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第三章

楽しい里帰り※

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<sideアズール>

「お父さまっ! お母さまっ!!」

お兄さまとティオがお城で初夜を迎えてから半月ほどが経って、ようやく僕はルーと一緒に里帰りすることになった。
馬車から降りると、玄関の前にお父さまとお母さまが僕たちを出迎えてくれていて、僕は嬉しさのあまりお父さまとお母さまの元に飛び込んだんだ。

「ふふっ。お帰りなさい、アズール。よく来てくれたわね」

飛び込んだ場所はお母さまの腕の中。
優しいお母さまの腕に抱かれて心地良い。
ルーとはまた違う安心する匂いがする。

「お母さま、僕に会いたかった?」

「ええ。会いたかったわ。でも、元気にしているみたいで安心したわ。ルーディーと仲良くしているのね」

「うん。仲良くしてるよ。昨日もいっぱい蜜をもらってね、気持ちよかったの。ねぇ、ルー」

「ふふっ。そうなのね。それは良かったわ」

僕が声をかけるとルーはにっこりと笑ったまま何も答えなかったけれど、お母さまは良かったって言ってくれた。

「アズール、私のところにもおいで」

お父さまが手を伸ばしてきたから、お母さまの腕から飛び込もうと思ったら、

「わっ!!」

突然ルーの腕にギュッて抱きしめられた。

「ルー、どうしたの?」

「ずっと玄関にいて風邪でも引いたら大変だ。そろそろ中に入らせてもらおうと思ってな。義父上、よろしいか?」

「は、はい。どうぞお入りください」

お父さまは僕とルーを中に入れてくれたけれど、なんとなくお客さまな気分がして寂しい気がする。

「ねぇ、お母さま。ここは僕とルーのお家でもあるよね?」

心配になって尋ねると、お母さまはにっこりと笑って、

「ええ、もちろんよ。アズールがお城に住むようになってもそれは変わらないわ」

と言ってくれた。

「ふふっ。よかったぁ。ねぇ。ルー」

「ああ、そうだな」

ルーを見上げると、優しい笑顔が降ってくる。
ああ、僕の家族はみんな笑顔がいっぱいだ。

「お兄さまとティオはいないの?」

「いいえ、今二人でお買い物に行っているの。アズールにどうしても食べさせたいお菓子があるんですって」

「わぁー! そうなんだ、楽しみ!!」

お兄さまとティオはお城で初夜を過ごした後から、ここで暮らすようになったと聞いた。
だから、ティオは毎日僕の護衛をするためにお城に通ってきてくれるんだ。

でもね、毎日お兄さまがティオをお城まで送り迎えしているの。
ティオは騎士さんだから、ものすごく強くて一人でも大丈夫だって言ってるけど、お兄さまは絶対にそこは譲らないらしい。

ルーに話すと、

「それは仕方がないことだな。私がクレイでもそうするだろう」

と言っていたから、きっと狼さんはみんなそうなのかもしれない。

明るい光が入るリビングのソファーに腰を下ろす。
もちろん僕はルーに抱きかかえられたままだ。

すぐにベンが僕たちの前に紅茶を置いてくれる。

「あーっ、良い匂いがするー! お城でも爺が美味しい紅茶を淹れてくれるけど、ベンの紅茶はまた特別だね」

「――っ、それはそれは……嬉しゅうございます」

笑顔を見せてくれるベンを見ながら、紅茶に手を伸ばそうとすると

「アズール。火傷するといけないから私が冷まそう」

とさっと紅茶をとってフゥフゥしてくれる。

「どう?」

「ああ、これなら大丈夫だろう」

ルーから渡された紅茶を飲むと僕にぴったりの温度だ。

「うん、美味しいっ!」

「ふふっ。良かった」

そんな僕たちをお父さまもお母さまもずっと見てくれていた。

<sideティオ>

「急がないと、もう団長とアズールさまがお越しになっている時間ですよね」

「少しくらい遅れても家族なのだから気にすることはない」

「でも……お待たせするなんて、申し訳なくて……」

「ふふっ。ティオは気にしすぎだ。アズールのために朝から並んだのだから、喜んでくれるよ」

アズールさまが久々にお里帰りなさるということで、ここ数日公爵邸はみんなふわふわと浮き足立っているような感じが見えた。

それほどアズールさまがおかえりになることをみんな望んでいるのだ。
愛されていらっしゃったのがよくわかる。

そんな中に私も入れてもらえてとても嬉しい。

優しいクレイさまと、分け隔てなく優しく接してくださるお義父さまとお義母さま。
両親を疾うに亡くした私にとっては唯一の両親となるわけだけど、実の両親以上に優しくて驚いてしまう。

こんな愛情に満ち溢れた家族がいることにただただ驚きしかない。
アズールさまがあんなにも天真爛漫で純粋にお育ちになったのがよくわかる。

「ティオ。今日はアズールと王子がお泊まりになるが、あまり気を遣わぬようにな。今日のティオはアズールの護衛ではなく、義兄弟なのだぞ」

「は、はい。そう思うのはまだ恐れ多いですが頑張ります」

「本当にティオは真面目だな。そんなところも可愛いのだが……」

そう言ってチュッとキスをしてくれる。

「クレイさま……っ、馬車の中で恥ずかしいです」

「誰も見ていないだろう? ほら、今度はティオからキスしてくれ」

「えっ……」

戸惑っている間にもクレイさまの目が閉じられる。
それだけでドキドキしてしまう。

でも待たせるわけにはいかない。

チュッと唇を重ねると、クレイさまは私をギュッと抱きしめて嬉しそうに強く唇を重ねてきた。

「んんっ……」

流石に舌まで入ってくることはなかったけれど、唇をたっぷり喰まれてそれだけで愛し合っている時間を思い出して興奮してしまう。

「これ以上したら、もう我慢できなくなるからな」

クレイさまはそう言って唇を離したけれど、私の方はもう我慢できない状況になっている。

「くれい、さまの、いじわる……っ」

「――っ!!」

私が涙目でそう訴えると、

「悪かった。すぐに可愛がってあげるから」

と言って、手際よく私の前を寛げる。

「やっ――!」

何が起きているのかわからないまま、あっという間に張りつめたモノが外に出されてクレイさまの口の中に覆われた。

「やぁっ、だめぇ……っ! もう、でちゃうっ!!」

クレイさまの舌技と馬車の中という背徳感に私は一瞬にして絶頂を迎え、蜜を放った。

クレイさまはそれを全て飲み干して、あまりの快感にぐったりとしてしまった私の後始末をしてくれた。

「くれ、いさま……っ」

「悪い、ティオがあまりにも可愛すぎて我慢できなかった。怒ったか?」

「怒る、わけないです……っ」

ただ恥ずかしいだけ。
そこまで言えず、私はクレイさまの胸元に顔をすり寄せた。
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