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第二章
僕はルーの許嫁
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今日から第二章の始まりです。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
* * *
<sideアズール>
僕は12歳になりました。
初めてルーと出会った時よりも年上になった僕だけど、全然小さいし、まだまだ子どもだ。
ルーは10歳でもあんなにもおっきくて大人みたいだったのに……やっぱり狼さんとウサギさんじゃ、成長が違うのかな?
僕だって大きくなったら、ルーやお兄さまみたいに強くて逞しくなれると思っていたんだけどな……。
ちょっとがっかり。
お兄さまはもうすぐ18歳。
成人になるんだ。
数年前に留学先から帰ってきて、今はお父さまの跡を継ぐための勉強でお父さまといつも忙しそうにしている。
公爵家の跡継ぎであるお兄さまには毎日のようにお見合い希望相手からの写真とか届いているみたいだけど、今は勉強が忙しくてそれどころじゃないんだって。
それに僕が結婚するまでは家族水入らずで過ごしたいからって言っているから多分、あと6年くらいは結婚しないつもりなのかもしれない。
お兄さまはずっと留学していて家族で過ごす時間が短かったから、僕はお兄さまと一緒に過ごせるのは嬉しいけれど早く幸せになってほしい気もするんだよね。
だってお兄さまはすごく優しくてカッコいいんだもん。
そういうと、いつもルーが嫉妬するんだけど嫉妬されるのが楽しくてついいじわるを言ってしまう。
でも本当は誰よりもルーが優しいし、カッコいいと思ってる。
そんなルーと僕は許嫁なんだってずっと言われていたけれど、許嫁の意味をしっかりと理解したのは僕の10歳のお誕生日のとき。
僕が成人したその日に、ルーと結婚式を挙げるんだって教えてもらったんだ。
そもそもこの世に一人しかいないウサギ族はルーみたいな狼獣人さんの結婚相手になるために生まれてくるんだっていうことも、その時知ったんだ。
生まれた時から結婚相手が決まってるなんて、なんとも不思議な感じだけど、ルーはずっと僕のそばにいてくれたから、ルーがいない生活はもう考えられないし、ルー以外と結婚するなんてことも考えられない。
それに毎日毎日婚約希望者の写真がたくさん送られてきて困った顔をしているお兄さまを見ていると、生まれた時からもう結婚相手が決まっているのが幸せなことなんだとさえ思ってしまう。
ただ、僕は男の子だけどいいのかな? なんて考えも一瞬よぎったけれど、マックスとヴェルナーさんだってずっと仲良く過ごしていて、結婚しているのと同じだって聞いていたから別にいいのかななんて思ってしまった。
心配だったのは次の王さまになる人のこと。
――ルーは王さまになるのに、跡継ぎはいらないの?
許嫁の話をしてもらった時に、そう聞いたけれど、
――そこは何も心配しなくていいんだ。
と笑顔で返されて話は終わった。
だから、きっと他に跡を継ぐ人がもう決まっているんだろうなと思ってる。
跡継ぎ問題さえなければ、僕はルーが大好きだし、優しいし、ずっと一緒にいたい。
だから、その話を聞いてから成人する日が楽しみで仕方がないんだ。
そんな僕の許嫁であるルーはといえば、今は22歳。
成人したと同時にヴンダーシューン王国の騎士団に入団して訓練を続けていて、今は騎士団長として頑張っている。
狼の獣人さんとして生まれてきた王族は、王さまとして即位するまでは騎士団で働くという決まりなんだそう。
ルーが騎士団長になるまで騎士団長になっていたヴェルナーは、今は僕の専属護衛としてずっとそばにいてくれている。
そして、僕の専属護衛だったマックスは副団長としてルーを支えてくれているんだ。
マックスは僕が成人するまで僕の護衛をしてくれると言ってくれたけれど、ヴェルナーがどうしてもマックスを副団長にしたいと言って交代したんだ。
最初はヴェルナーに緊張したこともあったけれど、すぐに打ち解けて今ではもう、頼り甲斐のある優しいお兄ちゃん的存在になっている。
そんなことを言うと、本当のお兄ちゃんが嫉妬しちゃうから内緒にしているけどね。
専属護衛になるにあたって、ヴェルナーは自分を『ヴェル』と呼んでくれと言ってくれた。
どうやらマクシミリアンをマックスと呼んでいるのが羨ましかったみたい。
だからそれからはずっとヴェルと呼んでいる。
「ねぇ、ヴェル。今日はお勉強も早く終わったから、外に行きたいな」
「アズールさま、正直に仰ってください。お外なんて抽象的な場所ではなくて、王子のいらっしゃる訓練場に行きたいのでしょう?」
「ふふっ。やっぱりわかっちゃった? ルーが頑張ってるところみたいなって思ったの」
「ですが、王子に内緒で訓練場までお連れするのは……」
「でも、マックスもいるよ。ヴェルもマックスに会いたいでしょう?」
「――っ、それは……」
「ふふっ。僕もルーに会えるし、ヴェルもマックスに会えるし楽しいよ。ねっ、僕頑張ったし」
そう言ってヴェルを見つめると、
「はぁーーっ。わかりました。ですが、絶対に私から離れてはいけませんよ」
と釘を刺されつつも、OKしてくれた。
わぁーい!
ルーが訓練しているところ、格好いいんだよね。
ふふっ。楽しみ。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
* * *
<sideアズール>
僕は12歳になりました。
初めてルーと出会った時よりも年上になった僕だけど、全然小さいし、まだまだ子どもだ。
ルーは10歳でもあんなにもおっきくて大人みたいだったのに……やっぱり狼さんとウサギさんじゃ、成長が違うのかな?
僕だって大きくなったら、ルーやお兄さまみたいに強くて逞しくなれると思っていたんだけどな……。
ちょっとがっかり。
お兄さまはもうすぐ18歳。
成人になるんだ。
数年前に留学先から帰ってきて、今はお父さまの跡を継ぐための勉強でお父さまといつも忙しそうにしている。
公爵家の跡継ぎであるお兄さまには毎日のようにお見合い希望相手からの写真とか届いているみたいだけど、今は勉強が忙しくてそれどころじゃないんだって。
それに僕が結婚するまでは家族水入らずで過ごしたいからって言っているから多分、あと6年くらいは結婚しないつもりなのかもしれない。
お兄さまはずっと留学していて家族で過ごす時間が短かったから、僕はお兄さまと一緒に過ごせるのは嬉しいけれど早く幸せになってほしい気もするんだよね。
だってお兄さまはすごく優しくてカッコいいんだもん。
そういうと、いつもルーが嫉妬するんだけど嫉妬されるのが楽しくてついいじわるを言ってしまう。
でも本当は誰よりもルーが優しいし、カッコいいと思ってる。
そんなルーと僕は許嫁なんだってずっと言われていたけれど、許嫁の意味をしっかりと理解したのは僕の10歳のお誕生日のとき。
僕が成人したその日に、ルーと結婚式を挙げるんだって教えてもらったんだ。
そもそもこの世に一人しかいないウサギ族はルーみたいな狼獣人さんの結婚相手になるために生まれてくるんだっていうことも、その時知ったんだ。
生まれた時から結婚相手が決まってるなんて、なんとも不思議な感じだけど、ルーはずっと僕のそばにいてくれたから、ルーがいない生活はもう考えられないし、ルー以外と結婚するなんてことも考えられない。
それに毎日毎日婚約希望者の写真がたくさん送られてきて困った顔をしているお兄さまを見ていると、生まれた時からもう結婚相手が決まっているのが幸せなことなんだとさえ思ってしまう。
ただ、僕は男の子だけどいいのかな? なんて考えも一瞬よぎったけれど、マックスとヴェルナーさんだってずっと仲良く過ごしていて、結婚しているのと同じだって聞いていたから別にいいのかななんて思ってしまった。
心配だったのは次の王さまになる人のこと。
――ルーは王さまになるのに、跡継ぎはいらないの?
許嫁の話をしてもらった時に、そう聞いたけれど、
――そこは何も心配しなくていいんだ。
と笑顔で返されて話は終わった。
だから、きっと他に跡を継ぐ人がもう決まっているんだろうなと思ってる。
跡継ぎ問題さえなければ、僕はルーが大好きだし、優しいし、ずっと一緒にいたい。
だから、その話を聞いてから成人する日が楽しみで仕方がないんだ。
そんな僕の許嫁であるルーはといえば、今は22歳。
成人したと同時にヴンダーシューン王国の騎士団に入団して訓練を続けていて、今は騎士団長として頑張っている。
狼の獣人さんとして生まれてきた王族は、王さまとして即位するまでは騎士団で働くという決まりなんだそう。
ルーが騎士団長になるまで騎士団長になっていたヴェルナーは、今は僕の専属護衛としてずっとそばにいてくれている。
そして、僕の専属護衛だったマックスは副団長としてルーを支えてくれているんだ。
マックスは僕が成人するまで僕の護衛をしてくれると言ってくれたけれど、ヴェルナーがどうしてもマックスを副団長にしたいと言って交代したんだ。
最初はヴェルナーに緊張したこともあったけれど、すぐに打ち解けて今ではもう、頼り甲斐のある優しいお兄ちゃん的存在になっている。
そんなことを言うと、本当のお兄ちゃんが嫉妬しちゃうから内緒にしているけどね。
専属護衛になるにあたって、ヴェルナーは自分を『ヴェル』と呼んでくれと言ってくれた。
どうやらマクシミリアンをマックスと呼んでいるのが羨ましかったみたい。
だからそれからはずっとヴェルと呼んでいる。
「ねぇ、ヴェル。今日はお勉強も早く終わったから、外に行きたいな」
「アズールさま、正直に仰ってください。お外なんて抽象的な場所ではなくて、王子のいらっしゃる訓練場に行きたいのでしょう?」
「ふふっ。やっぱりわかっちゃった? ルーが頑張ってるところみたいなって思ったの」
「ですが、王子に内緒で訓練場までお連れするのは……」
「でも、マックスもいるよ。ヴェルもマックスに会いたいでしょう?」
「――っ、それは……」
「ふふっ。僕もルーに会えるし、ヴェルもマックスに会えるし楽しいよ。ねっ、僕頑張ったし」
そう言ってヴェルを見つめると、
「はぁーーっ。わかりました。ですが、絶対に私から離れてはいけませんよ」
と釘を刺されつつも、OKしてくれた。
わぁーい!
ルーが訓練しているところ、格好いいんだよね。
ふふっ。楽しみ。
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