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387.人魚の島訪問(身長のことは言わないで)✔

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 あの速度だと万年亀アンフィトリーテーが、人魚の島に着くのは数ヶ月先になりそうだ、人魚に説明しておこう。ベビにお願いして人魚の住む島に連れて行ってもらう。

 ベビの大きさは二十メートルを超えており、もう少しでママ龍さんと同じ大きさになる。飛行速度も速くなっており、なんと言っても風の制御の上達には目を見張るものがある。

 チビという競争相手が存在しているのも大きいとは思うが、レックスという指導者と魔石の大量摂取によるドーピングの影響が大きい。

 魔力総量なんてパパ龍さんよりも多くなっているし、風の刃はヤバいほどよく切れるんだよ。

 切れ味だけで言えば俺のウインドスラッシュよりもよく切れるかもしれない、この前なんて、あの硬い魔蟻を綺麗に切断していたからね。魔蟻の脚をカットする時はチビとベビにお願いするほうが早いんだよ。

 〈ママ、人魚の島が見えて来たの!〉

〈ベビ、島の人を驚かさないように対岸の島に降りてよ。そこからは人化して一緒に行こう!〉

 ベビは対岸にある無人島に着陸すると人化してワンピースを着た。ワンピースが少し小さくなってきた? 
 
「ねえねえ、この島はシーラのフライとクラーケンリングが美味しいノ! 飲み物はココナッツジュース!!」

 口から涎を流しそうな勢いで食事の話を始めた。ベビが言うように龍の楽しみと言えば狩りと食事くらいしかないからね。もしかして偶に食べに来てる?

「よく覚えていたね、ベビも行く先々でそこの料理を食べるようになったよね?」

「だって、楽しみなんてそれくらいしかないノ!」 

「先に食べる? それから人魚の城に向かおうか?」

「それがいいノ!」

 ベビがニッコリと微笑むと俺を背負ってホバリングを始めた。海面スレスレをすべるようにホバリングし、人魚の住む島に渡った。上陸したのはできるだけ人目がない場所だ。

 そのまま、何食わぬ顔をして市場に向かう。ベビは早く食べたくて仕方ないのか、俺の手を引いて少し小走りになっている。あー美味しそうな匂いがしている、この匂いに釣られたんだろうな。

 ここはいつ来てもフライが多いんだよね。バナナもフライにするくらいだからね。

 定番のシーラのフライとクラーケンリングを購入すると、レモンを搾って口に放り込む。
さっぱりしたレモンの風味と酸味がよく合うんだよ。

 次はタルタルソースで食べよう、これはこれで美味しいんだよ。当たり前だが、フライは揚げたてが美味しいな。

 塩が足りないが、美味しかった。俺はもうお腹いっぱいだから、後はベビに任せよう。

 次から次にベビの口の中にシーラのフライとクラーケンリングが消える。また追加で購入しているな、見ているだけで胸焼けしてきた。段々とベビの周りに人だかりができてきた。それもそうか、かわいい女性がこれだけ食べれば目立つからね。

〈ベビ、目立ち始めたよ、そろそろお城に行こうよ〉

 念話するとベビは残念そうな目で見てきたが、周りを見回すと小さく頷いた。

〈もう一つだけなノ!〉

 いやいやいや、それはもう一つではなくて、もう一回というんですよ!

 ベビは持てる限りのクラーケンリングを購入すると、タルタルソースをかけてパクパクと食べ進め、ほんの数分で完食した。辺りからは歓声や溜息に拍手まで聞こえている。

 何貰っているの! 近くにいた人からクラーケンリングの差し入れを受け取り嬉しそうに口に放り込んでいる。また貰っている。

 軽く三十人前は食べたのではないだろうか。もちろんクラーケンリングだけでだよ。シーラのフライは別腹なんだとベビは言うからね。流石に胸焼けしたのか、今度はココナッツジュースを十杯流し込んだ。どこに入るんだろうか? 俺だけではないみたいだな、きっと周りの人もそう思っているはずだ。

 俺は一杯だけでいいからね。ベビが一息ついたようなので城に向かう。

 門番に俺の名前を伝えるとすぐに案内してくれた。見た目は変わっても俺の名前は通用するみたいだな。

 人魚の成長も人間より早いらしいから、アクアも成長しているだろう、お転婆が落ち着いていればいいんだけどな。

 城の見た目に変わりはなさそうだ、兵士に大広間に案内された。

 ポセイダル王にアムピトリーテ王妃、ネプトゥヌス王子にアクア王女まで勢揃いで出迎えてくれた。アクア王女も大人びてきたな……俺だけが子供に逆戻りだからな。

 もう何回同じ話をしただろうか? 会ったことのある人には毎回、邪神との戦いも含めて説明しないといけないから嫌になるんだ。

 早速、南半球に人魚がいたことを伝えたら、メチャクチャ驚かれると共に喜んでもらえた。万年亀が運んでくれることを説明したら、これにも驚かれた。多分数ヶ月後に現れるので、背中の施設で暮らしながらお見合いに向かうように説明した。

 早くても往復に一年は見ていた方がいいだろうと言ったら、予想通りというかシーサーペントに乗って行く方が早いみたいな話をしてきたからね。

 エグザイルエルフから聞いた話として、赤道付近には巨大で狂暴な魔物が生息しており、帆船が帰って来ないことを説明した。そしたら簡単に受け入れてくれたんだよ。

 忙しくて一緒には行けない事も伝えて、念話の魔道具を貸与したからね。

「ねえ、アルフレッド! ちょっとちじんじゃった?」

 グサッと心に刺さる一言をアクアは平気で言ってきた。見た目はかなり大人の女性になったようだが中身は成長していないようだな。

 態度に出さないようにしてはいるが身長のことはコンプレックスなんだよ。邪神と戦う前の俺が順調に成長していれば、今頃は百八十センチメートルくらいあったはずだからね。見栄とかではないよ、カイル兄さんもクロード兄さんも背が高いしサーシャも順調に伸びているから。なんか一気にブルーな気持ちになってしまったな、食事に誘われたがフライも食べたばかりだし帰ろうかな。

「ごめんアクア、やっぱりやり残した仕事が溜まっているから、帰るわ! 王様たちによろしく言っておいてよ」

 ベビは食事を楽しみにしていたようだが、帰ることを告げて背負ってもらった。帰りは来た時と逆に無人島に渡ってから龍に戻ってもらう。

〈ママ、元気ないノ、大きくならないのを気にしているノ? いっぱい食べたら大きくなれるノ! ほら、これ食べてなノ!〉

 ベビが隠し持っていたのか、クラーケンリングを口に入れてくれた。どこから出したんだこれ? 俺の顔に出ていたのだろう、ベビを心配させてしまったみたいだな。

〈ありがとう、ベビに心配させたみたいだね、……そうだね、帰ったらいっぱい作って食べようか?〉

〈わ~いなノ! ベビは大きなハンバーグがいいノ! チーズも入れて欲しいノ! あとバケツプリンとスワンシュークリームも食べたいノ!〉

 長い首を曲げて俺をキラキラした目で見てくる。よそ見しているが障害物などないからね。偶にバードストライクがあるが、全て風の制御で防御されているから被害が出ることはない。

 ラードンが襲ってくれば別だが、返り討ちにしてラードン料理の食材が増えるくらいだからね。

 それにしてもスピードが上がっているな、それも風の制御のお陰で風圧を感じないからね。

 あらら、万年亀のアンフィトリーテーはまだこんなところを泳いでいる。これだと人魚の島まで二ヶ月はかかるんじゃないかな。

 あれ? よく見たら木材や積み荷が帯のように長く漂っているのが見えた。また帆船を沈めたんだな。エグザイルエルフも新しい島を発見したと言って上陸しようとしていたからな。ここまで頻繁だと動く帆船ホイホイだな。俺がセーフハウスを造ったから余計に上陸しようとしているのかもしれないな。被害が増えた原因が俺だったりして。建物の横に近づくな危険と立体文字を作った。これで被害が少なくなればいいんだけどな。

 生存者を捜さないとね……辺りを捜してみたが全く見つけることはできなかった。肉食の魔物や魚がいるから海に落ちればまず助からないんだ。

 アンフィトリーテーはまた寝ているようで念話しても反応がない。勝手に鰭に絡んだロープと残骸を取り除き、癒しの魔法を行使する。

 アンフィトリーテーの背中に降りていたベビの背中に乗ると家路を急ぐ。
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