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大切な友人
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「……晴」
「あっ、隆之さんごめんね」
晴はさっとスマホをその場に置くとすぐに俺の元に戻ってきてくれた。
晴が彼・前澤くんと何かあるとは微塵も思っていないが、こんな朝からわざわざメッセージを送ってきて、しかもそれをみた晴があんなにも可愛らしい笑顔を見せたのはかなり気になる。
やっぱり直接聞くしかないか。
狭量な男だと思われそうだが、ずっと気になっているよりはマシだ。
「あ、朝から何の用だったんだ?」
緊張しすぎて思わず声が上擦ってしまった。
晴はそんな俺の様子は気にもせず、
「ああ、ホットドッグ美味しかったって」
と言ってきた。
「えっ? ホットドッグって?」
「んっ? ほら、隆之さんも食べたさっきの朝ごはん。昨日作った時いっぱいできたから、前澤くんにも2つあげたんだよ。朝ご飯にでも食べてねって言ったから、わざわざ美味しかったってメッセージ送ってきてくれたみたい。前澤くん、律儀な人だよね」
そうか、さっき食べたホットドッグ……彼も食べたのか。
そりゃあ美味しかっただろう。
晴の手作りパンとドイツのソーセージだからな。
晴が手作り料理を振る舞ったことは百歩譲って良しとしても、晴にあんな嬉しそうな顔をさせたのが俺じゃないってことが気にかかってるんだ。
前澤のことであんな表情を見せるなんて……。
これがただのヤキモチだと分かっていてもなんとなく面白くない。
「んっ? 隆之さん、どうしたの? 眉間に皺が寄ってるよ――わっ!」
俺の眉間を優しく撫でる晴の手を取り指先にキスをすると晴は恥ずかしそうに顔を赤らめながら、俺を見つめた。
「どうしたの? 隆之さん……急にびっくりしたよ」
「晴が前澤くんのメッセージで嬉しそうな顔をしてたから……」
「えっ――」
驚く晴を前に自分が子どもみたいだと思いつつも、一度口にした言葉は止められない。
「ごめん、ただのヤキモチだ。気にしないでくれ」
慌ててそういうと、晴は満面の笑みで抱きついてきた。
「隆之さん、なんかすっごく可愛いっ!!」
ぎゅーぎゅーと抱きつきながら嬉しそうにそ言ってくる晴に照れながらも、晴から可愛いと言われるのは意外といいもんだなと思ってしまった。
「晴、こんなことでいちいち妬いたりしてごめんな」
「ううん。僕、嬉しいよ。隆之さんが妬いてくれるなんて。ふふっ。しかもホットドッグで」
「違うぞ、彼が晴のホットドッグを食べたからじゃなくて、その……晴が彼のメッセージを嬉しそうにみてたから……」
そこまで正直に話すのは少し恥ずかしい気がしたが、晴に勘違いされたままなのは嫌だからな。
俺がそういうと晴は、くすっと笑って俺から離れ、さっき置いてきたばかりのスマホを持って戻ってきた。
「隆之さん、見てこれ」
差し出された晴のスマホにはさっき前澤くんから送られてきたメッセージが表示されている。
「読んでいいのか?」
「うん。もちろん」
少し緊張しながら、スマホを受け取りメッセージを読んでみると
<香月のホットドッグ、美味しすぎて驚いた! 早瀬さんも美味すぎて驚くだろうな。
そんな早瀬さん、俺も見てみたいけど、それは香月しか見られないんだろうな笑>
そんなことが書かれていた。
「これ……」
「ふふっ。そう。これ読んでる時に隆之さんがすごく幸せそうに食べていた姿思い出して、思わず笑っちゃったんだ。だから、僕を笑顔にさせたのは隆之さんだよ」
そう、だったんだ……。
なんだ、俺は……自分が恥ずかしい。
「晴……俺のこと呆れてないか?」
「ふふっ。呆れるなんてあるはずないですよ。可愛いとは思うけど……」
少し前の俺なら晴に可愛いと言われるのはなんとなく恥ずかしく思えただろうが、もうすでに晴にいろんな姿を見せている身としては、可愛いと言われて少し嬉しく思う自分がいる。
「そうか。ならいい」
前澤くんのメッセージが思いがけず晴から可愛いと言ってもらえるきっかけになって、俺は嬉しかった。
「隆之さん、早く準備してオーナーの家に行かなきゃ!」
そうだ。
このままイチャイチャしたい気持ちはあったが、アルや理玖と4人で会うのも楽しみなんだ。
旅行の話を進めるという大事な任務もあるしな。
帰ってきてからでもイチャイチャできるし、明日は休みだから夜は長いからいいだろう。
「じゃあ、準備するか」
俺は邪な気持ちを隠して急いで晴と一緒に準備することにした。
マンションのロビーで高木に会うと、晴はいつも通りの笑顔で挨拶をしていた。
その姿にホッとしたような表情を見せた高木は俺に嬉しそうな笑顔を見せた。
晴の様子を心配していたからな、晴の笑顔を見せられてよかった。
車でアルの家に向かう途中、理玖が大好きだという和菓子屋に行き、大福や団子などを何種類か買って行った。
アルはなかなか和菓子を食べる機会がないだろうが、ここのは美味しいから気に入ってくれたらいい。
久しぶりに行くアルの家はやっぱり大きくそしてとても格好良かった。
入り口で車を止め、窓を開け晴と共に大きな家に見入っていた。
ああ、いい家だな。
こんな家に晴と暮らせたら……。
今はまだ晴があのマンションを気に入っているから引っ越す予定はないが、今度新しく家を探すならこんな一軒家がいい。
晴とそうだな、犬を飼って一緒に育てるのもいいか。
いや、晴を犬に取られるのは嫌だな。
やっぱりずっと2人で過ごしたい……。
アルの家を見ながらずっと頭の中でそんな妄想を繰り広げていると、
「いらっしゃい」
と頭上から理玖の声が聞こえた。
「理玖! 車どこに止めたらいい?」
晴が駐車場の場所を聞いてくれるとすぐに家の地下にあるガレージの扉が開いた。
「そこの空いているところにどこでも入れていいんだって」
「わかった」
俺たちの乗った車がガレージに入るとすぐに扉が閉められたが、中は照明が明るく照らされていて止めやすい。
すぐに駐車して車から降りると、奥の扉が開きアルと理玖が現れた。
「 Hallo! ユキ、ハル。よく来てくれたね」
「昨日飲み会だって聞いてたからもっと遅いかと思ってたよ」
早く来てくれて嬉しいという2人の態度に俺も晴も嬉しくなる。
「旅行の話が楽しみで急いで来ちゃった、ねっ隆之さん」
「ああ。待ちきれなくてね。早く着きすぎてお邪魔じゃなかったか?」
笑ってそういうと、理玖は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていたが、アルは
「2人の時間は濃密だからね、ユキたちに少しくらい時間を分けても問題ないさ」
とさすがの返答に俺も笑い返すしかなかった。
「あ、あのとりあえずこんなところで話してないで中に入ろうよ」
まだ赤い顔のままの理玖が俺たちに声をかけると、アルは笑って理玖を抱き寄せ俺たちを中へ招き入れた。
俺たちの目の前を寄り添いながら歩くアルと理玖を見て触発されたのかなんなのか、晴も俺にぎゅっと寄り添いながら歩いてくれた。
「晴……」
「あ、隆之さん……ヤだった?」
俺の声にそう反応した晴に、
「そんなことあるわけないだろう。晴の方から寄り添ってきてくれたから嬉しいと思っただけだ」
と返すと
「ふふっ、良かった」
と幸せそうに微笑んだ。
2人に案内されるがまま歩いていると、広いリビングに通された。
中庭の見える広いソファーに『どうぞ』と言われ腰を下ろすと、晴がすぐにお土産の和菓子を手渡した。
「理玖が好きな和菓子買ってきたよ。オーナーも好きだといいんだけど」
「わぁ! 香月ありがとう! あれっ? ここの和菓子、俺が好きなところのじゃん! サンキュー」
「ほぉ、これが理玖の好きな和菓子だね。すごく美味しそうだ」
ヨーロッパの人は餡子が苦手な人が多いそうだが、理玖が好きな物ならアルは苦手でも好きだと言いそうだな。
まぁ、餅はヨーロッパでも人気らしいから、団子ならアルでも食べられるだろう。
「俺、お茶淹れてくるよ」
「あ、僕も手伝うよ」
晴と理玖は揃ってキッチンへと向かった。
2人だけになったリビングで、
「昨日の飲み会はどうだった?」
と唐突にアルから尋ねられた。
どうやら晴から話を聞いた理玖からアルもいろいろと聞いていたらしい。
「概ね楽しかったんだが――」
とあのゼミの女の子の話を出すと、アルは珍しく怒った表情を見せていた。
「ハルが怒るのも無理はない! ユキはこんなに努力をしているというのに全てがその美しい顔と運だと言われればそれは腹が立つ。その子は大切なことを何もわかっていないな」
そうか……。
俺のことをわかってくれているのは晴だけだと思っていたが、こんなにも俺を理解してくれる友もいてくれたんだ。
やはりアルは大切な友人だな。
かけがえのない存在である晴に出会えて、そのおかげで大切な友人まで授けてくれるとは……本当に晴と出会えて俺は幸せだ。
「あっ、隆之さんごめんね」
晴はさっとスマホをその場に置くとすぐに俺の元に戻ってきてくれた。
晴が彼・前澤くんと何かあるとは微塵も思っていないが、こんな朝からわざわざメッセージを送ってきて、しかもそれをみた晴があんなにも可愛らしい笑顔を見せたのはかなり気になる。
やっぱり直接聞くしかないか。
狭量な男だと思われそうだが、ずっと気になっているよりはマシだ。
「あ、朝から何の用だったんだ?」
緊張しすぎて思わず声が上擦ってしまった。
晴はそんな俺の様子は気にもせず、
「ああ、ホットドッグ美味しかったって」
と言ってきた。
「えっ? ホットドッグって?」
「んっ? ほら、隆之さんも食べたさっきの朝ごはん。昨日作った時いっぱいできたから、前澤くんにも2つあげたんだよ。朝ご飯にでも食べてねって言ったから、わざわざ美味しかったってメッセージ送ってきてくれたみたい。前澤くん、律儀な人だよね」
そうか、さっき食べたホットドッグ……彼も食べたのか。
そりゃあ美味しかっただろう。
晴の手作りパンとドイツのソーセージだからな。
晴が手作り料理を振る舞ったことは百歩譲って良しとしても、晴にあんな嬉しそうな顔をさせたのが俺じゃないってことが気にかかってるんだ。
前澤のことであんな表情を見せるなんて……。
これがただのヤキモチだと分かっていてもなんとなく面白くない。
「んっ? 隆之さん、どうしたの? 眉間に皺が寄ってるよ――わっ!」
俺の眉間を優しく撫でる晴の手を取り指先にキスをすると晴は恥ずかしそうに顔を赤らめながら、俺を見つめた。
「どうしたの? 隆之さん……急にびっくりしたよ」
「晴が前澤くんのメッセージで嬉しそうな顔をしてたから……」
「えっ――」
驚く晴を前に自分が子どもみたいだと思いつつも、一度口にした言葉は止められない。
「ごめん、ただのヤキモチだ。気にしないでくれ」
慌ててそういうと、晴は満面の笑みで抱きついてきた。
「隆之さん、なんかすっごく可愛いっ!!」
ぎゅーぎゅーと抱きつきながら嬉しそうにそ言ってくる晴に照れながらも、晴から可愛いと言われるのは意外といいもんだなと思ってしまった。
「晴、こんなことでいちいち妬いたりしてごめんな」
「ううん。僕、嬉しいよ。隆之さんが妬いてくれるなんて。ふふっ。しかもホットドッグで」
「違うぞ、彼が晴のホットドッグを食べたからじゃなくて、その……晴が彼のメッセージを嬉しそうにみてたから……」
そこまで正直に話すのは少し恥ずかしい気がしたが、晴に勘違いされたままなのは嫌だからな。
俺がそういうと晴は、くすっと笑って俺から離れ、さっき置いてきたばかりのスマホを持って戻ってきた。
「隆之さん、見てこれ」
差し出された晴のスマホにはさっき前澤くんから送られてきたメッセージが表示されている。
「読んでいいのか?」
「うん。もちろん」
少し緊張しながら、スマホを受け取りメッセージを読んでみると
<香月のホットドッグ、美味しすぎて驚いた! 早瀬さんも美味すぎて驚くだろうな。
そんな早瀬さん、俺も見てみたいけど、それは香月しか見られないんだろうな笑>
そんなことが書かれていた。
「これ……」
「ふふっ。そう。これ読んでる時に隆之さんがすごく幸せそうに食べていた姿思い出して、思わず笑っちゃったんだ。だから、僕を笑顔にさせたのは隆之さんだよ」
そう、だったんだ……。
なんだ、俺は……自分が恥ずかしい。
「晴……俺のこと呆れてないか?」
「ふふっ。呆れるなんてあるはずないですよ。可愛いとは思うけど……」
少し前の俺なら晴に可愛いと言われるのはなんとなく恥ずかしく思えただろうが、もうすでに晴にいろんな姿を見せている身としては、可愛いと言われて少し嬉しく思う自分がいる。
「そうか。ならいい」
前澤くんのメッセージが思いがけず晴から可愛いと言ってもらえるきっかけになって、俺は嬉しかった。
「隆之さん、早く準備してオーナーの家に行かなきゃ!」
そうだ。
このままイチャイチャしたい気持ちはあったが、アルや理玖と4人で会うのも楽しみなんだ。
旅行の話を進めるという大事な任務もあるしな。
帰ってきてからでもイチャイチャできるし、明日は休みだから夜は長いからいいだろう。
「じゃあ、準備するか」
俺は邪な気持ちを隠して急いで晴と一緒に準備することにした。
マンションのロビーで高木に会うと、晴はいつも通りの笑顔で挨拶をしていた。
その姿にホッとしたような表情を見せた高木は俺に嬉しそうな笑顔を見せた。
晴の様子を心配していたからな、晴の笑顔を見せられてよかった。
車でアルの家に向かう途中、理玖が大好きだという和菓子屋に行き、大福や団子などを何種類か買って行った。
アルはなかなか和菓子を食べる機会がないだろうが、ここのは美味しいから気に入ってくれたらいい。
久しぶりに行くアルの家はやっぱり大きくそしてとても格好良かった。
入り口で車を止め、窓を開け晴と共に大きな家に見入っていた。
ああ、いい家だな。
こんな家に晴と暮らせたら……。
今はまだ晴があのマンションを気に入っているから引っ越す予定はないが、今度新しく家を探すならこんな一軒家がいい。
晴とそうだな、犬を飼って一緒に育てるのもいいか。
いや、晴を犬に取られるのは嫌だな。
やっぱりずっと2人で過ごしたい……。
アルの家を見ながらずっと頭の中でそんな妄想を繰り広げていると、
「いらっしゃい」
と頭上から理玖の声が聞こえた。
「理玖! 車どこに止めたらいい?」
晴が駐車場の場所を聞いてくれるとすぐに家の地下にあるガレージの扉が開いた。
「そこの空いているところにどこでも入れていいんだって」
「わかった」
俺たちの乗った車がガレージに入るとすぐに扉が閉められたが、中は照明が明るく照らされていて止めやすい。
すぐに駐車して車から降りると、奥の扉が開きアルと理玖が現れた。
「 Hallo! ユキ、ハル。よく来てくれたね」
「昨日飲み会だって聞いてたからもっと遅いかと思ってたよ」
早く来てくれて嬉しいという2人の態度に俺も晴も嬉しくなる。
「旅行の話が楽しみで急いで来ちゃった、ねっ隆之さん」
「ああ。待ちきれなくてね。早く着きすぎてお邪魔じゃなかったか?」
笑ってそういうと、理玖は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていたが、アルは
「2人の時間は濃密だからね、ユキたちに少しくらい時間を分けても問題ないさ」
とさすがの返答に俺も笑い返すしかなかった。
「あ、あのとりあえずこんなところで話してないで中に入ろうよ」
まだ赤い顔のままの理玖が俺たちに声をかけると、アルは笑って理玖を抱き寄せ俺たちを中へ招き入れた。
俺たちの目の前を寄り添いながら歩くアルと理玖を見て触発されたのかなんなのか、晴も俺にぎゅっと寄り添いながら歩いてくれた。
「晴……」
「あ、隆之さん……ヤだった?」
俺の声にそう反応した晴に、
「そんなことあるわけないだろう。晴の方から寄り添ってきてくれたから嬉しいと思っただけだ」
と返すと
「ふふっ、良かった」
と幸せそうに微笑んだ。
2人に案内されるがまま歩いていると、広いリビングに通された。
中庭の見える広いソファーに『どうぞ』と言われ腰を下ろすと、晴がすぐにお土産の和菓子を手渡した。
「理玖が好きな和菓子買ってきたよ。オーナーも好きだといいんだけど」
「わぁ! 香月ありがとう! あれっ? ここの和菓子、俺が好きなところのじゃん! サンキュー」
「ほぉ、これが理玖の好きな和菓子だね。すごく美味しそうだ」
ヨーロッパの人は餡子が苦手な人が多いそうだが、理玖が好きな物ならアルは苦手でも好きだと言いそうだな。
まぁ、餅はヨーロッパでも人気らしいから、団子ならアルでも食べられるだろう。
「俺、お茶淹れてくるよ」
「あ、僕も手伝うよ」
晴と理玖は揃ってキッチンへと向かった。
2人だけになったリビングで、
「昨日の飲み会はどうだった?」
と唐突にアルから尋ねられた。
どうやら晴から話を聞いた理玖からアルもいろいろと聞いていたらしい。
「概ね楽しかったんだが――」
とあのゼミの女の子の話を出すと、アルは珍しく怒った表情を見せていた。
「ハルが怒るのも無理はない! ユキはこんなに努力をしているというのに全てがその美しい顔と運だと言われればそれは腹が立つ。その子は大切なことを何もわかっていないな」
そうか……。
俺のことをわかってくれているのは晴だけだと思っていたが、こんなにも俺を理解してくれる友もいてくれたんだ。
やはりアルは大切な友人だな。
かけがえのない存在である晴に出会えて、そのおかげで大切な友人まで授けてくれるとは……本当に晴と出会えて俺は幸せだ。
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