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言葉が足りなくて……
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腕の中の平松くんが身動ぐのを感じて目を覚ますと、
「ふふっ……しあわせ……」
と笑みを浮かべながら、私の胸元に擦り寄ってくるのが見えて、喜びを抑えきれずに、
「そんなに言ってもらえると私も嬉しいよ」
と声をかけると、私の顔を見上げるなり
「ひゃぁっ!!」
と可愛い声をあげて私から離れようとしたが、せっかくくっついてくれているのに離すはずがない。
昨夜のことを思い出させようと優しく声をかけた。
「大丈夫、落ち着こうか。昨日、砂川さんたちと店で飲んでたのは覚えてる? それで、グラスを倒してうちでお風呂に入ることになったんだよ」
「あっ! そうだ! 俺……お風呂入ってたらすごく眠くなって……でも寝ちゃいけないと思って必死で……」
真っ赤な顔をして説明してくれる平松くんが可愛い。
だがやっぱり酒のせいで眠くなったんだろう。
そこまで量は飲んでいないように見えたが、これからは酒の後は一人では入らせないようにしたほうがいいだろう。
もし、次に同じようなことがあったら。風呂の途中で眠ってしまうと危ないから一緒に入ろうと誘うことにしよう。
いや、それよりも正式な恋人になるほうが先か。
そんなことを考えながら、昨夜はソファーで力尽きていたことを話すと、
「えっ、じゃあ……八尋さんがここまで運んでくれたんですか?」
と驚いていたが、そんなことは何の苦にもならない。
それどころか、可愛い姿をたっぷりと見せてもらってラッキーとしか言いようがない。
平松くんは申し訳なさそうに謝ってくるが、
「平松くんは軽いし、ベッドに運ぶくらいどうってことないよ。私も抱き枕がいてくれて助かったしね。本当は平松くんが家に帰ったら、抱き枕がいなくなって眠れなくなるかもなって心配してたんだ」
となんとか理由をつけていうとホッとしたように笑っていた。
「もう少し寝ておいていいよ。私は朝食を作りながら、ちょっと店も見てくるから」
そう言って急いで私は寝室を出たが、もちろん行き先はキッチンではなくトイレ。
なんせ、一晩中可愛い姿の平松くんを抱きしめたまま寝ていたんだ。
たとえ寝る前に何度も欲望の蜜を出していたとしても、朝起きればこうなるのも仕方がないことだろう。
その上、平松くんは気づいていたかわからないが、抱きしめていた時にほんのりと平松くんの可愛い果実が反応していたことに私は気づいてしまい、それがあまりにも可愛くて興奮してしまったんだ。
私のモノがそんな状態になっていると平松くんに気づかれる前に寝室を出るしかなかった。
ああ、日に日に平松くんの可愛さに欲望が抑えきれなくなっている。
だが、もう少しの辛抱だ。
平松くんの藤乃くんに対する憂いがなくなったら、さっさと私のものにしようと決めている。
倉橋くんが藤乃くんを連れてくるまで後少しだ。
身支度を整えて、平松くんとゆっくりと朝食を食べ、お弁当を持って会社に送る。
これが私たちの中で当たり前の朝の出来事になっているのが嬉しい。
「平松くん、これお弁当」
「いつもすみません」
「ふふっ。食べてもらえるのが嬉しいんだから気にしないでいいよ」
「はい。ありがとうございます」
会社の前でそんな会話をしていると、
「あっ、平松くん! おはよう」
と名嘉村くんの爽やかな声が聞こえる。
平松くんの何倍もの泡盛をかなり濃くして呑んでいたが、ちっとも影響は出ていないようだ。
平松くんは昨夜の失態を謝っていたけれど、名嘉村くんは何も気にしていない様子だ。
「それより、昨日はあのまま泊まったんだね」
私を見ながら少しニヤついた顔で平松くんに尋ねているが、平松くん自身は何も覚えていないから何も言わないだろう。
しかし、やはり平松くんは私の予想を遥かに超えてきた。
「えっ、あっ、はい。あの、俺、お風呂入ってそのままソファーで寝ちゃってたんで、八尋さんが抱いて、ベッドで寝てて、気づいたら朝になってて……」
焦っているのか、ところどころ日本語が足りないことに気づいていない。
「えっ、ああ。そうなんだ。ふふっ。よかったね。今日は無理しない方がいいよ。八尋さんもよかったですね」
名嘉村くんは平松くんの言葉をそのまま受け取って、私たちがもう一線を超えたと思っているようだが、それは大きな勘違いだ。
そもそも、もしも本当に昨夜私たちが深い関係になっていたとしたら、平松くんがこうして外を出歩けるわけがないし、私も外に出したりはしない。
「あ、いや。違うんだ。名嘉村くん」
慌てて呼びかけて、名嘉村くんの耳元で
「ソファーに寝ていたのを抱きかかえてベッドに運んだだけだよ。抱いての意味が違うんだ。ちょっと言葉が足りないみたいだな」
と説明すると
「あーっ、なるほど。そういうことですか」
と言いながら笑っていた。
名嘉村くんのあの表情を見ると、平松くんが慌てると日本語がおぼつかなくなるのを知っているようだ。
理解してくれる人がいるのはありがたい。
「じゃあ、二人とも仕事がんばって。平松くん、また夜ね」
そう言って、自宅に戻った。
「ふふっ……しあわせ……」
と笑みを浮かべながら、私の胸元に擦り寄ってくるのが見えて、喜びを抑えきれずに、
「そんなに言ってもらえると私も嬉しいよ」
と声をかけると、私の顔を見上げるなり
「ひゃぁっ!!」
と可愛い声をあげて私から離れようとしたが、せっかくくっついてくれているのに離すはずがない。
昨夜のことを思い出させようと優しく声をかけた。
「大丈夫、落ち着こうか。昨日、砂川さんたちと店で飲んでたのは覚えてる? それで、グラスを倒してうちでお風呂に入ることになったんだよ」
「あっ! そうだ! 俺……お風呂入ってたらすごく眠くなって……でも寝ちゃいけないと思って必死で……」
真っ赤な顔をして説明してくれる平松くんが可愛い。
だがやっぱり酒のせいで眠くなったんだろう。
そこまで量は飲んでいないように見えたが、これからは酒の後は一人では入らせないようにしたほうがいいだろう。
もし、次に同じようなことがあったら。風呂の途中で眠ってしまうと危ないから一緒に入ろうと誘うことにしよう。
いや、それよりも正式な恋人になるほうが先か。
そんなことを考えながら、昨夜はソファーで力尽きていたことを話すと、
「えっ、じゃあ……八尋さんがここまで運んでくれたんですか?」
と驚いていたが、そんなことは何の苦にもならない。
それどころか、可愛い姿をたっぷりと見せてもらってラッキーとしか言いようがない。
平松くんは申し訳なさそうに謝ってくるが、
「平松くんは軽いし、ベッドに運ぶくらいどうってことないよ。私も抱き枕がいてくれて助かったしね。本当は平松くんが家に帰ったら、抱き枕がいなくなって眠れなくなるかもなって心配してたんだ」
となんとか理由をつけていうとホッとしたように笑っていた。
「もう少し寝ておいていいよ。私は朝食を作りながら、ちょっと店も見てくるから」
そう言って急いで私は寝室を出たが、もちろん行き先はキッチンではなくトイレ。
なんせ、一晩中可愛い姿の平松くんを抱きしめたまま寝ていたんだ。
たとえ寝る前に何度も欲望の蜜を出していたとしても、朝起きればこうなるのも仕方がないことだろう。
その上、平松くんは気づいていたかわからないが、抱きしめていた時にほんのりと平松くんの可愛い果実が反応していたことに私は気づいてしまい、それがあまりにも可愛くて興奮してしまったんだ。
私のモノがそんな状態になっていると平松くんに気づかれる前に寝室を出るしかなかった。
ああ、日に日に平松くんの可愛さに欲望が抑えきれなくなっている。
だが、もう少しの辛抱だ。
平松くんの藤乃くんに対する憂いがなくなったら、さっさと私のものにしようと決めている。
倉橋くんが藤乃くんを連れてくるまで後少しだ。
身支度を整えて、平松くんとゆっくりと朝食を食べ、お弁当を持って会社に送る。
これが私たちの中で当たり前の朝の出来事になっているのが嬉しい。
「平松くん、これお弁当」
「いつもすみません」
「ふふっ。食べてもらえるのが嬉しいんだから気にしないでいいよ」
「はい。ありがとうございます」
会社の前でそんな会話をしていると、
「あっ、平松くん! おはよう」
と名嘉村くんの爽やかな声が聞こえる。
平松くんの何倍もの泡盛をかなり濃くして呑んでいたが、ちっとも影響は出ていないようだ。
平松くんは昨夜の失態を謝っていたけれど、名嘉村くんは何も気にしていない様子だ。
「それより、昨日はあのまま泊まったんだね」
私を見ながら少しニヤついた顔で平松くんに尋ねているが、平松くん自身は何も覚えていないから何も言わないだろう。
しかし、やはり平松くんは私の予想を遥かに超えてきた。
「えっ、あっ、はい。あの、俺、お風呂入ってそのままソファーで寝ちゃってたんで、八尋さんが抱いて、ベッドで寝てて、気づいたら朝になってて……」
焦っているのか、ところどころ日本語が足りないことに気づいていない。
「えっ、ああ。そうなんだ。ふふっ。よかったね。今日は無理しない方がいいよ。八尋さんもよかったですね」
名嘉村くんは平松くんの言葉をそのまま受け取って、私たちがもう一線を超えたと思っているようだが、それは大きな勘違いだ。
そもそも、もしも本当に昨夜私たちが深い関係になっていたとしたら、平松くんがこうして外を出歩けるわけがないし、私も外に出したりはしない。
「あ、いや。違うんだ。名嘉村くん」
慌てて呼びかけて、名嘉村くんの耳元で
「ソファーに寝ていたのを抱きかかえてベッドに運んだだけだよ。抱いての意味が違うんだ。ちょっと言葉が足りないみたいだな」
と説明すると
「あーっ、なるほど。そういうことですか」
と言いながら笑っていた。
名嘉村くんのあの表情を見ると、平松くんが慌てると日本語がおぼつかなくなるのを知っているようだ。
理解してくれる人がいるのはありがたい。
「じゃあ、二人とも仕事がんばって。平松くん、また夜ね」
そう言って、自宅に戻った。
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