184 / 263
似合ってる?
しおりを挟む
<side直純>
昇さんが選んでくれたドレス。すごく綺麗でこれを今から自分が着るのかと思うとドキドキしてしまう。
「先にヘアメイクを致しますね。お連れさまとご一緒の方が安心でしょうからこちらで一緒に致しましょうね」
僕が緊張しているのに気づいた神田さんがあやちゃんと並んで、大きな鏡の前にある椅子に座らせてくれた。
隣にあやちゃんがいるというだけで安心する。
「それではお化粧を始めましょうね」
「は、はい。お願いします」
隣ではあやちゃんが同じようにお化粧を始めていて、僕も真似して目を瞑った。
「お化粧水をつけますね」「乳液をつけていきますね」
何かをするごとに声をかけてくれるのでホッとする。
けれど途中で
「はぁ……っ。本当に……」
と小さな声が聞こえてドキッとする。
「あ、あの……何か……」
知らないうちに何かしてしまったのかもしれないと思って声をかけると、
「あっ、不安にさせてしまってごめんなさい。あまりにも肌が綺麗で感動してしまって……」
と言われて驚いてしまう。
「えっ? 綺麗、ですか?」
「ええ。お若いだけではなくて、綺麗にお手入れなさっていて素晴らしいですよ」
「お手入れなんてそんな……」
何もしていないといいかけたとき、
「直くん、うちで入れてる入浴剤に保湿成分が入ってるんだよ。それとお風呂上がりに乾燥しないようにってつけてるお薬あるでしょう? あれ、美容液だから」
とあやちゃんが教えてくれた。
「えっ? そうだったんですか?」
「うん。それに何より、直くん……いっぱい食べられるようになってきたから、そのおかげもあるかな」
「そうなんですね……」
でも考えてみたら、いつもほっぺたがガサガサしてて唇も切れていたけど、パパとあやちゃんと一緒に暮らし始めてからはそれもなかったな。僕……本当に変わったんだ……。
「さぁ、お化粧終わりましたよ。まだ中学生なのでナチュラルメイクにしておきました」
しばらく目を瞑っているとそんな声をかけられて、目の前の鏡を見るとあまりの違いに驚いてしまう。
「これが、僕?」
「ええ。でもほとんど何もしていないんですよ。元がいいから本当に可愛らしいです。次はヘアセットしましょうね。まぁ髪もツヤツヤで綺麗だわ」
神田さんはとっても嬉しそうに僕の髪に触れる。僕の髪が綺麗だとしたら、いつも昇さんが艶々になるオイルというのをつけて髪を乾かしてくれているからだろう。あとでお礼を言わなきゃ!
「せっかくの綺麗な髪ですから、これをそのまま活かしましょうね」
全体的に耳より少し長いくらいの髪しかないけど、大丈夫なのかな?
そう思ったけれど、神田さんは僕の髪に何かを当てていく。その機械が離れると僕の髪がくるんとカールしているのがわかる。
「わっ、すごい!!」
「これはカールアイロンといって一時的にパーマをしたような髪にできるんですよ。これで随分と印象も変わりますからね」
何も知らない僕のために神田さんは優しく教えてくれる。僕はその神田さんの手によって変わっていく自分の髪を鏡で見ながら出来上がりを楽しみにしていた。
「さぁ、できましたよ」
「わぁー、ふわふわの髪、すごい! 本当に女の子みたいに見えます」
「ふふっ。とてもよくお似合いですよ。次はドレスに着替えましょうね。こちらの下着をあちらで着てきてくださいね」
神田さんから渡された薄い下着を持って椅子から立ち上がると、
「あ、直くん。ドレスは私が着替えさせるよ。神田さん、いいかな?」
と隣の席からあやちゃんが声をかけてくれた。
「承知しました」
神田さんは笑顔でそういうと、今度はあやちゃんの着物の準備を始めた。
ちょうどお化粧と髪のセットが終わったあやちゃんが僕のところに来てくれて、一緒にカーテンの中に入ってくれる。
「あやちゃん、あの……」
「ドレスなら私も着替えさせられるから大丈夫だよ」
僕が神田さんとお着替えするのがちょっとドキドキするなって思ったことに気づいてくれたんだろう。
あやちゃんって、本当に優しい。
着ていたシャツと肌着を脱いでパンツ一枚になってから神田さんから渡された薄い下着を身につける。
そしてその上から昇さんが選んでくれたドレスを着ると、あやちゃんが後ろのファスナーを閉めてくれた。
「さぁ、これでいかな。直くん、こっち向いて」
言われた通りにあやちゃんの方を見ると、
「わぁー!! すっごく似合う!! 可愛い!! 早く昇くんと卓さんに見せたいね!!」
と笑顔で言ってくれた。うん、僕も早く見せたい!!
僕は椅子に座ってあやちゃんの支度が終わるのを待って、それからパパと昇さんのいる部屋に見せに行った。
ああ、どうかな。昇さんも可愛いって言ってくれるかな。ドキドキする。
でも、いざ昇さんの前に出ると、昇さんは僕の姿を見たままその場に固まってしまった。
やっぱり僕が女の子の格好なんて似合わなかったのかな……。
「あの、ごめんなさい……」
涙がじんわり浮かんでくる。昇さんに褒めてもらえないのがこんなにも辛いなんて思わなかった。
やっぱり僕がドレスなんて着ちゃいけなかったんだ……。
と思っていると、
「昇! 何してるんだ!!」
というパパの声が聞こえたと思ったら、昇さんの背中をバンと叩いた。
昇さんが選んでくれたドレス。すごく綺麗でこれを今から自分が着るのかと思うとドキドキしてしまう。
「先にヘアメイクを致しますね。お連れさまとご一緒の方が安心でしょうからこちらで一緒に致しましょうね」
僕が緊張しているのに気づいた神田さんがあやちゃんと並んで、大きな鏡の前にある椅子に座らせてくれた。
隣にあやちゃんがいるというだけで安心する。
「それではお化粧を始めましょうね」
「は、はい。お願いします」
隣ではあやちゃんが同じようにお化粧を始めていて、僕も真似して目を瞑った。
「お化粧水をつけますね」「乳液をつけていきますね」
何かをするごとに声をかけてくれるのでホッとする。
けれど途中で
「はぁ……っ。本当に……」
と小さな声が聞こえてドキッとする。
「あ、あの……何か……」
知らないうちに何かしてしまったのかもしれないと思って声をかけると、
「あっ、不安にさせてしまってごめんなさい。あまりにも肌が綺麗で感動してしまって……」
と言われて驚いてしまう。
「えっ? 綺麗、ですか?」
「ええ。お若いだけではなくて、綺麗にお手入れなさっていて素晴らしいですよ」
「お手入れなんてそんな……」
何もしていないといいかけたとき、
「直くん、うちで入れてる入浴剤に保湿成分が入ってるんだよ。それとお風呂上がりに乾燥しないようにってつけてるお薬あるでしょう? あれ、美容液だから」
とあやちゃんが教えてくれた。
「えっ? そうだったんですか?」
「うん。それに何より、直くん……いっぱい食べられるようになってきたから、そのおかげもあるかな」
「そうなんですね……」
でも考えてみたら、いつもほっぺたがガサガサしてて唇も切れていたけど、パパとあやちゃんと一緒に暮らし始めてからはそれもなかったな。僕……本当に変わったんだ……。
「さぁ、お化粧終わりましたよ。まだ中学生なのでナチュラルメイクにしておきました」
しばらく目を瞑っているとそんな声をかけられて、目の前の鏡を見るとあまりの違いに驚いてしまう。
「これが、僕?」
「ええ。でもほとんど何もしていないんですよ。元がいいから本当に可愛らしいです。次はヘアセットしましょうね。まぁ髪もツヤツヤで綺麗だわ」
神田さんはとっても嬉しそうに僕の髪に触れる。僕の髪が綺麗だとしたら、いつも昇さんが艶々になるオイルというのをつけて髪を乾かしてくれているからだろう。あとでお礼を言わなきゃ!
「せっかくの綺麗な髪ですから、これをそのまま活かしましょうね」
全体的に耳より少し長いくらいの髪しかないけど、大丈夫なのかな?
そう思ったけれど、神田さんは僕の髪に何かを当てていく。その機械が離れると僕の髪がくるんとカールしているのがわかる。
「わっ、すごい!!」
「これはカールアイロンといって一時的にパーマをしたような髪にできるんですよ。これで随分と印象も変わりますからね」
何も知らない僕のために神田さんは優しく教えてくれる。僕はその神田さんの手によって変わっていく自分の髪を鏡で見ながら出来上がりを楽しみにしていた。
「さぁ、できましたよ」
「わぁー、ふわふわの髪、すごい! 本当に女の子みたいに見えます」
「ふふっ。とてもよくお似合いですよ。次はドレスに着替えましょうね。こちらの下着をあちらで着てきてくださいね」
神田さんから渡された薄い下着を持って椅子から立ち上がると、
「あ、直くん。ドレスは私が着替えさせるよ。神田さん、いいかな?」
と隣の席からあやちゃんが声をかけてくれた。
「承知しました」
神田さんは笑顔でそういうと、今度はあやちゃんの着物の準備を始めた。
ちょうどお化粧と髪のセットが終わったあやちゃんが僕のところに来てくれて、一緒にカーテンの中に入ってくれる。
「あやちゃん、あの……」
「ドレスなら私も着替えさせられるから大丈夫だよ」
僕が神田さんとお着替えするのがちょっとドキドキするなって思ったことに気づいてくれたんだろう。
あやちゃんって、本当に優しい。
着ていたシャツと肌着を脱いでパンツ一枚になってから神田さんから渡された薄い下着を身につける。
そしてその上から昇さんが選んでくれたドレスを着ると、あやちゃんが後ろのファスナーを閉めてくれた。
「さぁ、これでいかな。直くん、こっち向いて」
言われた通りにあやちゃんの方を見ると、
「わぁー!! すっごく似合う!! 可愛い!! 早く昇くんと卓さんに見せたいね!!」
と笑顔で言ってくれた。うん、僕も早く見せたい!!
僕は椅子に座ってあやちゃんの支度が終わるのを待って、それからパパと昇さんのいる部屋に見せに行った。
ああ、どうかな。昇さんも可愛いって言ってくれるかな。ドキドキする。
でも、いざ昇さんの前に出ると、昇さんは僕の姿を見たままその場に固まってしまった。
やっぱり僕が女の子の格好なんて似合わなかったのかな……。
「あの、ごめんなさい……」
涙がじんわり浮かんでくる。昇さんに褒めてもらえないのがこんなにも辛いなんて思わなかった。
やっぱり僕がドレスなんて着ちゃいけなかったんだ……。
と思っていると、
「昇! 何してるんだ!!」
というパパの声が聞こえたと思ったら、昇さんの背中をバンと叩いた。
1,427
お気に入りに追加
2,104
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
あなたを追いかけて【完結】
華周夏
BL
小さい頃カルガモの群れを見て、ずっと、一緒に居ようと誓ったアキと祥介。アキと祥ちゃんはずっと一緒。
いつしか秋彦、祥介と呼ぶようになっても。
けれど、秋彦はいつも教室の羊だった。祥介には言えない。
言いたくない。秋彦のプライド。
そんなある日、同じ図書委員の下級生、谷崎と秋彦が出会う……。
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話
かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた?
転生先には優しい母と優しい父。そして...
おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、
え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!?
優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!!
▼▼▼▼
『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』
ん?
仲良くなるはずが、それ以上な気が...。
...まあ兄様が嬉しそうだからいいか!
またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる