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221.3エグザイルエルフ3(精霊と精霊魔法3)✔

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 そろそろベビがサーシャを乗せてやって来てもいい時間になった。

 魔大陸のエリクシアが出てくる絵本の中に、エルフが登場することを思い出したんだ。サーシャに元気がなく、あまり外に出ようとしない。外に連れ出すためと、エルフと会えば元気になるかなと思ったんだ。連絡はレックスの子供に手紙を届けてもらった。

《ママ! もう少しで行くノ!》

 ベビから念話が届いた。かなり近くに来ているみたいだ。

《ベビちゃん! ありがとう! 助かる》

《えへへ! 役に立てて嬉しいノ!》

 直ぐにべビの姿が現れ、その背中にサーシャが乗っているのが見えた。ちゃんと落ちないようにロープで結ばれている。お父様かお母様が結んでくれたのだろう。ベビが地上に降りてきた。

 エルフたちが騒がしくなっている。大きな龍が空から降りてくれば当たり前か! だが、みんな立ち上がれないみたいだ。

 ちょっとお肉を焼き過ぎてしまったようだな。焼きプリンで追い打ちも掛けたから、止めを刺してしまっただろうか。やり過ぎたかもしれないな。エグザイルエルフには出された食事を残すと失礼にあたるとか、そんな文化があるのかもしれない。かなり無理して食べていたからな。

 事前に聞くべきだった。美味しそうに食べてくれるから、どんどん追加で焼いたから……ごめんなさい。

 ベビと結んであるロープを解いてサーシャを降ろしてあげる。

 サーシャの目がキラキラしているように見える。エルフの長くて尖った耳にサーシャの目が釘付けになっている。

「サーシャ! あまり見つめると失礼になるよ!」

 サーシャがコクコクとうなずいている。サーシャをミト第一王女とミルト第二王子に紹介する。

「妹のサーシャです! 先日、邪神教に襲われたショックでうまくしゃべれませんがご理解ください」

 ミト第一王女とミルト第二王子がギョッとすると、声を揃える。

「「え! 邪神教に襲われた(の)?」」

「はい。邪神教が病原菌のテロや爆発のテロを起こし、大きな被害が出ました。その際にサーシャは爆発に巻き込まれたんです。いや、命を狙われたと言うのが正しいですね!」

「この大陸にも邪神教がいるのですか?」

ミト第一王女が悲しげな眼でサーシャを見つめてくる。

「この大陸にも? やはり魔大陸にも邪神教があるのですね?」

「はい。呼び方は言葉の違いがあるので少し違うのですが、訳すと邪神教で合っていると思います。妹のサーシャちゃんは大変な目に遭ったのですね。かわいそうに!」

 ミト第一王女がサーシャの頭を右手でなでてくる。サーシャは言葉が理解できないだろう。俺が通訳してやろうと思ったら、ミルト第二王子が通訳してくれる。

 サーシャは言葉が分かったらしく、コクコクとうなずいている。

「実は魔大陸に行ってエリクサーとかエリクシアという万能薬? 神薬? を、手に入れてサーシャを治してやりたいのです。もしかしてエリクサーを取り扱っていたりしますか? 高くてもお金を出しますので譲ってほしいのですが!」

「……」

 ミト第一王女とミルト第二王子も黙ってしまい変な沈黙が生まれてしまった。何かまずい事を言ってしまったのだろうか?

 ミト第一王女が沈黙を破り口を開いた。

「正直に申しますと、エリクシアを見たことがなく取り扱いはできません。魔大陸の森の奥深くに、龍がエリクシアを守っていると言い伝えがあります。ですが、魔大陸の奥地に向かて生きて帰って来た者を見たことがありません。もしもエリクシアを手に入れたなら、一生遊んで暮らせると言われています。ひと財産モノですよ!」

「メダリオン王国にある絵本の内容に似ていますね。でも、絵本ではエリクシアを手に入れ、失われた王様の足を元に戻すことに成功しています。だから帰って来た者がいるはずなんです」

 ミト第一王女が考えるそぶりを見せている。

「……その絵本なら見たことがあります。ですが、絵本の中のことですよ! 長老様でも見たことがないと言っていたので……長老様が出会っていないだけで無事に帰った者はいたのかもしれないですね。ですが魔大陸の森の奥には龍以外にも狂暴な魔物が多く生息しているそうです。あなたのような若い人間が無事に生きて帰れる場所とは思えません。……無事に帰れるとしたら……上位の精霊が力を貸してくれるなら帰って来れるかも。ですがそれでも厳しいでしょうね!」

「上位の精霊ですか? お聞きしてみようと思っていたのですが、精霊とはどのような存在になるのでしょうか?」

 ミト第一王女が俺の問いに不思議そうにしている。いや、回答に困っているのか?

「どんな存在と聞かれると説明が難しいのですが、大きな力を持つ精霊になります。精霊は見る者によって違って見えると言われており、精霊の存在を疑う者の前には姿を現すことはないということです。精霊の存在を信じている者が思い描く姿で、上位の精霊は現れると言われています。ミトが会った上位の精霊は、思い描いたとおりの姿をしておられました。ですが、上位以外の精霊は力の塊とか流れに見えることもありますので、生き物かどうかもよく分かっていません。上位の精霊なら力を求めれば応えてくれる筈ですよ。もちろん嫌われていなければですけどね!」

「そうなんですね! 上位の精霊に会ってみたいですね!」

 ミト第一王女がキラキラした眼差しを向けてくる。

「アルフレッド様は精霊を見たことはありますか!?」

 さっき、上位以外の精霊は力の塊とか流れに見えることもあると言っていたからな。魔力の流れなら見えるしどうなんだろうか? 俺が気づいていないだけで、会ったことあるのだろうか? わかんないな。

「精霊と会話はしたことがないので見たことはないと思います。でも力の塊とか流れという話であれば、魔力は見えています。ミト第一王女から説明を受ける前は魔力だと思っていました。もしかしてあれが精霊なのでしょうか?!」

 ミト第一王女が何か思うところがあったようで、頷きながら聞いている。

「やっぱり! 見えているんですね! 会話をしていないのであれば、それは下位の精霊なのかもしれませんね!」

「魔力って精霊なんですかね?」

「アルフレッド様に見えているものが精霊かどうかは、アルフレッド様にしか知りようのないモノになります。先ほども言いましたが、見える姿が違うのです。もしかするとアルフレッド様にはミトの見ることのできない精霊ではない別のモノも見えているのかもしれません。それを確認するのは難しいと思い……あっ! 待ってください。もしかしたら確認できるかもしれません!」

 ミト第一王女が何か確認する方法を思いついたようだ。うつむいたまま、考え事を始めると小声でぶつぶつと意味の分からない言葉?をしゃべっている。他のエグザイルエルフ達も、ミト第一王女が何を言い出すのか期待しているようだ。十分ほど考えていたミト第一王女が口を開いた。

「実は、先ほど森の中で精霊にお願いしてみたのです。結果は下位の精霊しか応じてくださいませんでした。ミトは確認するひとつの方法を思いついたのです!」

 かなり、ミト第一王女がどや顔に見える。続きをお願いします。

「ミトが精霊にお願いして力を借りるのです。アルフレッド様がその時見えたモノについてミトに聞かせてください。この方法なら、ミトの見ている精霊がアルフレッド様にはどのように見えているのかが分かると思うのです!」

「それいい方法ですね。ぜひお願いします!」

 俺はミト第一王女やミルト第二王子達と、実験についての打ち合わせを行った。
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