南国特有のスコールが初恋を連れてきてくれました

波木真帆

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番外編

運命

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今連載中の
『溺愛弁護士の裏の顔 ~僕はあなたを信じます』につながる部分のお話です。
未読の方はそちらにも目を通していただくとわかりやすいかもしれません。


  *   *   *

西表島にある倉橋さんの会社の顧問弁護士を打診されたとき、心はすでに決まっていた。
それでもわざわざ西表島に出向いたのは、何かしらの力が働いていたとしか言いようがない。

私はその旅行で最愛を見つけた。

西表島に渡る前に、石垣島のホテルに宿泊した私のもとに現れた美しい男性……彼は倉橋さんの会社の社員だった。

社員といっても、忙しい倉橋さんの代理として社長を任されるほどの人材。
彼の物腰の柔らかさが私の心を癒してくれた。

彼と過ごす時間は実に穏やかで、私はすぐに心惹かれた。
元々男性しか好きになれない私と違って、彼はきっとノーマルだろう。
そう思っていたのに、彼は私を受け入れてくれた。

そして、この沖縄滞在の間に私たちは生涯を共に過ごす相手としてお互いを認識するようになった。

私にとって彼は初めて愛した人で、初めて繋がった相手。
そして、彼もまた私が初恋で、初めての相手だといってくれた。

そんな彼を残して、帰京するのは本当に心苦しかった。
だが、彼は西表に大事な仕事があり、私も東京で仕事がある。

身も心も繋がった今、彼と離れることは半身をもがれるような思いだが、これから先も一緒にいたいのなら手順を踏まなければいけない。

そう、勢いのままに行動してはいけないのだ。

泣く泣く彼と離れ、東京行きの飛行機に乗ろうとしたとき、倉橋さんに出会った。
私が最愛の彼と出会えたのも、そして、ゆくゆくは沖縄で生活できるように話を進めてくれたのも彼。

その彼に何かお礼をしたいと伝えると、彼は

――仕事柄情報収集が必要なケースが多々ありましてね。そんな時に、なかなかこれといった調査員に出会えずに困っているんですよ。金には糸目はつけないので、欲しい情報以上に調査してくださる方の伝手があれば……

といっていた。

彼は色々な事業に投資しているようだが、いつでも彼の目に狂いはない。
そんな彼が必要とする調査員ならかなりの実力が求められる。

きっと成瀬なら、倉橋さんのお眼鏡に適うだろうな。
そう確信して、倉橋さんに彼の名刺を渡した。

彼が本業の仕事の他にやっている裏の仕事専用の名刺。

この名刺は彼から、紹介したい客がいたら渡してくれと頼まれていたものだ。

――伊織の人の見る目を信頼しているから。

そういってくれた彼の信頼を裏切らないよう、私が信頼した相手しか渡したことはない。

きっと倉橋さんは彼に連絡するだろう。
その前に一度報告しておくか。

私に恋人ができたことも含めてな。


用事を終わらせ、東京の自宅に戻り宗一郎さんと皐月さんに恋人ができた報告をした。
私の相手が男性だったことも全く気にしていない様子の皐月さんには驚いたが、ホッとした。

その後、悠真に電話をかけようとして、先に成瀬に電話をかけた。
倉橋さんが成瀬に連絡する前にかけておいた方がいいと思ったのだ。

電話は3コールほど鳴って繋がった。

ー悪い、忙しかったか?

ーいや。少しなら大丈夫だ。どうした? 夜に電話なんか珍しいな。

ーああ、実は、お前のあの・・名刺を渡したんだ。だから先に連絡をと思って。

ーそうか。誰か、聞いてもいいか?

ーああ。俺が顧問弁護士をしている会社の社長で倉橋祐悟さんという方だ。

ー ――っ! そうか。それはまた偶然だな……。

ーんっ? どういう意味だ?

ーいや、こっちの話だ。それで、調査員を探してるって?

ーああ。彼はかなりのやり手だからな。いろんな情報を仕入れたいんだろう。

ーなるほどな。わかった、彼なら大丈夫だ。

ーあと、もう一つ……大事な報告があるんだが……。

ーどうした? もったいぶって……。

ーいや、実は……恋人、ができた……。

ーえっ? それは、驚いたな。お前が人を好きになったのか?

ーああ、俺も驚いてる。だが、彼に出会った瞬間、すぐに心惹かれたんだ。

ーへぇー。お前から惚気られるとは思ってなかったな。それでどんな人なんだ? 

ー実はさっき話した倉橋さんの会社の人なんだよ。偶然石垣で同じ宿に泊まることになってな。

ー…………そうか。なるほど……よかったな。

ーああ。いつか、お前と氷室にも紹介したいが、彼は西表に住んでるからなかなか難しくて……だが、いつかは必ず紹介するから。

ーああ、楽しみにしているよ。多分、すぐに会えると思うけどな……。

ーんっ? 今、なんていったんだ?

ーいや、なんでもない。おめでとう。

ーああ、ありがとう。じゃあ、倉橋さんの方は頼むな。

そういって電話を切った。

まさかその時には俺たちの間にすでに運命が繋がっていただなんて思いもしなかった。
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