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228.ちびとべビによるスピードアップ(誤算)✔
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出発までは良かったがその後、思うような風が吹いてこない。
俺の帆船だけならば、帆を張り直せばスピードは出せる。だが、エグザイルエルフ達の帆船に合わせる必要があり、ゆっくりとしか進むことができない。
のんびりと転がっていたチビとベビだが、遅過ぎるためか、イライラし始めている。また、合図をし合ったな。念話してくれれば、俺にも分かるのだが。
チビとべビが念話を始めた。俺とはパスで繋がっているので駄々洩れだ。チビとべビは風を制御してスピードを上げようとしている。しかし、一度に六隻もの帆船に均等に風を吹かせることなどできない。話始めて三十分ほどで結論が出たようだ。
《べビ、ママにお願いがあるの! 全部の船を横繋ぎにしてほしいノ! 縦だとぶつかって危ないノ!》
《チビとべビで風を制御してみるダォ!》《そうなノ!》
以前もべビが風を制御して帆船を走らせてくれたな。ベビとチビだが、さっきも色々とシミュレーションしていた。段々と俺と同じように思考するようになってきている。
現在、帆船はお互いの風を奪い合わないように少し距離を取って航行している。
《この弱い風の中ではバラバラになっている帆船は、集まることですら難しいと思うよ!》
《そこはベビとチビに任せてなノ! 引っ張って来るノ! ママはエグザイルエルフにお話をしてくれるだけでいいノ!》
《分かったよ》
ミト第一王女の帆船に飛んで行き、べビとチビの計画を説明した。ミト第一王女を初め、船長達も驚いている。直ぐに協議が行われ、承諾してくれた。みんな楽しみにしているようにさえ見える。
ベビとチビに了解が貰えたことを念話で伝えた。するとベビとチビが離れている帆船に飛んで行く。船首付近のロープを引っ張り、中央のミト第一王女の帆船に近づけている。
三十分程ですべての船は隣あった状態にロープで固定された。エグザイルエルフたちは、これからどうなるのか楽しみでならないようだ。みんなチビとベビのやることを見逃すまいと必死で見ている。
チビとべビが風を操り始めたのが分かる。明らかに今までの風の強さとは違う。ゆっくりとだが段々と繋がれた帆船のスピードが上がり始めた。
一時間程、風は強く吹いていたが、急に風がやんでしまった。
《疲れたダォ! 木を切るより難しいダォ! お腹が減るダォ!》《疲れたノ! 思っていたより進まないノ! あと、風の調整が難しいノ! 帆船を壊しちゃいそうなノ! 調整が大変で長くは無理なノ!》
《べビ! 今度は引っ張ってみるダォ!》
《わかったなノ!》
チビとべビがロープを引っ張り出したが、予想の通り『ブチっ』と音を立ててロープは切れてしまった。
五隻もの船が繋がっているので重量はとんでもなく重い。ロープが引っ張る力に耐えきれなかったのだろう。
俺の帆船はスタビライザーがあるため単独で航行している。チビとべビが風の制御でスピードを上げたので、帆の数を増やしていた。
再度、チビとべビがまた風を操りだした。しかし、かなり魔力を消耗するのだろう疲れが見えている。長い航海の初日から、ベビとチビは全力を出してくれた。そのお陰で、二時間ほど帆船のスピードが上がって航行できた。
《アルママ、お腹空いたダォ!》《もう今日は無理なノ!》
《やっぱり風の制御はお腹が空くんだ!》
チビとべビが帆船に戻ってくると甲板の上に転がってしまった。
《ママ何か食べさせてなノ!》《ダォ!》
《燃費が悪すぎるね! この方法はいざという時以外は使えないね!》
この帆船は、火魔法が使えるように甲板の一部を土魔法でカチカチに固めている。倉庫からオーク肉を出してくると甲板の上で焼き始めた。
生肉は数日しか持たないため、多くは積み込んでいない。それでもベビたちを五日は養えると思っていた。
《もっと食べたいノ!》《ダォ!》
《直ぐに追加で焼くよ!》
追加でオーク肉を火魔法を使い焼いている。ベビとチビは美味しそうに食べてくれる。
《もう少し食べたいノ!》《ダォ!》
しかし、べビとチビの食べる量が想定をはるかに上回っていた。
他にも穀物や燻製肉に、塩漬け肉なども積み込んでいるが、この調子で食べられると十日もすれば、食料が直ぐに底をついてしまうだろう。
航海中は、ベビとチビが魚を獲れば食料はなんとかなると考えていた。だが、実際に辺りを飛んでみたら、そう都合よく大きな魚の群れを見つけられるわけがなかった。初日で誤りだったことを思い知らされた。
だが、幸いなことに今ならハイルーン領から離れておらず、ベビとチビを帰らせるか検討することができる。食料を確保する方法を見つけられなければ帰らせるしかないだろう。 離れ過ぎると帰らせることができなくなり、飢えさせることになってしまう。
俺は自分の計画の甘さを反省している。チビとベビをハイルーン領に帰して、自分だけが一緒に魔大陸行き、航路を憶えてから、改めて行く方がいいのではないだろうか? 何ケ月も航海にはかかるとミルト第二王子は言っていた。このまま解決策が見つからなければ絶対に食料が底をつくだろう。
日数のかかる帆船の航海に、ベビとチビを連れて来たことは失敗だと気がついた。
進む方向だけは分かった。あと三日なら食料はなんとかなる。三日程度なら余裕で飛んで帰れる距離しか進めないだろう。それまでに食料の確保方法を解決できなければ、チビとベビを帰らせることにしよう。
俺の帆船だけならば、帆を張り直せばスピードは出せる。だが、エグザイルエルフ達の帆船に合わせる必要があり、ゆっくりとしか進むことができない。
のんびりと転がっていたチビとベビだが、遅過ぎるためか、イライラし始めている。また、合図をし合ったな。念話してくれれば、俺にも分かるのだが。
チビとべビが念話を始めた。俺とはパスで繋がっているので駄々洩れだ。チビとべビは風を制御してスピードを上げようとしている。しかし、一度に六隻もの帆船に均等に風を吹かせることなどできない。話始めて三十分ほどで結論が出たようだ。
《べビ、ママにお願いがあるの! 全部の船を横繋ぎにしてほしいノ! 縦だとぶつかって危ないノ!》
《チビとべビで風を制御してみるダォ!》《そうなノ!》
以前もべビが風を制御して帆船を走らせてくれたな。ベビとチビだが、さっきも色々とシミュレーションしていた。段々と俺と同じように思考するようになってきている。
現在、帆船はお互いの風を奪い合わないように少し距離を取って航行している。
《この弱い風の中ではバラバラになっている帆船は、集まることですら難しいと思うよ!》
《そこはベビとチビに任せてなノ! 引っ張って来るノ! ママはエグザイルエルフにお話をしてくれるだけでいいノ!》
《分かったよ》
ミト第一王女の帆船に飛んで行き、べビとチビの計画を説明した。ミト第一王女を初め、船長達も驚いている。直ぐに協議が行われ、承諾してくれた。みんな楽しみにしているようにさえ見える。
ベビとチビに了解が貰えたことを念話で伝えた。するとベビとチビが離れている帆船に飛んで行く。船首付近のロープを引っ張り、中央のミト第一王女の帆船に近づけている。
三十分程ですべての船は隣あった状態にロープで固定された。エグザイルエルフたちは、これからどうなるのか楽しみでならないようだ。みんなチビとベビのやることを見逃すまいと必死で見ている。
チビとべビが風を操り始めたのが分かる。明らかに今までの風の強さとは違う。ゆっくりとだが段々と繋がれた帆船のスピードが上がり始めた。
一時間程、風は強く吹いていたが、急に風がやんでしまった。
《疲れたダォ! 木を切るより難しいダォ! お腹が減るダォ!》《疲れたノ! 思っていたより進まないノ! あと、風の調整が難しいノ! 帆船を壊しちゃいそうなノ! 調整が大変で長くは無理なノ!》
《べビ! 今度は引っ張ってみるダォ!》
《わかったなノ!》
チビとべビがロープを引っ張り出したが、予想の通り『ブチっ』と音を立ててロープは切れてしまった。
五隻もの船が繋がっているので重量はとんでもなく重い。ロープが引っ張る力に耐えきれなかったのだろう。
俺の帆船はスタビライザーがあるため単独で航行している。チビとべビが風の制御でスピードを上げたので、帆の数を増やしていた。
再度、チビとべビがまた風を操りだした。しかし、かなり魔力を消耗するのだろう疲れが見えている。長い航海の初日から、ベビとチビは全力を出してくれた。そのお陰で、二時間ほど帆船のスピードが上がって航行できた。
《アルママ、お腹空いたダォ!》《もう今日は無理なノ!》
《やっぱり風の制御はお腹が空くんだ!》
チビとべビが帆船に戻ってくると甲板の上に転がってしまった。
《ママ何か食べさせてなノ!》《ダォ!》
《燃費が悪すぎるね! この方法はいざという時以外は使えないね!》
この帆船は、火魔法が使えるように甲板の一部を土魔法でカチカチに固めている。倉庫からオーク肉を出してくると甲板の上で焼き始めた。
生肉は数日しか持たないため、多くは積み込んでいない。それでもベビたちを五日は養えると思っていた。
《もっと食べたいノ!》《ダォ!》
《直ぐに追加で焼くよ!》
追加でオーク肉を火魔法を使い焼いている。ベビとチビは美味しそうに食べてくれる。
《もう少し食べたいノ!》《ダォ!》
しかし、べビとチビの食べる量が想定をはるかに上回っていた。
他にも穀物や燻製肉に、塩漬け肉なども積み込んでいるが、この調子で食べられると十日もすれば、食料が直ぐに底をついてしまうだろう。
航海中は、ベビとチビが魚を獲れば食料はなんとかなると考えていた。だが、実際に辺りを飛んでみたら、そう都合よく大きな魚の群れを見つけられるわけがなかった。初日で誤りだったことを思い知らされた。
だが、幸いなことに今ならハイルーン領から離れておらず、ベビとチビを帰らせるか検討することができる。食料を確保する方法を見つけられなければ帰らせるしかないだろう。 離れ過ぎると帰らせることができなくなり、飢えさせることになってしまう。
俺は自分の計画の甘さを反省している。チビとベビをハイルーン領に帰して、自分だけが一緒に魔大陸行き、航路を憶えてから、改めて行く方がいいのではないだろうか? 何ケ月も航海にはかかるとミルト第二王子は言っていた。このまま解決策が見つからなければ絶対に食料が底をつくだろう。
日数のかかる帆船の航海に、ベビとチビを連れて来たことは失敗だと気がついた。
進む方向だけは分かった。あと三日なら食料はなんとかなる。三日程度なら余裕で飛んで帰れる距離しか進めないだろう。それまでに食料の確保方法を解決できなければ、チビとベビを帰らせることにしよう。
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