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幸せな目覚め

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カーテンの隙間から入り込んでくる朝の陽射しが眩しくて目を覚ますと、隣にいるはずの晴の姿はなかった。

あれっ? と思ったのも束の間、キッチンからトントンと包丁の音が聞こえる。

そうか、朝ごはんを作ってくれているのか……。
出汁の良い匂いがしているから、朝は和食だろうか。
匂いを嗅いだだけで俺の腹は早く喰わせろと言わんばかりにグーグー主張しだした。

俺のマンションでは寝室とキッチンが離れていることもあって、晴が朝食の支度をしている音が聞こえることはない。
晴が俺のために作ってくれている朝食作りの穏やかでしあわせな音を聞きながら、朝の目覚めができるなんて心が満ち足りた気分になる。

新しい家で晴と過ごすなら、こんな作りもいいかもしれないななんて、1人で新婚生活を想像してニヤけてしまった。

「そろそろ隆之さん、起こした方がいいかなぁ?

そう独り言を言いながら晴が近づいてくる。
せっかく起こしてくれるチャンスなのに起きていてはもったいない。
俺は慌てて目を瞑り寝たフリをした。

晴が俺の顔の近くまでやってきて、静かに座り込んだ。

すぐに声をかけてくるかと思ったら、俺の顔を見ながら小声で何かを呟いている。

なんだ? 何を言ってる?

全神経を集中させて晴の呟きを聞いてみると、

『寝てる時もこんなに格好良いなんてズルいなぁ』
『まつ毛長くて本当格好良い』
『こんな素敵に人が僕の恋人だなんて……イマイチ信じられないな』

なんて言ってる。
バカだな、晴は。

「うわぁっ」

俺は抱き込むように晴の腕を取ると、晴は大声を上げて驚いていた。

「晴、おはよっ」

「隆之さん、起きてたの?」

「ああ、晴が朝から俺の顔でいたずらしてるなって楽しく見ていたよ」

「いたずらなんかしてないです。ただ……」

「んっ? なんだ?」

「隆之さんが格好良いなって思ってただけで」

晴の照れた顔が可愛くてたまらなくなる。
俺は腕の中に抱き込んだ晴の顔を上げて、朝のキスを奪った。

「朝からそんな可愛いことばっかり言ってたら、俺の理性が持たなくなるな」

そう言うと、パッと顔を赤らめて

「今日はダメです……」

と言ってきた。

「んっ? 今日ってことは、明日ならいいのか?」

わざとイジワルを言ってやると、晴は小さく『うん』と頷いた。

はぁーっ、もう!
可愛すぎてヤバいな。

「ほら、隆之さん。朝ごはん出来てますから、顔洗ってきてください」

そう言って晴はさっとキッチンへと戻っていった。

顔を洗ってキッチンを見ると、晴が漬物を切っている。

俺はそっと晴の後ろにまわり込み、ぎゅっと抱きついてやった。

「わぁっ! もう、隆之さん。包丁使ってるのに危ないですよ!」

「ごめん、ごめん。俺、ちゃんと顔洗ってきたから、朝の挨拶したくて……」

「えっ?」

晴が振り返ったところを狙って、ちゅっと唇を重ね合わせる。

ちょっとふっくらしてて柔らかくて蕩けるように甘い下唇をはむはむと甘噛みしてやると、

「……んっ、ふ……ぅあ」

と晴の口から甘い喘ぎ声が漏れる。

もっとたくさんしたいけれど、今日は予定が詰まっている。
このへんにしておくか。

重ねていた唇を離すと、晴が少し残念そうな顔をしていたから、

「続きは夜にな」

と耳元で囁くと、晴は顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに頷いた。

そのいじらしい表情が俺の理性をくすぐってくる。
晴は俺を一体どうしたいんだろう……。


「何か手伝うことはあるか?」

「あっ、じゃあ……お味噌汁よそってもらえますか?」

「分かった」

俺はお椀を手に取って、鍋の蓋を取ると出汁の良い香りが鼻腔をくすぐる。

具は茄子と長ネギか。
美味そうだな。

2人分よそってテーブルに運ぶと、
卵焼きに焼き鮭、納豆に漬物が綺麗に並べられていた。

「おおっ、朝から豪勢だな」

「ふふっ。喜んで貰えて嬉しいです。最近お料理があんまり出来てなかったから嬉しくて張り切っちゃいました」

晴はにこりと笑いながら、ほかほかと湯気をあげる炊き立てのご飯を運んできてくれた。

「じゃあ、いただきましょうか」

「ああ、いただきます」

俺はご飯茶碗を左手に持ち、箸は半分に切った卵焼きをとらえ、パクりと口にしてから炊き立てのご飯を食べた。

卵焼きから滲み出る出汁にご飯が進む。

「晴の卵焼きはいつ食べても最高だな。もうこの卵焼きしかたべられないよ」

「ふふっ。隆之さん好みで良かったです。ご飯お代わりありますから食べてくださいね。あっ、お昼の分が入るくらいでお願いしますね」

「ああ、分かってるよ。晴のパンも楽しみにしてるからな」

俺は全ての料理に舌鼓をうちながら、あっという間に朝食を食べ終えた。

2人で並んで後片付けをして少しだけ休憩を取ると、晴は『そろそろお昼の支度を始めますね』と冷蔵庫に開けた。
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