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彼の部屋
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「う、ん……っ」
もう、朝か。
久しぶりに何も夢を見なかったな。
ぐっすり眠れて頭がスッキリしてる。
昨日、こっちに来て久々にアクティブに動いたからかな。
でも本当に心地良い疲れだ。
そういえば、今日は朝食をご馳走になるんだった。
土鍋で炊いたご飯……
「ぐぅ……っ」
艶々に炊けたご飯を想像しただけでお腹がなるなんて、相当ご飯に飢えてるらしい。
今、何時だ?
ベッドのヘッドボードに置いていた目覚まし時計に目をやると、長い針がもうすぐてっぺんを指そうとしているのが見えた。
7時前か……。
今から用意したらちょうど良い時間かも。
家にお邪魔するのに、何も持たずに行くのは申し訳ないよな。
なんか手土産になりそうなもの、あったっけ。
とりあえずベッドから飛び起きて、トイレと洗面を済ませて、キッチンを漁った。
自炊も特にしていないし、食べられるものといえばパンくらいしかない。
流石に朝食を食べさせてもらいに行くのに、パンを持っていくわけにもいかない。
しかも封の開いた食べかけの、少し甘いブリオッシュ。
これは流石に無理だな。
とはいえ、流石に手ぶらはなぁ……。
そう思った瞬間、アメリカ赴任が決まって日本を発つ前に妹にもらった餞別を思い出した。
中身は覚えてないけど、確か……
――海外に行ったら、流石にお兄ちゃんでも欲しくなると思うから。
って言っていたから、きっと使えるやつに違いない。
確か……あっちの部屋の収納に入れてた気がする。
急いで部屋に行き、クローゼットを開けると見覚えのある箱が出てきた。
「あったぁーっ!!」
記憶に間違いはなかったと嬉しく思いながら箱を開けると、
「えっ? こ、れ……だし、パック……」
中に入っていたのは、可愛らしいパッケージに入れられたいろんな出汁の詰め合わせ。
鰹出汁、いりこ出汁、あご出汁、昆布出汁に野菜出汁。
出汁醤油なんてものも入ってる。
出汁醤油って、普通の醤油とは違うのか?
うーん、でもこのまま置いておいても確実に俺はダメにする自信がある。
俺がそんなに料理をしないことはわかっているはずなのに何を思って千鶴がこれをくれたんだろう?
まぁでもうちにあるよりは透也くんのほうが使ってもらえるかもな。
今回は急遽だから手土産はこれで我慢してもらおうと箱を閉じ、時計を見ると、もう7時半になろうとしていた。
――7時半からいつでもきてもらっていいですよ。
そう言っていたからな。
とりあえず急いで着替えを済ませ、だしパックの入った箱を袋に入れ、家を出た。
透也くんの部屋はあっちだったな。
「あれ?」
少し緊張しながらチャイムを鳴らしてみたけれど、なんの反応もない。
おかしいなと思って、もう一度チャイムを鳴らしたけれどやっぱりなんの反応もない。
もしかしてあれは社交辞令だったのか……。
それを間に受けて……のこのこ部屋の前まで来てしまうなんて、ダサすぎる。
せっかく持ってきたけど、無駄になったな。
これ、どうしようか……。
ドアノブにかけていくのも怪しいか。
仕方ない、持ち帰ろう。
そう思って踵を返そうとした瞬間、バタバタとすごい勢いで近づいてくる足音が聞こえた。
「大智さんっ!!」
「えっ、と、透也くん……ど、どうしたの?」
突然現れた汗まみれの透也くんの姿に、驚きが隠せない。
「すみません! お待たせしちゃって! いつもの日課でロードワークに行っていたんですが、途中で走っていたおじいさんが倒れるところに遭遇してしまって、救急車を呼んだりしていたもので」
「えっ? それは大変だったな。それでそのおじいさんは大丈夫だったのか?」
「はい。意識はあるようで救急隊員とも受け答えをしていましたから、軽い熱中症だったようです」
「それならよかった。朝から人助けするなんて偉かったな」
「いえ、大智さんをお待たせしてしまってすみません」
「気にしないでいいよ。人助けのほうが大事なんだから。じゃあ、今日はやめておいたほうがいいか? 今から準備だと大変だろう?」
「いいえっ! もう準備はできてるんです。ご飯も炊くだけの状態ですし、どうぞ中に入ってください」
焦ったように俺の手を引いて部屋の中に入れる彼の身体からは、彼の汗と体臭がふわりと漂ってきて身体の奥がぞくりと疼いた。
「大智さん。スリッパ、どうぞ」
「あ、ああ。ありがとう」
「どうかしましたか?」
「いや。なんでもない」
「そうですか? あの、私、急いでシャワー浴びてくるので、好きに過ごしていてください」
「ああ、わかった。そんなに急がなくてもいいぞ」
「はい。ありがとうございます」
そう言いながら透也くんは奥の扉を開け、中に入っていった。
確か、あっちはバスルーム。
今頃、あの汗のついた服を脱いで……
って、何考えてるんだ。俺は。
いくらここのところ、誰にも触れられてないからって透也くんにそんな気持ちを持つなんて、自分で自分に呆れる。
でも、彼が暮らしているこの空間にいると、部屋中が透也くんの匂いだらけで頭から離れていかない。
ああ、やばいな。
俺……そんなに飢えてるんだろうか……。
今、ものすごく身体が疼いてる。
こんなこと……初めてだ。
もう、朝か。
久しぶりに何も夢を見なかったな。
ぐっすり眠れて頭がスッキリしてる。
昨日、こっちに来て久々にアクティブに動いたからかな。
でも本当に心地良い疲れだ。
そういえば、今日は朝食をご馳走になるんだった。
土鍋で炊いたご飯……
「ぐぅ……っ」
艶々に炊けたご飯を想像しただけでお腹がなるなんて、相当ご飯に飢えてるらしい。
今、何時だ?
ベッドのヘッドボードに置いていた目覚まし時計に目をやると、長い針がもうすぐてっぺんを指そうとしているのが見えた。
7時前か……。
今から用意したらちょうど良い時間かも。
家にお邪魔するのに、何も持たずに行くのは申し訳ないよな。
なんか手土産になりそうなもの、あったっけ。
とりあえずベッドから飛び起きて、トイレと洗面を済ませて、キッチンを漁った。
自炊も特にしていないし、食べられるものといえばパンくらいしかない。
流石に朝食を食べさせてもらいに行くのに、パンを持っていくわけにもいかない。
しかも封の開いた食べかけの、少し甘いブリオッシュ。
これは流石に無理だな。
とはいえ、流石に手ぶらはなぁ……。
そう思った瞬間、アメリカ赴任が決まって日本を発つ前に妹にもらった餞別を思い出した。
中身は覚えてないけど、確か……
――海外に行ったら、流石にお兄ちゃんでも欲しくなると思うから。
って言っていたから、きっと使えるやつに違いない。
確か……あっちの部屋の収納に入れてた気がする。
急いで部屋に行き、クローゼットを開けると見覚えのある箱が出てきた。
「あったぁーっ!!」
記憶に間違いはなかったと嬉しく思いながら箱を開けると、
「えっ? こ、れ……だし、パック……」
中に入っていたのは、可愛らしいパッケージに入れられたいろんな出汁の詰め合わせ。
鰹出汁、いりこ出汁、あご出汁、昆布出汁に野菜出汁。
出汁醤油なんてものも入ってる。
出汁醤油って、普通の醤油とは違うのか?
うーん、でもこのまま置いておいても確実に俺はダメにする自信がある。
俺がそんなに料理をしないことはわかっているはずなのに何を思って千鶴がこれをくれたんだろう?
まぁでもうちにあるよりは透也くんのほうが使ってもらえるかもな。
今回は急遽だから手土産はこれで我慢してもらおうと箱を閉じ、時計を見ると、もう7時半になろうとしていた。
――7時半からいつでもきてもらっていいですよ。
そう言っていたからな。
とりあえず急いで着替えを済ませ、だしパックの入った箱を袋に入れ、家を出た。
透也くんの部屋はあっちだったな。
「あれ?」
少し緊張しながらチャイムを鳴らしてみたけれど、なんの反応もない。
おかしいなと思って、もう一度チャイムを鳴らしたけれどやっぱりなんの反応もない。
もしかしてあれは社交辞令だったのか……。
それを間に受けて……のこのこ部屋の前まで来てしまうなんて、ダサすぎる。
せっかく持ってきたけど、無駄になったな。
これ、どうしようか……。
ドアノブにかけていくのも怪しいか。
仕方ない、持ち帰ろう。
そう思って踵を返そうとした瞬間、バタバタとすごい勢いで近づいてくる足音が聞こえた。
「大智さんっ!!」
「えっ、と、透也くん……ど、どうしたの?」
突然現れた汗まみれの透也くんの姿に、驚きが隠せない。
「すみません! お待たせしちゃって! いつもの日課でロードワークに行っていたんですが、途中で走っていたおじいさんが倒れるところに遭遇してしまって、救急車を呼んだりしていたもので」
「えっ? それは大変だったな。それでそのおじいさんは大丈夫だったのか?」
「はい。意識はあるようで救急隊員とも受け答えをしていましたから、軽い熱中症だったようです」
「それならよかった。朝から人助けするなんて偉かったな」
「いえ、大智さんをお待たせしてしまってすみません」
「気にしないでいいよ。人助けのほうが大事なんだから。じゃあ、今日はやめておいたほうがいいか? 今から準備だと大変だろう?」
「いいえっ! もう準備はできてるんです。ご飯も炊くだけの状態ですし、どうぞ中に入ってください」
焦ったように俺の手を引いて部屋の中に入れる彼の身体からは、彼の汗と体臭がふわりと漂ってきて身体の奥がぞくりと疼いた。
「大智さん。スリッパ、どうぞ」
「あ、ああ。ありがとう」
「どうかしましたか?」
「いや。なんでもない」
「そうですか? あの、私、急いでシャワー浴びてくるので、好きに過ごしていてください」
「ああ、わかった。そんなに急がなくてもいいぞ」
「はい。ありがとうございます」
そう言いながら透也くんは奥の扉を開け、中に入っていった。
確か、あっちはバスルーム。
今頃、あの汗のついた服を脱いで……
って、何考えてるんだ。俺は。
いくらここのところ、誰にも触れられてないからって透也くんにそんな気持ちを持つなんて、自分で自分に呆れる。
でも、彼が暮らしているこの空間にいると、部屋中が透也くんの匂いだらけで頭から離れていかない。
ああ、やばいな。
俺……そんなに飢えてるんだろうか……。
今、ものすごく身体が疼いてる。
こんなこと……初めてだ。
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