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273.2競ケンタウロス2(特別レースの参加者を探そう!)✔

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 まずはヘルホースを探してレースに出てくれるか交渉してみよう。自分より強い者の話なら聞くとホルスさんが言っていたからな。強いと言うのは早いってことだよな。力比べだと馬力に人力では勝てそうにない。魔法や武器ありの戦闘なら勝てるだろうがそれでは怪我をさせちゃうかもしれない。

 やっぱりお願いする立場だから、相手の条件を聞いて合意できなければあきらめよう。

 あ、白い馬がいる。視力強化してみると頭に一本の螺旋状になった角が生えていた。マイバイブルのユニコーンのイメージそのままだ。体がケンタウロスより一回り小さいな。上半身の人間部分が無いからそう感じるのかもしれない。ヘルホースの承諾が得られなければこのユニコーンにお願いしてみよう。

 黒毛の馬が見えてきた。頭には二本の角が縦に並んで生えている。きっとこいつがバイコーンだな。ユニコーンよりも体が大きいが早いと言うよりは、ばんえい競馬でそりを引いているような力強さを感じる。こいつはきっとスピードよりパワータイプだな。

 ヘルホースって言ってたけど、特徴を聞いてくればよかった。ホルスさんくらいの大きさで強くて速いイメージの馬を想像していたんだけど、毛色や大きさだけでも聞いて来るべきだったな。今からだと聞きに戻る時間はなさそうだ。早いところ交渉しなければ。

 三本角の力が強そうな真っ黒の大きな馬がいる。だけど顔が怖い。あれがヘルホースだろうか? 牙まで生えていて肉食獣にしか見えない。草食動物と一緒に競争なんて無理だろ! ホルスさんは速さしか考えていなかったんじゃないだろうか。これに森の中で出会ったら逃げ切れる気がしない! 魔力もかなり多いな。

 魔力鑑定眼で確認しているが、他にはヘルホースらしい魔物が見つからない。多分こいつがヘルホースで間違いないだろう。こいつを連れて帰ると絶対に騒動になるぞ。

そろそろ帰らないとレースに間に合わなくなりそうだ。引き返してユニコーンかバイコーンと交渉するのが良さそうだな。

 ん! 額の辺りから斜め後ろ向きに角が生えている赤毛の馬を見つけた。体の大きさはホルスさんより小さいが、筋肉の付き方がいかにも早そうだ。毛色が赤いだけで二倍速い気がする。牙は生えていなさそうだからきっと草食だよね。角の角度的に正面からなら刺される可能性は低そうだ。見た目がサラブレットのようで顔も可愛いい。会話できるだろうか? 交渉して了解してくれるならこの子に決めよう。別にレースに勝てなくてもいい気がしてきた。

「そこのあなた!ちょっとお時間よろしいでしょうか? お話を聞いてもらえないですか?」

 人生初の誘う相手が、異世界での馬だなんて……。

「何よ! というかどこにいるの? 姿を見せなさいよ!」

「ごめん! 目の前に立ったら、いきなり攻撃されると嫌だからつい!」

 俺は赤毛の馬の上空から、ホバリング移動して視界に入る。

「あんた何者! 始めて見るわね! 翼竜? ワイバーン、違うわね! 龍でもないし今まで見たことないわね!」

 赤毛の馬がかなり警戒している。魔力が体の中をグルグルと循環して口のあたりに集まり始めている。何か攻撃魔法を吐き出しそうに見える。

「名前はアルフレッド、人間です!」

「人間? 聞いたことないわね。まあいいわ。それでアタイになんのよう?」

「時間があまりないので要件を伝えますね。ケンタウロスと走り比べしてみませんか?」

「ケンタウロスと走り比べ? 走るとアタイに何かいいことがあるの?」

「そうですね。この先で走り比べするんですが、優勝すると賞金が出て美味しいモノが食べれると思いますよ!」

「美味しいモノが食べれるの? 例えば何よ?」

「ケンタウロスはお芋の料理が得意ですね。お金があれば色々とエルフやドワーフの料理も食べれると思いますよ」

 赤毛の馬が悩み始めた。やはり交渉は食べ物だよね。じっと俺の顔を見ながらぶつぶつと言い始めた。

「ケンタウロスより早く走れば、美味しいモノが食べれるのね!」

「そうですね! 参加条件ですが僕を乗せて走る必要があるんですがいいでしょうか?」

「あんたをアタイに乗せるの? それは嫌かも」

「美味しいものが食べれますよ!」

「お芋でしょ! 森の中でも食べれるわよ!」

「では、お肉とか食べたりします?」

「あんた野蛮ね! 食べないわよ! いいからもうどっか行ってよ!」

怒らせちゃったみたいだな。甘いモノで交渉し、ダメなら諦めて次をあたろう。

「甘―い魔蜂蜜のかかったお芋も食べれますよ!」

「魔蜂蜜!……あんたを乗せて走り、ケンタウロスに勝てばいいのね! さっさとアタイを連れて行きなさいよ! 騙したら承知しないからね!」

「女神様に誓って嘘は言っていません!」

「女神様? ふーん。信じてあげる!」

 赤い馬は甘いモノ好きみたいで、魔蜂蜜は最高の交渉材料だった。きっと、短い赤毛の体では魔蜂の針は防げないから、普段は食べたくても食べれないんだろうな。

 俺は背中に着馬すると、行き先を指さした。赤い馬は走り始めたが、枝やツタが行く手を阻む。すると先ほど口のあたりに集まっていた魔力を前方に向けて吐き出した。

 魔力の塊は真直ぐに飛んで行くと触れるものを細切れにしていく。小さな風の刃の塊のように見える。枝やツタはバラバラになり行く手を阻むものはない。段々と走るスピードが上がって行くと目的の競ケンタウロス場に到着した。直ぐに出場手続きを行うために受付に向かう。

 特別レースの参加申請書だが、種族が分からないので赤毛、額から斜め後ろに一本角の馬、たぶん草食と書いておいた。受付の女性に参加料を渡そうとしたが、ホルツさんから貰っていると言われた。

 第三レースはケンタウロスの女性だけでのレースだった。ちなみに、第二レースは、初めて参加するケンタウロスだけで行われていた。第四レースは走り自慢の過去に優勝したことのある男女、誰でも参加できるレース。ちなみに第一レースは、今まで優勝したことのない男だけのレースだった。

 第二レースには間に合わなかったが、第三レースに間に合うように、急いで水魔法の水滴を発動させて全体を覆い湿らせる。今回も運よく虹を発生させることに成功した。この辺りは魔力が濃く、周りから集めただけで足りたので、神聖力は使わずに済んだ。

 女神様の声を聴いてから以降、魔法の発動効率も良くなっている。柔軟に考えられるようになって、魔法の幅が広がったようだ。

 ケンタウロス以外がエントリーしたから、対面的には特別レースの条件は成立したはずだ。ホルスさんが喜んでくれればいいが、あまりにも不甲斐ない負け方をしたらどうしよう。やっぱりヘルホースと交渉するべきだったかな。赤毛の馬だが二倍早ければいいけど。ここまで走らせてしまったから、休ませてあげないと。
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