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両親の反応
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<side昇>
母さんと絢斗さんに挟まれて座る直くんが、怯えてプルプル震えている小動物のように見えて慌てて助けに行ったけれど、母さんの好意的な反応にどうやら安心したようで笑顔を見せてくれていた。
それでも心配で直くんの隣に座ろうとしたけれど、
「昇はこっちにおいで」
と父さんと伯父さんの間に座らされてしまう。
なんの罰だよと大声をあげたくなるけれど、直くんを怖がらせるわけにはいかないと思って仕方なく言われた通りに座ることにした。
ピッタリと隙間なく座っている絢斗さんと直くんと母さんとは対照的に伯父さんと俺と父さんの間は隙間が空きまくりだけど、それは仕方がない。
「直くん、改めて紹介しよう。昇の隣に座っているのが、私の弟で昇の父親の毅というんだ」
「初めまして。直純くん。昇がお世話になっているみたいだね」
「えっ、お世話だなんて……! 僕はいつも昇さんに優しくしてもらってます」
「ふふっ。そうか、なら良かった」
父さんが、母さんに見せる笑顔と違う、優しい笑顔を見せている。
俺だってこんな笑顔見たことないぞ。
でもその優しい笑顔に直くんがホッとしているみたいだからいいか。
「そして、直くんの隣にいるのが毅の奥さんで昇の母親の二葉さん」
「直純くんに会えて嬉しいわ。ねぇ、私も直くんって呼んでいいかしら?
「は、はい。どうぞ」
「わぁ、嬉しいわ。ねぇ、絢斗さんのことはなんて呼んでいるの?」
「あ、あやちゃん、です……」
「ええーっ、いいなぁ。私も可愛く呼ばれたい!!」
「ふふっ。いいでしょ!」
絢斗さんは、得意げな表情で母さんを見る。
こういう姿を見ていると、とても偉い大学教授には見えないな。
「じゃあ、ふーちゃんって呼んでもらおうかな」
「い、いいんですか?」
「ええ。もちろんよ!」
「あ、あの……ふーちゃん。よろしくお願いします」
「――っ、きゃーっ!! 可愛いわっ!!」
「わっ!!」
「母さんっ!!」
直くんからふーちゃんと呼ばれて、喜びを抑えきれなかった母さんが直くんを抱きしめる。
俺だってそんな真正面から抱きしめたことなんてほとんどないのに!
つい大声を出してしまうと、
「まぁまぁ、落ち着け。昇!」
「狭量な男は嫌われるぞ」
と両サイドから声がかかる。
父さんだって、伯父さんだって母さんや絢斗さんが抱きしめられたら嫉妬するくせに!
人ごとだと思って!
そう文句も言いたくなるが、直くんを驚かせたくはない。
ここは仕方なく俺が引くことにした。
「直純くんは、兄さんのことはなんて呼んでるのかな?」
「えっ、あの……パパって、呼ばせてもらってます」
「えっ? パパ?」
目を丸くした父さんが伯父さんを見ると、それはそれは得意満面の表情で、
「ああ、そうなんだ。なんといっても直くんは私の息子になったんだからな。間違いではないだろう?」
と言い放った。
「それなら、私も昇のパパだし、直純くんにとっても近しい存在だから、私のことも毅パパと呼んでくれないか?」
「えっ?」
「父さん! 何いってるんだよ! 大体、パパなんて俺でも言ったことないだろう!」
「いいじゃないか。直純くんにはパパと呼ばれたいんだよ。直純くん、どうかな?」
「い、いいんですか?」
直くんは隣に座る絢斗さんと母さんを交互に見ると、
「ふふっ。直くんが呼んでもいいと思うならいいんじゃない? 私たちは家族だからね。ねぇ、二葉さん」
「ええ、毅さんも喜ぶわ」
と返ってきた。
「あの、毅パパ……よろしくお願いします」
「くっ――!! ああ、直くん、よろしくね」
父さんも母さんも直くんにメロメロだな。
気にいるとは思ってたけど、ここまでとは思ってなかったな……。
父さん、そんなにパパと呼ばれたかったのか……。
「父さん、じゃあ俺もこれからパパって呼んでやろうか?」
「――っ、やめてくれ! お前にパパって呼ばれたらゾワゾワするよ。今まで通り父さんにしておいてくれ」
「ははっ。冗談だよ」
「ははっ」
「ふふっ」
父さんの本気で嫌そうな口ぶりに、リビング中に笑いが溢れる。
直くんはそんな会話を聞いて、一緒に笑ってくれているのが印象的だった。
「じゃあ、昇。パーティー料理の準備をするから手伝ってくれ。毅も頼む。絢斗と二葉さんは直くんを頼むよ」
そう言って俺たち三人はキッチンに向かった。
けれど成人男性三人が集まると、広いキッチンもむさくるしく感じる。
「毅はダイニングの準備をしておいてくれ」
伯父さんが指示をすると、そこはやはり兄弟。
無駄のない動きでサクサクと準備を整えていった。
「昇、ちらし寿司の飾り付けを頼む」
「ちらし寿司? 珍しいですね」
「ああ、事務の中谷くんに聞いたんだ。子どものパーティーにはちらし寿司が好まれるそうだよ」
中谷さんというのは、伯父さんの事務所のパラリーガル。
小学生の娘がいるシングルファザーだ。
すでに錦糸卵も伯父さんが作ってくれているから楽だな。
美味しそうな刺身も冷蔵庫から取り出して、綺麗に飾り付けをした。
大きな寿司桶に二つ、あっという間に完成して父さんに渡すと、ダイニングテーブルに綺麗に並べてくれた。
ふふっ。直くんが喜ぶ顔が楽しみだな。
母さんと絢斗さんに挟まれて座る直くんが、怯えてプルプル震えている小動物のように見えて慌てて助けに行ったけれど、母さんの好意的な反応にどうやら安心したようで笑顔を見せてくれていた。
それでも心配で直くんの隣に座ろうとしたけれど、
「昇はこっちにおいで」
と父さんと伯父さんの間に座らされてしまう。
なんの罰だよと大声をあげたくなるけれど、直くんを怖がらせるわけにはいかないと思って仕方なく言われた通りに座ることにした。
ピッタリと隙間なく座っている絢斗さんと直くんと母さんとは対照的に伯父さんと俺と父さんの間は隙間が空きまくりだけど、それは仕方がない。
「直くん、改めて紹介しよう。昇の隣に座っているのが、私の弟で昇の父親の毅というんだ」
「初めまして。直純くん。昇がお世話になっているみたいだね」
「えっ、お世話だなんて……! 僕はいつも昇さんに優しくしてもらってます」
「ふふっ。そうか、なら良かった」
父さんが、母さんに見せる笑顔と違う、優しい笑顔を見せている。
俺だってこんな笑顔見たことないぞ。
でもその優しい笑顔に直くんがホッとしているみたいだからいいか。
「そして、直くんの隣にいるのが毅の奥さんで昇の母親の二葉さん」
「直純くんに会えて嬉しいわ。ねぇ、私も直くんって呼んでいいかしら?
「は、はい。どうぞ」
「わぁ、嬉しいわ。ねぇ、絢斗さんのことはなんて呼んでいるの?」
「あ、あやちゃん、です……」
「ええーっ、いいなぁ。私も可愛く呼ばれたい!!」
「ふふっ。いいでしょ!」
絢斗さんは、得意げな表情で母さんを見る。
こういう姿を見ていると、とても偉い大学教授には見えないな。
「じゃあ、ふーちゃんって呼んでもらおうかな」
「い、いいんですか?」
「ええ。もちろんよ!」
「あ、あの……ふーちゃん。よろしくお願いします」
「――っ、きゃーっ!! 可愛いわっ!!」
「わっ!!」
「母さんっ!!」
直くんからふーちゃんと呼ばれて、喜びを抑えきれなかった母さんが直くんを抱きしめる。
俺だってそんな真正面から抱きしめたことなんてほとんどないのに!
つい大声を出してしまうと、
「まぁまぁ、落ち着け。昇!」
「狭量な男は嫌われるぞ」
と両サイドから声がかかる。
父さんだって、伯父さんだって母さんや絢斗さんが抱きしめられたら嫉妬するくせに!
人ごとだと思って!
そう文句も言いたくなるが、直くんを驚かせたくはない。
ここは仕方なく俺が引くことにした。
「直純くんは、兄さんのことはなんて呼んでるのかな?」
「えっ、あの……パパって、呼ばせてもらってます」
「えっ? パパ?」
目を丸くした父さんが伯父さんを見ると、それはそれは得意満面の表情で、
「ああ、そうなんだ。なんといっても直くんは私の息子になったんだからな。間違いではないだろう?」
と言い放った。
「それなら、私も昇のパパだし、直純くんにとっても近しい存在だから、私のことも毅パパと呼んでくれないか?」
「えっ?」
「父さん! 何いってるんだよ! 大体、パパなんて俺でも言ったことないだろう!」
「いいじゃないか。直純くんにはパパと呼ばれたいんだよ。直純くん、どうかな?」
「い、いいんですか?」
直くんは隣に座る絢斗さんと母さんを交互に見ると、
「ふふっ。直くんが呼んでもいいと思うならいいんじゃない? 私たちは家族だからね。ねぇ、二葉さん」
「ええ、毅さんも喜ぶわ」
と返ってきた。
「あの、毅パパ……よろしくお願いします」
「くっ――!! ああ、直くん、よろしくね」
父さんも母さんも直くんにメロメロだな。
気にいるとは思ってたけど、ここまでとは思ってなかったな……。
父さん、そんなにパパと呼ばれたかったのか……。
「父さん、じゃあ俺もこれからパパって呼んでやろうか?」
「――っ、やめてくれ! お前にパパって呼ばれたらゾワゾワするよ。今まで通り父さんにしておいてくれ」
「ははっ。冗談だよ」
「ははっ」
「ふふっ」
父さんの本気で嫌そうな口ぶりに、リビング中に笑いが溢れる。
直くんはそんな会話を聞いて、一緒に笑ってくれているのが印象的だった。
「じゃあ、昇。パーティー料理の準備をするから手伝ってくれ。毅も頼む。絢斗と二葉さんは直くんを頼むよ」
そう言って俺たち三人はキッチンに向かった。
けれど成人男性三人が集まると、広いキッチンもむさくるしく感じる。
「毅はダイニングの準備をしておいてくれ」
伯父さんが指示をすると、そこはやはり兄弟。
無駄のない動きでサクサクと準備を整えていった。
「昇、ちらし寿司の飾り付けを頼む」
「ちらし寿司? 珍しいですね」
「ああ、事務の中谷くんに聞いたんだ。子どものパーティーにはちらし寿司が好まれるそうだよ」
中谷さんというのは、伯父さんの事務所のパラリーガル。
小学生の娘がいるシングルファザーだ。
すでに錦糸卵も伯父さんが作ってくれているから楽だな。
美味しそうな刺身も冷蔵庫から取り出して、綺麗に飾り付けをした。
大きな寿司桶に二つ、あっという間に完成して父さんに渡すと、ダイニングテーブルに綺麗に並べてくれた。
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