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第二章

やるしかない!

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<sideルーディー>

パンと両頬を叩き、気合を入れてからアズールの元に戻ると爺と楽しげに話をしているアズールの姿が見えた。
さっきまで着ていた私の上着ではなく、アズール用の服に着替えているのは爺に言われたからだろうか。

本当ならアズールが私の服を着てくれている方が嬉しいが、今の私にとっては興奮材料にしかならないのだから、勿体無いがこれでよかったのだろう。

たっぷりと欲望の蜜を出してきたとはいえ、アズールの可愛らしい格好にすぐに興奮してしまうのだからな。

「あっ、ルー。お風呂から出てきたの?」

「ああ。待たせてしまってすまなかったな」

「ううん。ルー、すっごく頑張ったもんね」

「えっ?」

まさか、私がアズールへの欲望に必死に堪えていたことに気づいていたのか?

「爺が言ってたよ。訓練で頑張って疲れたからゆっくりお風呂に入っているんだろうって」

「あ、ああ。そうなんだよ。ゆっくり入ってきたから疲れも取れたよ」

爺が私の長風呂を誤魔化してくれていたのか、本当に助かるな。

「あれ?」

「んっ? どうした、アズール」

アズールが突然ぴょこぴょこと跳ねるように私の元に駆け寄ってきたと思ったら、

「ルー、すっごく甘い匂いがするぅー!!」

と私の手をとってぺろぺろと舐め出した。

「ぐぅーーっ!!!」

アズールの舌の感触が一気に昂りを滾らせる。
あれほど欲望の蜜を放ってきても、アズールの刺激の前には何の意味もなさないのか……。
あんなにも臭い消しのボディーソープで身体中を洗い流してきたというのに、やはり運命の番には効果はないようだ。

「ア、アズールさま。お食事前でお腹が空いていらっしゃるのですね。すぐにお食事をご用意いたしますので、それまでこちらを召し上がってお待ちください」

この緊急事態に爺がアズールの大好物のフルーツをたくさん用意して私から引き離してくれる。

「わぁ、美味しそうっ!! でもアズール……ルーのおてての匂いが一番好き」

「そうでございますか。おそらくルーディーさま専用のボディーソープの匂いかもしれませんね」

「そうかなぁ? あのね、ルーから貰うブランケットについている甘い匂いと一緒だよ。今日のは特にすっごく甘くて美味しそうだった」

「――っ!!」

今日の蜜は我慢に我慢を重ねたせいでとてつもなく濃かった。
自分でも驚くほどの濃い匂いが漂っていたが、アズールがそこまでわかっているとは思わなかった。

やはり幼い時からマーキングし続けていたせいだろうか。

「さ、さぁ。お召し上がりください」

「いただきまーす!」

アズールが美味しそうにフルーツを食べている間に私は急いで風呂場に戻り、アズールが舐めてくれた手をしっかりと舐めとってから、限界まで欲望の蜜を放出した。

そして、今度こそアズールに気づかれないように臭い消しのボディーソープで手も身体も洗い流し、急いでアズールの元に戻ると、フルーツの匂いに紛れたのか、今度はアズールには気づかれなかったようだ。
それに続くようにたくさんの食事が運ばれてきて、ホッとした。

「アズール、何が食べたい?」

「うーんと、これっ!」

アズールが指を差したのは大好物のニンジン。
初めて食べた時ほどクタクタに煮込まれることは無くなったが、それでも味はあまり変わらないと思う。

アズールがいない時に頼んで作ってもらったことがあるが、なんの腹の足しにもならないものだったな。
それでもアズールに食べさせてもらうと極上の味に変わるのだから、本当に不思議な食べ物だ。

アズールに食事を食べさせつつ、大きな骨付き肉に食らいつく。
今日は訓練もあった上に、アズールとの風呂騒動でかなりの体力を消耗した。
欲望の蜜もとんでもない量を出したせいか、いつもの五倍は食べている気がする。

「わぁー、ルー。すごいね。いっぱい食べてる」

「ああ、アズールも食べるか?」

小さな肉の欠片を口に運んだが、アズールには大きすぎただろうか。

それでもアズールは私の手からそのままパクリと食べてくれた。

「お肉、美味しいね。ルーが食べさせてくれると美味しく感じるのかな」

「そうか。なら、これからも少しずつ食べてみようか」

「うん」

ウサギ族は肉をあまり好まないようだが、ほんの少しの肉は体の調子を整えるからできるだけ食べさせて欲しいとアズールの主治医にも言われているからな。
苦手でも私の手からなら食べてくれるというのがまた嬉しい。

あっという間に食事を終えると、

「ルー、なんだか眠くなってきちゃった……」

と言い出した。

アズールにとっても今日は大変な一日になったはずだからな。
この小さな身体なら眠たくなっても不思議はない。

歯磨きを済ませ、寝室へと連れて行くと

「るーもいっしょにねよぉ」

と眠気のせいか、少し舌足らずの口調で声をかけてくる。

「あ、ああ。そうしよう」

心の中で己に気合を入れながら、アズールの隣に身体を滑り込ませる。

「ふふっ。あったかーい」

無防備に私に擦り寄ってくるアズールが愛おしくてたまらない。

「るーのべっど、いいにおいで、いっぱい。あずーる、このべっどで、まいにち、るーとねんねしたいな」

半分眠りかけながら、そんな可愛いことを言ってくる。
いい匂いがするのは当然だ。
毎日毎日アズールを思いながら欲望の蜜を放っているのだからな。

そこにアズール自身が寝ていると思うだけで昂りが抑えられなくなるが、ここでいつものように欲望を発散させるわけにはいかない。

とりあえずアズールを寝かせなくては。

アズールから漂ってくる甘い香りに夜着の中では昂りがとんでもないことになっているが、とにかく気づかれないようにすればいい。

早く寝かせるためだと自分に言い聞かせ、昂りを叱咤しながらアズールの小さな身体をギュッと抱きしめてやると、アズールは私の匂いに安心したのか、あっという間に夢の世界に落ちていった。
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