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211.2邪神教対策2(結界の魔道具)✔ 2024.2.25修正 文字数 前3,506後2,771減735

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 レックスから譲ってもらった上位の魔石を渡すため、王都の神聖教会に来ている。司祭様はかなり驚かれたけどありがたいと受け取ってくれた。

 俺が「聖者を守りたいのでお金は要らないです」と言ったら更に驚かれたんだ。少しの間、難しい顔をしていたが、「神聖教会として見合うだけの対価をお渡しするから待っていてほしい」と、言われてどこかに行ってしまった。職員さんが紅茶を出してもらい、一時間近く待たされた。

 司祭様が戻って来るなり「極秘だから他言はしないでほしい」と言われたんだ。どういう意味か理解できなくてポカンとしてしまった。

 司祭様は俺が渡した高位の魔石に、結界の魔道具を作る呪文や魔力の込め方などの工程を惜しげもなく見せてくれたんだ。作業により、魔石の魔力が消費されていくのが魔力鑑定眼で見えている。三度、繰り返して作業は完了した。

「これが個人用の結界の魔道具です。これに魔力を充填してくれますか?」

 俺は魔石を壊さないように魔力鑑定眼で確認しながら、慎重に魔力の充填を行った。これ以上込めると壊れてしまうだろう。司祭様に魔力の充填が終わったことを説明した。

 いつものことだが、司祭様は魔力充填の限界がなぜ分かるのかと聞いて来るんだ。魔力鑑定眼で見えてはいるが、宝玉や魔石に魔力を充填して破壊した経験則になる。だから、明確な根拠とかないので説明できないんだ。詳しくは説明せずに「なんとなく分かる」とだけ答えておいた。

 司祭様は納得してはいなかったが、結界の魔道具を発動させて見せてくれた。機能することを確認すると、結界の魔道具のひとつを俺に手渡し、じっと俺の眼を見ている。

「この個人用の結界の魔道具で家族をお守りください! 作り方は覚えましたか?」

 作り方は覚えましたかって……作っていいってことなの? 聞きたかったが、司祭様の目は聞いてはいけないと言っているようだった。

 ものすごく驚いたけれどありがたく受け取る事にしたんだ。サーシャやお母様が一緒に行動してくれるなら、ふたりを守ることもできるだろう。それにあと二週間もすれば、レックスが次の魔石を譲ってくれるはずだ。

 神聖教会の極秘事項であり、交渉材料や収入源である製造方法を教えてくれるなんて、通常では考えられないことだろうな。司祭様に深く感謝し、邪神教を地上から失くすことを改めて心に誓った。

 司祭様にお礼を言うと、急いで屋敷に戻ることにしたんだ。個人用結界の魔道具の能力を把握する必要がある。過信すると逆に危ないからね。

 大きな宝玉で作られ他結界の魔道具なら、教会の礼拝堂をすっぽりと包み込むほどの広範囲に結界を張ることができる。強度も魔蟻クイーンの突撃に耐え、持続時間も約二ヶ月ほど連続で使用することができるんだ。

 上位魔物の魔石で作った結界の魔道具の性能だけど、範囲は半径二・五メートル程で強度は不明。それなりには働いてくれるらしいけど確認の方法がない。だってテストして壊すと困るからね。範囲も狭いし、魔力量的にも宝玉よりは劣るはずだ。連続使用時間については分からないが、都度の使用なら、二週間からひと月は使えるだろうと司祭様が教えてくれた。

 テストで起動させてみたんだけど、結界を発動させたままでの移動は大変だという事が分かった。結界が地面に引っ張られているみたいで歩きにくいんだ。結界を張ったまま移動できるのはいいけど、思っていたのとは違うみたいだな。

 馬車の中で使えるか試したが、空間が魔道具から半径二・五メートルはないと不完全な発動になるみたいで、攻撃されたら防げそうにない。

 視認もし難いから気を付けないとぶつかる危険もあるんだ。

 ゴン! 「キャン」

 振り返るとベスが結界にぶつかって、痛そうに鼻を押さえていた。

《アルフレッド様、なんですかこれ! 鼻が潰れるところでしたよ!》

《ごめんベス! 今、結界に注意するように念話しようと思っていたんだけど、間に合わなかった。大変だ、ベスの高い鼻が潰れているよ!》

《アルフレッド様! やめてください。ベスの鼻は元からこの高さです!》

 ベスは鼻を押さえていたが表情は笑っていた。直ぐに癒しの魔法を行使したが、鼻の高さは変わらなかったよ。

 ベスに神聖教会から個人用の結界を貰ったことや、実験していたことを説明した。するとベスは微妙な反応をした。

《サーシャ様には扱えないのでは?》

《そうなんだよ。中でサーシャが気でも失ったら解除できないからね。あ!……今のサーシャでは上手くしゃべれないから、発動も解除もできない……》

 ベスからこの結界は使えないと、漏れて伝わってくる。パスで繋がっているからか、念話以外の考えまで漏れてくることがあるんだよね。

《この個人用の魔道具を改良できないだろうか?》

《アルフレッド様ならできるのではないですか?》

《できるといいけど、かなり研究と実験が必要になるかな》

 お母様に個人用の結界の魔道具を使ってもらうことに決めた。お母様に渡して使用方法を説明する。すると、お母様の表情がだんだんと曇っていく。これは面倒だと考えている時の顔だ。メチャクチャ分かりやすいからな。常時使うなんて無理そうだ。動き難いからそう思うのも分かるけどね。

 更に二週間が経過してレックスが上位のオークの魔石をくれた。報酬としていつものごとく、美味しい料理を提供しておいた。料理は普段も作るから、違いは料理の品数と量が多いことくらいなんだけどね。

 司祭様の作り方をまねして結界の魔道具を作ってみた。高位の魔石に結界の呪文を魔力を使って定着させる。ひとつ目の作業が終わった。魔力を充填して直ぐにテストしてみよう。

 魔力鑑定眼で注意しながら魔力を充填する。これくらいが限界だな、早速、結界を発動させてみよう。

 目には見えにくいが、無事に結界は発動した。魔力鑑定眼で確認するとそこに魔力の結界が見える。ベスに足で結界を叩いてもらうと、カツンカツンと音がした。これくらいの衝撃では歪んだりしないんだな。無事に結界の魔道具を作ることができたようだ。もうふたつも同じように作り、正常に作動することを確認した。

 王都の神聖教会まで飛んで行き、ふたつの結界の魔道具を司祭様に渡した。作り方を教えてもらったお礼だ。

 司祭様は喜んで受け取ってくれたが、「やはりな」と、小声で言った。結界の魔道具は簡単に作れるものではないと、今更のように話してくれたんだ。

 王城に飛んで行き作戦の状況を聞いた。近いうちに作戦を実行に移すそうで、日程が決まれば連絡してくれるそうだ。このことは団長クラスしか知らされていないと念を押すように言われたんだ。

 屋敷に帰るとレックスとチビとベビに状況を伝えた。レックスたちには、申し訳ないが訓練場と地下シェルターに住んでもらい、町を守ってもらっているんだ。

 王城からの連絡が来れば、いつでも向かえる体制は整ったぞ。
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