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ヒトのキョウカイ1巻(異世界転生したら未来でした)

06 (ナオ歓迎会企画)

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 トヨカズ、レナ、クオリアと出会い、最初の土曜日になった。
 出会った時のオレは相手の事に気を使い、余所余所《よそよそ》しさがあったが、そんな事を全く気にしないトヨカズを中心に仲間と打ち解け、砕けた会話も出来るようになっていた。
 それは服装にも現れていて オフィスカジュアルでしっかり決めていたオレは 早くも楽なジャージを私服として着るようになっていた。
 トヨカズは日曜の休日に皆で何かしようと考えていて、放課後いきなり教室で「そうだ、ナオの歓迎会をやろう」と言いだしてきた。
「歓迎会?」
「そう、そろそろ出会って1週間だから…皆でやってもいいんじゃないか?と思ってな」
「実際何をやるんだ?」
「それはこれから決めるのさ」
 学校の玄関を出て、寮に帰宅しながら ナオとトヨカズは話す。
 トヨカズは、2本指でL字を描きARウィンドウを表示させる…。
 こちらには 青色のパネルにしか見えていないが、ボイスチャットで連絡を取ろうとしているのだろう…。
 最初に応答したのはクオリア…それから10秒程してレナが入ってくる。
 トヨカズは ウィンドウのプライベートモードを解除し、ナオにも見れるように可視化する。
 トヨカズの目の前が黄緑色の量子光で包まれ、中からクオリアのアバターの電子妖精が現れる。
 身長は25センチで 少し大きめなフィギュア位だろうか?
 見た目はいつものクオリアだが、服装が白いワンピースで背中にM字の機械翼がついていて黄緑の粒子…量子光を放って飛んでいる。
 そして レナはARウィンドウに映像として表示される…。
 背景が量子光色のグリッド線から考えて仮想空間で、これも本人を再現したアバターなのだろう。
『で、今回は何を企画したの?』
 レナがトヨカズに聞く。
「なんだ…知ってたのか?」
『そりゃ講義中も上の空だったし、更に土曜となればね』
 慣れた様子で聞いてくるレナに対してクオリアは…。
「ナオの歓迎会らしい」
 レナのARウィンドウを横に広げ、クオリアがそこに座る。
「あれ?オレ言ってないよな?」
「電子的に散歩してたら聞こえてきてな…。」
「いやそれ盗聴…。」
 クオリアは 現実と仮想の区別なく気軽に行き来する。
 確かに仮想世界が現実のクオリアからすれば『散歩中にの盗み聞き』程度なのだろうが…。
 まぁオレは クオリアしか見ていないが、自分自身が危険な技術を持つ存在だと理解しているエレクトロンは、皆 倫理観が高いらしい。
 実際この550年間トチ狂ったエレクトロンが地球を消滅させていない事が何よりの証拠だ。
 どうやら、AIの暴走による人類絶滅は回避されたらしい。
『明日にやるなら昼からね…。
 午前には私は用事があるから。』
「指定してくれれば時間は開ける。」
 レナとクオリアが言う。
「おう…なら明日の午後に…場所は…。」
『いつも通りトヨカズの『パブリックスペース』でいいんじゃない?
 VRならクオリアも食べられるし』
「?」
 トヨカズは、集会場でも持っているのか?
「ナオ、トヨカズの言う『パブリックスペース』とは、彼が所有するVR上の公開用空間の事だ。」
 ナオが分からないと思ったのかクオリアが補足ほそくしてくれる。
「VRか…一度やってみたいと思っていたんだけど…」
「いや…ナオは常にVRだろう」
 トヨカズがそう答える。
「はい?」
 いやいや、フルダイブ型のVR 何てやった事なんて無い。
「確かに、トヨカズが言っている事は正しい。
 義体が送る感覚はVRと同じものだからな。
 言い換えるなら、脳がVRを使って現実世界にダイブしている事になる。」
 クオリアが言い、ナオはしばらく考えて、「なら、オレは現実と仮想をどうやって見分ければいいんだ?」と言う。
「ARウィンドウに表示は出るが、表示を誤魔化されて現実に似た世界に入れられたら自力での判別は不可能だ。
 解決する方法は1つ…外部の人間と連絡を取って自分の状態を確認して貰うしかない…。
 まぁそこまで怖がらなくても良いだろう」
「分からなくなったらクオリアに連絡を取るよ…それでダイブ方法は?」
「首を見せて欲しい」
「どうぞ」
 クオリアはナオに近づき首の後ろを確認する。
「マグネット式の有線ケーブルだな…皮膚の内側に磁石が入っていて磁気で情報をやり取りする仕組みだ。
 サイボーグやヒューマノイド用の一般規格と言ってもいい。」
「確かに風呂入るしな…コネクタが水没しない仕組みか?」
「そう…それと私の部屋にヒューマノイド用のケーブルがあるから、それを歓迎会のプレゼントにしよう」
「助かる」
 エレクトロンは、人と金の繋がりを持つことを好む。
 人相手だとビジネスパートナーとした方が関係が上手くいくし、ある程度の信用も確保出来るからだ…。
 この方法をよく使うのが、レナの父親で都市長の『アントニー・トニー』だ。
 つまりエレクトロンのクオリアにとってプレゼントと言う行為は、損得勘定そんとくかんじょう無しで動くと言う証明で、かなり重い意味を持つ。
「じゃナオ以外の各自1つ何かを用意して来ると言う事で…時間は明日の12時から…。」
「分かった…それじゃ」
 レナが接続を切った事で ARウィンドウが無くなり、そこに座っていたクオリアが一瞬落下し、すぐにまた飛び始める。
「ナオ、ケーブルは玄関のポストの中に入れておく。」
「分かった。」
 量子光がクオリアを包みそして量子光が無くなるとクオリアの姿は無くなっていた。
「んじゃオレも用があるんで…。」
「おう、それじゃまた明日。」
 トヨカズは、都市の中心の方向に向かって進み始めた…外円部の寮とは逆になる。
「帰るか…。」
 結局パーティの企画だけして、内容は皆に丸投げ…無茶苦茶ではあった物のそれがトヨカズの特徴で そのマイペースな性格がヒトを引き付けるのだろう。
 ナオはそう思いナオは寮に向かって歩き出した。
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