47 / 76
セオドアのために
しおりを挟む
<side真守>
『わぁ! これ、素敵ですね!』
『ああ、これはジョージ一世より賜った聖剣だよ。我がグランヴィエ家の家宝だ』
『すごいなぁ、こんな歴史的なお宝をこんなにも間近で見られる日が来るなんて……』
『ふふっ。気に入ってくれて嬉しいよ』
セオドアがお屋敷の中を案内してくださって、今僕はギャラリーにいる。
入るのを躊躇ってしまいそうな豪華絢爛な装飾が施された部屋には、すばらしい美術品の数々が並べられていた。
絵画や宝石だけでなく、グランヴィエ家の方々が時の王に賜った剣や勲章も綺麗に飾られている。
これだけでこの一族がどれほどイギリスに貢献してきたかがわかるというものだ。
『グランヴィエ家なくしては、今のイギリスを語ることはできないようですね。すごいな』
『ああ。そうだな。我が祖先が守り受け継いでいたことを後世にも伝えていくことが私の大きな使命だと思っている』
『それは本当に素晴らしいことです。でもセオドアならできますよ』
『ああ、そのためにはマモルの力も必要だよ』
『えっ、僕も、ですか?』
『もちろん! 私の原動力はマモルなのだよ。マモルがずっとそばにいてくれたら、私は今まで以上に頑張れるだろうな。マモルは責任重大だぞ。この一族の存続にも関わるのだからな』
こう仰ってくれるけれど、正直僕がどれだけセオドアの手助けになれるかはわからない。
でも、そばにいてくれるだけでと言って下さるのなら、僕はセオドアのおそばでずっと尽くすだけだ。
男の僕でも好きだと言ってくれるセオドアのためなら僕は頑張って見せる。
『セオドア……僕、一生おそばにいます』
『マモル……ありがとう。嬉しいよ』
セオドアが嬉しそうに僕を抱きしめてくれる。
グランヴィエ家の今までの歴史が集まったこのギャラリーで思いを伝えると、一族の皆さんに見つめられているような気がして少し緊張してしまう自分がいる。
先祖の皆さん……どうか僕たちを見守ってください。
セオドアが不幸にならないように、僕は精一杯頑張ります。
心の中でそう誓いながら、しばらく抱き合っていた。
『わぁ、ここは書庫ですね』
『ああ、我がグランヴィエ家の書庫は大英図書館ほどの数はないが、貴重なものがたくさん置かれているのだよ。ある意味大英図書館よりも希少価値は高いと言われているんだ。一般開放はしていないから、読むことができるのは我が一族か王家に限られるがな』
『そんなすごい本があるんですね……』
『マモルは好きに使ってくれて構わないよ。日本のものも置かれているからきっと楽しめるだろう』
『はい。すごく楽しみです』
こんな素晴らしい本たちに囲まれて過ごす日常が訪れるなんて……信じられないくらい幸せだな。
『そろそろ食事にしよう。お腹も空いているだろう』
『まだ大丈――きゅるる――』
せっかくセオドアが案内してくださっていたのに、こんな時にどうしてお腹が鳴るんだろう。
確かにお腹は空いていたけど、もう少し空気を読んでくれたらいいのに。
慌ててお腹を押さえながら、聞こえていないかとセオドアを見上げると優しい笑顔が見えた。
『ふふっ。可愛い音が聞こえたな』
『――っ、恥ずかしいですっ』
お腹の音が聞かれてしまったことが恥ずかしかったけれど、
『恥ずかしがることはない。私はマモルの全てを愛おしいと思っているのだから』
と笑顔で言われたら恥ずかしさも消えていった気がした。
『マモルは何か食べたいものはあるか?』
『なんでもいいんですか?』
『ああ、もちろん。我が家のシェフは優秀だから、マモルの望むものを作ることができるよ』
そう自信満々に話すセオドアを少し可愛いなと思いつつ、僕はお願いすることにした。
『あの、じゃあ僕……セオドアの好きなものが食べたいです』
『えっ? 私の、好きなもの?』
『はい。セオドアがどんな料理をお好みなのか知りたいんです』
料理好きだった母さんによく言われていた。
――好きな人の好みを知ったら、それを作ってあげたくなるの。だから真守も好きな人のためにいつでも作れるように練習しておきましょう。
って。
母さんは父さんが美味しいという度にすごく嬉しそうだった。
そんな二人を見て、いつか僕も大切な人に作ってあげたいと思えるようになったんだ。
母さんに習っておいてよかったな。
ここのシェフさんたちには負けるだろうけど、いつか心を込めて作ったものをセオドアのために作ってみたいと思えるから。
『マモル……ああっ、マモルはどうしてそんなに可愛いことばかり言ってくれるのだろうな』
『えっ? セオドア?』
『マモルがそんなにも私を愛してくれているのだと伝わって嬉しいんだ。いつか、私に手料理をご馳走してくれるつもりなのだろう?』
『ふふっ。わかりました?』
『ああ、もうわかりすぎて嬉しいよ』
セオドアがこんなにも喜んでくれるなんて……。
僕にもセオドアのためにできることがあるんだな。
『わぁ! これ、素敵ですね!』
『ああ、これはジョージ一世より賜った聖剣だよ。我がグランヴィエ家の家宝だ』
『すごいなぁ、こんな歴史的なお宝をこんなにも間近で見られる日が来るなんて……』
『ふふっ。気に入ってくれて嬉しいよ』
セオドアがお屋敷の中を案内してくださって、今僕はギャラリーにいる。
入るのを躊躇ってしまいそうな豪華絢爛な装飾が施された部屋には、すばらしい美術品の数々が並べられていた。
絵画や宝石だけでなく、グランヴィエ家の方々が時の王に賜った剣や勲章も綺麗に飾られている。
これだけでこの一族がどれほどイギリスに貢献してきたかがわかるというものだ。
『グランヴィエ家なくしては、今のイギリスを語ることはできないようですね。すごいな』
『ああ。そうだな。我が祖先が守り受け継いでいたことを後世にも伝えていくことが私の大きな使命だと思っている』
『それは本当に素晴らしいことです。でもセオドアならできますよ』
『ああ、そのためにはマモルの力も必要だよ』
『えっ、僕も、ですか?』
『もちろん! 私の原動力はマモルなのだよ。マモルがずっとそばにいてくれたら、私は今まで以上に頑張れるだろうな。マモルは責任重大だぞ。この一族の存続にも関わるのだからな』
こう仰ってくれるけれど、正直僕がどれだけセオドアの手助けになれるかはわからない。
でも、そばにいてくれるだけでと言って下さるのなら、僕はセオドアのおそばでずっと尽くすだけだ。
男の僕でも好きだと言ってくれるセオドアのためなら僕は頑張って見せる。
『セオドア……僕、一生おそばにいます』
『マモル……ありがとう。嬉しいよ』
セオドアが嬉しそうに僕を抱きしめてくれる。
グランヴィエ家の今までの歴史が集まったこのギャラリーで思いを伝えると、一族の皆さんに見つめられているような気がして少し緊張してしまう自分がいる。
先祖の皆さん……どうか僕たちを見守ってください。
セオドアが不幸にならないように、僕は精一杯頑張ります。
心の中でそう誓いながら、しばらく抱き合っていた。
『わぁ、ここは書庫ですね』
『ああ、我がグランヴィエ家の書庫は大英図書館ほどの数はないが、貴重なものがたくさん置かれているのだよ。ある意味大英図書館よりも希少価値は高いと言われているんだ。一般開放はしていないから、読むことができるのは我が一族か王家に限られるがな』
『そんなすごい本があるんですね……』
『マモルは好きに使ってくれて構わないよ。日本のものも置かれているからきっと楽しめるだろう』
『はい。すごく楽しみです』
こんな素晴らしい本たちに囲まれて過ごす日常が訪れるなんて……信じられないくらい幸せだな。
『そろそろ食事にしよう。お腹も空いているだろう』
『まだ大丈――きゅるる――』
せっかくセオドアが案内してくださっていたのに、こんな時にどうしてお腹が鳴るんだろう。
確かにお腹は空いていたけど、もう少し空気を読んでくれたらいいのに。
慌ててお腹を押さえながら、聞こえていないかとセオドアを見上げると優しい笑顔が見えた。
『ふふっ。可愛い音が聞こえたな』
『――っ、恥ずかしいですっ』
お腹の音が聞かれてしまったことが恥ずかしかったけれど、
『恥ずかしがることはない。私はマモルの全てを愛おしいと思っているのだから』
と笑顔で言われたら恥ずかしさも消えていった気がした。
『マモルは何か食べたいものはあるか?』
『なんでもいいんですか?』
『ああ、もちろん。我が家のシェフは優秀だから、マモルの望むものを作ることができるよ』
そう自信満々に話すセオドアを少し可愛いなと思いつつ、僕はお願いすることにした。
『あの、じゃあ僕……セオドアの好きなものが食べたいです』
『えっ? 私の、好きなもの?』
『はい。セオドアがどんな料理をお好みなのか知りたいんです』
料理好きだった母さんによく言われていた。
――好きな人の好みを知ったら、それを作ってあげたくなるの。だから真守も好きな人のためにいつでも作れるように練習しておきましょう。
って。
母さんは父さんが美味しいという度にすごく嬉しそうだった。
そんな二人を見て、いつか僕も大切な人に作ってあげたいと思えるようになったんだ。
母さんに習っておいてよかったな。
ここのシェフさんたちには負けるだろうけど、いつか心を込めて作ったものをセオドアのために作ってみたいと思えるから。
『マモル……ああっ、マモルはどうしてそんなに可愛いことばかり言ってくれるのだろうな』
『えっ? セオドア?』
『マモルがそんなにも私を愛してくれているのだと伝わって嬉しいんだ。いつか、私に手料理をご馳走してくれるつもりなのだろう?』
『ふふっ。わかりました?』
『ああ、もうわかりすぎて嬉しいよ』
セオドアがこんなにも喜んでくれるなんて……。
僕にもセオドアのためにできることがあるんだな。
234
お気に入りに追加
2,136
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる