上 下
18 / 207
ヒトのキョウカイ1巻(異世界転生したら未来でした)

18 (ステルスキラー)

しおりを挟む
 病院に戻ったナオとドラムクオリアは、ハナダの隣の部屋を借り、警備をする。
 そして更にその隣の部屋には被害者の女性がいる…彼女とハナダはエサだ。
 廊下には『光学観測用のセンサー』に『床マット風感圧センサー』、対光学迷彩用の『熱センサー』に、質量物体が移動する気流が見える『気流センサー』これをあちこちに張り付けた。
 そしてこの情報をドラムの中に入っているクオリアが処理する。
 太陽系で最高レベルのエレクトロンのセキュリティを突破出来るヒトは限られる。
 突破されれば その事実が 犯人を特定する情報になり、そして出来なければ犯人を捕まえられる。

 病院が寝静まった午前3時、当直の看護師も機械に任せ寝てる時間帯だ。
 そして、あらゆる防犯装置をすり抜け『何か』は最上階に向かう。
 クオリアが設置したセンサーも無効…。
 たが、のセンサーが『何か』を感知した。

 ナオの頭の中でアラートが響く、周囲には聞こえない クオリアからの警告だ。
 眠っていた ナオがベッドの下に転がり、ベッドをひっくり返して、壁にしながら状況確認する。
『「クオリア状況!!」』
 思考で文字を起こし、即座チャットに投げる。
 返答はほぼ同時、ボイスチャットのコールが鳴り出し押す。
『廊下におそらく『ステルスキラー』が来た。
 各センサーに反応なし。
 ただ『』には反応した。
 目視確認を頼む。』
 やっぱりオーパーツも設置していたか…。
『分かった、座標を送ってくれ』
 視界の右上にMAPが表示され、現在地と目的地 そして移動ルートが表示される。
 『量子センサー』しか反応しない敵…やれるか?
 ナオはリボルバーを取り出し、下で構えながら姿勢を低くして走る。

「目視確認、誰もいない」
 銃を前に向け、引き金に指をかける…。
 センサーに反応し、レーザーサイトから低出力の赤いレーザーが出る。
 射撃の腕前が並のナオは、照準を覗き込まないで撃つ事が多い。
 消灯時の薄暗い照明の中で、レーザーポリンターが壁に当たる小さい点しかない。
 レーザーがすり抜けたッ…実体がない…。ッ!!
 手をクロスし、炭素繊維で出来た甲手こてで、『』を受け止める。
「実体化したッ!!」
 ナオは、後ろ向きに後退して距離を稼ぎながら、敵がいるであろう位置にリボルバーを向ける。
 ッ!?レーザーが敵では無く壁に当たる。
 光学迷彩の類では無い。
「厄介だ。」
 攻撃する一瞬だけ ナイフが実体化するみたいだ。
 次々にやってくるナイフを受け止めながら、ナオは敵のパターンを探る。
 ナイフの軌道から相手を予測、身長は160cm、80kg、右手コンバットナイフ…ただナイフが浮かんでいる訳ではない。
 それは150cmのオレに振り下ろす質量の乗った人の軌道だ。
 人外な出力を出せないという事は、生身かそれに近い存在か…。
 こちらもナイフを出し反撃をする者の、当たらずナイフが宙を舞うだけだ。
『早く解析頼む』
 太陽系最高レベルのデータ処理が出来るクオリアが、10も処理にかかっている。
『解析終了…原因はハナダだ…奴を気絶させれば終わる。』
 クオリアが通信でそう結論を出した。
『は?コイツがハナダ?』
『違うハナダは病室にいる…行って気絶させるんだ』
 全く訳が分からないが、相手はエレクトロンでクオリアだ。
 どんな戦術プログラムよりも信用出来る。
『了解…後は任せる。』
 後方からドラムが到着し、振り下ろすナイフにピンポイントで銃弾を当てる。
 ドラムが装備しているのはボックスライフルと呼ばれる箱型のアサルトライフルだ。
 箱型の形状のおかげでアシスト機器を装備出来るものの、全体重量が重く強化服着用が前提のライフルだ。
 ナオはドラムと入れ替わる形で後退し、ハナダの部屋に向かう。

 警察署の警備部…。
 砦学園都市の治安を管理している『ケインズ』が、警察に通報する際ここに連絡コールされる。
 大画面のディスプレイとキーボードマウス、椅子に仮眠用のベッドがある。
 ベッドで寝ているのは当直の警備員で、ケインズからの通報コールが掛かるまでは寝ている。
 そして3時…ケインズからの通報コールがなる。
 けたたましいコールで叩き起こされた警備員はすぐさま起き上がり、ディスプレイをチェック…見た光景は病院内でナイフを持った男が、素振りをしている。
「戦闘ぽいのに相手がいない?」
 映像を巻き戻しても敵は表示されずただ素振りをしているだけだ。
 警備員はキーボードで操作し、位置を特定…病院の最上階って…。
「エレクトロンから上がっていたサイレントキラー?」
 昨日アントニー・トニー都市長の許可の元、警備用オプションを貸したドラムエレクトロンだ。
 よくよく見ればエレクトロンと一緒にいたヤツだ…。
 確か…ナオだったか?
「こちら警備部、初動部隊の出動を許可、数は、1個中隊12人…武装フル装備
 次DL部隊待機、数は1個中隊12機…武装…都市戦仕様」
 既に情報は送った。後は向こうのプロにお任せだ。
 さてと次は…。

 病院の当直室では、一人の看護師の女性が寝ていた。
 最上階で騒ぎが起こっているにも関わらず、アラートが鳴らない。
 防音機能が高い事もあってまるで彼女は気づいていなかった。
 プルルルル・・・・。
 コールが鳴り、慌てて3コールで起き、6コールで取る。
「はいこちら中央病院当直室……はい?」
『だから病院最上階にて、戦闘が発生しているですって、警察の初動部隊が来ますので、正面玄関の鍵を外しておいて下さい。』
「戦闘?…サイレントキラー?まさか?警備センサーは反応ありませんでしたよ」
「だからサイレントなんです…急いでください10分かからないので…」
 円状な形をしている砦学園都市の中心部は 行政施設が集中しているので、警察と病院は同じ区画でほとんど時間がかからない。
 彼女は、すぐさまドアを開け、施錠も忘れて走り出す。
 以前 私が熟睡していた為、正面玄関のスライドドアをぶち破り、警察に侵入された事を思い出す。
 あの時は医院長にかなり怒られた…。
 はぁはぁはぁ
 病院の玄関は電源と物理ロックの2つで開く。
 看護師は、電源スイッチを入れ、降りていたシャッターを上げる、次にスライドドアの物理ロックを解除…。
 目の前には、爆薬の準備をする初動部隊の人達がいた。
「どうぞ…。」
「感謝します。」
 機敏きびんに銃を構えながら、6人がエレベーターでもう6人は階段で上っていく。
 はぁ…ぶち破られなくて良かった………。

 ドアがスライドし、流れるようにナオは ハナダの部屋に入る。
 部屋に入ったオレはすぐさま銃をハナダに向けた。
「サ、サイレントキラーだぁぁぁ」
 ハナダは恐慌状態で泣きわめくばかりだ。
 周りを確認するがサイレントキラーは確認できない。
「オレか…。」
 ハナダの額をレーザーサイトの赤い光が照らす。
「いやあああああああ死にたくない。」
 泣きわめく、ハナダを前にナオは引き金を引いた。
 発射されたのは非殺傷弾。
 ゴムで出来た弾頭の内部に衝撃を熱に変換する『耐衝撃用硬化ジェル』通称『耐弾ジェル』
 DLの装甲に使われている位置エネルギー弾を熱変換して 軽減するジェルだ。
 弾丸は見事ハナダの額にヒット…火薬を少な目にし、弾はゴム製、耐弾ジェルまで使っても ボクサーパンチに匹敵する衝撃が彼の脳を揺らす。
 脳震盪《のうしんとう》になったハナダは、今まで騒いでいたのが嘘みたいに大人しく気を失った。
 ナオは周りの安全を確認し、リボルバーのシリンダーロックを解除…。
 重力でシリンダーと弾丸が落下…。
 それと同時にホルスターから替えシリンダーを入れシリンダーをロック。
「気絶させたぞ…どうだ?」
『予想通り消えた。』
 クオリアが通信で答える。
「ひとまず解決か」
 ナオは空気に触れ生温かくなったシリンダーごとポリ袋に入れ袋を閉じる。
 それとほぼ同時に…。

「警察だ!武器を捨て投降しなさい!!」
 警官が突入し、3人がナオに銃を向ける…。
 ナオはポリ袋を手放し、ポリ袋の中のシリンダーが地面に着くより早く…殆《ほとん》ど脊髄反射《せきずいはんしゃ》で銃を抜き警官に向けた。
 次に入ってきた3人の警官はライオットシールドを構え、シールドに空いた穴にハンドガンを差し込んで固定してナオに向ける。
「オレの容疑は?」
「傷害未遂……いや傷害罪だ。」
 警察が床に転がっているハナダを見て言う。
「オレの他にドラムが2体いたはずだが…。」
「そのドラムは既に停止している。
 今『エレクトロン大使館 砦学園都市支部』と連絡を取っている所だ。」
「分かった。」
 ナオは銃をしまい右手を上げる。
「私『カンザキ・ナオト』は、今回の件についてのに協力したいと思います。
 ただし拘束は無し、私の安全を確保出来なくなる武装解除にも応じる事は出来ません。」
 警備装置から見ているであろう『ケインズ』に自分の意思を伝える。
 この状態で警官が撃てば『無抵抗な容疑者』を傷つけた事になる。
 そうなれば問題になるのは警察だ。
「了解しました。
 では『カンザキ・ナオトさん』今回の件の重要参考人として同行をお願いできますか?」
 高圧的だった警官の口調が柔らかくなる。
「ええぜひ」
「ではこちらへ」
 武装した警官は銃を下げナオを護衛するような配置に変わる。
 そして、ナオは警察に事情聴取に行くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

Unlimited Possibilities Online

勾陣
SF
超人気VRMMO【Unlimited Possibilities Online】専用のヘッドギアを、気まぐれに応募した懸賞でうっかり手に入れてしまった主人公がのんびりと?‥マイペースで楽しむお話し? ※R15、残酷な描写ありは保険です 初投稿です 作者は超絶遅筆です 督促されても更新頻度が上がることはありません カクヨム様、小説家になろう様にも重複投稿してます

エッチな方程式

放射朗
SF
燃料をぎりぎりしか積んでいない宇宙船で、密航者が見つかる。 密航者の分、総質量が重くなった船は加速が足りずにワープ領域に入れないから、密航者はただちに船外に追放することになっていた。 密航して見つかった主人公は、どうにかして助かる方法を探す。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重
SF
 真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。 「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」  これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。 「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」 「彼、クリアしちゃったんですよね……」  あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。 「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」 完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。 「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。 Bless for Travel そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...