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熱くて硬い

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複雑な気持ちでお風呂を出ると、明らかに新品の下着と、綺麗に洗濯されたTシャツと短パンが置かれていた。

Tシャツと短パンは透也くんのだろうけど、下着をわざわざ買ってきてくれたんだろうか?
それともこれも透也くんの?

いや、でもサイズは俺のサイズだからやっぱり買ってきてくれたんだろう。
お礼言ってお金渡さないとな。

さっと下着を穿くといつもより肌触りがいいことに気づく。
もしかしてこれ、ものすごく良いやつなんじゃない?

うわー、こんな下着初めてだ。
これ、大切にしないとな。

そして、ドキドキしながらTシャツを手に取った。
ああ、これ……透也くんっぽいな。

そう思ってしまうほど、彼が着ているカッコいい姿が容易に想像できた。

思わず、そのTシャツの匂いを嗅いでしまう。
綺麗に洗濯されているから、洗剤だか柔軟剤だかの香りがするけれど、それに混ざって透也くんの匂いが仄かに漂ってきて、鼻腔をくすぐる。

ああ、やっぱりこの匂い安心するな。

――っ!!

Tシャツを嬉しそうに嗅いでいる姿が鏡越しに目に入って、なんだか変態チックに見える。
不審者丸出しの姿に慌ててTシャツを着ると、

「うわぁ、大きいだろうなとは思ってたけど、こんなに違うんだな」

半袖Tシャツの身幅も丈も袖も全てが大きい。
そりゃあ大学生に間違われるわけだよ……。

初対面の時を思い出しながら、笑ってしまう。

まさか自分よりも5つも年上だとは思わなかったんだろうな。
あの時の驚いた透也くん、可愛かったな。

って、なんだ……。

俺、あの時からもう透也くんのことが気になってたんじゃないか。

今頃そんなことを思い出す。

そうか……俺は最初から、透也くんに惹かれていたんだな。

自分の気持ちに気づいて、ようやく今までのこともわかるなんて俺は鈍感だ。

これからはもっと、自分の気持ちを素直に出して言ったほうがいいのかもしれないな。


そう思いながら、バスルームを出て透也くんのいるリビングに向かう。
その途中で、

「あっ、いい匂い」

キッチンから途轍もなく美味しそうな匂いが漂ってきて、吸い寄せられてしまう。

「あっ、ちょうどよかった。そろそろ呼びに――っ!!!」

魚焼きグリルから魚を取り出した透也くんが、俺の声に気づいてこっちを向いた瞬間、びっくりした表情で固まってしまった。

「えっ? 何? どうした?」

何かあったのかと慌てて駆け寄ると、

「あ、あの……だ、大智さん……っ、なんで、短パン……」

と声を震わせながら聞いてくる。

短パン? って、ああ。そっか。

「ちょっと暑かったし、Tシャツの裾が長いから穿かなくてもいいかなと思ったんだけど、ダメだったか?」

「い、いえ。だめっていうか……」

「んっ?」

透也くんが何を焦っているのかも分からず、首を傾げながら尋ねると、

「くっ――!! ああっ、もうっ!! 大智さん、をどうしたいんですか?」

と苦しげな表情を浮かべながら近づいてきた。

透也くんから、初めて『俺』という言葉が出てきて、驚きつつもなんとなく嬉しい俺と違って、透也くんは

「はぁーーーっ」

と大きなため息を吐きながら俺を抱きしめる。

「なんだ? どうしたんだ?」

「大智さん……今、あなたがどんなに艶めかしい格好で俺の前に出てきたか、わかってますか?」

「えっ? なま、めかしい?」

「こんな綺麗な足見せて、俺が興奮しないとでも思ってるんですか?」

「透也、くんが……興奮? うそ……っ」

「言ったでしょう? 俺は大智さんが好きなんですよ。そんな相手がこんな色っぽい格好で現れたら、興奮しないわけないでしょう?」

「――っ!!」

ギュッと抱きしめられている俺のお腹に熱くて硬いものが押し当てられる。
透也くんのズボンとTシャツ越しなのに、その熱さも硬さも何もかも感じられる。

「俺をこれ以上興奮させないために、短パン穿いてください。わかりましたか?」

俺はあまりのことに言葉も出せずに、頭だけ動かして返事を返すと、

「ふふっ、わかってくれたらいいんです。俺、急いで風呂入ってくるので、少し待っててくださいね」

「ちょ、待っ――!」

透也くんは引き止める間もなく、バスルームに入っていった。

いつもなら、俺が声をかけたらすぐに戻ってきてくれるのに……。
そう思ったけれど、熱く硬いものを押し当てられた感触を思い出してハッとした。

もしかして、今お風呂場で……。

「――っ!!」

淫らな想像をしてしまって顔が赤くなる。
俺はそれを隠すように、テーブルに置いてあった冷たいレモン水をグラスにたっぷりと注ぎ、一気に飲み干した。
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