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美しさと誇り
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エレベーターを待っていると、晴が腕に縋り付いてきた。
「んっ? 晴、どうした?」
「ううん、なんでもないです。ただ隆之さんにくっつきたくなって…」
咲田に言われたことを気にしてるんだろうか?
俺は晴の気持ちを言葉で表して貰えて、しかも、こうやって晴の方からくっついてきてくれるなんて天にも昇るような心地だ。
「晴。嬉しいよ」
唇にキスしたいところだが、さすがにここでは憚られるので、晴の柔らかな髪に口付ける。
晴も一瞬寂しそうな顔をしたが、それでも髪へのキスが嬉しかったのか、ふふっとにっこり笑って見上げてくれた。
そのタイミングでエレベーターが到着し、晴は俺の腕に縋り付いたままエレベーターへと乗り込んだ。
せっかくの二人の空間だから、さっき出来なかった唇へのキスをしたいなという気持ちになったものの、会議室はひとつ上の階。
すぐに到着してしまい残念に思ったが、これから重要な会議が始まる。
よし、頑張ろう! と気合の声を晴にかけると、威勢よく はい! と返してくれて、嬉しかった。
トントントン
会議室の扉をノックすると、中から『どうぞ』という部長の声が聞こえる。
「失礼します」
「失礼します」
中に入って指定された場所へと着席する。
もうすでに隆之たち以外のメンバーは揃っており、俺は『遅くなりました』と声をかけた。
「いや、まだ予定時間前だから大丈夫だ。それじゃあ全員揃ったところで、早いが会議を始めようか。早瀬、資料を頼む」
「はい」
俺が配布しようと席を立つと、晴もさっと立ち上がって俺の手から資料を半分受け取り、上座にいる上司から順序よく配布していった。
こんなに状況を判断して自分の意思で動ける大学生がどこにいるだろうか。
晴のこういうところについつい感嘆してしまう。
「香月くん、配布が終わったらこちらに来てくれ」
晴は全員に資料が渡ったのを確認すると、すっと正面に歩み寄り、目を惹くような綺麗な立ち姿で俺の隣に立った。
「お手持ちの資料の説明の前に今回のクライアントであるリュウールのポスターモデルについてお話をさせていただきます。今回リュウールからの発注に基づき、その希望に値するモデルをリヴィエラに依頼したところ、こちらにおります彼、香月晴くんを推薦されました」
晴が綺麗なお辞儀を見せ、笑顔を見せると初めて晴を見る部長以外の上役は、ほぉっと感嘆の声を上げる。部長はすでに晴の素晴らしさを知っているという優越感なのかなんなのか、したり顔で隣に座る篠原チーフに、どうだ、良い子だろうといわんばかりのアイコンタクトをおくっているのが見えた。
「偶然にも彼は来年度、弊社に入社することが内定しております。ですので、彼は今回はモデルという立場ではありますが、この体験を入社後、活かしてもらうためにこの会議から撮影終了まで参加してもらうこととなりました。ただ、実質的にはまだ彼は大学生でありますので、拙い意見も出るかとは思いますが、いち消費者としてリュウールへの生の意見を忌憚なく発言してもらい、広告作りの参考にさせていただこうと思っております。じゃあ、香月くん、一言頂いてもいいかな?」
晴にはこの会議で一言話をしてもらうということを特に説明はしないまま、話を振ってしまったが、晴は俺の言葉に動じることもなく、はいと返事をして話し始めた。
「ただいま早瀬さんからご紹介いただきました、香月晴と申します。リヴィエラと同じ高梨ビルの一階にありますカフェでアルバイトをしておりましたところ、リヴィエラの田村代表に勿体なくもお声かけいただき、この度こうやって小蘭堂さんとリュウールさんとのご縁をいただくこととなりました。私はまだ大学生という半人前の未熟な立場であり、モデルとしてのお仕事も今回が初めての経験となります。しかし、広告代理店に就職を希望しておりました私にとって、広告作りにこのような形で参加させていただくこと本当に嬉しく思っております。推薦してくださった田村代表や今回私のモデル起用につきまして賛成してくださった桜木部長をはじめ、上層部の皆様に少しでも貢献してこの度の感謝をお返しできますよう努力したいと思います。どうぞよろしくお願い致します」
突然話を振られたにも関わらず、晴の完璧ともいえる挨拶にみんな開いた口が塞がらない様子であったが、桜木部長がいち早く我にかえり拍手をすると慌てて全員から拍手が巻き起こった。
部長は立ち上がると、晴の傍につかつかと小走り気味に寄ってきて、両手で晴の手を握り称賛の言葉をおくった。
「いやぁ、香月くん。良い挨拶だった。来年度、君が入社してくるのが今から楽しみだよ」
「桜木部長、ありがとうございます。頑張ります」
晴がもう片方の手で、部長に握られた手を包むように握りながら嬉しそうに部長を見つめ、御礼の言葉を述べると部長は顔を真っ赤にしてその場に立ちすくんだ。
一向に手を離さず、晴を見つめたままその場に立ち竦む部長を不思議に思ったのか、晴が
「部長? どうかしましたか?」
と声をかけた。
ようやく正気に返った部長が
「いやぁ……なんでもない、なんでもないんだ」
と呟きながら席へと戻っていった。
ああ、田村さんに続いて、堅物と有名な部長までもが晴に落ちたか……。
あの無自覚な色気だだ漏れの笑顔は間近でみると、かなりの破壊力らしい。
一瞬会議室内がざわついたが、隆之はゴホンと大きく咳払いをし会議へと話を戻した。
「えー、それでは、会議を始めさせていただきます。お手持ちの資料の2枚目をご覧ください」
今回のポスターに関するリュウールサイドからの意図、そしてそれに関する要望など、当初持ち込まれた時の打ち合わせで出ていた内容などを纏めたものを解説していく。
「リュウールが今回新開発したメイクアップ化粧品はリキッド、パウダー、そして高保湿のクリームの三種類のファンデーションです。そして、これから第二弾でフェイスパウダー、第三弾でスティックタイプの口紅も展開していくということが決定しており、フェイスパウダー、口紅につきましては、ファンデーション発表後、2ヶ月刻みで順次シリーズとして発表していくというスケジュールになっています。今回の3種類の化粧品プロジェクトが成功した暁には、アイシャドウ、チークなどのポイントメイクアップ化粧品も同シリーズ化して開発を進めていきたい、ただ、先発の化粧品シリーズの売り上げ結果が奮わなかった場合には、メイクアップ化粧品開発からは全て手を引き、既存の定評のあるスキンケアシリーズのみの開発に的を絞るという話ですので、今回のポスター広告は、リュウールのメイクアップ化粧品開発の存続に大きな影響をもたらすものと思われます」
「うーん、これはかなりパッと目を惹くようなインパクトが必要だな。第一弾のポスターで充分に惹きつけておかないと第二、第三と波に乗せるのは厳しいぞ」
先程、晴の無自覚な色気に虜になってしまった部長だが、すっかり仕事モードに戻ったようで資料をじっくり読みながら的確なコメントを呟く。
部長のコメントに他のメンバーも一様に頷いていた。
「はい。リュウールサイドからは、この商品でメイクしたモデルの女性を前面に出すこと、そして、その新開発した商品に商品以外の余計なイメージがつかないように、イメージモデルには既に活躍されている女優やモデルではなく、まだ世に出ていない、何の手垢もついてない純心無垢な天使のような子をイメージモデルとして選ぶことが条件として掲げられていました。それらの要望を踏まえて、モデル決定の前に私なりにポスターの構図を2パターン考えました。それが資料3枚目です」
俺はポスター上部に商品名、下部に商品画像を配置し、中央にメイクを施したモデルを正面から鎖骨辺りまでを映した、化粧品のポスターとしては言わばオーソドックスなタイプの構図と、
中央にメイクをする前とした後のモデルが向き合い、メイク後の肌質がわかるように顔をアップで映すという構図の2パターンを考えていた。
後者の方は真正面でない上にかなり顔寄りのアップなので顔全体はわからないが、ファンデーションを付けた後の肌質の透明感や美しさはきちんと伝わるはずだ。
「この2つ目の構図はかなりチャレンジだな。名前が知られていないモデルだからこそ出来る構図か。インパクトとしては、うん、悪くないな」
「ありがとうございます。今回モデルに抜擢された香月くんは、線の細い柔らかなラインが醸し出す雰囲気と、それでいて芯の強そうなその綺麗な顔つきが、淡い光を意味するリュウールという企業のモデルイメージにぴったりだと思います。しかしながら、今回の化粧品のポスターイメージでリュウールが考えていた、メイクを施したモデル、今回で言えば、メイクを施した香月くんを前面に出すということになりますが、その案では消費者にインパクトを与えるというより、消費者にはモデルしか印象に残らない、商品ポスターとしてはむしろ逆効果になるのではないかと考えます。ですので、今回モデルに香月くんが決定したことで1つ目の構図は一度白紙に戻しました」
晴が前面に出る、真正面から顔全体が映ってしまう構図だと化粧品よりも晴の方が目立ってしまうのは間違い無いだろう。それくらい、晴の持つオーラは強すぎる。ポスターを見た人が、リュウールの化粧品に目がいかなくてはポスターとして意味がない。
しかし、晴が映らないという構図ではそれは全く意味がなくなる。
だから、晴がいることによってリュウールの商品がさらに際立つ、そんな構図が必要不可欠なのだ。
「なるほど。では、今回は2つ目の構図をクライアントに提案するということか?」
「はい。リュウールが化粧品ポスターに対する大まかなイメージで考えていた1つ目の構図では、他社との差別化が図れないばかりか、香月くんの持つ印象の強さに商品が負けてしまいます。香月くんがモデルを務める以上、2つ目の構図しか有り得ないと思っています」
隆之の言葉に部長はしばし考えこんだ後、晴に視線を移した。
「香月くん、この2つの構図に対して、君の意見はどうかな?」
部長が晴に話を振ると、主任や他のメンバーが一斉に晴に顔を向けた。
晴はちょっと考えてから、ゆっくりと口を開いた。
「はい。真正面からの構図は化粧品のポスターとしては王道というか、良くある構図だと思います。他社と差別化を図るならいろんなパターンを考えるはずなのに、なぜこの構図が支持されているのかを考えると、一般の女性からの、その女優さんなりモデルさんへのリスペクトの現れだと思うんです。この人が使っているからとか、この人のような肌になりたいとか、この人みたいになりたいとか、そもそもその方が好きとか、そういう憧れというか、理想像が化粧品のポスターには反映されていると思うんです。だから、えっと、うまく言えないんですけど……」
みんなに見つめられて少し焦りが出たのか、途中で止まってしまったが、晴のゆっくりとした言葉の中に広告が持つ本来の意味が伝わってくる。
「いいよ、香月くん。ゆっくり話してくれて良いから」
部長も晴の言葉をきちんと最後まで聞きたいと思っているらしい。
優しい言葉を晴に投げかけている。
部長のその言葉に安心したのか、晴は先程の焦った表情から一転、笑顔を見せながら話を続けた。
「はい。ポスターの中央にモデルをドンと配置する構図は否が応でも目を惹きます。それが憧れの女性なら尚更です。化粧品のモデルに選ばれる女性たちは、一般の女性からの人気があり憧れの存在と言われる方が多いので、その人が使っているものならばという想いで購入されることも多いと思います。だから、結果、売り上げが増える=モデルが中央の構図という式が業界内に広まっているのではと思います。だから、リュウールさんもこの構図でと指定されたのかもしれませんが、正直モデルに感化されて購入する方は、一度購入されるとそれで満足してしまい、商品そのもののリピーターにはなりにくいこともあります。また、憧れていたモデルが他の人に変わっただけでそのブランド自体を購入しなくなるということもあると思います」
うん、確かにそういうこともあるだろう。
近年、男性俳優やモデルが化粧品モデルに起用されることも多少出てきた。
性別という垣根を超えて化粧品を楽しむということを広めるためにという意図もあるだろうが、なんといってもその俳優やモデルのファンの女性たちを取り込むことも見越しているだろう。
「だから、長期的にリピーターになってもらう、今回でいえば、第二、第三と成果を上げていくためにはモデル自身に価値を持たせて商品を購入してもらうのではなく、モデルがその商品を使ってどれだけ変わるのかを実際に見せていくこと、つまり、商品自体の価値をどれだけ見せていけるかが重要になってくると思います。僕は化粧もしたことがないような男で、しかも知名度も何も無いただの一般人です。僕を前面に出して顔を見せたところで、一般の方の購入が増えるとは思えません。僕がモデルになって伝えられることと言えば、このリュウールの化粧品がどんなに優れているかを見せることだと思うので、僕の顔がメインでない、商品重視の2つ目の構図がいいと思います」
晴はあくまでも知名度もない自分がメインになっても無意味だと思っているようだが、晴がその辺にいるようなただの一般人と同じでないことは、ここにいる全員が分かっている。
その点を取っ払ったとしても、晴の意見は的を射ている。
やはり、今回のリュウールの商品には王道の構図は必要ないのだ。
「あと、早瀬さん、この商品についてひとつ質問があるんですが宜しいでしょうか?」
「何かな? 気になる事があれば何でも質問してくれ」
「ありがとうございます。あの、この化粧品はシリーズ化して販売するとのことですが、このシリーズにコンセプトというか、名前があれば教えてください」
ここで名前の質問か。
化粧品には大体名前があるものだが、今まで化粧品というものに縁がなかったであろう晴の口から正直、名前の質問が出るとは思っていなかったな。
「ああ、今、リュウール社内でも協議中らしく、週明けの打ち合わせ時には決定した名前を発表できると言われているが、前回聞いていた仮の名前は、
【fierté】
これはフランス語で【誇り】を意味する。
メイクをする人全てが求める誇り高き美しさ、そして、それを作る化粧品会社としての誇りという意味が込められているそうだ。開発担当者の一押しだと言っていた。もう一つ、透明感のある肌というイメージで透明という意味を持つ【 clarté】という名前も候補にあがっているそうだ」
協議中と言っていたが、担当者の話ではおそらく【fierté】になるに違いない。
リュウールが全勢力をかけて挑んだ化粧品だからこそ、開発担当者の誇りを出したいだろうし、透明感のある肌というイメージは他社にも出そうだからな。この他にこれ以上の名前は出てこないだろうな。
「なるほど。どちらもとても素晴らしい名前だと思います。それでその名前に付属するものとしてひとつ提案があるのですが、今回の化粧品にこの名前が採用されたとして、それが意味するものをポスターに一緒に入れてみるというのはどうですか?」
晴の明るい声とは裏腹に、急に飛び出してきた晴の提案に会議室内がざわつく。
俺さえも晴の質問の意図するところが分からず、少し意表を突かれた面持ちで晴に問いかける。
「意味するものとは、例えばどういうものだろうか?」
晴はにっこりと笑顔で、そしてはっきりした声で答えた。
「はい。この商品シリーズのコンセプトが【誇り】というのに決定したならば、例えば…ですけど、【誇り】や【輝くばかりの美しさ】という意味を持つ花があるんです。アマリリスという百合に似た花なんですが、早咲きのものは初夏、遅咲きのものは秋頃が最盛期を迎えます。これはいろんな種類の色を持つ花なんですけど、その中でも赤とピンクのアマリリスの花言葉が【誇り】と【輝くばかりの美しさ】なんです」
思いもかけなかった晴の言葉に、俺を始め、会議に参加しているメンバー全員が固唾を呑んで、続く晴の言葉を待っている。
「【輝く】にはリュウールの会社名にも通じるものがありますし、この会社の化粧品を使って輝くばかりの誇り高き美しさを手に入れるという、このシリーズ名にぴったりだと思うんです。アマリリスの開花時期も発売時期にぴったりですし、いいかなと思ったんですが………あ、あのどうでしょうか?」
晴の問いかけに何の言葉も出なかった。
いや、出せなかったのだ。
一大学生の考えることとは思えない晴の素晴らしい提案に、メンバー全員が動揺を隠せなかった。
静まり返った会議室内で、晴は一人一人の顔をじっくり見つめたが、誰からも言葉が出なかったことで、とんでもないことを言ってしまったと思ったのだろう。
晴の慌てふためいた声が室内に響いた。
「申し訳ありません!! 出過ぎた発言をしてしまって……。ちょっと思って言ってみただけなんです!」
「「「いや、違うんだ」」」
我に返った隆之が慌ててそう告げると、同じタイミングで部長も主任もその他のメンバーも大声をあげた。
「えっ??」
少し涙を潤ませていた晴が、急な大声にびっくりした表情を見せた。
「香月くん、申し訳ない。君の意見があまりにも素晴らしくて言葉が出なかったんだ。みんなも同じだ。なぁ?」
部長がそうメンバーに告げるとみんな口々に
『驚いたよ』
『いいアイディアだな』
『これイケるよ』
などと声が飛び出した。
俺自身も晴の素晴らしいアイディアに言葉にならないほど驚いた。
「これはすごく良いアイディアだと思う。早速週明けのリュウールとの打ち合わせで提案してみよう」
俺の言葉に、晴は目尻に溜まった涙を指先で少し拭ってほっとした表情を見せたあと、にっこりと笑った。
「はい。よろしくお願いします!」
晴の元気な声が会議室内に響いて、午前の会議は終了した。
「んっ? 晴、どうした?」
「ううん、なんでもないです。ただ隆之さんにくっつきたくなって…」
咲田に言われたことを気にしてるんだろうか?
俺は晴の気持ちを言葉で表して貰えて、しかも、こうやって晴の方からくっついてきてくれるなんて天にも昇るような心地だ。
「晴。嬉しいよ」
唇にキスしたいところだが、さすがにここでは憚られるので、晴の柔らかな髪に口付ける。
晴も一瞬寂しそうな顔をしたが、それでも髪へのキスが嬉しかったのか、ふふっとにっこり笑って見上げてくれた。
そのタイミングでエレベーターが到着し、晴は俺の腕に縋り付いたままエレベーターへと乗り込んだ。
せっかくの二人の空間だから、さっき出来なかった唇へのキスをしたいなという気持ちになったものの、会議室はひとつ上の階。
すぐに到着してしまい残念に思ったが、これから重要な会議が始まる。
よし、頑張ろう! と気合の声を晴にかけると、威勢よく はい! と返してくれて、嬉しかった。
トントントン
会議室の扉をノックすると、中から『どうぞ』という部長の声が聞こえる。
「失礼します」
「失礼します」
中に入って指定された場所へと着席する。
もうすでに隆之たち以外のメンバーは揃っており、俺は『遅くなりました』と声をかけた。
「いや、まだ予定時間前だから大丈夫だ。それじゃあ全員揃ったところで、早いが会議を始めようか。早瀬、資料を頼む」
「はい」
俺が配布しようと席を立つと、晴もさっと立ち上がって俺の手から資料を半分受け取り、上座にいる上司から順序よく配布していった。
こんなに状況を判断して自分の意思で動ける大学生がどこにいるだろうか。
晴のこういうところについつい感嘆してしまう。
「香月くん、配布が終わったらこちらに来てくれ」
晴は全員に資料が渡ったのを確認すると、すっと正面に歩み寄り、目を惹くような綺麗な立ち姿で俺の隣に立った。
「お手持ちの資料の説明の前に今回のクライアントであるリュウールのポスターモデルについてお話をさせていただきます。今回リュウールからの発注に基づき、その希望に値するモデルをリヴィエラに依頼したところ、こちらにおります彼、香月晴くんを推薦されました」
晴が綺麗なお辞儀を見せ、笑顔を見せると初めて晴を見る部長以外の上役は、ほぉっと感嘆の声を上げる。部長はすでに晴の素晴らしさを知っているという優越感なのかなんなのか、したり顔で隣に座る篠原チーフに、どうだ、良い子だろうといわんばかりのアイコンタクトをおくっているのが見えた。
「偶然にも彼は来年度、弊社に入社することが内定しております。ですので、彼は今回はモデルという立場ではありますが、この体験を入社後、活かしてもらうためにこの会議から撮影終了まで参加してもらうこととなりました。ただ、実質的にはまだ彼は大学生でありますので、拙い意見も出るかとは思いますが、いち消費者としてリュウールへの生の意見を忌憚なく発言してもらい、広告作りの参考にさせていただこうと思っております。じゃあ、香月くん、一言頂いてもいいかな?」
晴にはこの会議で一言話をしてもらうということを特に説明はしないまま、話を振ってしまったが、晴は俺の言葉に動じることもなく、はいと返事をして話し始めた。
「ただいま早瀬さんからご紹介いただきました、香月晴と申します。リヴィエラと同じ高梨ビルの一階にありますカフェでアルバイトをしておりましたところ、リヴィエラの田村代表に勿体なくもお声かけいただき、この度こうやって小蘭堂さんとリュウールさんとのご縁をいただくこととなりました。私はまだ大学生という半人前の未熟な立場であり、モデルとしてのお仕事も今回が初めての経験となります。しかし、広告代理店に就職を希望しておりました私にとって、広告作りにこのような形で参加させていただくこと本当に嬉しく思っております。推薦してくださった田村代表や今回私のモデル起用につきまして賛成してくださった桜木部長をはじめ、上層部の皆様に少しでも貢献してこの度の感謝をお返しできますよう努力したいと思います。どうぞよろしくお願い致します」
突然話を振られたにも関わらず、晴の完璧ともいえる挨拶にみんな開いた口が塞がらない様子であったが、桜木部長がいち早く我にかえり拍手をすると慌てて全員から拍手が巻き起こった。
部長は立ち上がると、晴の傍につかつかと小走り気味に寄ってきて、両手で晴の手を握り称賛の言葉をおくった。
「いやぁ、香月くん。良い挨拶だった。来年度、君が入社してくるのが今から楽しみだよ」
「桜木部長、ありがとうございます。頑張ります」
晴がもう片方の手で、部長に握られた手を包むように握りながら嬉しそうに部長を見つめ、御礼の言葉を述べると部長は顔を真っ赤にしてその場に立ちすくんだ。
一向に手を離さず、晴を見つめたままその場に立ち竦む部長を不思議に思ったのか、晴が
「部長? どうかしましたか?」
と声をかけた。
ようやく正気に返った部長が
「いやぁ……なんでもない、なんでもないんだ」
と呟きながら席へと戻っていった。
ああ、田村さんに続いて、堅物と有名な部長までもが晴に落ちたか……。
あの無自覚な色気だだ漏れの笑顔は間近でみると、かなりの破壊力らしい。
一瞬会議室内がざわついたが、隆之はゴホンと大きく咳払いをし会議へと話を戻した。
「えー、それでは、会議を始めさせていただきます。お手持ちの資料の2枚目をご覧ください」
今回のポスターに関するリュウールサイドからの意図、そしてそれに関する要望など、当初持ち込まれた時の打ち合わせで出ていた内容などを纏めたものを解説していく。
「リュウールが今回新開発したメイクアップ化粧品はリキッド、パウダー、そして高保湿のクリームの三種類のファンデーションです。そして、これから第二弾でフェイスパウダー、第三弾でスティックタイプの口紅も展開していくということが決定しており、フェイスパウダー、口紅につきましては、ファンデーション発表後、2ヶ月刻みで順次シリーズとして発表していくというスケジュールになっています。今回の3種類の化粧品プロジェクトが成功した暁には、アイシャドウ、チークなどのポイントメイクアップ化粧品も同シリーズ化して開発を進めていきたい、ただ、先発の化粧品シリーズの売り上げ結果が奮わなかった場合には、メイクアップ化粧品開発からは全て手を引き、既存の定評のあるスキンケアシリーズのみの開発に的を絞るという話ですので、今回のポスター広告は、リュウールのメイクアップ化粧品開発の存続に大きな影響をもたらすものと思われます」
「うーん、これはかなりパッと目を惹くようなインパクトが必要だな。第一弾のポスターで充分に惹きつけておかないと第二、第三と波に乗せるのは厳しいぞ」
先程、晴の無自覚な色気に虜になってしまった部長だが、すっかり仕事モードに戻ったようで資料をじっくり読みながら的確なコメントを呟く。
部長のコメントに他のメンバーも一様に頷いていた。
「はい。リュウールサイドからは、この商品でメイクしたモデルの女性を前面に出すこと、そして、その新開発した商品に商品以外の余計なイメージがつかないように、イメージモデルには既に活躍されている女優やモデルではなく、まだ世に出ていない、何の手垢もついてない純心無垢な天使のような子をイメージモデルとして選ぶことが条件として掲げられていました。それらの要望を踏まえて、モデル決定の前に私なりにポスターの構図を2パターン考えました。それが資料3枚目です」
俺はポスター上部に商品名、下部に商品画像を配置し、中央にメイクを施したモデルを正面から鎖骨辺りまでを映した、化粧品のポスターとしては言わばオーソドックスなタイプの構図と、
中央にメイクをする前とした後のモデルが向き合い、メイク後の肌質がわかるように顔をアップで映すという構図の2パターンを考えていた。
後者の方は真正面でない上にかなり顔寄りのアップなので顔全体はわからないが、ファンデーションを付けた後の肌質の透明感や美しさはきちんと伝わるはずだ。
「この2つ目の構図はかなりチャレンジだな。名前が知られていないモデルだからこそ出来る構図か。インパクトとしては、うん、悪くないな」
「ありがとうございます。今回モデルに抜擢された香月くんは、線の細い柔らかなラインが醸し出す雰囲気と、それでいて芯の強そうなその綺麗な顔つきが、淡い光を意味するリュウールという企業のモデルイメージにぴったりだと思います。しかしながら、今回の化粧品のポスターイメージでリュウールが考えていた、メイクを施したモデル、今回で言えば、メイクを施した香月くんを前面に出すということになりますが、その案では消費者にインパクトを与えるというより、消費者にはモデルしか印象に残らない、商品ポスターとしてはむしろ逆効果になるのではないかと考えます。ですので、今回モデルに香月くんが決定したことで1つ目の構図は一度白紙に戻しました」
晴が前面に出る、真正面から顔全体が映ってしまう構図だと化粧品よりも晴の方が目立ってしまうのは間違い無いだろう。それくらい、晴の持つオーラは強すぎる。ポスターを見た人が、リュウールの化粧品に目がいかなくてはポスターとして意味がない。
しかし、晴が映らないという構図ではそれは全く意味がなくなる。
だから、晴がいることによってリュウールの商品がさらに際立つ、そんな構図が必要不可欠なのだ。
「なるほど。では、今回は2つ目の構図をクライアントに提案するということか?」
「はい。リュウールが化粧品ポスターに対する大まかなイメージで考えていた1つ目の構図では、他社との差別化が図れないばかりか、香月くんの持つ印象の強さに商品が負けてしまいます。香月くんがモデルを務める以上、2つ目の構図しか有り得ないと思っています」
隆之の言葉に部長はしばし考えこんだ後、晴に視線を移した。
「香月くん、この2つの構図に対して、君の意見はどうかな?」
部長が晴に話を振ると、主任や他のメンバーが一斉に晴に顔を向けた。
晴はちょっと考えてから、ゆっくりと口を開いた。
「はい。真正面からの構図は化粧品のポスターとしては王道というか、良くある構図だと思います。他社と差別化を図るならいろんなパターンを考えるはずなのに、なぜこの構図が支持されているのかを考えると、一般の女性からの、その女優さんなりモデルさんへのリスペクトの現れだと思うんです。この人が使っているからとか、この人のような肌になりたいとか、この人みたいになりたいとか、そもそもその方が好きとか、そういう憧れというか、理想像が化粧品のポスターには反映されていると思うんです。だから、えっと、うまく言えないんですけど……」
みんなに見つめられて少し焦りが出たのか、途中で止まってしまったが、晴のゆっくりとした言葉の中に広告が持つ本来の意味が伝わってくる。
「いいよ、香月くん。ゆっくり話してくれて良いから」
部長も晴の言葉をきちんと最後まで聞きたいと思っているらしい。
優しい言葉を晴に投げかけている。
部長のその言葉に安心したのか、晴は先程の焦った表情から一転、笑顔を見せながら話を続けた。
「はい。ポスターの中央にモデルをドンと配置する構図は否が応でも目を惹きます。それが憧れの女性なら尚更です。化粧品のモデルに選ばれる女性たちは、一般の女性からの人気があり憧れの存在と言われる方が多いので、その人が使っているものならばという想いで購入されることも多いと思います。だから、結果、売り上げが増える=モデルが中央の構図という式が業界内に広まっているのではと思います。だから、リュウールさんもこの構図でと指定されたのかもしれませんが、正直モデルに感化されて購入する方は、一度購入されるとそれで満足してしまい、商品そのもののリピーターにはなりにくいこともあります。また、憧れていたモデルが他の人に変わっただけでそのブランド自体を購入しなくなるということもあると思います」
うん、確かにそういうこともあるだろう。
近年、男性俳優やモデルが化粧品モデルに起用されることも多少出てきた。
性別という垣根を超えて化粧品を楽しむということを広めるためにという意図もあるだろうが、なんといってもその俳優やモデルのファンの女性たちを取り込むことも見越しているだろう。
「だから、長期的にリピーターになってもらう、今回でいえば、第二、第三と成果を上げていくためにはモデル自身に価値を持たせて商品を購入してもらうのではなく、モデルがその商品を使ってどれだけ変わるのかを実際に見せていくこと、つまり、商品自体の価値をどれだけ見せていけるかが重要になってくると思います。僕は化粧もしたことがないような男で、しかも知名度も何も無いただの一般人です。僕を前面に出して顔を見せたところで、一般の方の購入が増えるとは思えません。僕がモデルになって伝えられることと言えば、このリュウールの化粧品がどんなに優れているかを見せることだと思うので、僕の顔がメインでない、商品重視の2つ目の構図がいいと思います」
晴はあくまでも知名度もない自分がメインになっても無意味だと思っているようだが、晴がその辺にいるようなただの一般人と同じでないことは、ここにいる全員が分かっている。
その点を取っ払ったとしても、晴の意見は的を射ている。
やはり、今回のリュウールの商品には王道の構図は必要ないのだ。
「あと、早瀬さん、この商品についてひとつ質問があるんですが宜しいでしょうか?」
「何かな? 気になる事があれば何でも質問してくれ」
「ありがとうございます。あの、この化粧品はシリーズ化して販売するとのことですが、このシリーズにコンセプトというか、名前があれば教えてください」
ここで名前の質問か。
化粧品には大体名前があるものだが、今まで化粧品というものに縁がなかったであろう晴の口から正直、名前の質問が出るとは思っていなかったな。
「ああ、今、リュウール社内でも協議中らしく、週明けの打ち合わせ時には決定した名前を発表できると言われているが、前回聞いていた仮の名前は、
【fierté】
これはフランス語で【誇り】を意味する。
メイクをする人全てが求める誇り高き美しさ、そして、それを作る化粧品会社としての誇りという意味が込められているそうだ。開発担当者の一押しだと言っていた。もう一つ、透明感のある肌というイメージで透明という意味を持つ【 clarté】という名前も候補にあがっているそうだ」
協議中と言っていたが、担当者の話ではおそらく【fierté】になるに違いない。
リュウールが全勢力をかけて挑んだ化粧品だからこそ、開発担当者の誇りを出したいだろうし、透明感のある肌というイメージは他社にも出そうだからな。この他にこれ以上の名前は出てこないだろうな。
「なるほど。どちらもとても素晴らしい名前だと思います。それでその名前に付属するものとしてひとつ提案があるのですが、今回の化粧品にこの名前が採用されたとして、それが意味するものをポスターに一緒に入れてみるというのはどうですか?」
晴の明るい声とは裏腹に、急に飛び出してきた晴の提案に会議室内がざわつく。
俺さえも晴の質問の意図するところが分からず、少し意表を突かれた面持ちで晴に問いかける。
「意味するものとは、例えばどういうものだろうか?」
晴はにっこりと笑顔で、そしてはっきりした声で答えた。
「はい。この商品シリーズのコンセプトが【誇り】というのに決定したならば、例えば…ですけど、【誇り】や【輝くばかりの美しさ】という意味を持つ花があるんです。アマリリスという百合に似た花なんですが、早咲きのものは初夏、遅咲きのものは秋頃が最盛期を迎えます。これはいろんな種類の色を持つ花なんですけど、その中でも赤とピンクのアマリリスの花言葉が【誇り】と【輝くばかりの美しさ】なんです」
思いもかけなかった晴の言葉に、俺を始め、会議に参加しているメンバー全員が固唾を呑んで、続く晴の言葉を待っている。
「【輝く】にはリュウールの会社名にも通じるものがありますし、この会社の化粧品を使って輝くばかりの誇り高き美しさを手に入れるという、このシリーズ名にぴったりだと思うんです。アマリリスの開花時期も発売時期にぴったりですし、いいかなと思ったんですが………あ、あのどうでしょうか?」
晴の問いかけに何の言葉も出なかった。
いや、出せなかったのだ。
一大学生の考えることとは思えない晴の素晴らしい提案に、メンバー全員が動揺を隠せなかった。
静まり返った会議室内で、晴は一人一人の顔をじっくり見つめたが、誰からも言葉が出なかったことで、とんでもないことを言ってしまったと思ったのだろう。
晴の慌てふためいた声が室内に響いた。
「申し訳ありません!! 出過ぎた発言をしてしまって……。ちょっと思って言ってみただけなんです!」
「「「いや、違うんだ」」」
我に返った隆之が慌ててそう告げると、同じタイミングで部長も主任もその他のメンバーも大声をあげた。
「えっ??」
少し涙を潤ませていた晴が、急な大声にびっくりした表情を見せた。
「香月くん、申し訳ない。君の意見があまりにも素晴らしくて言葉が出なかったんだ。みんなも同じだ。なぁ?」
部長がそうメンバーに告げるとみんな口々に
『驚いたよ』
『いいアイディアだな』
『これイケるよ』
などと声が飛び出した。
俺自身も晴の素晴らしいアイディアに言葉にならないほど驚いた。
「これはすごく良いアイディアだと思う。早速週明けのリュウールとの打ち合わせで提案してみよう」
俺の言葉に、晴は目尻に溜まった涙を指先で少し拭ってほっとした表情を見せたあと、にっこりと笑った。
「はい。よろしくお願いします!」
晴の元気な声が会議室内に響いて、午前の会議は終了した。
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