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183.ポート公爵艦隊と遭遇1(隠れた性能)✔ 2024.1.21修正 文字数 前3,087後2,449減638

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 かなり沖合まで出てきたから、そろそろ引き返そうかな。今日の航海中にまったく他の帆船に合わなかったんだよな~、海賊被害の影響がまだ残っている可能性が高そうだな。

 家族に帰ることを伝えると、何度も休みを取るのは無理だからもう少し帆船に乗りたいと言われたんだ。お父様もお母様も休みを取るのが大変だったと言っていたからな。

 これ以上沖に出るよりは、塩を運搬する予行演習も兼ねて、ポート港に向けて帆船を走らせてみるかな。

 ポート港側から風が吹いているため、ウインチを風魔法で動かしてメインマストを巻き上げる。中央の大きな横帆がカタカタという音と共に撒き上がって閉じられていく。巻いたロープが緩まないようにしっかりとウインチの爪をロックしておいた。

 船首にある舵輪を大きく回してやると、帆船は風に向かうように右旋回を始めた。ポート港側から風が吹いているため、何度も帆船を切り返さないと風上方向に進むことはできない。

 風に向かって浅い角度で斜めに切り上がって進む。このまま直進すればハイルーン領の海岸が見えてくるだろう。行き先はポート港のため、舵輪を先程とは逆方向に回し、船首を風に向かうように旋回する。横帆の大きな帆船は特に風上に向かって方向転換するのは苦手なんだよ。

 ポート公爵軍も第二騎士団の軍艦も横帆だから、風に向かって進むこと自体が苦手なんだけどね。

 うちの帆船も改造する前は横帆だったんだ。それをメインマストを横帆のままにして前後は縦帆に改造してある。これにより、向かい風の際に横帆を閉じてやれば、横帆の帆船とは比較にならないほど切り上がれるようになる。その結果、帆を減らしても早く目的地に着くことができるんだ。勿論スピードもこっちの方が早いよ。

 もう少し角度を立ててみよう。

 この角度でも風上に切り上がれている。向かい風の試験航行にもなっていいな。横帆の帆船ではこんな角度で切り上がることなんて絶対にできないからね。この帆船の性能は結構高いんじゃないかな。

《ママ、あっちに帆船が見えるノ》

 ベビから念話が届いた。どこ? 見えないんだけど。マストの高さまでホバリングし、視力強化すると遠くに小さな船影が五つ見えた。五隻もの帆船となれば、ポート公爵軍か第二騎士団の可能性が高い。きっと、海賊船の見回りか訓練を行っているんじゃないかな。

 あっちからは追い風だから、一直線に向かってきている。この帆船を海賊船と勘違いしていないだろうな? ハイルーン家の旗を作った記憶がない。ここで逃げ出したら怪しいだけだからな。このまま挨拶しに行くかな。

 ひたすら切り返しを繰り返し、五隻の帆船に近づいて行く。向こうから来るスピードの方が早いんだけどね。向かい風なので何倍も時間も距離も掛かる。塩を運ぶ時も大変そうだな。

 何度も切り返す帆船の向きを変えているため、当然帆船は揺れるし傾く。お父様とお母様が酔わないか心配だな。

 チビに船室の様子を見てくれるようにお願いしたが、サーシャと船室の窓から景色を楽しんでいて元気だと教えてくれた。

 できるだけ遠くを見ているほうが酔いにくいからね。

 今のうちに昼食を取っておくかな。調理している時間はないから、今朝作った料理を運んできている。これを魔法で温めて食べてもらおう。舵輪は固定しておけば走らせることはできるが、見張りは交代で行う必要があるな。

 料理を温めて提供する間、ベビに帆船や魔物などが見えたら早めに教えてくれるように言っておいた。

 オーク肉のスライスしたものとふわふわパンケーキを、魔法で温めて提供する。飲み物は大人にはワイン、サーシャにはぶどうジュースを、 レックスとベス、チビにはいつものように魔力水だ。準備が終わったのでベビを呼び戻すと魔力水とお肉を渡しておいた。

 俺は船首で操船しながら食べることにする。沖に向かっている時のほうが安全性は高いから、その間、ベビに見張りしてもらったんだ。

 ここからでも五隻の帆船が見えてきた。視力強化するとマストの旗も確認できた。五隻ともポート公爵軍の軍艦だな。 

 見張り台の動きや甲板の様子が怪しい、海賊船と勘違いしているのだろう、戦闘体勢に見える。いきなりバリスタや火炎容器が飛んで来たら嫌だな。炭素を混ぜれば強度も上がりそうだなと炭を混ぜて土魔法でコーティングしたから、船体が真っ黒だから余計に怪しく見えているのかもしれないな。

「お父様、舵輪を任せます。ちょっとポート公爵軍の帆船に挨拶しに行ってきます」

「なに? どうすればいいんだ?」

「ぶつからないようにお願いします」

 ウイングスーツに着替える暇がないため、ベビの背中に乗り連れて行ってもらう。

 龍が見えたからだろう甲板の騎士や乗組員が大慌てだ。この高さを攻撃できる武器なんて積まれていないのは知っているからな。だって俺が改造したんだからね。

「アルフレッド、ハイルーン伯爵です。ポート公爵軍のみなさんこんにちは」

 上空から大声で叫ぶと、みんな手を振り出した。手に持っていた弓矢や、バリスタの射手が射撃体勢を解除した。

 攻撃される可能性が無くなったので、中央の旗艦の甲板に降りてもらう。

 ベビが甲板に降りると熱烈な歓迎をしてくれた。みんなよく知った顔ばかりだからね。

 集まっていた男たちが左右に分かれると、セシル騎士団長が現れて歓迎してくれた。

 相変わらずの良く日焼けした肌にベリーショートの金髪だ。小柄で華奢な体だがよく鍛えられていることは一目でわかる。

「ご無沙汰しています」

「お世話になりましたね。ハイルーン伯爵のお供は龍なのですね」

「この龍はママ龍から預かっているんですよ」

「そうなんですか、ところであの真っ黒い船体の帆船は、この前拿捕した海賊船ですか?」

「ええ、改造したんです」

「帆が二枚ですね。なんであんな角度で帆船が進めるの、おかしくない?」

 俺は質問攻めにされ、横帆と縦帆についての説明をした。しまいには近くで見たいと言い出され、帆船に招待することを強制されたんだ。変わらないなこの人、どこまでも自分の欲望に忠実なんだよな~。
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