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思い出のCM

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隆之さんのお家でゆっくり休ませてもらったお陰で、週明けには体調もすっかり良くなった。
変な薬を飲まされてどうなることかと思ったけれど、本当に良かった。

好きなジュースだからって、すぐに飛びついてしまわないように今度からはもっと警戒しないとな。
ほんと、反省だ……。

今回いろんな人に心配とか迷惑とかかけてしまって申し訳なかったな。
唯一良かったのは、撮影が無事に終わってたこと。
実際どんな写真が撮られてるか全然わからないけど、カメラマンの永山さんがオッケーだしてくれたからきっと良かったんだろう。

高木さんに無理を言ってずっと食べてみたかった食パンを買ってきてもらった。
焼き立てだから、ホカホカでふわふわしてる。
これをパクってしたら美味しいだろうな。

いつも我が儘を言ってしまっているのに柔かな笑顔でさっとこなしていく高木さんがほんとすごいなって思ってて、今度じっくり話を聞いてみたくて、食事にお誘いしたらオッケーしてくれて凄く嬉しかった。
僕も来年から社会人だし、参考にさせてもらおっと!


隆之さんと小蘭堂に出社すると、ロビーがひどい状態になっていた。
驚いていた時に森崎刑事が現れて、桜木部長も一緒に会議室で話を聞いたら、真島くんが拘束されたって聞いて身体の奥からホッとした。

大丈夫だと思っていても、恐怖心というのは消えてなかったみたいだ。
いつかまたこの前みたいに連れ去られたりしちゃうかもってどこかで怯えてた。
そして、また周りの人に迷惑をかけてしまうことが嫌で嫌でたまらなかった。

真島くんや僕を連れ去った彼、鉢屋くんだっけ? とか、三浦さんとか……僕がその人たちを怒らせるような何かをしてしまったのかもしれないけど、なんとか誤解が解けてくれれば良いなって思ってる。

今日は桜木部長がいろいろと仕事を教えてくれるらしい。
一緒に入社する人たちに悪い気もするけれど、いろんな仕事を見せて貰えるのはすごく興味があるし、楽しみだ。

桜木部長はまず、営業部へと連れて行ってくれた。

ここは前に隆之さんときたことがあるから、見たことがある人もたくさんいる。

名刺を頂いた橘さんもいた。
彼は隆之さんと同じ営業マンさんだけど、今日は内勤なのかな?
凄く真剣な顔をしてパソコンに向かってる。

「あれ? 香月くん。今日は早瀬と一緒じゃないの?」

僕が視界に入ってしまったようで、目が合って少し大きめの声で話しかけられた。

少し離れていて大声で返して良いのか悩んでしまう。

「今日は私の補佐をしてもらおうと思ってな、早瀬から奪い取ってきたんだ」

桜木部長が笑ってそう言うと、

「部長が笑って冗談いうなんて、ほんとあの子何者?」

周りから口々にそんな声が聞こえてきた。

「香月くん、こっちだ」

桜木部長は、営業部内にある小さな会議室に僕を案内してくれた。

指定された席に座ると、部長は向かい合わせになるように腰を下ろした。

何を言うでもなく僕を柔かな笑顔で見つめると、ゆっくりと口を開いた。

「香月くん、最終面接の時のことを覚えているかい?」

「えっ、あのCMのお話ですか?」

「ああ、そうだ。面接の時の君は、学生らしい活発さとそれに加えて忌憚ない意見が素晴らしく輝いていたな。面接で好きなCMを聞かれた時、他の受験者は、我が社の作ったCMの中でも一番出来が良かったものをあげてくれた。面接だし、良い印象を与えるにはそれが正解なのかもしれない。でも、君は我が社が作ったCMの歴史の中で、一番最低評価だったと言える作品をあげ、それのどこが悪かったのか、どうすれば良かったのかを作り上げてきてくれた。この作品が好きだからこそ、このまま埋もれて欲しくない、そう言ってくれたんだったね」

「はい。僕、子どもの頃にあのCMを見てずっと心に残っていたんです。大好きなCMだったのに評価が低くて打ち切りになっていたって知って……でも、あれは発想は素晴らしかったんです! だから、改善点を出したらもう一度流れる時もあるのかなって期待を込めて、自分で面白く考えてみたのをあの質問が出た時ふと思い出して面接で話してみたんですよね。あんなに話を聞いてもらえると思ってなくて、驚いたんです。ふふっ」

いろんな会社の面接を受けたけど、あの質問が一番面白くてすごく楽しかったんだよなぁ。

「香月くんが好きだって言ってくれたCMは、実は私が作ったんだ」

「ええっ? 桜木部長が?」

「作った人の名前なんかいちいち出ないからわからなかっただろう? あれは私が初めて1人で任されたCMだったから一番思い出に残っているし、忘れようと思っても忘れられん。あの話をされた時、悔しかった気持ちを思い出した。でも、それと同時に君の考えた内容を入れて作り直したらどれだけ素晴らしいものになるかと考えたら年甲斐もなくワクワクしてしまったよ。君ともう一度あれを作りたい、そう思っていたから、君が合格した時は嬉しかったな」

桜木部長との思いがけない縁に、僕は驚いたと同時に嬉しさが込み上げてきた。

「実は、あのCM企業の担当の、長谷川さんって言うんだが、その人とは今もよく飲みに行ってるんだよ。お互い初めて担当した作品でもあったから、思い出深くって……それで君の面接の後、彼と会った時にその話をしたんだ」

「えっ? あの話をですか?」

「ああ、あのCMは打ち切りにこそなってしまったが、彼の社内でも我が社でも評価が分かれていてね……長谷川さんはずっと良いCMだって言ってくれてたからこんな面白いアイディア持ってきてくれたんだって話をしたら、ぜひそれでもう一度あのCMを復活させたいって言われてね。香月くん、君はどう思う?」

急な話に僕は驚いてしまったけれど、あの大好きなCMがまたテレビで流れるのならぜひ観てみたい!

「復活? あのCMをもう一度見られるってことですか?」

「ああ、君が面接で話した改善点も盛り込んで作ってみたいんだが、君も一緒にやってもらえないか?」

僕が? そんなこと出来るかな?
あれはああだったらいいなっていう自分のやりたいことをいっぱい詰め込んだ、言ってみれば夢物語のようなもののつもりだったんだけど……。

「僕に出来ることならなんでもお力になりたいと思いますが……僕に何ができるでしょうか?」

「君のあの自由な発想が良いんだよ! 長谷川さんも驚いていたよ。あの時、君の意見が出てそれを作っていれば、絶対に打ち切りになんかならなかったって。それは私も同じ意見なんだよ。有難いことに、長谷川さんも私もある程度意見の通る役職にまで昇ることが出来た。あれだけなんだ、後悔が残っているのは……。もう一度挑戦して、あの時味わった悔しい想い出を良い想い出に塗り替えたいんだ。
香月くん、協力してもらえないか?」

桜木部長の心からの悔いがひしひしと伝わってきて、僕には協力しないなんて選択肢はどこにもなかった。

「はい。僕で良ければ是非! あのCMが見られるなんて……ずっと夢にみてたことが現実になると思うと感無量です」

「ありがとう! 香月くん! 早速長谷川さんにアポをとるよ。日程決まったら君も一緒に行ってくれ!」

「はい。もちろんです!」

嬉しそうな桜木部長の顔を見て、僕も嬉しい気持ちになった。


桜木部長がこんなにもあのCMに囚われるのは、やはり初めて自分が手掛けたということが多いんだろう。
相手の担当さんも初めてなら尚更だ。
何度も何度も打ち合わせを繰り返して、よしこれで!と自信を持って送り出したのに思ったほどの結果が見られなかった。
それは、悔しかったに違いない。

僕はあの作品を見た上で、ああやったら面白かったかも……あれはなかった方が……って考えただけに過ぎない。
だから、一から作ったこともない僕が偉そうに言える立場ではないけれど、あのCM作品を作った方と一緒の場に参加させてもらえるだけで僥倖だ。

ポスターの撮影も終わって、普通の大学生に戻ると思って、少し寂しくなっていた自分がいたから、桜木部長に声をかけてもらえてすごく嬉しい。

あれからすぐに長谷川さんにアポをとった桜木部長は、あのCMについて再考するため、そのまま会議室で2人で意見を出し合った。

僕が面接で話したことは半分夢物語のようなところもあったので、それをどうやって現実的にやっていくか、あのCMの要素をきちんと入れながら意見を言い合うのはすごく楽しかった。

僕と部長の意見がおおよそまとまったところで、気づけば昼食時間が近づいていた。

「よし、香月くん。早めに食堂に行っておくか」

「はい。ここの社食とても美味しかったから、すごく楽しみです」

「ははっ。今日も私がご馳走するから好きな物食べなさい」

「わぁっ。ありがとうございます!」

会議室を出ると、橘さんがちょうど目の前のコピー機を使っているところだった。

「あれ? 桜木部長と香月くん、話は終わったんですか?」

「ああ、今から社食で昼飯食べに行くんだ」

「えーっ、部長。俺も一緒にいいですか?」

橘さんは手に持っていた資料を急いで自分の席に置きに走った。

「お前、仕事はいいのか?」

部長は橘さんの背中に向かって声をかけたけれど、

「部長、もうお昼ですよ。ちゃんと腹ごしらえしないと、昼からの会議で力が出ませんよー」

にっこりと笑いながら、部長に軽口を叩く。

「まぁ、ついてくるのはいいが、自分の分はちゃんと出せよ」

部長が呆れたように声をかけると、橘さんは嬉しそうに『はーい』と言って、3人で社食に向かった。

「ねぇ、香月くん。君、最終面接で役員たちを唸らせたってほんと?」

「えっ? 唸らせたって……? いえ、そんな……」

僕の面接、そんなおかしかったのかな?
最終面接って、さっき話してたCMの話だよね。
たしかに面接と思えないくらいに盛り上がりはしたけど。
それは他の受験者の話もあったし、いっとき他の受験者とディスカッションみたいになって面白かったんだよね。

「橘。そんなこと急に聞かれても、香月くんにはわからんだろ」

「そうですか? 今年の最終面接は近年稀に見る面白さで、噂の受験者を確保にかかったって社内でも話題になってましたよ。多分、それって香月くんのことですよね? 最終面接で即座に合格出したの1人だけって聞きましたよ」

えっ? 1人だけ? どういうこと?
嘘でしょ……。

「ほら、橘。香月くんが驚いてるだろ。違うんだ、香月くん、気にしないでいい。君の場合は面接官が満場一致でその場で合格が決まったというだけだよ。他の受験者もきちんとそのあとでちゃんと合格してるから、ちやんと同期はいるよ。安心して」

はぁー、なんだ。驚いた。
そうだよね、流石に1人だけとか怖すぎる……。

「ほら、食堂に着いたぞ。昼飯にしよう」

「はい」

僕は桜木部長た橘さんに挟まれるように社食へと入ると、まだお昼になったばかりだったからか、そこまで社員さんはいなかった。

列に並び、大きなメニュー表を眺めていると、後ろから声をかけられた。

「香月くん!」

「あっ、早瀬さん。お仕事おわったんですか?」

「ああ、そろそろ社食に来る頃だと思って急いで仕上げたよ」

隆之さんは僕達と同じ列に並び、橘さんを見つけて話しかけた。

「なんでお前が一緒なんだ?」

「お前こそ、来るの早すぎだろ。せっかく香月くんと楽しく食事しようと思ってたのにさ」

「ほら、お前たち騒いでないでさっさと注文決めろ!」

桜木部長が2人の間に入って、一喝すると2人はすぐに大人しくなった。

「ふふっ。お2人とも先生に怒られた小学生みたいですね」

「本当だな。どっちが学生かわからんよ」

桜木部長と顔を見合わせて笑っていると、周りがざわざわと騒がしい。

なんだろう?

『すごい! 見てあの子の周り!」
『うわっ、桜木部長に営業部のツートップまでいる!』
『あの子もめっちゃ可愛い』
『そういえば、あの子営業部のインターンとか言ってなかった?』
『いや、あの格好だよ? インターンは違うでしょ』
『いいなー。私もあの中に入ってお話したーい』


「香月くん、今日は何にする?」

「僕、前回豚の生姜焼きだったので、今日は唐揚げにします!」

「わかった……さぁ、ほら、食券だよ」

「ありがとうございます!」

僕はウキウキしながら、食券を渡すと

「あれー! 晴くん、食べにきてくれたの?」

とカウンターの中から声をかけられた。

見ると、篠田さんがこっちをみている。

「あーっ! 篠田さん、今日は唐揚げ定食お願いします!」

「はぁーい、待っててね」

「篠田くん、私の天ぷら定食も頼むよ」

僕の後ろから桜木部長が声をかけると、わかりましたーと明るい声が聞こえた。

「さぁ、晴くん。お待たせ! これ、サービスね」

見ると、僕のトレイにミルクレープがのっている。

「えっ? 良いんですか?」

「ちょうど今日作ったところでタイミング良かったの。食べてくれると嬉しいわ」

篠田さんがニコニコしながら、言ってくれたので有り難くいただくことにした。

「香月くん、あそこに座ろうか」

桜木部長が指をさしたのは、前回と同じ半個室になっているような奥の座席。

あそこ、ゆったり出来て会話もしやすかったんだよね。
空いてて良かった!

「重くないか?」

と心配され部長にエスコートされるように席へと歩いて行った。

2人横に並んで座ったところで、橘さんと隆之さんがこっちに向かってくるのが見えた。

僕の向かいに隆之さん、部長の前に橘さんが座った。

「香月くん、唐揚げか。いいの選んだな。美味しそうだ。俺は海老フライにしたから一本やるよ!」

橘さんがさっと僕のお皿に海老フライを乗せてくれた。

「えーっ、3本しかないのに良いんですか? 良かったら僕の唐揚げひとつ取ってください!」

そういうと、橘さんはすっごく嬉しそうな顔をして

「じゃあ、あーん」

と大きな口を開けてみせた。

えっ……っと、これは入れてあげるべき?

僕は箸で唐揚げを摘んであげようとすると、部長がさっと僕のお皿から唐揚げをひとつ取って橘さんのお皿にポンと乗せた。

「あーっ、部長! せっかく香月くんからあーんして貰おうと思ってたのに!」

「ほら、騒いでないでお前は早く食え!」

「ちぇっ、はーい」

そういうと、橘さんはまず唐揚げを口にぽーんと放り込んで、うまいなと言った。

「香月くん、俺のコロッケもやるよ」

隆之さんがさっとコロッケをひとつ入れてくれた。

「じゃあ、早瀬さんも唐揚げ食べますか?」

「いや、香月くんの分がなくなるだろ。俺はそんなに腹減ってないから大丈夫だ」

僕は自分のお皿に乗った豪華なおかずたちを見ながら、
「ありがとうございます。いただきます」

と手を合わせ食事の挨拶をして食べ始めた。

大きな唐揚げはジューシーですごく美味しかった。

次は何を食べようかとお皿をみると、さっきまでなかった海老天が目の前にある。

「あれっ?」

「良かったら私の海老も食べてくれ。ここの天ぷらは絶品だぞ」

「わぁー、いいんですか? ありがとうございます」

僕、海老フライ好きだけど、海老天はもっと好きなんだよね。
大好きな海老天を前に遠慮なく貰ってしまって申し訳ないけど……いただきまーす

サクッ。

うーん、衣がサクッとしててすごく美味しい。
このお塩、岩塩かな?
細かいお塩も美味しいけど、岩塩のつぶつぶもアクセントになって美味しいんだよね。
今度やってみよう。

唐揚げ定食を頼んだはずが、海老フライにコロッケ、海老天まで食べられてすごく満足だった。

お腹いっぱいだけど、デザートは別腹だよね。

篠田さんに貰ったミルクレープをフォークでひと口サイズに口に運ぶと、ミルクレープの柔らかな生地と生クリームの程よい甘さがクセになる。

「うーん、おいひぃ」

あまりにも美味しくて感激していたら、部長も橘さんも隆之さんも僕をじっと見つめていた。

んっ? あっ! ミルクレープ食べたいのかな?
さっきおかず貰ったし、食べかけだけどお返しに食べるかな?

「部長もミルクレープ食べますか?」

小首を傾げて尋ねてみると、くぅっっと唸るような声がしてあれっ? と思ったけれど、

「せっかくだから、いただこうかな」

と言われたので、嬉しくて

「はーい。部長さん、あーん」

というと、目を見開いて驚きながらも、口を開けてくれた。

「どうですか?」

「あ、ああ。すごく、美味しいな」

「でしょう! ほんと、篠田さんお菓子作るの上手ですよね! 今度教えてもらわなくっちゃ」

僕がそう言うと、部長は嬉しそうに笑って

「作ったら是非食べさせてくれ!」

と言ってくれた。

「はい。喜んで。ふふっ」

部長と顔を見合わせて笑っていると、隆之さんがこっちをずっと見ている。

ああ、隆之さんもミルクレープ食べたかったのかな?

そう思って、

「隆之さんもミルクレープひと口どうですか?」

と聞いてみると、

「ああ、もちろん……あっ、いや、先に香月くんひと口食べて見せてくれ」

と言われた。

えっ? なんでだろう?
不思議に思ったけれど、隆之さんが言うのならとフォークでひと口食べようとしたけれど、

「ああ、やっぱり貰うよ!」

と慌てた様子でひと口分に切り分けたミルクレープがついたままの僕のフォークをとって、自分が食べるのかと思いきや、橘さんの口の中へあーんして食べさせていた。

「うわっ、なんだ! 早瀬、お前……!」

橘さんがモグモグしながら少し怒った様子で隆之さんをみていたけれど、隆之さんの方は特に気にした様子もなく、僕にフォークを渡そうとして床に落としてしまった。

「ああ、ごめん。落としてしまったから、新しいフォーク取ってくるよ」

そう言って、立ち上がりすぐに新しいフォークを持って帰ってきた。

「さぁ、新しいフォーク持ってきたから、俺にも食べさせてくれ」

嬉しそうに口を開ける隆之さんが可愛くて僕はひと口サイズに切り取ったミルクレープをあーんして食べさせた。

「うん、美味いな」

にっこり笑ってそう言った隆之さんはすごく可愛く見えた。

ふと、部長と橘さんを見ると、なんだか不機嫌そうな顔で隆之さんを見ている。

「お二人ともどうかしましたか?」

「えっ? いや、なんでもないよ。ゆっくりデザート楽しんでくれ」

なんか変な感じがしたけれど、美味しいミルクレープを前に僕は気にもとめずにゆっくりと食べ続けた。

「ふぅー。お腹いっぱいです。部長さん、ご馳走様でした」

「いや、喜んでもらえて私も嬉しいよ。香月くん、午後もよろしく頼むな」

「はい」

気になっていた事件は解決したし、ポスターも完成が見えてきて、それに加えて新しいプロジェクトにも参加させて貰えて……僕、すごく充実してるなぁ。

やっぱりここ受けて良かった!

「えっ? 部長、午後も香月くんと一緒ですか? いい加減返してくださいよ」

「大事な仕事の話があるんだ。お前も午後はリュウール案件で忙しいだろう。定時で帰すからそれまで預かっておこう」

「預かるって……。はぁー。仕方ない。じゃあ、香月くん、定時になったら営業部のオフィスでね」

「はい。午後もお仕事頑張ってくださいね」

そう言って手を振ると、隆之さんも嬉しそうに手を振りかえしてくれた。

「ねぇ、俺にもやってよ」

橘さんが近づいてそんなことを言う。

「午後も頑張れって香月くんに言って貰えたら午後の外回り頑張れそうなんだけどな」

ふふっ。橘さん、なんだか子どもっぽくて可愛い。

「橘さん、事故に気をつけて午後も頑張ってきてくださいね」

にっこり笑ってそう言うと橘さんは、ぐぅっっと唸り声をあげながら片手で顔を覆っていた。

「橘さん、大丈夫ですか?」

と聞いたけれど、

「あ、ああ大丈夫、大丈夫。またね」

と言ってヨタヨタしながら、食堂から出て行った。
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