』、画面の右下に『現在時刻 PM4:26』と表示されている。
レナは自販機で飲み物を購入してソファーに座りくつろぐ…。
この映画館は 月全体の人数でも500人も入ら無いし、その大半も週末が多い。
平日に来るのは10人程度で、借りる人はマスターとお喋りする事が多いため、あまり利益にはならない。
都市が文化遺産としてお金を出していなければ、とっくに廃業している状態だ。
そして気まぐれ…今回みたいに、自分の気に入った新規の客には大型シアタールームを無料で貸し自慢したり、僅《わず》か30分しかないのに募集をかけて見たりする。
普通なら、そんな事をした所で集まらないのだが…ここは普通では無い。
プシューと圧縮空気の音がして子供が中に入ってくる。
7歳の男の子で名前は『ヒロム』…ソファーに座る私を見つけると、こっちにやって来た。
「ようレナ…映画を見に来たぜ」
「早いね…てか募集かけてから、まだ10分経っていないでしょうに…。」
「たまたま この辺りを歩いていたら、レナの主催の映画のチラシが来るんだぜ。
こりゃ行くきゃないだろう…。」
「はい?私の?…。」
ヒロムは、指2本で空中にL字を描き、空中にARウィンドウが表示する。
不可視状態になっているので、こちらからは青い画面にしか見えないがヒロムは手慣れた動作でいくつかタッチし、映画のチラシを実体化させた。
「ホイこれ」
私は、チラシを手渡《てわた》しで 受け取る…紙ながら、しっかり重量の感覚を再現された無駄にクオリティの高いARチラシだ。
見てみると主催者の欄はナオではなく、私になっている。
その下には、タイトルの『花売り少女のラッダイト』に『PM 5:00 開場 PM 5:10 上映』の時間…。
それに、参加予定の『YES NO』にフードメニューの注文ボタン、更に下には、開場までの残り時間が秒刻みでカウントされたARを生かしたデザインになっている。
「と言っても これを子供に見せていいのかな…。」
私のお気に入りの映画なのだが、この映画にはいわゆる『濡れ場』がある…。
私が渋《しぶ》ったのはそれだ。
それも成人女性が演じ、それを当時の最先端のCG加工で少女化して『これは成人女性です』と言い切る限りなく黒に近いグレーだ。
そんなアントニーが喜びそうな作品ではあるのもの、話としてはよく出来ており、スラム街出身の私としては共感を覚える事が多い…なのでよく見るのだけど…。
「後2人来るから、ポテトL3つで…。」
受付の後ろにある簡易厨房で人工油を温め揚げ物の準備をしていたドラムちゃんに、受付の机からギリギリ顔を出したヒロムが注文をし、ドラムちゃんが遠隔でレジを操作して、ヒロムがどうにかキャッシャーに手をかざし、画面のYボタンを押して会計を終える。
「ありがとうございました~」
厨房で調理しながらドラムちゃんが言う。
残り時間が10分を切った位でヒロムの友達の2人、歳をとった老人に会社帰りのカバンを下げた青年だ。
「30分で5人か…いきなり募集をかけた割には集まったわね。」
「いいえ、レナさん違いますよ…現在30分で7人です。
残り2人は5時に仕事が終わってから来るそうで、ギリギリか5分遅れるかもしれないとの事です。」
厨房のドラムちゃんが、そう返答する。
普通のドラムはルーチン的な接客が多いが、マスターが手を加えている事もあって、VR用のAI位の会話が出来るようになっている。
「レナさんは何か注文しますか?」
「私はドリンクで十分…と言うよりいつも聞いてない?」
「営業です…レナさんはドリンク位しか買ってもらえないので…。」
「私は毎回個室使っているからいいの…化石映画は持ち出し出来ないし、そもそも 今は再生媒体も無いからね。」
ここで扱っている作品は、現代で流通している映画と化石映画に分かれ、貸し出しも1週間の期限で再生権利を買うと言うものだ。
なので、返却はしなくても再生期間が過ぎたら自動的に見れなくなるようになっている。
しかも、デバイスにセキュリティ付きのデータを送るのではなく、映画館側が行うリアルタイム配信なので、手元にデータは残らず権利データをハックして解除する事も出来ない。
そして、そんな手続きはネットで十分出来、そもそもここに来る理由が無い…従ってここに来るのは、シアタールームを含めたアトラクションとして楽しむ人達だ。
そこは、旧メディアへの並々ならぬこだわりを持つマスターとその人望がなせる業ともいえる。
さて時間は戻り、スプリングと2階に行ったナオは…。
そして学校帰りの暇つぶしとして、何気なく探検に来たナオが見た物は『20世紀シネマ館』。
6階建ての建物で 1階がレンタルムービーショップ…2階が映画館だった。
この時代に映画館と言うものかなり珍しい。
VRを使えば個人レベルで最高の音質の大画面映画を楽しめるし、更にVRだけに立体表示や感覚も操作出来る為、迫力と言う意味では到底かなわない。
だが、あえて効率を捨ててレトロに生きるヒトもいる。
ナオはそれが気になり、入ってみる事にした。
「うわぁ~」
映画館風の内装に複数の棚に映画のBDの箱が置いてあるレンタルムービーショップだ。
それはナオにとっての現代にあった20世紀、21世紀の化石映画だ。
受付には、映画館の制服?のような塗装をされたドラムが立っている。
棚の横にある端末で、条件を付けずに検索した所ヒットした映画は5万にも及ぶ。
「おや…新しいお客さん なんて 珍しいですね…。」
今時、視力補正にメガネなんて必要ないのに あえて度のついたメガネをかけるレトロで痩せた男だ。
「僕は『スプリング』、ここの店長をしています。
良かったら僕の話に付き合ってくれませんか?」
平日の午後4時頃…この時間帯にショップにいるのはオレとスプリングだけだ。
よっぽど人が来なくて暇で映画トークをしたいのか、はたまた化石映画に興味を持つヒトを引き込もうとしているのか。
ナオはとりあえず話をしてみる事にした。
1階のの端にあるソファーに腰を下ろし、スプリングが話す。
「君も驚いているだろう…今時 映画の店頭販売なんて」
今はネットやVRが普及している為、ネットに繋げさえすれば視聴期間付きのムービーデータを購入する事は出来るし、月額1000トニーでムービー見放題と言うサービスもある。
質や量、値段を見てももう現実世界で販売する理由がそもそもない…こんなレトロな作品でも無ければ。
「いえいえ、むしろオレの時代はこれが普通だったので…そもそもこっちに来てまだ1カ月程度ですからね。」
「ん?時代?君は外から来たのかな?」
「2020年から脳だけコールドスリープで、1カ月前に義体を貰って こっちに住む事になりました。」
「2020年!?」
「え?そんなに驚くほどですか?」
「君は君の価値を理解していない…君は生きる化石だよ。
大戦でネットに繋がっていた2050年より前のデータは殆ど失われてしまったんだ。
今現存しているのは、隔離《スタンドアロン》状態だったサーバーかHDDとかDVDの旧メディアだけだってのに…。」
スプリングが頭を抱える。
「と言ったって、どうしようもないでしょう…主観で1カ月しかたってないんですから…。」
ナオは立ち上がり、棚のパッケージを見に行く。
「『星間戦争』に『私はヒューマノイド』『電脳世界』メジャー所が揃《そろ》っているな。」
「てことは、見たことあるの?」
「星間戦争EP9の上映が去年だったけど死ぬほど忙し過ぎて見てない。
それ以外は有名どころ位かな…。」
「見てみるかい?
初回サービスで3万トニーの大型シアタールームを無料で使わしてあげるよ。」
あー絶対にシアタールームを自慢したいだけだろ…。
プシュー
スライドドアの圧縮空気の音がする…見た目はエレベーターのドアに近いが窓が大きい。
スペースコロニーと同じ設計基準であるこの都市の建物は、すべて簡易型宇宙船となっている…。
コロニー自体が崩壊するような事体になった時、住民はシェルターには逃げ込まず(と言うよりない)最寄りの建物に逃げ込む為だ。
よって建物の強度はとても高く、気密性、放射線、空調関係など宇宙空間に放り出されても大丈夫な設計になっている。
そして、中に入ってきたのは何とも意外なレナだった。
「ナオも来てたんだ…。
あーでも21世紀から来たんだから必然なのかな?」
「おおレナちゃんか?1週間ぶり位?」
「こんにちはマスター…個室のシアタールーム空いてる?」
「ああ、もちろん大丈夫だよ」
「なら1つ予約しておくから」
「まいど」
レナは、そのままレンタルムービーの棚の横に置いてある端末を使い…借りる映画を検索し始めた。
「レナはこちらの常連なんですか?」
「ああそうだよ…えーとレナちゃんが この都市に来たくらいだから大体3年位かな…。
4歳の幼年生達の紹介でね…。」
「4歳…かアイツ妙に子供達と交流があるんだよな…。」
ウチらの寮にも初等部の子供は結構いるが、8歳くらいの中学年に人気がある。
「あー多分その子達レナちゃんの元同級生…レナちゃんここに来てから1年幼年学校にいたから馬鹿で…。」
確かにレナは、テストの成績も良くなく赤点と補習の常連だったりする。
だが怠《なま》けていて勉強していない訳では無く、レナは勉強家だ…ただ時間が足りて無いように感じる。
そして思い出したかのようにナオが言う。
「あっスプリング…レナが好きな映画ってどんな奴?」
「レナちゃんの借りるのは、1800年の産業革命時代が多いかな」
「よし、ならレナの借りるムービーを大型シアタールームで見るってのはどうだ?」
「良いけど…レナちゃんからOKがでたらね」
「えっ別に良いけど…大勢で見るにはちょっとね~」
レナが軽く渋る。
「もしかして、プライベートで見たかった?」
「いや、じゃなくて問題は内容…とは言え変えるものな~いいよ。
内容は保証しないけどね」
「OK出たぞ…スプリング」
ナオが大声でスプリングに言う。
「よーし、じゃシアタールームに招待しましょう。
ドラムちゃ~ん…常連さんにメール、5時00開場、5時10分上映で」
「マスター、残り30分程しかありませんが、よろしいでしょうか?」
ドラムが気を使いスプリングに一応聞いてくる。
「一応通知しているだけ、気になったら見に来る人もいるでしょう。」
「了解しました…通知します。」
「じゃ30分で立ち上げるよ…え~と…ナオ君も手伝って…。」
「はいよ…といってもどこまで出来るかって感じだろうけどね。」
2階への階段を2人は上り、階段脇のディスレイには『映画 花売り少女のラッダイト』と表示され、下には『PM 5:00 開場 PM 5:10 上映』、画面の右下に『現在時刻 PM4:26』と表示されている。
レナは自販機で飲み物を購入してソファーに座りくつろぐ…。
この映画館は 月全体の人数でも500人も入ら無いし、その大半も週末が多い。
平日に来るのは10人程度で、借りる人はマスターとお喋りする事が多いため、あまり利益にはならない。
都市が文化遺産としてお金を出していなければ、とっくに廃業している状態だ。
そして気まぐれ…今回みたいに、自分の気に入った新規の客には大型シアタールームを無料で貸し自慢したり、僅《わず》か30分しかないのに募集をかけて見たりする。
普通なら、そんな事をした所で集まらないのだが…ここは普通では無い。
プシューと圧縮空気の音がして子供が中に入ってくる。
7歳の男の子で名前は『ヒロム』…ソファーに座る私を見つけると、こっちにやって来た。
「ようレナ…映画を見に来たぜ」
「早いね…てか募集かけてから、まだ10分経っていないでしょうに…。」
「たまたま この辺りを歩いていたら、レナの主催の映画のチラシが来るんだぜ。
こりゃ行くきゃないだろう…。」
「はい?私の?…。」
ヒロムは、指2本で空中にL字を描き、空中にARウィンドウが表示する。
不可視状態になっているので、こちらからは青い画面にしか見えないがヒロムは手慣れた動作でいくつかタッチし、映画のチラシを実体化させた。
「ホイこれ」
私は、チラシを手渡《てわた》しで 受け取る…紙ながら、しっかり重量の感覚を再現された無駄にクオリティの高いARチラシだ。
見てみると主催者の欄はナオではなく、私になっている。
その下には、タイトルの『花売り少女のラッダイト』に『PM 5:00 開場 PM 5:10 上映』の時間…。
それに、参加予定の『YES NO』にフードメニューの注文ボタン、更に下には、開場までの残り時間が秒刻みでカウントされたARを生かしたデザインになっている。
「と言っても これを子供に見せていいのかな…。」
私のお気に入りの映画なのだが、この映画にはいわゆる『濡れ場』がある…。
私が渋《しぶ》ったのはそれだ。
それも成人女性が演じ、それを当時の最先端のCG加工で少女化して『これは成人女性です』と言い切る限りなく黒に近いグレーだ。
そんなアントニーが喜びそうな作品ではあるのもの、話としてはよく出来ており、スラム街出身の私としては共感を覚える事が多い…なのでよく見るのだけど…。
「後2人来るから、ポテトL3つで…。」
受付の後ろにある簡易厨房で人工油を温め揚げ物の準備をしていたドラムちゃんに、受付の机からギリギリ顔を出したヒロムが注文をし、ドラムちゃんが遠隔でレジを操作して、ヒロムがどうにかキャッシャーに手をかざし、画面のYボタンを押して会計を終える。
「ありがとうございました~」
厨房で調理しながらドラムちゃんが言う。
残り時間が10分を切った位でヒロムの友達の2人、歳をとった老人に会社帰りのカバンを下げた青年だ。
「30分で5人か…いきなり募集をかけた割には集まったわね。」
「いいえ、レナさん違いますよ…現在30分で7人です。
残り2人は5時に仕事が終わってから来るそうで、ギリギリか5分遅れるかもしれないとの事です。」
厨房のドラムちゃんが、そう返答する。
普通のドラムはルーチン的な接客が多いが、マスターが手を加えている事もあって、VR用のAI位の会話が出来るようになっている。
「レナさんは何か注文しますか?」
「私はドリンクで十分…と言うよりいつも聞いてない?」
「営業です…レナさんはドリンク位しか買ってもらえないので…。」
「私は毎回個室使っているからいいの…化石映画は持ち出し出来ないし、そもそも 今は再生媒体も無いからね。」
ここで扱っている作品は、現代で流通している映画と化石映画に分かれ、貸し出しも1週間の期限で再生権利を買うと言うものだ。
なので、返却はしなくても再生期間が過ぎたら自動的に見れなくなるようになっている。
しかも、デバイスにセキュリティ付きのデータを送るのではなく、映画館側が行うリアルタイム配信なので、手元にデータは残らず権利データをハックして解除する事も出来ない。
そして、そんな手続きはネットで十分出来、そもそもここに来る理由が無い…従ってここに来るのは、シアタールームを含めたアトラクションとして楽しむ人達だ。
そこは、旧メディアへの並々ならぬこだわりを持つマスターとその人望がなせる業ともいえる。
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