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「それにとても素直で、良い子だ」

 私の恐れはなんとか回避できたようです。旦那様の手は、私の内股をたどり、いちばん重要な場所にたどり着きました。
 ひたりと指で触れられて、とろりとこぼれるのを感じます。

「……おや?」
「わ、私は……濡れません、ので……」

 事前に準備しておいたのです。濡れない私に前夫は面倒そうでしたし、私の体も準備をしておいたほうが楽です。
 ですが、人工的なぬめりの奥に、なんだかむずむずとする感覚がありました。久しぶりのことですので、なじまなかったのかもしれません。旦那様の指が入り込んでくると、そのぶん熱が押し出されるような気がしました。

「そうかな?」
「え?」
「どうかな。こうも濡らされていると、どうだか、わからない……そうじゃないかな?」
「……」
「次は、なにもしないで、触らせて」
「は……」

 はい、とそれだけの言葉が震えました。震えた唇をまた、旦那様が唇でさらっていきます。ふに、へにりと何度も重ねてくるものですから、私の唇が形を変えて、ひたりと旦那様の唇に重なるように思えてきました。

 触れている体もそうです。旦那様の腕はいつの間にか、私を抱きしめていました。私はぎゅうと圧縮されていて、それは彼の形のように思いました。

「あ」

 ぢりぢりと粘膜同士を擦らせて、旦那様が押し入ってきます。私は不感症なので、たぶん、そうでない人より明瞭な意識を持って、それを受け止めています。
 いつもそうでした。
 でも、不思議な感じがしました。夫との交わりはそういった作業であると感じられたのに、なぜか、旦那様とのこれは、なるべくしてなったかのように、境目が曖昧でした。熱い。けれども、私だって熱いのです。

 はあ、と息を落とすと、旦那様が微笑みました。

「可愛い、ミラレッタ、愛しているよ」

 そんなわけはありません。
 だから、そうしたいということでしょう。愛したい、君を愛したい。旦那様の言葉も触れ方も、私にずっとそう伝えてきているのです。

 私も、と伝えたくなりました。
 でも私は結局、黙りました。上手に伝えられる気がしません。かわりにできる限りの心を込めて、私も旦那様に触れました。ぼんやり揺らされている間もずっと。夢の中のようでした。
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