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318. 田んぼを造ろう(空のドライブも)✔

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 お母様からもう少しサーシャを心配させないようにと言われてしまった。マイエンジェル、サーシャがプンプンになっていたらしい、お母様が宥めてくれたそうで感謝しかない。

 アルテミシア様も心配させてしまったからな……そのせいでついて来てしまったんだよね。一度言い出すと聞かないらしく、王妃様も陛下も根負けさせてしまうんだからな。俺の未来が見えた気がしたよ。

 キャスペル殿下まで、便乗してベビに乗ろうとされたが、流石に許しは出なかった。きっと、ダメ元で思い付きの行動だったんだろう、苦笑いしていたからね。

 こんなことになるのが分かっていたら、グラン帝国の貰った領地を先に見ておくんだったよ。見に行きたいとか言えそうな雰囲気ではないんだよね。

 何かいい方法を考えよう……領内ならいいかな?

 迷いの森の薬草を仮植えしているから、ちゃんと植え替えしよう。冬のことも考慮して温室を作ることにする。夏は囲いは外して寒くなったら取り付けできるように作るよ。

 ガラスで造れるといいけど、入手は無理だし、大きなガラス板は製造が難しいからね。耐用年数は下がるけど、布に大沼ガエルの粘液を塗ればビニールハウスのような温室は作れる。

 薬草はこれくらい間隔を開けて植えればいいだろう。水魔法で造りだした魔力水をたっぷりとあげるよ。

 肥料も鶏糞を少し離した場所に撒くことにする。いきなりだと驚いて、薬草が枯れるといけないからね。

 環境が違うから、様子を見ながら育てていこうかな。精霊の女王様が言うには、濃い魔力の土地で薬草を育てると効果が高いんだってさ! 俺の癒しの魔法も行使しておくよ。

 癒しの魔法を行使すると、温かな光が薬草に吸い込まれる。葉や茎がほんのりとだが光り出した、薬草が喜んでいるようだ。

 後は農業法人の奥様方に管理を任せることにしよう。俺は何日かごとに魔力水を造ったり、癒しの魔法を行使すればいいだろうな。

 田んぼも造りたいんだけど、この近くの畑は土質が違い過ぎる。これでは水田にはならない、水が浸み込んで逃げてしまう。うちの領内に田んぼに適した土地があればいいけどな。

 そうだ、大沼ガエルの沼の近くなら土質が近い気がする。土の目が細かく粘り気もある。俺の知っている田んぼの土に近い。

 土の魔法をと考えたが、住んでいる土の下位精霊にお願いすることにした。魔大陸ほどではないが精霊も住んでいるのだから、どれくらいのことがやれるのか確認しておくのもいいよね。

 頭の中で長方形の田んぼをイメージする。インディカ米の種籾はまだ多くない。まずは縦十メートル、横五メートルもあれば足りるだろう。

 田んぼの深さは五十センチメートルもあれば十分だ。よくかき混ぜるようにイメージする。木の根や石や岩は田んぼの外に運び出してもらおう。

 大沼に流れ込んでいる小川から、田んぼに引き込む水路もイメージしておこう。まずはここまで造れるといいんだけど、土の精霊さんお願いします。

 土の下級精霊が俺にやる気を見せてくれている。森の一部だった木々が自ら、モコモコと動き始めた。

 木の下位か中位の精霊もいるな。枝や根を器用に使って倒れないように移動している。これなら伐採もしなくて済むな。

 しかし、近くには他の木があり、行き場が無さそうなんだがどうする気だろうか?

 木が次々に沼に入って行くと対岸に渡っている。あまり広くはないが、対岸なら沼の辺にスペースがあるみたいだ。

 なんだか、追い出したようで申し訳なかったな。対岸の地面に穴が開き、木が自ら穴に根を下ろし、土が被さった。

 田んぼの土がまるで生き物のようにウネウネと動いている。石や岩が田んぼの辺に積まれていく。どのように表現すれば伝わるだろうか?

 そうだな、石や岩の排出なんて、オートメーションの工場に近いかな? 跳ね出されるのではなくて、自ら移動していく感じだ。

 ウネウネが止まった。田んぼの中に素足で入り、土質を肌で感じてみる。ちょっと違う、指で摘まんでみたがまだサラッとしており、もう少し粘り気が足りない。

 沼といえば粘り気のある泥が堆積していそうだよね。確か栄養も豊富だったはずだ。

 精霊にイメージを送ると沼の水面に波紋が起こる。大沼ガエルが慌てて移動をしている。申し訳ない、木の移動の次は泥の大移動だ。ドロドロの沼底の泥がスライムのように田んぼに移動している。

 知らない人が見たら、悲鳴を上げそうな光景だ。一度流入を止めてもらい、土を混ぜ込んでもらう。

 もう一度、田んぼに入り確認した。いい肌触りじゃないか! 少し時間をおいて土が落ち着くのを待つことにする。

 どうだろうか? 素足で踏んだ感触はヌメットしていてまさに田んぼといった感じがする。

 ひとまず、水がどれくらい保てるか様子を見ることにする。精霊にお礼を言い、対岸に移動してくれた木々に癒しの魔法を行使しておいた。

 一度、屋敷に戻ると地下シェルターの保管庫にある、インディカ米の種籾を魔力水に浸けておく。浮いている籾は、芽の出る可能性がかなり低いので取り除く。

 準備は済んだので、サーシャとアルテミシア様、チビとベビの様子を見に行こう。ベスにお願いしているから上手くやってくれているはずだ。問題が起きれば、念話してくれることになっていたからね。

 お母様とアルテミシア様、それにサーシャがやけに意気投合している。お母様の得意料理、鶏肉の魔蜂蜜掛けを焼いているところだった。これがいい匂いがするんだ。

 もう、ドラマみたいに姑が嫁に料理を教えているのかと、ちょっと想像してしまったのは内緒だよ。

「帰ったよ。いい匂いがするからお腹が空いてしまった!」 

「お帰りなさいなのです!」

「サーシャただいま、アルテミシア様と仲良くしていたかな?」

「仲良くなったのです! ねーアルテミシア義姉様!」

 ふたりは本当の姉妹のように見えるな。おれもデザートを作ろうかな?

「サーシャ、アルテミシア様、食べたいデザートはありますか?」

 ふたりは、少し離し合っていたが定番のプリンに決めたようだ。チビとベビもプリンがいいと言っているので、マシュー商会に材料を購入に行く。

 多めに作ってレックス家族にも渡すつもりでいるんだ。卵と牛乳に砂糖を購入する。たまたま、生クリームもあると言うので購入したよ。

 俺が帰ろうとしたら、マシューさんの所に来ていた、農業法人の奥様方が代わりにやってくれると言い出したんだ。

 断るのも申し訳ないのでお願いすることにしたんだ。卵を割るだけでも大変だから助かったよ。

 できたと連絡が来たので直ぐに取りに向かう。結局、農業法人の作業場でそのままプリンを作ることにしたよ。冷えたら取りに行くことを伝えて帰って来た。

 鶏肉の魔蜂蜜掛けが完成していたので、お父様やカイル兄さんたちも呼んで食べたよ。やっぱりお母様の鶏肉の魔蜂蜜掛けは美味しいな。

 プリンが冷めるまで時間がある、そこで、みんなを空のドライブに誘ってみた。

 グラン帝国に連絡もしていないので、貰った領地の上空をチビとベビに飛行するようにお願いし、確認することにしたんだ。

 上空からなので他国に行ったことになるのかは微妙だけど、みんな、初他国だと喜んでくれたよ。

 街の上空を飛行している時に騒がしい声が聞こえていたから、グラン帝国の人々を驚かせていたのかもしれないな。

 上空から見ただけだけど、街中は綺麗で人も大勢見えたので、流行り病は起きていないようだった。

 だが、ハイルーン領に向かって開拓を続けているのが気になる。まさかもう一度、侵略するつもりじゃないよね。このまま続けると国境の緩衝地帯が無くなりそうだ。一度、グラン帝国に行ってどういうつもりなのか確認した方がいいだろうな。

 このまま行くわけにもいかないし、そろそろプリンが冷めているはずだから帰ろう。

 レックス家族にプリンの配達にも行かないとね。別荘には、チビとベビに、サーシャとアルテミシア様、ベスも一緒に行ったんだ。

 レックス家族はプリンに喜んでくれた。アルテミシア様の希望で製塩所の上空まで遠回りして帰ることになったんだ。

 すっかり夜になってしまったが、上空に二つの月、ルーナとルナが出ていて明るくて海が綺麗だった。アルテミシア様とサーシャがメチャクチャはしゃいでいたからね。

 今日はふたりとも疲れてよく眠れるはずだよ。アルテミシア様をお城に送ろうとしたら、サーシャと一緒に寝る約束までしていたのには驚かされた。本当に仲良くなったみたいだな。

 アルテミシア様が泊まることは許可をもらっていないから、陛下に怒られないか心配なんだよね。帰る気はないみたいだから諦めて俺が怒られようかな。
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