42 / 263
新しい呼び名
しおりを挟む
絢斗さんは、伯父さんがパパと呼ばれたことに大喜びする一方で、自分も今までとは違う呼び方がされたいようだ、
さっき直純くんと、絢斗さんを気楽に呼んでもいい……なんて話していたけれど、絢斗さんの呼び方は難しい。
現に俺だって、伯父さんのことは伯父さんと呼んでいるけれど、さすがに絢斗さんを伯母さんとは呼べない。
女性っぽい顔立ちをして思いっきり綺麗だけど、女性に見えるわけでもないし、本人の意識も男性なのだからその呼び名はおかしいだろう。
だから、自然に絢斗さんと呼ぶようになったし、母さんも父さんも絢斗さんと呼んでいる。
だから、直純くんが伯父さんをパパと呼ぶようになったからといって、絢斗さんをママと呼ぶのはなんだか違う気がする。
直純くんが伯父さんの籍にはいり、家族になるのなら、戸籍上は絢斗さんは直純くんの兄になるのだし。
けれど、パパとお兄ちゃんという呼び名もしっくりこない気がする。
どうすればいいんだろうなと思っていると、
「戸籍上は私と直純くんは兄弟だから、お兄ちゃんか、あっ、あやちゃんでもいいよ」
という提案をしてくれた。
あやちゃん……ママよりは良さそうだけど、これを呼べるのはきっと直純くんだけだろうな。
俺があやちゃんと呼んだら、伯父さんに嫉妬されそうな気がする。
いや、気がするんじゃなくて確実にされるな。
直純くん自身はなんと呼ぶだろう。
俺の方がなんだか緊張してしまったけれど、直純くんは少し悩んでから
「あ、あやちゃん……っ」
と呼びかけた。
その姿があまりにも可愛くて、思わず見惚れてしまった。
伯父さんも嫉妬するどころか喜んでいる様子。
何より絢斗さん自身が喜んでいるから、きっとこの呼び名で定着することだろう。
「ねぇねぇ、直純くんも呼び方変えようよ」
「えっ? 僕?」
「うん。私をあやちゃんって呼ぶんだし、直純くんも直くんにしよう。その方が距離がずっと縮まる気がするし!」
「直、くん……僕、そんな呼ばれ方したの、初めてです……」
あまり友人もいなかったって聞いてたし、それならきっと苗字にさん付けか、よくて直純くんか……。
親には呼び捨てにされていただろうから、嫌な記憶が甦るのはよくない。
直くんは可愛いかもしれないな。
本人が気にいればだけど。
「直くん、どうかな?」
「はい。僕、そう呼ばれたいです!」
「わぁーっ、よかった!」
嬉しそうな直純くんを見てホッとしながら、伯父さんを見ると、伯父さんも同じように安堵しているのがわかる。
俺に向かって嬉しそうに笑顔を見せる伯父さんを見ていると、もうすっかり父親のように見えるから不思議だ。
「あの……昇さんも、呼んでくれますか?」
「ああ、もちろんだよ。直くん」
「――っ!!!」
俺の言葉にこんなにも嬉しそうにしてくれるなんて……。
いますぐ抱きしめたいくらいに可愛いな。
そんなことを思っていると、急にスマホが震え始めた。
びっくりして画面を確認すると、ドイツにいるカールからビデオチャットの申し込みが来てる。
今はあっちは10時すぎ。
ああ、今日はあっちは休みだから暇なんだな。
きっと日本行きの話が進めたくて連絡してきたんだろう。
俺もカールに村山のことを話したかったし、ちょうどいい。
「どうした? 電話か?」
「前に話していたドイツの友人からのビデオチャットです。日本行きの話がしたいんだと思います」
「そうか、それならここで話したらいい。私たちも挨拶しよう」
伯父さんがそう言ってくれたから安心だけど、直くんはどうだろう?
直くんにはまだ話していなかったからこの会話もちんぷんかんぷんだろうしな。
「直くん、前にドイツに友人がいるって話をしたの、覚えてる?」
そう問いかけると、すぐに笑顔を見せてくれた。
「はい。よくテレビ電話してるって……」
「そうそう。その子、カールって言うんだけど、俺と同じ歳だけどスキップでもう高校は卒業しているんだ。春から日本の大学に通いたいみたいでその前に一度日本に遊びに来たいって話してたんだ。それで、俺の友達の家にホームステイできそうだから、その話をカールにしようと思ってたんだ。直くんも一緒にビデオチャットで挨拶してくれる?」
「えっ、でも僕……まだドイツ語は……」
「大丈夫。日常会話くらいならカールはわかるから問題ないよ」
「すごいっ!! はい、それなら昇さんと一緒に挨拶したいです」
そんな可愛いことを言ってくれるなんて……俺、やっぱり直くんに好かれてるよな?
「じゃあ、ここでみんなで話せるようにパソコン持ってくるから、ちょっと待ってて」
直くんを絢斗さんに任せて、俺は急いでパソコンを取りに行った。
さっき直純くんと、絢斗さんを気楽に呼んでもいい……なんて話していたけれど、絢斗さんの呼び方は難しい。
現に俺だって、伯父さんのことは伯父さんと呼んでいるけれど、さすがに絢斗さんを伯母さんとは呼べない。
女性っぽい顔立ちをして思いっきり綺麗だけど、女性に見えるわけでもないし、本人の意識も男性なのだからその呼び名はおかしいだろう。
だから、自然に絢斗さんと呼ぶようになったし、母さんも父さんも絢斗さんと呼んでいる。
だから、直純くんが伯父さんをパパと呼ぶようになったからといって、絢斗さんをママと呼ぶのはなんだか違う気がする。
直純くんが伯父さんの籍にはいり、家族になるのなら、戸籍上は絢斗さんは直純くんの兄になるのだし。
けれど、パパとお兄ちゃんという呼び名もしっくりこない気がする。
どうすればいいんだろうなと思っていると、
「戸籍上は私と直純くんは兄弟だから、お兄ちゃんか、あっ、あやちゃんでもいいよ」
という提案をしてくれた。
あやちゃん……ママよりは良さそうだけど、これを呼べるのはきっと直純くんだけだろうな。
俺があやちゃんと呼んだら、伯父さんに嫉妬されそうな気がする。
いや、気がするんじゃなくて確実にされるな。
直純くん自身はなんと呼ぶだろう。
俺の方がなんだか緊張してしまったけれど、直純くんは少し悩んでから
「あ、あやちゃん……っ」
と呼びかけた。
その姿があまりにも可愛くて、思わず見惚れてしまった。
伯父さんも嫉妬するどころか喜んでいる様子。
何より絢斗さん自身が喜んでいるから、きっとこの呼び名で定着することだろう。
「ねぇねぇ、直純くんも呼び方変えようよ」
「えっ? 僕?」
「うん。私をあやちゃんって呼ぶんだし、直純くんも直くんにしよう。その方が距離がずっと縮まる気がするし!」
「直、くん……僕、そんな呼ばれ方したの、初めてです……」
あまり友人もいなかったって聞いてたし、それならきっと苗字にさん付けか、よくて直純くんか……。
親には呼び捨てにされていただろうから、嫌な記憶が甦るのはよくない。
直くんは可愛いかもしれないな。
本人が気にいればだけど。
「直くん、どうかな?」
「はい。僕、そう呼ばれたいです!」
「わぁーっ、よかった!」
嬉しそうな直純くんを見てホッとしながら、伯父さんを見ると、伯父さんも同じように安堵しているのがわかる。
俺に向かって嬉しそうに笑顔を見せる伯父さんを見ていると、もうすっかり父親のように見えるから不思議だ。
「あの……昇さんも、呼んでくれますか?」
「ああ、もちろんだよ。直くん」
「――っ!!!」
俺の言葉にこんなにも嬉しそうにしてくれるなんて……。
いますぐ抱きしめたいくらいに可愛いな。
そんなことを思っていると、急にスマホが震え始めた。
びっくりして画面を確認すると、ドイツにいるカールからビデオチャットの申し込みが来てる。
今はあっちは10時すぎ。
ああ、今日はあっちは休みだから暇なんだな。
きっと日本行きの話が進めたくて連絡してきたんだろう。
俺もカールに村山のことを話したかったし、ちょうどいい。
「どうした? 電話か?」
「前に話していたドイツの友人からのビデオチャットです。日本行きの話がしたいんだと思います」
「そうか、それならここで話したらいい。私たちも挨拶しよう」
伯父さんがそう言ってくれたから安心だけど、直くんはどうだろう?
直くんにはまだ話していなかったからこの会話もちんぷんかんぷんだろうしな。
「直くん、前にドイツに友人がいるって話をしたの、覚えてる?」
そう問いかけると、すぐに笑顔を見せてくれた。
「はい。よくテレビ電話してるって……」
「そうそう。その子、カールって言うんだけど、俺と同じ歳だけどスキップでもう高校は卒業しているんだ。春から日本の大学に通いたいみたいでその前に一度日本に遊びに来たいって話してたんだ。それで、俺の友達の家にホームステイできそうだから、その話をカールにしようと思ってたんだ。直くんも一緒にビデオチャットで挨拶してくれる?」
「えっ、でも僕……まだドイツ語は……」
「大丈夫。日常会話くらいならカールはわかるから問題ないよ」
「すごいっ!! はい、それなら昇さんと一緒に挨拶したいです」
そんな可愛いことを言ってくれるなんて……俺、やっぱり直くんに好かれてるよな?
「じゃあ、ここでみんなで話せるようにパソコン持ってくるから、ちょっと待ってて」
直くんを絢斗さんに任せて、俺は急いでパソコンを取りに行った。
346
お気に入りに追加
2,104
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
あなたを追いかけて【完結】
華周夏
BL
小さい頃カルガモの群れを見て、ずっと、一緒に居ようと誓ったアキと祥介。アキと祥ちゃんはずっと一緒。
いつしか秋彦、祥介と呼ぶようになっても。
けれど、秋彦はいつも教室の羊だった。祥介には言えない。
言いたくない。秋彦のプライド。
そんなある日、同じ図書委員の下級生、谷崎と秋彦が出会う……。
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話
かし子
BL
養子として迎えられた家に弟が生まれた事により孤独になった僕。18歳を迎える誕生日の夜、絶望のまま外へ飛び出し、トラックに轢かれて死んだ...はずが、目が覚めると赤ん坊になっていた?
転生先には優しい母と優しい父。そして...
おや?何やらこちらを見つめる赤目の少年が、
え!?兄様!?あれ僕の兄様ですか!?
優しい!綺麗!仲良くなりたいです!!!!
▼▼▼▼
『アステル、おはよう。今日も可愛いな。』
ん?
仲良くなるはずが、それ以上な気が...。
...まあ兄様が嬉しそうだからいいか!
またBLとは名ばかりのほのぼの兄弟イチャラブ物語です。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる