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番外編
香りの悪戯 <伊織&悠真Ver.> 11
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「あの、それじゃあ私は……安慶名さんのこと、諦めなくても、いいんですか?」
「ええ。もちろんです! というか、諦めないでください! 私はあなたが好きです」
「安慶名さん……嬉しい……私も、安慶名さんが好きです」
目に涙を溜めた彼が私に抱きついてくる。
私はドキドキしながら彼を抱きしめた。
私の腕の中にすっぽりとおさまる彼は、男ではありえないほど柔らかい。
今は女性特有の感触をしているのだろうが、彼の本質が男なのだと思ったら嫌悪感は一切なかった。
普段なら女性の身体を抱きしめたいなんて思うはずもなかったからな。
「これで私たち、恋人同士ですね」
「あの、一つ聞きたいことがあるんですが……」
「は、はい。なんでも聞いてください」
いろんなことがありすぎて大切なことを聞いていなかったことを思い出して尋ねると、彼は少し緊張した様子で私を見上げた。
「あの、名前を伺っても?」
「えっ? あっ! 私、名前も言ってなかったんですね。すみません! わぁ、なんか恥ずかしい。告白しておいて名前も言ってなかったなんて……」
何を言われるのかと緊張していた様子から一気に頬を赤らめるのが可愛い。
「私……砂川悠真です」
「砂川、悠真……素敵な名前ですね。もしかして、沖縄……離島出身ですか?」
「はい。宮古島です。安慶名さんも沖縄ですよね?」
「ええ。本島出身です」
「まさかここで沖縄の人に会えるなんて……それも嬉しいです」
彼の気持ちはよくわかる。
同郷だというだけでなんとなく同志のような気持ちになってしまう。
「沖縄にいた頃のように呼んでも構いませんか?」
「えっ? ああ、はい! どうぞ!」
沖縄にいた頃のように……そう伝えるだけで通じるのも嬉しい。
「悠真さん……」
「呼び捨てでいいですよ。伊織さん」
「――っ」
笑顔で名前を呼ばれてどきっとする。こんなことも初めてだ。
「悠真……」
「はい」
「くっ!」
私が名前を呼んだだけでさっきよりもさらに嬉しそうな笑顔を見せてくれるのが嬉しい。
「あの、私も呼び捨てで……」
「いえ。伊織さんはこのままで呼ばせてください」
まぁ、悠真の年齢や性格を鑑みれば、私を呼び捨てにできないのは仕方のないことかもしれない。
「わかりました。あの、それじゃあこれからのことは心配しないでください。悠真が元に戻るまでずっとそばについてますから」
「は、はい。伊織さんがいてくださったら安心です。でも……」
「えっ?」
「元に戻っても、ずっとそばにいてくれたら嬉しいです」
「悠真……っ、ええ。もちろんです。私は悠真の恋人ですから……」
私ははっきりと言い切ると、悠真は嬉しそうにもう一度抱きついてくれた。
しばらく二人で抱き合っていると、リビングの扉を叩く音が聞こえる。
その音に驚いたのか、悠真が身体をピクッと震わせた。
「大丈夫です。周平さんたちですよ、きっと」
「あっ、そうですね」
二人の存在を忘れてしまうほど、悠真の中では私に思いを告げることで必死だったんだろう。
こんなにも思われていることに思わずにやけてしまいそうになるが、必死にそれを抑えた。
悠真をその場に残し、扉を開けに行くと不安げな顔をした周平さんと浅香さんの姿があった。
「大丈夫か?」
「はい。ちゃんと話ができて、悠真のことも聞きました」
「悠真……そうか、うまく行ったんだな」
「はい」
この会話だけで周平さんには全て伝わったようだ。
「それじゃあ、これからのことを話すとしよう」
「何かわかったんですか?」
「ああ。敬介から話を聞いて、悠真くんに変化が訪れる前に食べていたものを特定した。そして、それを作った人と連絡が取れたんだ」
「じゃあ、食べ物が関係あったんですね」
「ああ。だがちょっと厄介なことになりそうなんだ」
「厄介なこと?」
「とにかく皆で話をしよう」
周平さんの困惑の表情に少し心配になりつつも、私は彼らと共に悠真の元に戻った。
「ええ。もちろんです! というか、諦めないでください! 私はあなたが好きです」
「安慶名さん……嬉しい……私も、安慶名さんが好きです」
目に涙を溜めた彼が私に抱きついてくる。
私はドキドキしながら彼を抱きしめた。
私の腕の中にすっぽりとおさまる彼は、男ではありえないほど柔らかい。
今は女性特有の感触をしているのだろうが、彼の本質が男なのだと思ったら嫌悪感は一切なかった。
普段なら女性の身体を抱きしめたいなんて思うはずもなかったからな。
「これで私たち、恋人同士ですね」
「あの、一つ聞きたいことがあるんですが……」
「は、はい。なんでも聞いてください」
いろんなことがありすぎて大切なことを聞いていなかったことを思い出して尋ねると、彼は少し緊張した様子で私を見上げた。
「あの、名前を伺っても?」
「えっ? あっ! 私、名前も言ってなかったんですね。すみません! わぁ、なんか恥ずかしい。告白しておいて名前も言ってなかったなんて……」
何を言われるのかと緊張していた様子から一気に頬を赤らめるのが可愛い。
「私……砂川悠真です」
「砂川、悠真……素敵な名前ですね。もしかして、沖縄……離島出身ですか?」
「はい。宮古島です。安慶名さんも沖縄ですよね?」
「ええ。本島出身です」
「まさかここで沖縄の人に会えるなんて……それも嬉しいです」
彼の気持ちはよくわかる。
同郷だというだけでなんとなく同志のような気持ちになってしまう。
「沖縄にいた頃のように呼んでも構いませんか?」
「えっ? ああ、はい! どうぞ!」
沖縄にいた頃のように……そう伝えるだけで通じるのも嬉しい。
「悠真さん……」
「呼び捨てでいいですよ。伊織さん」
「――っ」
笑顔で名前を呼ばれてどきっとする。こんなことも初めてだ。
「悠真……」
「はい」
「くっ!」
私が名前を呼んだだけでさっきよりもさらに嬉しそうな笑顔を見せてくれるのが嬉しい。
「あの、私も呼び捨てで……」
「いえ。伊織さんはこのままで呼ばせてください」
まぁ、悠真の年齢や性格を鑑みれば、私を呼び捨てにできないのは仕方のないことかもしれない。
「わかりました。あの、それじゃあこれからのことは心配しないでください。悠真が元に戻るまでずっとそばについてますから」
「は、はい。伊織さんがいてくださったら安心です。でも……」
「えっ?」
「元に戻っても、ずっとそばにいてくれたら嬉しいです」
「悠真……っ、ええ。もちろんです。私は悠真の恋人ですから……」
私ははっきりと言い切ると、悠真は嬉しそうにもう一度抱きついてくれた。
しばらく二人で抱き合っていると、リビングの扉を叩く音が聞こえる。
その音に驚いたのか、悠真が身体をピクッと震わせた。
「大丈夫です。周平さんたちですよ、きっと」
「あっ、そうですね」
二人の存在を忘れてしまうほど、悠真の中では私に思いを告げることで必死だったんだろう。
こんなにも思われていることに思わずにやけてしまいそうになるが、必死にそれを抑えた。
悠真をその場に残し、扉を開けに行くと不安げな顔をした周平さんと浅香さんの姿があった。
「大丈夫か?」
「はい。ちゃんと話ができて、悠真のことも聞きました」
「悠真……そうか、うまく行ったんだな」
「はい」
この会話だけで周平さんには全て伝わったようだ。
「それじゃあ、これからのことを話すとしよう」
「何かわかったんですか?」
「ああ。敬介から話を聞いて、悠真くんに変化が訪れる前に食べていたものを特定した。そして、それを作った人と連絡が取れたんだ」
「じゃあ、食べ物が関係あったんですね」
「ああ。だがちょっと厄介なことになりそうなんだ」
「厄介なこと?」
「とにかく皆で話をしよう」
周平さんの困惑の表情に少し心配になりつつも、私は彼らと共に悠真の元に戻った。
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