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SS13今日のサーシャ11(飛び跳ねるベスとサーシャ!)✔

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 魔蟻のスタンピードが終息してメダリオン王国内に安どの声が聞こえるようになっている。

 アルフレッドがサーシャとソフィアをロプト村まで送ってくれた。王都のマシュー商会に借りた馬車でガルトレイク公爵の屋敷まで迎えに来てくれたのだ。

 馬車がロプト村を囲う柵に近づくと「ワン ワン ワン」と鳴き声が聞こえる。サーシャが馬車の窓から覗くと千切れそうなほどブンブンと尻尾を振るベスの姿が見えた。

「迎えに来てくれたのベス! ありがとうなの!」

 サーシャは馬車と並走するベスに嬉しそうに言った。

 ベスは並走しながらく顔をサーシャに向けると一層大きく「ワン!!」と返事するように吠えた。

 馬車は門を抜けると大きく右に曲がり、サーシャとソフィアは不思議そうな顔になる。少し進むと今度は左に曲がった、直進すると橋を渡りまた左に曲がる、二百メートルほど直進すると馬車は停車した。

「川向こうは森でしたよね? 開拓したの? この短期間で信じられないことをしますね!」

 ソフィアが窓の外を眺めながら独り言のように言った。

「お母様、サーシャ、屋敷に着きましたから降りてください!」

 馬車のドアを開けるとベスが出迎えてくれる。サーシャは嬉しそうにベスの背中に飛び乗るとしがみ付き、顔を背中に埋め左右にグリグリさせると顔を上げ「ぷはぁ!」と、大きく呼吸をした。

「ベス、会いたかったの! モフモフ、やっぱりサーシャはベスがいいの!」

 ベスは首を捻ると嬉しそうに背中のサーシャに視線を送り、「ワン!」と吠えた。顔を戻すと飛び跳ねるように門を抜け、庭の中を走り回る。

 サーシャはベスの長い毛を必死に掴んでいるが飛び上がる度に体が浮き上がっている。ベスはちゃんとコントロールしているようで着地の際にはサーシャの体はふわりと背中に収まる。

 最初は怖がっているようだったサーシャだが、キャッキャッと声を上げて喜び「もっともっと、高く飛んでほしいの!」と、ベスに催促している。

 ベスが更に高く飛び上がり高さは三メートルを優に超え、ソフィアは少し不安そうに眺めている。

 アルフレッドはいつでも駆けつけられるように身構えており、真剣な表情でサーシャとベスを見ていた。

 サーシャの気が済んだのか、ベスが疲れたのかジャンプは終了し、ゆっくりと屋敷に向かって歩き出しだ。ベスは舌を出し「ハァハァ」と大きな息をしている。後者の可能性が高そうだ。

 ソフィアはベスとサーシャが屋敷に入るのを見届けると、ゆっくりと辺りを見回した。川の向こう側には見知ったロプト村の風景が広がっていたが、反対側の森だった場所には屋敷の他に一軒もなかった店が何軒もあり、道から見える先には広い畑が広がっていた。

「私が離れている間にこんなに開拓してしまうなんて!」

 ソフィアは目を見開きながら驚いている。

「お母様、マシューさんがやってくれたんです! さあ、新しい屋敷に入りましょう! この屋敷もマシューさんが建ててくれたんですよ!」

 アルフレッドはまだ整備途中で何もない庭を歩いてソフィアを屋敷へと誘う。ソフィアはキョロキョロとしながら歩くが、庭の一角に教会のような建物を見つけビクリとした。

「アル、あの建物は何?」

「マシューさんが造っているのですが、未完成だからと教えてくれないのですよ!」

「神聖教会に見えますが大丈夫ですか?」

 ソフィアは不安そうに言った。ソフィアは癒しの聖女と呼ばれ、神聖教会に聖女認定されそうになり、ジェイと共に名を変えてロプト村に逃げて来た過去があった。

「マシューさんは神聖教会とも取引していますが、信頼できる人ですから大丈夫ですよ! それに女神様とは違う神様を信仰しているみたいですよ!」

「そうなの? アルがそう言うなら大丈夫なのでしょうね。村の外の柵も丈夫なモノになって、もう砦と言ってもいいレベルですよ! そう簡単には入れないですね」

「みんなの安全のためにもっともっとやりますよ!!」

 アルフレッドは元気に言った。ソフィアはそんなアルフレッドを抱き寄せると頭を撫でた。

「ありがとう、アル! 頼りにしています」

 屋敷に入るとジェイがソフィアを出迎えた。

「お帰りソフィア、無事に帰ってくれてありがとう、待ち遠しかったよ!」

「私も」

 ふたりはしばらく熱い抱擁を交わし、キスをすると離れた。

サーシャは長旅と先程のベスの歓迎で疲れたのかすっかり静かになり、ベスの背中の上で寝息を立てていた。 

「あらあら、サーシャったらベスの上で器用なこと」

 ソフィアがサーシャ下ろそうとするが、サーシャの両手はベスの毛を掴んで放そうとしない。

「力が強いわね! ベスしばらくお願いね」

 ベスは任せておけとでもいうように「ワン」と吠えた。

 ソフィアとジェイはダイニングに移動すると、お茶をしながら離れていた間に起ったことを話して聞かせあった。
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