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対処法は……

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<side磯山卓>

「ただいま」

「卓さん、おかえりなさい」

いつものように私の声を聞いて、玄関に駆け寄ってきてくれる絢斗。
この出迎えのために一日仕事を頑張っていると言っても過言ではない。

いつもはこの言葉の後に絢斗からの甘いキスもしてくれるのだが、直純くんの前では流石に教育上よろしくないかと思って我慢していた。

だから、着替えのために部屋に入ってから絢斗とキスをしていたのだが、

「あれ? 直純くんは?」

今日は迎えにきてくれるはずの直純くんの姿がない。

「昇くんと勉強に夢中になっているのかも。声をかけてこようか?」

「ああ、そうなのか。じゃあ着替えてから声をかけるよ。その前に……」

玄関先で絢斗の唇を味わう。
ああ、部屋でのキスもいいが、やっぱり出迎えてくれる時のキスは格別だ。

チュッとわざと音を立てて離れると、少し離れた場所にいた昇と目が合った。
まさか直純くんにも見られたかと思ったが、どうやら咄嗟に違う方向を見させていたみたいだ。

そのことに少しホッとしながら、

「昇、直純くん。ただいま」

と声をかけると、いつもと変わらない可愛らしい声で、

「先生、おかえりなさい」

と出迎えてくれた。

ああ、よかった。
本当に見られてはいなかったようだな。

「ただいま。今日は楽しく過ごせたかな?」

「はい。昇さんがドイツ語を教えてくれて……すごく楽しいです」

「そうか。それはよかった。じゃあ、ちょっと着替えてくるよ」

絢斗と一緒に部屋に行き、着替えを済ませる。
そうして、もう一度甘い唇を味わった。

「ふふっ。さっきはびっくりしちゃったね」

「ああ、だが昇がいたから助かったよ」

「ねぇ、直純くんの前でも普通にしちゃだめかな?」

「だが、まだ中学生だぞ」

「ふふっ。お見送りとお出迎えの挨拶で、うちではいつものことだよっていえば直純くんは素直だからわかってくれると思うけどな」

「確かに……」

あの子は自分の育ってきた家が周りとは違ったことに気づいて、受け入れてくれている。
ちゃんと話せばわかってくれるだろう。
間違っても、直純くんが私や絢斗にキスをしないようにすればいい。
昇は……流石にまだ早すぎるが、挨拶なら……。
いや、どうしたものか……。
悩むところだな。

「ふふっ。卓さん、すっかり直純くんのパパだね。でも、そんなところが好き」

「絢斗……。嬉しいよ」

ギュッと抱きついてきてくれる絢斗を抱きしめてチュッと唇を奪う。
嬉しそうな笑顔を見せる絢斗を見て、やはり普段通りにできるように昇や直純くんに話をしようと決意した私だった。

夕食を済ませ、直純くんが風呂に入っている間にさっきの話でもしてみようかと昇の部屋に行くと、勉強机に向かい必死に勉強している昇の姿が見えた。

「悪い、邪魔したか?」

「大丈夫です。それより、俺、伯父さんに話があって……」

「どうした? 直純くんのことか?」

「それもありますけど、もう一つ話があって……実は、前にちらっと話したオンラインで繋がっているドイツの友人の話なんですけど……」

昇は、ドイツで知り合った友人が日本旅行にくる間、家に泊めるつもりで誘っていたこと。
それが難しくなって、友人の村山くんの家にお願いすることで話が進んでいること。
日本に来る前にドイツ人の彼とオンラインで村山くんが話をしたいと言っているから、この家に連れてきたいこと。

などを話してくれた。

「それで、村山を直純くんにも会わせていいかっていうことなんですけど……」

「なるほど。まだ今は直純くんを外部の人間と引き合わせたくはないが、村山くんなら大丈夫じゃないか?」

「本当に?」

「ああ。だが、村山くんもニュースを少なからず耳にしているだろう。直純くんとそのニュースがすぐに一致するとは思わないが、犯人と同じ苗字だということでつながらないとも限らない。その辺りは注意しておいてほしい」

「伯父さん。詳細はもちろん話さないけど、直純くんが心に傷を負っていることは話してもいいかな? そうすれば村山は余計なことは聞かないし、話もしないと思うんだけど……」

「そうだな。それなら構わないだろう。直純くんは最初は少し距離を取るだろうから、お前がちゃんと間に入ってやれ」

「わかりました。あと、もう一つ相談があって……」

「どうした? なんでも話してくれて構わないぞ」

昇は少し言いにくそうにしていたから、直純くんに関することだとわかっていたがとりあえず昇が口を開くのを待ってみた。

「あの……」

ようやく決心がついたらしい昇が話した内容は、男子高校生なら当然とも言えるものだった。

「直純くんといると、どうにもこうにも我慢できない時があって今はなんとか途中で離れて、その……処理したりして抑えてはいるんだけど、直純くんがあまりにも可愛すぎてやばいと思う時が多すぎて……なんとか、抑える方法を教えてもらいたくて……」

「特別な相手と一つ屋根の下に暮らすということは苦しいだろう。手を出すわけにもいかないしな」

「そうなんですよ、伯父さんはどうやって我慢してたんですか?」

「実を言うと、私が絢斗と出会った時にはもう絢斗は成人していたから、そこまで我慢することもなかったんだ。だからその衝動はわかるが、詳しい対処と聞かれると、参考にはならないかも知れないな」

「そう、なんですね……」

「だが、お前の気持ちが痛いほどわかるだろう人物を知っているから、その彼を紹介することはできるぞ。彼に相談したらきっといい対処法を教えてもらえるはずだ」

「本当ですか、伯父さんっ! その人、ぜひ紹介してください!!」

縋り付くような勢いで声を上げた昇の姿に、相当辛いんだろうということがありありと感じられた。
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