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321. 魔法大国アスラダ日帰り弾丸訪問(やっぱり大騒ぎ)✔

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 魔法大国アスラダへ訪問する日程なんだけど、警備などの準備に日数が必要らしく一ヶ月後に決まった。緊急鳩便により、歓迎すると返事が届いたそうだ。

 空から龍に乗っていくことはちゃんと伝えているのかな? 正しく教えてあげないと警備の準備や国民に周知も必要だと思うんだけどな。

 キャスペル殿下が悪いことを考えていそうな顔をしていたのが気になるんだよね。国境まで警備や護衛が迎えに来た上空を、飛んで行こうとしている気がしてならないんだけど、流石にそれはやりませんよね?

 おっと、フラグを立ててしまったかもしれないな。どうやってフラグを折ればいいだろうか? それとなく、警備のことや準備もあるから伝えておいた方がいいですよ。と、言ってみようかな。

 このままだと、フラグは折られることなく回収されてしまいそうだ。

 キャスペル殿下から、チビとベビ、二匹の龍で飛んで行くことを提案された。一匹でもパニック案件なのに、二匹の龍が現れたら大変なことになるのが目に見える。

 チビまで連れていくとサーシャが機嫌を損ねるからと、無理やりな理由をつけ、信憑性を持たせるために、アルテミシア様もサーシャのご機嫌取りにお願いした。

 すると殿下はそんなに大変なことになるのだな。と、ベビだけ連れて行くことに同意してくれた。今回の一番の問題なんだけど、キャスペル殿下はアルテミシア様と同じようにしただけで、悪気がないことなんだよね。

 もう少し、相手の国に配慮するようにしてほしいな。龍で昼間に飛んで行こうとしている時点で俺も同罪になるだろうから、混乱が大きくならないことを祈っておくかな。 

 エンゲルベルト皇帝に、陛下から了解が出たことを伝えたら、すごく嬉しそうにしていたよ。まだ、領地を一体にするまでには数ヶ月以上はかかりそうだ。その間に今後の方針について、話を詰めていく必要があるんだけどね。

 お母様に丸投げしようとしたら、断られてしまった。困ったときは先人に知恵を借りよう。

 結論から言うと、ガルトレイクお爺様、ハイランドお爺様もそんなことはやったことがない、お前も大変だな頑張れよ。と言われてしまった。まあそうなるよね。お城の事務方が投げ出したくらいだからね。

 やはり欧州連合を参考にさせてもらうことにしよう。ハイルーン領を欧州連合と同じように考えれば、運営は出来そうだよね。税金だけ、グラン帝国とメダリオン王国に納めればいいわけだからね。そうは言っても決めなければいけないことが山済みだ。

 やっぱりマシューさんに相談しよう。流石のマシューさんも今回の相談には目を丸くして驚いていたよ。

 うちの税収でも関税は大切だから、領地を出入りする時に関税をかけるしかないみたいだね。

 うちの領地内で消費するなら、関税の対象外にしようかな。やってみないと分からない部分もありそうだ。どうしても問題になるようなら改正するしかないだろうね。

 安請け合いはしない方がいい。と陛下に思ったんだけど、こんなに早くブーメランになってしまったよ。

 インディカ米の苗も育ったので、田植えも済ませたからね。レックスの子供たちが鳥を追っ払ってくれているから種籾は食べられずに済んだ。病気にならないように癒しの魔法も行使しているからか、先に蒔いたやつも、植えた苗もどちらも順調に育っているよ。

 この一週間で大きな変化があったんだ。アルテミシア様がちょくちょくというか、ほぼ毎日遊びに来ているんだ。俺は迎えに行っていないんだけどね。

 どうやらチビがアルテミシア様にデザートと王都見物を条件に買収され、送り迎えをするようになっていたんだ。たまにキャスペル殿下も一緒にやって来るからね。

 お父様とお母様に、「お前も大変だな」と言われたんだけど、そう思うならもう少し相談に乗ってくれてもいいよね。

 領地経営をどのようにすればいいか考えていたら、あっという間に一ヶ月が過ぎてしまった。田植え以外に、自由に使えた日はなかったからね。うまくできているようで、十ヶ月も留守にしていたから、そのツケを払わされているんだろうね。

「ベビ、今日は魔法大国アスラダまでキャスペル殿下をお願いね!」

「任せてなノ!」

 ベビは服を脱いで綺麗に折りたたみ俺に渡してきた。ベビだけど、最近は殆ど人化して生活しており、龍の姿に戻りたがらないように感じるんだ。人化している方が食べ物が美味しいと言っていたし、みんなと一緒にお風呂に入るのも大好きなんだよね。

 六人を運ぶことができる魔蟻の脚で作った鞍というか籠の下に、ベビが体を滑りこませると元の大きさになった。ロープを手足に固定するとメダリオン城へと向かう。明るくなっているので、できるだけ森の上を飛行して、騒ぎになり難いようにした。

 どうしても街道をいくつか横切ったり、上を飛ぶことになるんだけど、気が付かれることが多く、逃げ惑う姿が見えるからね。特に馬のコントロールができなくなるのが、見ていて申し訳なかった。

 やっとメダリオン城に到着した。王都も大変な騒ぎになっている。怖いもの見たさなのか、城の周りに人が集まり出しているようだ。

 庭で待っている間も、離れているのに民衆の声が聞こえてくるからね。

 キャスペル殿下が民衆の大騒ぎで、やっと事の重大さに気が付いたみたいだ。だから、龍で行くのは止めた方がいいと言ったんだけどな。魔法大国アスラダには今日行くと伝えてあるんだから今更、中止にはできないよ。

 ベビの背中に乗っているのはキャスペル殿下と俺、第三騎士団長と隊長、他に文官ふたりの合計で六人だ。確かに他国を訪問するには六人では少ないのかもしれない。しかし、龍が襲ってきたと勘違いされないか心配なんだよね。バリスタやスクロールを使った複合魔法で攻撃されたりしないよね?

 今頃、街道にメダリオン国の馬車が見えなくてヤキモキしているんじゃないだろうか。だって、キャスペル殿下は空から行くって伝えていないんだからね。それはサプライズとは言わないよ。

 やっぱりな。国境付近で魔法大国アスラダの兵士たちが大慌てだ。見ていて気の毒になる。知らせに帰ろうにも馬が制御できていない。

 沿道に出ていた民衆も逃げ惑っている。きっと歓迎のために待ってくれていたんだろうな。

キャスペル殿下が申し訳なさそうな顔をしている。次は連絡してあげてくださいね。報連相は大切ですからね。

 騒ぎを巻き起こしながらアスダラ城の上空に到着した。見下ろすとどう見ても、魔法師や魔法騎士が臨戦態勢を取っている。

 街道の警備にも出ているんだろうけど、魔法師や魔法騎士の数が少なくないか? そういえば、魔蟻のスタンピードと岩風竜の討伐で多くの方が亡くなったと聞いた気がするな。直ぐに育つはずはないからかなり戦力ダウンしていそうだぞ。

 そんなところに龍が現れたらもう、嫌になっていそうだぞ。視力を強化して見たら、多くの者がここからでも分かるほど、ブルブルと震え、顔面蒼白になっているじゃないか。

 幸い、キャスペル殿下は留学されており顔見知りだったため、上空から大声で呼びかけられて、無事に着陸することができたよ。魔法騎士の何人かが腰砕けになり座り込んでしまった。

 キャスペル殿下は反省しているようだから、これ以上は言わないでおこうかな。

 今回の訪問で『龍に乗り現れたフラムバニングスの意思を継ぐ者』とか、記念にキャスペル殿下の絵本が作られたりしないだろうか?

 そうすれば、少しは俺の気持ちが分かってもらえる気がするんだけどな。キャスペル殿下は龍に乗ってきただけだからな……半分費用を負担してでも作ってほしいんだけどな。

 今回、殿下と第三騎士団長は紹介があったんだけど、俺は護衛の魔法師という設定なので、体長や文官と同じように紹介もされていないよ。陛下と殿下は残念そうにしていたけど、これを同行する条件にしたからね。

 キャスペル殿下はフラムソードを見せて、「フラム・バニングスさんから形見として譲り受けた」と、報告と礼を言われ、お礼のお金を渡されていた。

 魔法大国アスラダの宰相と紹介された男性が、キャスペル殿下の話を聞きながらポロポロと大粒の涙を流しておられたんだ。殿下に聞いたら、フラム・バニングスさんの父親だったよ。

 メダリオン陛下からのお礼という事にして、エリクシアを三個渡しておいた。もちろん使用方法を書いた紙も忘れずに渡したよ。

 流石にこれには驚いていたな。申し訳ないんだがと、早速、使わせてほしいと言われたのには驚かされたよ。指や腕に脚、症状の違いはあるが、体の一部を失われた方が大勢いたよ。全員分は無理だから、義足や義手の作り方も説明しておこう。

 さあ、エリクシア治療をされる方はお風呂に入って体を綺麗に洗って来てね。一週間は動けないから覚悟してね。特に脚の人はトイレが困るから、ズボンとパンツは履いてきちゃダメだからね。

 気持ちの整理がつかないと言い出されて、かなりの者が、上げていた手を下ろしてしまった。結局、片脚と片腕を失った魔法騎士の王族のふたりしか残らなかったよ。

 ベビが見世物状態になっており、だんだんと機嫌が悪くなっているのが伝わってきている。予想以上に時間を取ってしまったのでそろそろ帰りたい。

 魔力を測れる魔道具だけど、エリクシアの礼だと貰うことができたんだ。ラッキー!
 
 それに、エリクシアの使用や義手に義足のことで、賢者様の話になり、賢者様の残された書物を閲覧できる許しを貰ったんだ。

 今日は時間がないからまた、別の日に来させてもらうことにしたよ。エリクシア治療の経過を確認する必要もあるからね。

 最初は嫌嫌だったけど、来てみるもんだね。探していた賢者の書物を見ることができるなんてラッキーだよ。

 城の庭に出たら、城壁の外は民衆で騒がしかったんだ。どこの国も同じで怖いもの見たさの野次馬とかがいるんだな。ジロジロとみられるのはいい気がしない、ベビが嫌な気持ちになるのはよく分かるからね。

 予定より遅くなったが、なんとか今日中に帰って来れてよかった。

 サーシャとアルテミシア様は王都見物に行って来たんだって。ハイルーンのお店とデザート店に行ってオークステーキやオークカツ、オーク肉ハンバーグ、ふわふわパンケーキを食べたんだってさ。きっと王都は大騒ぎになっているだろうな。それとも毎日龍が飛んで来るんだから慣れただろうか?

 チビ、それ以上、食べ物の話は止めてくれ! ベビが段々と機嫌が悪くなってきた。

「分かった。ベビ、明日、必ず連れて行くから機嫌を直してよ!」

「機嫌を直すノ!」

 ベビがニヤッと笑った。交渉が上手になってきたな。
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