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世の中狭いな
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「あっ、田淵くん、これ前に来た時食べたけど美味しかったよ」
「えー、そうなんだ。美味しそう!」
「あ、こっちのも美味しかったよ」
「美味しいのばっかりだから悩むよ」
「ねぇ、抹茶プリンとは別に、気になるのを二個選んで半分こしようよ。そうしたらプリンも合わせて三種類も食べられるよ」
「あ、それいい!」
二人の可愛い会話と伊月くんの嬉しそうな表情に顔が緩む。
「優一さん、抹茶プリンと、あと、これとこれも頼んでもいいですか?」
「ああ。ここから頼めるから好きなだけ頼むといい」
ユウさんがタブレットを渡すと、砂川くんは伊月くんと嬉しそうにタブレットを操作し始めた。
ああ、本当に可愛いな。
「シン。顔」
「ユウさんだってずっとニヤけてますよ」
「そうか?」
「でも本当、砂川くんの話聞いた時からいつものユウさんらしくないって思ってましたけど、一緒にいるのを見たら余計に思いましたよ」
「お前も人のことは言えないけどな」
「それは自覚してますよ。絶対に手放したくないって思ってますから」
「それはわかるよ。俺も同じだから」
俺と話しながらも意識は砂川くんに向けているんだろう。表情全てが愛しいと訴えているのがわかる。
俺もユウさんもこの歳でようやく見つけた最愛の相手だからな。
「それで、あの話はしたのか?」
「もちろんです。俺が伊月くんに隠し事はしないって決めてますから。ユウさんもでしょう?」
「ああ。だから今日は仕事仲間のお前に会わせると言って連れてきたんだ。まさか恋人連れで、その恋人が自分の友人だとは思ってなかったからものすごく驚いていたけどな。真琴が驚く可愛い顔が見られて楽しかったよ」
「ユウさんも人が悪い。でも俺も伊月くんの可愛い顔を見られてよかったですよ」
「だろう? まぁ、これからしょっちゅう四人で会うことになるよ。真琴も田淵くんのことはずっと気にしていたし」
「そうですね。ああ、そう言えばこれから仕事の時はどうします? もし必要ならうちのマンションで砂川くんを預かってもいいですよ。砂川くんが一緒なら伊月くんを一人にしても安心だし」
俺たちのプライベートな部屋は伊月くんも二人だけがいいと言ってくれたからそこに入れることはしないが、マンションの中にある俺専用のゲストルームでなら、セキュリティーも万全だし、食事などについても心配はいらない。
「そうそう。それについても今日話そうと思っていたんだ。どうしてもの時はシンのところのゲストルームを使わせてもらうが、それ以外は真琴は志良堂教授の家に預けるつもりなんだ。田淵くんも一緒に預けるといい」
「えっ? 志良堂教授に? 安慶名先輩のお父さんですよね? もしかして、そのつながりで頼んだんですか? でもそれだと伊月くんは緊張してしまうんじゃ……」
経済学部に通っている伊月くんが経済学部の教授である志良堂教授の家で過ごすなんて……。しかもその家には鳴宮教授までいらっしゃるのに。伊月くんにとっては憧れの存在である二人の家でなんて寛げるはずが無い。
「まぁ、田淵くんが最初は緊張するのも仕方がないだろうが、何度か行けば慣れるだろう。鳴宮教授は真琴や田淵くんのようなタイプは大歓迎してくれるからな」
「それはそうですけど……志良堂教授に預ける何か特別な理由でもあるんですか?」
「ああ。大声出すなよ。実はな……」
ユウさんからの話は俺でさえ、想像もしていなかった話すぎて、ええーーっ!! と叫びたくなるのを必死に抑えた。
「それ、本当なんですか?」
「ああ。俺は真琴からお兄さんの話を聞いて、もしかしたら安慶名かもしれないってアタリをつけていたけど、安慶名の方は本当に寝耳に水だったみたいで俺と真琴を見て混乱しまくっていたよ」
あの安慶名先輩が混乱してしまうのも無理はない。安慶名先輩の恋人が偶然にも砂川くんのお兄さんだったと言うのだから。今聞いた俺でさえ大声で叫んでしまいそうになったんだ。当事者ならパニックになるのも当然だ。
「あ、だから志良堂教授の家に?」
「そう。真琴はお二人にとっては、息子の伴侶の弟だからね。安慶名たちと四人で教授たちに挨拶に行ったら、大喜びしてたよ。田淵くんはその真琴の親友だから、いつだって引き受けるから連れておいでって言われてるんだ」
「そうなんですね。あのお二人が見ていてくださるなら安心ですね」
「だろう?」
得意げな表情を見せるユウさんに思わず笑ってしまう。だけど、本当に世の中って狭いものだな。
「えー、そうなんだ。美味しそう!」
「あ、こっちのも美味しかったよ」
「美味しいのばっかりだから悩むよ」
「ねぇ、抹茶プリンとは別に、気になるのを二個選んで半分こしようよ。そうしたらプリンも合わせて三種類も食べられるよ」
「あ、それいい!」
二人の可愛い会話と伊月くんの嬉しそうな表情に顔が緩む。
「優一さん、抹茶プリンと、あと、これとこれも頼んでもいいですか?」
「ああ。ここから頼めるから好きなだけ頼むといい」
ユウさんがタブレットを渡すと、砂川くんは伊月くんと嬉しそうにタブレットを操作し始めた。
ああ、本当に可愛いな。
「シン。顔」
「ユウさんだってずっとニヤけてますよ」
「そうか?」
「でも本当、砂川くんの話聞いた時からいつものユウさんらしくないって思ってましたけど、一緒にいるのを見たら余計に思いましたよ」
「お前も人のことは言えないけどな」
「それは自覚してますよ。絶対に手放したくないって思ってますから」
「それはわかるよ。俺も同じだから」
俺と話しながらも意識は砂川くんに向けているんだろう。表情全てが愛しいと訴えているのがわかる。
俺もユウさんもこの歳でようやく見つけた最愛の相手だからな。
「それで、あの話はしたのか?」
「もちろんです。俺が伊月くんに隠し事はしないって決めてますから。ユウさんもでしょう?」
「ああ。だから今日は仕事仲間のお前に会わせると言って連れてきたんだ。まさか恋人連れで、その恋人が自分の友人だとは思ってなかったからものすごく驚いていたけどな。真琴が驚く可愛い顔が見られて楽しかったよ」
「ユウさんも人が悪い。でも俺も伊月くんの可愛い顔を見られてよかったですよ」
「だろう? まぁ、これからしょっちゅう四人で会うことになるよ。真琴も田淵くんのことはずっと気にしていたし」
「そうですね。ああ、そう言えばこれから仕事の時はどうします? もし必要ならうちのマンションで砂川くんを預かってもいいですよ。砂川くんが一緒なら伊月くんを一人にしても安心だし」
俺たちのプライベートな部屋は伊月くんも二人だけがいいと言ってくれたからそこに入れることはしないが、マンションの中にある俺専用のゲストルームでなら、セキュリティーも万全だし、食事などについても心配はいらない。
「そうそう。それについても今日話そうと思っていたんだ。どうしてもの時はシンのところのゲストルームを使わせてもらうが、それ以外は真琴は志良堂教授の家に預けるつもりなんだ。田淵くんも一緒に預けるといい」
「えっ? 志良堂教授に? 安慶名先輩のお父さんですよね? もしかして、そのつながりで頼んだんですか? でもそれだと伊月くんは緊張してしまうんじゃ……」
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「まぁ、田淵くんが最初は緊張するのも仕方がないだろうが、何度か行けば慣れるだろう。鳴宮教授は真琴や田淵くんのようなタイプは大歓迎してくれるからな」
「それはそうですけど……志良堂教授に預ける何か特別な理由でもあるんですか?」
「ああ。大声出すなよ。実はな……」
ユウさんからの話は俺でさえ、想像もしていなかった話すぎて、ええーーっ!! と叫びたくなるのを必死に抑えた。
「それ、本当なんですか?」
「ああ。俺は真琴からお兄さんの話を聞いて、もしかしたら安慶名かもしれないってアタリをつけていたけど、安慶名の方は本当に寝耳に水だったみたいで俺と真琴を見て混乱しまくっていたよ」
あの安慶名先輩が混乱してしまうのも無理はない。安慶名先輩の恋人が偶然にも砂川くんのお兄さんだったと言うのだから。今聞いた俺でさえ大声で叫んでしまいそうになったんだ。当事者ならパニックになるのも当然だ。
「あ、だから志良堂教授の家に?」
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「そうなんですね。あのお二人が見ていてくださるなら安心ですね」
「だろう?」
得意げな表情を見せるユウさんに思わず笑ってしまう。だけど、本当に世の中って狭いものだな。
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