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377.家族との再会(カイル兄さんの爆弾発言)✔

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 久しぶりの領地だ、確認のためスピードを落としてもらい、放牧地やブドウ畑の上空を飛行する。チビとベビが見えたのだろう下が騒がしくなってきた。

 俺達を見つけた人々が追いかけるように走っている。見上げながら走っているからか、ぶつかり転ぶ人まで見える。怪我していなければいいけど、子供にぶつかると危ないよ。

 街の上空にやって来た。屋敷の裏手にある訓練場には多くの人が集まっているのが見えている。高い塀の外の道にも多くの人が集まっている。チビとベビは人気者だからね。みんなが手を振ってくれるので振り返しておこう。

 ゆっくりと高度を下げていくと歓声が巻き起こる。無事に訓練場に着地できた。もう塀の外からは見えないんじゃないかな。

 ベスがチビの背中から飛び降りた。俺もベビの背中からゆっくりと降りる。かっこよく飛び降りたいところだが、この体に自信がないから転んだら恥ずかしいからね。

 訓練場内が急に静かになってしまった。きっと原因は俺だな、身長が百二十センチメートルほどの子供に戻ってしまったんだからそうなるのも分かる。

 家族が出迎えてくれている。あれクロード兄さんの顔もある、そうか卒業したんだな。

 だが、距離を取られており微妙な空気が漂っている。

 妹のサーシャと同じくらいの背丈になっていそうで並ぶのが嫌だな。

 アルテミシア様の姿は見えないな、それがせめてもの救いだな。説明は先送りすることができそうだ、それまでに元の身長に戻ればいいんだけど。

〈女神様、俺の身長は戻りますよね?〉

 やっぱり応えてはくれないか。

 お父様が数歩前に歩み出てきた。その顔はなんとも言えない表情をしている。

「アルなのか?」

 やっとのことで絞り出したように見えた。

「お父様、アルフレッド・ハイルーン、ただいま帰りました。ご心配をおかけしました!」

 疑いの眼差しを向けられている気がしてならない、丁寧にあいさつしておく。まだ、完全には信じてはくれていないようだな。普通そうなるよね、俺なら疑うからね。

「ママ、服が入らないノ!」「アルママ、チビも小さいダォ!」

 体の大きくなったベビとチビが人化してワンピースに悪戦苦闘していた。丈を調整できる大きさではないな。

「お母様、チビとベビに大人用のワンピースをお願いします!」

「わ、分かりました!」

 お母様が侍女に伝えている。少しするとワンピースが二着届いた。

「ベビ、チビ、これを着てみて、合わなければ仕立てようね!」

 少し小さいか? ちょっとキツそうだな。今はこれで我慢してもらって仕立てよう。

「採寸して作ろうね!」

「ありがとうなノ!」「ありがとうダォ!」

 ベビとチビは人化するのが好きだから嬉しそうにしている。やっぱり龍の体が大きいと人化しても大きくなるんだな。

「アルお兄ちゃんなノ?」

 マイエンジェル、サーシャが話しかけてくれた。前世の妹であることも女神様から聞いたが、記憶がないそうなので前世のことは言わないよ。

「そうだよ、サーシャ! おいで!」

 以前のように両手を広げてみる。少し躊躇していたが抱き着いてくれた。かろうじて背は俺のほうが高い……かな?

「アルお兄ちゃん、小さくなったノ! サーシャと同じなノ!」

 サーシャがハグした後に俺の頭を手でポンポンとしてくる。止めてくれよ、気にしてるんだから。

「邪神と戦って怪我してね、エリクシアでここまで回復したんだ!」  

「サーシャ心配していたノ!」

 サーシャが大粒の涙をポロポロと流し始めた。ポケットの中を探ったがハンカチは入ってなかったよ。

 お母様がやって来てハンカチを手渡してくれる。

「アル、無事に帰ってくれてありがとう、大変だったみたいね!」

 お母様はジッと俺を見つめ、サーシャと一緒に抱きしめてくれた。

「本当にアルフレッドなのか?」

 カイル兄さんがまだ疑っている顔をしている。

「カイル兄さん、騎士の仕事と絵本の読み聞かせはしてくれていますよね!」

「本当にアルフレッドなんだな! ちゃんとやっている。……やっております、領主様!」

 カイル兄さんが笑いながら冗談を言ってくれた。俺だと認めてくれたみたいだな。

「あの……相談があるんだけど、いい?」

 なんだ? 今この状況で相談? カイル兄さんが怪しすぎる。お父様とお母様を見るとなんとも言えない表情をしている。いったいなんだ?

「クリス……ポート公爵のクリス様と婚姻が決まったんだ!」

「よかったですね! 挙式はいつなんですか? 盛大に準備しましょう!」

 なんだ、この家族の空気は?

「それが……」

「どうしたんですか? クリス第二騎士団長がお嫁さんに来るんでしょ? おふたりの住む家も建ててありますよ! 僕からの結婚祝いです!」

 カイル兄さんの顔が引きつっており、口を開けることができないようだ。

 見かねたお父様が助け舟を出した。

「カイルだが養子に行くことになった! クロードが男爵を継ぐからな!」

「へ!!」

 長男が養子に行くだって!? 俺は驚きのあまり変な声を上げてしまった。

「すまない! 雇われて頼りにされているんだが、どうしてもクリスを助けたくて!」

 そういうことか。泣き落としではないがカイル兄さんは優しいからな……カイル兄さんの人生だし、家族もそれでいいなら俺は応援するよ。

「カイル兄さんおめでとうございます! ポート公爵家の人になるんですね! 公爵ですか? すごいですね! ではここの家は別荘としてプレゼントしますよ! あとエリクシアもあるので少しだけなら差し上げますよ!」

「許してくれるのか? よかった! あと、勘違いしているぞ、公爵になるわけではないからな!」

 カイル兄さんがほっと胸を撫で下ろしている。そういえば、ポート公爵家は長女がいるんだったな。

「アルフレッドお帰り! 文官としてしっかりと働いているからな。カイル兄さんの分までお父様やお母様を助けていくから安心してくれ。あと俺の家もお願いします!」

 クロード兄さんがやっと俺の順番が来たかと、笑いながら話しかけハグしてくれた。今年卒業して約束通り帰ってくれていたんだな。

「すごく力強い戦力ですよ! クロード兄さんお願いしますね! カイル兄さんの分も!」

「ゲホッ!」

 カイル兄さんがむせ返して、頭を掻いた。家族みんな笑っている。なんて幸せなんだろうか、サーシャお前も幸せになってくれよ! 兄ちゃんは前世でできなかった分も含めて応援するからな。

 ハイルーン家の財力を見せてあげますよ。婿入り道具の準備を始めよう!!
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