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<side絢斗>
人生で初めて作ることができたおにぎり。
ご飯を海苔で巻いただけの簡単なおにぎりだけど、私にとっては大満足のおにぎりだった。
しかも、それを教えてくれたのが直くん。
それが何よりも嬉しかった。
うまく握ることができない私のためにわざわざ探してくれて、そのおかげで卓さんを喜ばせることができた。
「直くん、あのおにぎりの作り方。どうやって調べたの?」
「パパとあやちゃんがスマホをくれたから、昇さんがお風呂に入っている間にこっそり調べたんです。ずっとあやちゃんに作ってもらえるようなおにぎりを探そうと思ってたんですけど、探し方がわからなくて……だから、スマホをもらえてすごく嬉しくて、すぐに調べました」
あのスマホで初めて調べてくれたのが、あのおにぎりの作り方……。
なんて優しい子なんだろう。
「ありがとう、直くんのおかげで卓さんにあんなに喜んでもらえたよ」
「僕も昇さんがすごく喜んでくれたのが嬉しかったから、あやちゃんともその気持ちを共有したかったんです。パパが、喜んでくれて嬉しかったですよ」
「ふふっ。うん、私も嬉しかった。あっ! 卓さんからメッセージ来たよ!」
「えっ? もう食べたんですか?」
「うん。嬉しくて我慢できなくてすぐ食べちゃったって」
「パパ……そんなに嬉しかったんですね」
本当にこんなにも喜んでくれるなんて、想像以上だ。
「見て! 動画も入ってるよ」
直くんにも見えるようにスマホを向けて、動画を再生すると卓さんが半分にカットされたおにぎりを食べているのが見えた。
「あっ! みて! 卓さん、半分に切って食べてくれてる! あれって、切って食べた方がいいんだよね?」
「はい。すごいな、パパ。何も言わなくてもわかってくれたんですね」
「多分、中谷くんが教えてあげたんじゃないかな。中谷くんもお料理上手で娘ちゃんもいるから、きっとあのおにぎりを知ってたのかも!」
「ああ、そうなんですね! よかった!」
――美味しいなぁ。この前食べさせてもらった直くんのおにぎりと同じくらい最高に美味しいよ。
――先生、よかったですね。
――ああ、息子からのおにぎりと愛しい絢斗からのおにぎりと、どちらも食べられるなんて私は幸せだよ。
満足そうな卓さんの表情が本当に幸せそうで、私も嬉しくなる。
――んっ? 動画を撮ってくれていたのか?
――ええ。先生のこんな幸せそうな姿、事務所ではなかなか見られませんから。
そんな会話で動画は終わっていた。
「パパ、動画を撮られていたの知らなかったんですね」
「うん。てっきり私たちに聞かせるために言ってくれていたのかと思ってた」
ということは、あれは卓さんの本心だということだ。
「パパが喜んでくれてよかったです」
「うん。直くんのおかげだよ」
「ふふっ。これから毎日一緒におにぎり作れますね」
「うん。あっ、そうだ! せっかくだから、皐月にも今日のこと自慢しちゃおう!! 可愛い息子と一緒におにぎり作ったって。直くん、一緒に写真撮ろう!」
今日の直くんの写真を撮って、さっき卓さんが送ってくれたおにぎりを食べている写真と一緒に皐月にメッセージを送った。
<可愛い息子のおかげで私がおにぎり作れたよー!! 卓さんも食べてくれたよ!!>
ポンポンポンとメッセージと写真を二枚送って、スマホをテーブルに置いてすぐにスマホがピリリりと鳴り出した。
画面表示には皐月の名前。
しかもメッセージじゃなくて電話だ。
慌てて電話をとると、
ーもしもし、絢斗! おにぎり作ったって本当?
本当に驚いたような皐月の声が飛び込んできた。
ーうん。直くんが私でも作れる作り方を調べてくれたんだ。それで作ってみたの。
ー磯山先生もすっごく嬉しそうに食べてたね。
ーうん。ホッとしているよ。
ーそれに直くんもすっごく表情豊かになってきたね。可愛い!
ーふふっ。でしょう?
ーうん、早く会いに行きたいよー!!
ー来週、会えるよ。
ーうん、宗一郎さんが美味しいお菓子作るって張り切ってるから楽しみにしてて。
ーオッケー。
慌ただしい電話だったけどその理由はわかってる。
だって、もうすぐ講義の時間だ。
それなのに、すぐに連絡をしてくれるなんて、よっぽど驚いたんだろう。
「来週……僕も会えるんですか?」
「当たり前だよ。直くんに会いにくるんだよ」
「はい。すごく楽しみです!!」
その前に明日は大事な人に会うことになっているけれど……。
彼らのおかげでいい方向に進んだらいいなぁ。
人生で初めて作ることができたおにぎり。
ご飯を海苔で巻いただけの簡単なおにぎりだけど、私にとっては大満足のおにぎりだった。
しかも、それを教えてくれたのが直くん。
それが何よりも嬉しかった。
うまく握ることができない私のためにわざわざ探してくれて、そのおかげで卓さんを喜ばせることができた。
「直くん、あのおにぎりの作り方。どうやって調べたの?」
「パパとあやちゃんがスマホをくれたから、昇さんがお風呂に入っている間にこっそり調べたんです。ずっとあやちゃんに作ってもらえるようなおにぎりを探そうと思ってたんですけど、探し方がわからなくて……だから、スマホをもらえてすごく嬉しくて、すぐに調べました」
あのスマホで初めて調べてくれたのが、あのおにぎりの作り方……。
なんて優しい子なんだろう。
「ありがとう、直くんのおかげで卓さんにあんなに喜んでもらえたよ」
「僕も昇さんがすごく喜んでくれたのが嬉しかったから、あやちゃんともその気持ちを共有したかったんです。パパが、喜んでくれて嬉しかったですよ」
「ふふっ。うん、私も嬉しかった。あっ! 卓さんからメッセージ来たよ!」
「えっ? もう食べたんですか?」
「うん。嬉しくて我慢できなくてすぐ食べちゃったって」
「パパ……そんなに嬉しかったんですね」
本当にこんなにも喜んでくれるなんて、想像以上だ。
「見て! 動画も入ってるよ」
直くんにも見えるようにスマホを向けて、動画を再生すると卓さんが半分にカットされたおにぎりを食べているのが見えた。
「あっ! みて! 卓さん、半分に切って食べてくれてる! あれって、切って食べた方がいいんだよね?」
「はい。すごいな、パパ。何も言わなくてもわかってくれたんですね」
「多分、中谷くんが教えてあげたんじゃないかな。中谷くんもお料理上手で娘ちゃんもいるから、きっとあのおにぎりを知ってたのかも!」
「ああ、そうなんですね! よかった!」
――美味しいなぁ。この前食べさせてもらった直くんのおにぎりと同じくらい最高に美味しいよ。
――先生、よかったですね。
――ああ、息子からのおにぎりと愛しい絢斗からのおにぎりと、どちらも食べられるなんて私は幸せだよ。
満足そうな卓さんの表情が本当に幸せそうで、私も嬉しくなる。
――んっ? 動画を撮ってくれていたのか?
――ええ。先生のこんな幸せそうな姿、事務所ではなかなか見られませんから。
そんな会話で動画は終わっていた。
「パパ、動画を撮られていたの知らなかったんですね」
「うん。てっきり私たちに聞かせるために言ってくれていたのかと思ってた」
ということは、あれは卓さんの本心だということだ。
「パパが喜んでくれてよかったです」
「うん。直くんのおかげだよ」
「ふふっ。これから毎日一緒におにぎり作れますね」
「うん。あっ、そうだ! せっかくだから、皐月にも今日のこと自慢しちゃおう!! 可愛い息子と一緒におにぎり作ったって。直くん、一緒に写真撮ろう!」
今日の直くんの写真を撮って、さっき卓さんが送ってくれたおにぎりを食べている写真と一緒に皐月にメッセージを送った。
<可愛い息子のおかげで私がおにぎり作れたよー!! 卓さんも食べてくれたよ!!>
ポンポンポンとメッセージと写真を二枚送って、スマホをテーブルに置いてすぐにスマホがピリリりと鳴り出した。
画面表示には皐月の名前。
しかもメッセージじゃなくて電話だ。
慌てて電話をとると、
ーもしもし、絢斗! おにぎり作ったって本当?
本当に驚いたような皐月の声が飛び込んできた。
ーうん。直くんが私でも作れる作り方を調べてくれたんだ。それで作ってみたの。
ー磯山先生もすっごく嬉しそうに食べてたね。
ーうん。ホッとしているよ。
ーそれに直くんもすっごく表情豊かになってきたね。可愛い!
ーふふっ。でしょう?
ーうん、早く会いに行きたいよー!!
ー来週、会えるよ。
ーうん、宗一郎さんが美味しいお菓子作るって張り切ってるから楽しみにしてて。
ーオッケー。
慌ただしい電話だったけどその理由はわかってる。
だって、もうすぐ講義の時間だ。
それなのに、すぐに連絡をしてくれるなんて、よっぽど驚いたんだろう。
「来週……僕も会えるんですか?」
「当たり前だよ。直くんに会いにくるんだよ」
「はい。すごく楽しみです!!」
その前に明日は大事な人に会うことになっているけれど……。
彼らのおかげでいい方向に進んだらいいなぁ。
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