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ゲームセンターでのモブ
しおりを挟む「ちょっと手加減してもらってもいいですか?」
「………これでも手加減してるんだけどな。強すぎてごめんな。」
「もう!どうしてそんなに強いの!!エアホッケーでは負けない自信があったのに。」
「俺、何でも大体出来るから。相手が悪かったな。」
「……もう一回。」
「え?何て」
「もう一回勝負!!」
ははっ。
香織にはいつも脅されて何かやらされてるから、こうやってゲームを通して、香織をボコボコに出来るのがめちゃくちゃ楽しい。しかも、初め香織は自分が勝てると思っているのか、「手加減してあげようか?」と俺に対して煽ってくるので、そんな上から目瀬の香織を俺がボコボコにするのは正直ハマる。それはもう。陰キャの俺でも、ゲームセンターも悪くないとは思えるほどに。
俺がボコボコにしすぎたせいか、リスみたいに大きく頬を膨らませている香織を見つめていると、香織は百円を怒ったように台の中に挿入する。
すると、ピロロロロンという音と共に台の上に空気の層のような物が敷かれ、台の様々な場所に取り付けられている電球が青や赤色に染まっていく。
さぁ、始まりの合図だ。
あちらからプラスチックの落ちた音がしたので、恐らくあっちからパックは出てきたのだろう。
今回はどうするか……
確か七点先にとった方が勝ちだから、六点先に取らせてやって、その次に俺が逆転で七点取るか。
そう考えていると、香織はスタートダッシュが肝心というばかりに、俺へ向かって物凄いスピードでパックを打ってくる。そんな勢いに任せて角度を全くつけていない、速さだけが命といったパックを俺はわざと反応せず、そのままにする。
パンという音が俺サイドにある穴から聞こえる。
わざと手を抜いて点を上げたっていうのに、香織は凄く嬉しそうだ。リスのように頬を膨らませていた姿はもうない。凄く単純な奴だと思う。
出てきたパックを取り出し、台の上にセットし、香織が打ち返せる程度に打つ。手加減の加減をさっきミスしてしまったので、今回は更に弱めに打つ。
軽めに打ったパックを、香織は必死になって打ち返す。打ち返せたことを自慢したいのかこっちをチラッと見てきたので、軽く微笑み返してやる。
これは、俺が逆転劇を見せた時の反応が楽しみだ。
さっき入れられたように、六点になるまで俺は手を抜いて、反応出来るようなパックにわざと反応しないで、穴を目指して角度もついていないようなパックを入れさせる。反応出来なかった振りをするのも、忘れずにだ。
そんな茶番を繰り返すこと数分。
得点表には、6-0の文字が。
よし、ここから俺の逆転劇の開始だ。正直、点を取られる度に自慢してくる香織が、少しうざかった。このまま、手を抜いて点を入れさせえもし香織が勝ったら、こいつのことだしもっと調子に乗ることだろう。
後一点取られたら負けの俺を、敗者を見るような目で見てくる香織に、今出てきたパックを反応出来ないようなスピードで打つ。
打たれたと思ったら、聞こえて来るのは穴にパックが入った音のみ。香織目線、何が起こったのか分からないのか、ぼーっとしている。
さぁさぁ、これからだぜ。
本当の地獄を見るのはな。
さっきとは打って代わり、速さ重視ではなく角度重視で、入らないと思われる角度から点を俺は入れる。速さ重視だと、速すぎて香織がぼーっとしてしまうからな。角度をつけて、驚かせるようなパックを打つ角度重視の方が、香織の反応を見れて楽しい。
手を抜くのを止めて、俺はどんどんと点を入れていく。点を入れる度香織から向けられるのは、「ちょっと待って!!」という叫びのような表情。口には出していないが、このまま逆転されて俺に負けるかもしれないと思って言っているのが伝わってくる。気付けば、6-6。もう同点だ。慌てる理由も分かる。
香織から打たれた渾身の一発を、何も無かったかのように俺は跳ね返すと、そのまま香織サイドの穴へと向けて俺はパックを打ち込もうとする。
決まった───と思った時、事件は起こる。
「香織じゃん。何やってるの……ってえ?誰それ彼氏?滅茶苦茶イケメンじゃん。」
錆びが目立つ薄汚い自動ドアが開いて入ってくる、香織に似た清楚に見える学級委員の似合いそうな女の子に俺は固まってしまう。固まってしまった俺の手が動くわけもなく、パックを打とうしたところ何も出来ず俺サイドの穴にパックを入れられてしまった。
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