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偉大な婚約者

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「ごめんねフィーネット。君との婚約は破棄することにする」
「─────っ!!」!
 
 お茶をしようと言われて、王子と二人きりで始めたお茶会。
 普段なら、嬉しくて嬉しくて生きてて良かったと思えるのだけど、今回ばかりはカーナに「婚約者貰うね。」と言われたので、婚約を破棄されるか不安で不安で仕方なかった。
 そんな不安な気持ちで始まったお茶会。
 どうか私の思い違いであって欲しいと思いながら、お茶を口にしながらロメン王子と話をしていると、少し話をしたところで婚約破棄の話がロメン王子からされてしまった。
 
 あはは。
 あはは。
 妹はいつもと同じように、婚約者も奪うことにしたらしい。
 冗談であってくれと思っていたが、甘やかせれて育った妹はモラルという物を知らなかったようだ。
 期待する私がバカだった。

「本当にごめん。実は、フィーネット以上に君の妹のカーナを物凄く急に好きになってしまって………無理だと思ったけど、このことを父さんやフィーネットのお母さんやお父さんにお伝えしたら、考える間も無く了承してもらって。」
「そ、そうなんですね……」

 必死に泣くのを堪えようと言葉を出そうとするけど、どうしても涙が出てしまう。
 うぅ……

 必死に出てくる涙をハンカチで抑えようとしたら、その前に笑った様子でロメン王子に涙をハンカチで拭かれた。

「ロ、ロメン王子!!?」
「泣かせちゃってごめんね。 実のところいうと、さっきの婚約破棄の話は嘘だ。」
「え?どうして?カーナの魅了にかかったんじゃ………」
「世界一可愛い君の婚約者である僕が、ふしだらなスキル何かに負けるわけないでしょ?僕はもうフィーネットに魅了されているんだ。あんな奴に何か到底魅了されないよ。」

 ロメン王子から発せられる言葉に、頰が熱くなってくるのを感じる。
 世界一可愛いなんて言われてしまった。
 彼の前だからにやけた顔なんて見せたくないので、にやけないように意識するも自然とにやけてしまう。最愛の人に愛の言葉を吐かれて、にやけないようにするのなんて無理だろう。でも、どうしても見られたくない私は手で顔を覆い隠す。
 
「手で顔を覆い隠しても、真っ赤なお耳が隠せてないよ。そういうところ、やっぱりフィーネットは可愛いね。」
「ちょっ、ちょっと!! ……こ、こっち見ないで下さい。」


 耳が赤いことを指摘されて更に恥ずかしくなった私は、耳を手で隠しながら下を向く。端から見れば思い詰めたような人に見えるかもしれないが、彼に私の真っ赤な顔が晒されるのよりは全然いい。彼が私の赤い顔を見て可愛いというのは恥ずかしく、嬉しくもあるのだが、恥ずかしさの方が勝つ。……とりあえず、これで私の顔と耳が赤いのは彼に見られない筈だ。
 
「耳が赤いのがまだ丸見えだよ。」
「えっ!?」
「嘘だよ。でも、これでまたフィーネットの可愛い赤い耳が見れたよ。」
 
 彼は意地悪そうな顔で楽しそうに笑う。
 彼にしてやられてしまった。

 ……そういえば、どうしてロメン王子は魅了に掛からなかったんだろう?

 頰が赤くなっているのを隠すようにして必死に考えていると、私の頰にロメン王子の唇が優しく触れた。
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